前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ

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第三十話 防衛術の本

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「エディオンは、……いないわね」

(なぜこうもコソコソしなければならないのか)

 そんなことを思いつつも、遭遇したら上手く対処できる自信はなかった。
 そして、もし彼に見つかってしまったあかつきには、押しに負けてペアになってしまうのがオチである。

 その事態だけはどうやっても避けたかった。

(私は今世で何としてでも平穏な喪女生活を送りたいのよ……!!)

「あったあった。ここね。うーん、防衛術の本……防衛術の本……と」

 ぐるりと辺りを見回したが目線の先にそれらしい本はない。
 百六十センチメートルほどと周りに比べて身長があまり高くない私は、今度は首をグイッと大きく上に向ける。すると、今回のテーマによさそうな『防衛術はどうして生まれたのか?』という本を見つけた。

 だが、明らかに私の身長では届かなそうな位置にある。
 辺りを見渡しても踏み台になりそうなものは見つからず、司書も兼ねている図書館にいる妖精も近くには見当たらなかった。

(うーん、困ったなぁ。届かない。いや、待てよ、だいぶ背伸びをしたら届くかもしれない……?)

「うーん、と……位置的には確かこの辺、よね……?」

 一生懸命背伸びをしているせいで本がよく見えない。
 この辺にお目当ての本はあったはず、とつま先立ちでぷるぷると震えながら必死に本へと手を伸ばしてるときだった。

 突然ぬうっと自分の視界が暗くなり、びっくりして足がもつれて転びそうになるとガシッと何かによって腹に腕を回され、身体が支えられる。

「……キミは何をやっているんだ」

 呆れたような声が聞こえて顔を上げると、そこにはノースくんがいた。
 思いもよらぬ人物との遭遇に、頭が真っ白になる。

「あ、えっと、その、そこにある本を取ろうと思ったんだけど、取れなくて」
「どの本だ?」

 しどろもどろになりながら答えると、表情が一瞬険しくなったあとにぶっきらぼうに尋ねられて、私は思わず面食らってしまった。

「えっと、そこにある『防衛術はどうして生まれたのか?』という本、なんだけど……」
「これか?」

 ノースくんはひょいっとお目当ての本を軽々と取ると、「はい」と渡してくれる。

「あ、ありがとう」
「キミも防衛術のことを調べるんだな」
「キミもって、ノースくんも?」

 私が聞くと、一瞬顔を顰められる。

(……何か変なことを言っただろうか)

「まぁ、そんなところだ」
「クラリス!」

 ノースくんと喋っていると、不意に聞き慣れた声が聞こえてきて、私はびくりと身体を跳ねさせる。

 ゆっくりと声がしたほうを向くと、案の定ニコニコと微笑むエディオンがいて、こちらに向かって歩いてきた。
 そして、チラッと私の手元にある本を見て、さらにニコニコと笑みを浮かべる。

「クラリスも防衛術のテーマでレポートを書くんだね。実は、僕もそのテーマで書こうと思ってたんだ。せっかくテーマが一緒なら、よかったら僕とペアを組まないかい?」

(明らかに今、私の手元の本を確認してから言ったでしょう!?)

 思わず問い正したくなるが、そんなことを面と向かって言えない私はこの状況を打破するべく、「どうしようどうしよう」と脳内で解決策を考える。
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