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第四十二話 翼
「すまない、驚かしたか?」
「い、いきなりだったからびっくりした」
「悪い。距離感がよくわからなくてな。それにしても、クラリスは顔も綺麗だが髪も綺麗なのだな。陽の光を浴びると妖精の加護を受けているように輝いて見える」
褒め言葉は嫌なはずだった。
嫌なはずなのに、アイザックに言われて嬉しい自分がいる。
前世ではなかった感情に、私はとても戸惑った。
「あ、ありがとう」
「恥じらっているのか? ふっ、可愛いな」
なんだか口説かれているような気分になって、こほんっと一度咳払いをする。
チラッとアイザックの顔を見れば、特に下心などなさそうな、いたって普通の表情で、こちらを見ながら「うん? どうした?」と小首を傾げていた。
「それは……どうも」
言いながら、赤面しているのを見られぬように手で口元を押さえる。
それがアイザックにはまだ眠くてあくびをしているように見えたのか、「とりあえず授業に集中して気を紛らわせたらどうだ?」と提案された。
「そ、そうね。集中しないと酷いことになりそうだし」
今回習っている飛行術は自らに魔法をかけて背中から翼を生やしてそれを動かさなくてはならないため、難易度が非常に高い。
理論的にはある程度理解しているものの、実際にできるかどうかは別である。
寝不足も祟って集中力が薄くなっている今、ちゃんと意識しないと失敗するのは目に見えていた。
「集中、集中、っと」
まずは翼を生やすことを意識する。
背中に魔力を編み込み、翼を構築するために意識をそちらに集中させた。
「我が翼、風を纏いてこの背に生えよ」
自らの身体を抱きしめながらそう唱えると、背中がなんだかムズムズしてくる。
そして次の瞬間、バサッと勢いよく背中から翼が生えてきた。
「うっわぁ、本当に生えてきた!」
「凄いな、クラリス。どんな感じだ?」
「え、どんな感じ? そんな急に言われても……え、えーっと生えるときはなんだかムズムズする感じ。いや、今もちょっと違和感はある、かな」
「ほう。ちょっと触ってみてもいいか?」
「え? いいけど……うひゃあ!」
魔法で編んだ翼だが、どうやら触覚があるらしい。
触られた途端にくすぐったさが来て、ぞわぞわっと背筋を駆け上がる感触に、思わず変な声を上げてしまった。
「す、すまない。大丈夫か?」
「え、えぇ。翼にも感覚があるのね。これ攻撃受けたときとか痛いのかしら」
「それはあるかもな。ということは、戦闘には不向きそうだ」
「そうね。他にも飛行術はあるし、戦うときはこれじゃないほうがいいのかも」
「それにしても立派な翼だな。しかも髪の色と同様、黄金に輝いているぞ」
「え、そうなの? 私には見えない……から、わかんない!」
頑張って身体を逸らして自分の翼を見ようと振り返っても、なかなか上手く見えない。
自分の背中に生やしているのだから、当然と言えば当然ではあるのだが。
「動かせれば多少見れるかもしれないが、どうだ? 動かせそうか?」
「うーん……」
意識を翼に集中させる。
今までなかったものに意識をするというのは難しく、どこに力を入れたらいいのか、何をどうすればいいのかまるで勝手がわからない。
悪戦苦闘したあと一旦深呼吸して落ち着いてから、自分の魔力の輪郭を追うようにしていく。
すると、だんだんとコツを掴めたような気がした。
「い、いきなりだったからびっくりした」
「悪い。距離感がよくわからなくてな。それにしても、クラリスは顔も綺麗だが髪も綺麗なのだな。陽の光を浴びると妖精の加護を受けているように輝いて見える」
褒め言葉は嫌なはずだった。
嫌なはずなのに、アイザックに言われて嬉しい自分がいる。
前世ではなかった感情に、私はとても戸惑った。
「あ、ありがとう」
「恥じらっているのか? ふっ、可愛いな」
なんだか口説かれているような気分になって、こほんっと一度咳払いをする。
チラッとアイザックの顔を見れば、特に下心などなさそうな、いたって普通の表情で、こちらを見ながら「うん? どうした?」と小首を傾げていた。
「それは……どうも」
言いながら、赤面しているのを見られぬように手で口元を押さえる。
それがアイザックにはまだ眠くてあくびをしているように見えたのか、「とりあえず授業に集中して気を紛らわせたらどうだ?」と提案された。
「そ、そうね。集中しないと酷いことになりそうだし」
今回習っている飛行術は自らに魔法をかけて背中から翼を生やしてそれを動かさなくてはならないため、難易度が非常に高い。
理論的にはある程度理解しているものの、実際にできるかどうかは別である。
寝不足も祟って集中力が薄くなっている今、ちゃんと意識しないと失敗するのは目に見えていた。
「集中、集中、っと」
まずは翼を生やすことを意識する。
背中に魔力を編み込み、翼を構築するために意識をそちらに集中させた。
「我が翼、風を纏いてこの背に生えよ」
自らの身体を抱きしめながらそう唱えると、背中がなんだかムズムズしてくる。
そして次の瞬間、バサッと勢いよく背中から翼が生えてきた。
「うっわぁ、本当に生えてきた!」
「凄いな、クラリス。どんな感じだ?」
「え、どんな感じ? そんな急に言われても……え、えーっと生えるときはなんだかムズムズする感じ。いや、今もちょっと違和感はある、かな」
「ほう。ちょっと触ってみてもいいか?」
「え? いいけど……うひゃあ!」
魔法で編んだ翼だが、どうやら触覚があるらしい。
触られた途端にくすぐったさが来て、ぞわぞわっと背筋を駆け上がる感触に、思わず変な声を上げてしまった。
「す、すまない。大丈夫か?」
「え、えぇ。翼にも感覚があるのね。これ攻撃受けたときとか痛いのかしら」
「それはあるかもな。ということは、戦闘には不向きそうだ」
「そうね。他にも飛行術はあるし、戦うときはこれじゃないほうがいいのかも」
「それにしても立派な翼だな。しかも髪の色と同様、黄金に輝いているぞ」
「え、そうなの? 私には見えない……から、わかんない!」
頑張って身体を逸らして自分の翼を見ようと振り返っても、なかなか上手く見えない。
自分の背中に生やしているのだから、当然と言えば当然ではあるのだが。
「動かせれば多少見れるかもしれないが、どうだ? 動かせそうか?」
「うーん……」
意識を翼に集中させる。
今までなかったものに意識をするというのは難しく、どこに力を入れたらいいのか、何をどうすればいいのかまるで勝手がわからない。
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すると、だんだんとコツを掴めたような気がした。
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