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第16話 王宮の再編、そして新たな視線
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第16話 王宮の再編、そして新たな視線
オルディス侯爵の拘束から三日。
王宮は、まるで長い眠りから覚めたかのように慌ただしく動き始めていた。
役職の空席。
凍結された資金。
見直される政策と人事。
それらすべてが、ひとつの事実を示している。
(……王宮は、変わらざるを得なくなりましたわね)
ルビー・エルヴェールは、執務机に積まれた新しい書類を前に、静かに息を整えた。
これまでの仕事は“不正を暴くこと”。
だが、これから求められるのは――壊した後の再構築だ。
「失礼します、ルビー様」
入ってきたのは、若い文官だった。
以前、帳簿の件で協力してくれた青年だ。
「暫定人事案がまとまりました」 「ありがとうございます」
彼の差し出した書類に目を通しながら、ルビーは眉をひそめた。
(……空席が多すぎますわね)
不正に関与していた者、黙認していた者、様子見をしていた者。
処分や左遷、調査対象となり、要職が一気に空いたのだ。
「殿下は、この再編についてどうお考えですか?」 「……正直に言えば、難しい局面です」
文官は苦笑する。
「ですが、“今なら変えられる”とも仰っていました」
ルビーは、その言葉に静かに頷いた。
その日の午後。
王太子レオニードとの非公式な打ち合わせが行われた。
「再編案、目を通した」
彼は、少し疲れた様子で椅子に腰掛ける。
「思った以上に、空白が大きいな」 「ええ。ですが――機会でもあります」
ルビーは、はっきりと言った。
「これまで昇進できなかった、実務能力のある者たちを引き上げる好機ですわ」 「貴族の反発は避けられないぞ」 「承知しています」
それでも、彼女は視線を逸らさない。
「ですが、“何も変えない再編”は、意味がありません」
レオニードは、しばらく黙って考え――やがて笑った。
「君は、本当に遠慮がないな」 「今さら、でしょう?」
「……そうだな」
彼は立ち上がり、決断を口にした。
「再編案は、君の意見を全面的に採用する」 「殿下……」 「責任は、私が取る」
その言葉は、重かった。
翌日から、王宮内では新しい人事が次々と発表された。
家柄より実績。
年功より成果。
それは、これまでの常識を覆す内容だった。
「……顧問殿は、やりすぎでは?」
廊下で、年配の貴族が皮肉混じりに言う。
「王宮は、急には変われませんぞ」 「ええ。ですが」
ルビーは、穏やかに返した。
「変わらなければ、衰えますわ」
その夜。
ルビーは一人、王宮のバルコニーに立っていた。
遠くに見える街の灯り。
その一つ一つが、この国で生きる人々だ。
(……守るべきものが、増えましたわね)
そのとき、背後から声がした。
「風が強いな」
振り返ると、そこにはレオニードがいた。
「今日は、随分と敵を増やしただろう」 「覚悟の上ですわ」
「後悔は?」 「ありません」
即答だった。
レオニードは、しばらく彼女を見つめてから、静かに言った。
「……君はもう、“助言する立場”ではない」 「……?」
「王宮の未来を形作る存在だ」
その言葉に、ルビーは一瞬だけ言葉を失った。
「それは、光栄ですが……」 「同時に、危険でもある」
彼は真剣な目で続ける。
「だからこそ、君の立場は、いずれ――
“明確に”せねばならない」
その意味を、ルビーは理解していた。
(顧問か、それ以上か――)
夜風が、二人の間を通り抜ける。
王宮は再編されつつある。
そして同時に――彼女自身の立場も、変わり始めていた。
静かな転換点が、確かに訪れていた。
オルディス侯爵の拘束から三日。
王宮は、まるで長い眠りから覚めたかのように慌ただしく動き始めていた。
役職の空席。
凍結された資金。
見直される政策と人事。
それらすべてが、ひとつの事実を示している。
(……王宮は、変わらざるを得なくなりましたわね)
ルビー・エルヴェールは、執務机に積まれた新しい書類を前に、静かに息を整えた。
これまでの仕事は“不正を暴くこと”。
だが、これから求められるのは――壊した後の再構築だ。
「失礼します、ルビー様」
入ってきたのは、若い文官だった。
以前、帳簿の件で協力してくれた青年だ。
「暫定人事案がまとまりました」 「ありがとうございます」
彼の差し出した書類に目を通しながら、ルビーは眉をひそめた。
(……空席が多すぎますわね)
不正に関与していた者、黙認していた者、様子見をしていた者。
処分や左遷、調査対象となり、要職が一気に空いたのだ。
「殿下は、この再編についてどうお考えですか?」 「……正直に言えば、難しい局面です」
文官は苦笑する。
「ですが、“今なら変えられる”とも仰っていました」
ルビーは、その言葉に静かに頷いた。
その日の午後。
王太子レオニードとの非公式な打ち合わせが行われた。
「再編案、目を通した」
彼は、少し疲れた様子で椅子に腰掛ける。
「思った以上に、空白が大きいな」 「ええ。ですが――機会でもあります」
ルビーは、はっきりと言った。
「これまで昇進できなかった、実務能力のある者たちを引き上げる好機ですわ」 「貴族の反発は避けられないぞ」 「承知しています」
それでも、彼女は視線を逸らさない。
「ですが、“何も変えない再編”は、意味がありません」
レオニードは、しばらく黙って考え――やがて笑った。
「君は、本当に遠慮がないな」 「今さら、でしょう?」
「……そうだな」
彼は立ち上がり、決断を口にした。
「再編案は、君の意見を全面的に採用する」 「殿下……」 「責任は、私が取る」
その言葉は、重かった。
翌日から、王宮内では新しい人事が次々と発表された。
家柄より実績。
年功より成果。
それは、これまでの常識を覆す内容だった。
「……顧問殿は、やりすぎでは?」
廊下で、年配の貴族が皮肉混じりに言う。
「王宮は、急には変われませんぞ」 「ええ。ですが」
ルビーは、穏やかに返した。
「変わらなければ、衰えますわ」
その夜。
ルビーは一人、王宮のバルコニーに立っていた。
遠くに見える街の灯り。
その一つ一つが、この国で生きる人々だ。
(……守るべきものが、増えましたわね)
そのとき、背後から声がした。
「風が強いな」
振り返ると、そこにはレオニードがいた。
「今日は、随分と敵を増やしただろう」 「覚悟の上ですわ」
「後悔は?」 「ありません」
即答だった。
レオニードは、しばらく彼女を見つめてから、静かに言った。
「……君はもう、“助言する立場”ではない」 「……?」
「王宮の未来を形作る存在だ」
その言葉に、ルビーは一瞬だけ言葉を失った。
「それは、光栄ですが……」 「同時に、危険でもある」
彼は真剣な目で続ける。
「だからこそ、君の立場は、いずれ――
“明確に”せねばならない」
その意味を、ルビーは理解していた。
(顧問か、それ以上か――)
夜風が、二人の間を通り抜ける。
王宮は再編されつつある。
そして同時に――彼女自身の立場も、変わり始めていた。
静かな転換点が、確かに訪れていた。
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