婚約破棄された私を拾ったのは、冷徹領主様でした。——不器用なのに過保護で、どうしてそんなに愛してくるんですか!?

鷹 綾

文字の大きさ
23 / 40

第23話 アーロン、狂気の捜索

しおりを挟む
第23話 アーロン、狂気の捜索

「ミリア……ミリア……!」

屋敷は混乱していた。

転移魔術で拉致されたミリアの行方は一切分からない。
残された男たちは全員気絶し、まともな事情聴取すらできない状態だった。

アーロンは血の気の引いた顔で、気絶した黒ずくめの男の胸ぐらを掴み上げた。

「ミリアをどこにやった……!」

男は意識が朦朧としながら呻く。

「……“理想の王”の……もとへ……」

その言葉を聞いた瞬間——

アーロンの瞳が獣の色に変わった。

(ミリアを……!あいつが……!)

怒りで視界が白くなる。

ミリアの怯えた顔……必死に手を伸ばす姿……
それを思い出しただけで、胸の奥が焼けるような痛みに襲われる。

「ミリアを泣かせた奴は……全員、殺す」

低く唸ったアーロンの声に、屋敷の者たちが震え上がった。


---

◆アーロン、ついに制御不能へ

屋敷の主であるミリアの父が駆け寄る。

「アーロン殿、まずは冷静に……!」

アーロンは振り返り、鋭い目を向けた。

「冷静でいられるか!!
ミリアがどこかで……ひとりで……!」

拳を壁に叩きつけると、石の壁が深く砕けた。

(……まずい。このままでは、完全に“人狼の血”が暴走する)

執事も、侍女たちも怯えながら距離を置いた。

アーロンは荒い息を何度も繰り返しながら、喉を押さえ込む。

「……ミリア……待ってろ……絶対に、助ける」


---

◆手がかりの捜索

アーロンは気絶した黒ずくめたちを次々に調べ、特徴や符号を拾い集めた。

「アーロン殿!これを……!」

護衛が差し出したのは、黒ずくめの男の懐から出てきた“紋章”。

赤い三日月と剣が組み合わさった紋。

アーロンはそれを見て、眉が針のように尖る。

「……“影の支持者”の最高位……“赤月の部隊”」

ミリアが連れ去られたのは、ただの牢ではない。

国家の黒い部分の、最奥。

ひとつでも手を間違えれば、ミリアは戻らない。

アーロンは紋章を握りしめた。

「ここまで露骨に動くってことは……
“理想の王”を名乗る奴が、俺とミリア……両方を消す気だ」

怒気で手が震える。

——そこへ、ひとりの青年が走り込んできた。

「アーロン・ファング!追跡魔術が反応しました!」

「どこだ!!」

地図を広げる。
光点がひとつだけ、城下町の外れを示していた。

「地下……廃教会の付近です!」

アーロンは迷わなかった。

「ミリア、すぐ行く。
絶対に……ひとりで泣かせたりしない」

彼は屋敷の玄関を飛び出し、夜の街道へ駆け出した。

そのスピードは人間のそれではなかった。


---

◆ミリア、目覚める

その頃——薄暗い部屋の中。

ミリアはゆっくりと意識を取り戻した。
体がまだ拘束魔術で重い。

「ここ……どこ……?アーロン……?」

扉の向こうに、人の気配がする。

「ずいぶん大切にされているようだな、ミリア・ローゼル」

聞いたことのない声。
冷たく、嘲笑を含んだ声。

「おまえの存在が、アーロン・ファングの弱点だ。
だから“理想の王”を作るため、おまえには——消えてもらう」

ミリアの顔から血の気が引く。

(わたくしが……アーロンの……弱点……?
そんな……そんなこと……)

しかしミリアは震える手を握りしめた。

「アーロンは……私の大切な人ですわ。
あなたなんかに……アーロンを奪わせません」

影がミリアに近づく。

「無駄だ。抵抗はできない」

ミリアは怯えながらも、強い目で睨み返した。

(アーロン……どうか……来て……)

その願いは——すぐ近くまで届いていた。

夜の外から、獣の咆哮が轟いた。

「ミリアァァァーーーッ!!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約お断り令嬢ですわ ~奇行で縁談を潰していたら本命騎士に再会しました~

鍛高譚
恋愛
婚約話? 結構ですわ。 私には――子供の頃に命を救ってくれた“黒髪の騎士”がいるのですから。 公爵令嬢アンネローゼ・フォン・グレイシアは、才色兼備の完璧令嬢……だった。 だが、ある日から突如“奇行”に走り始める。正座で舞踏会に参加? スープにストロー? 謎のポエム朗読? そう、それはすべて――望まぬ婚約をぶち壊すため! 王族、貴族、策略家、演技派……次々と舞い込む政略結婚の話。 アンネローゼはあの手この手で縁談をぶった斬り、恋も名誉も自由も手に入れる! すべての婚約破棄は、たった一人の人に出会うため―― 「破談のアンネローゼ様」が貫く、“本当の婚約”とは? 痛快!恋愛ざまぁ×ラブコメディ×ハッピーエンド! 破談上等のお嬢様が、本物の愛を掴むまでの逆転劇が今、始まりますわ!

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

裏切られた令嬢は冷たい公爵様に拾われて、最愛の奥方として満たされる〜婚約破棄された夜、隣国で見つけた真実の幸福〜

sika
恋愛
名門家の令嬢アリアは、舞踏会の夜に婚約者である王太子から婚約破棄を言い渡される。政治の道具にされた彼女は、すべてを失い、隣国へと逃れる。 だがその先で出会ったのは、冷徹と噂される公爵――レオンハルト。 「お前はもう、誰にも傷つけさせない」 無表情なその人の腕の中で、アリアは本当の愛と生まれ変わるような幸福を知っていく。 けれど、過去の因縁は二人を追い詰め、やがて彼女を見捨てた者たちに再会する時が訪れる。 「ざまぁ」はまだこれから――。 痛快な復讐と、甘く激しい溺愛が交錯する王道ロマンス。

酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~

ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、 夜会当日── 婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、 迎えに来ることはなかった。 そして王宮で彼女が目にしたのは、 婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。 領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、 感情に流されることもなく、 淡々と婚約破棄の算段を立て始める。 目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、 頭の中で、今後の算段を考えていると 別の修羅場が始まって──!? その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、 エヴァンジェリンの評価と人生は、 思いもよらぬ方向へ転がり始める── 2月11日 第一章完結 2月15日 第二章スタート予定

公爵令嬢は婚約破棄に微笑む〜かつて私を見下した人たちよ、後悔する準備はできてる?〜

sika
恋愛
婚約者に裏切られ、社交界で笑い者にされた公爵令嬢リリアナ。 しかし彼女には、誰も知らない“逆転の手札”があった。 婚約破棄を機に家を離れ、彼女は隣国の次期宰相に招かれる。 そこで出会った冷徹な青年公爵・アルヴェンが、彼女を本気で求めるようになり——? 誰もが後悔し、彼女だけが幸福を掴む“ざまぁ”と“溺愛”が交錯する、痛快な王道ラブロマンス!

【完結】冷酷陛下はぬいぐるみ皇妃を手放せない~溺愛のツボはウサギの姿?それとも人間(中身)の私?~

りんりん
恋愛
「これが私ということですか? まさか冗談ですよね」 レイン様との初めての夜。 私は鏡の中の自分にかわいた笑い声をあげた。 真っ白なフワフワの身体。 丸い虹色の瞳。 なぜか私はお父様からいただいたぬいぐるみの姿になっていたからだ。 「何を企んでいるんだ。魔法でぬいぐるみになって、俺の寝首をかくつもりなのか」 レイン様は凍り付いた瞳を私にむけた。 レイン様の正式な名前はレイン・ファン・バルバドで、バルバド帝国の若き皇帝陛下でもある。 冷酷な事でしられるレイン様の二つ名は【血の雨】という。 そんな美しくも恐ろしい皇帝陛下にウサギ村の貧乏令嬢である 従姉妹に婚約者を奪われた私はひょんな事から嫁ぐことになった。 私はお金の為に。 陛下は政治的な立場をまもるための契約結婚だったけれど。 「皇妃がウサギになった事がばれるときっと大騒ぎになるだろう。 しばらくは俺達だけの秘密にしておくんだ」 そう言ってレイン様は私をポショットにいれて連れ歩く事にした。 貴族会議や公務にともなわれた私がポショットの中から見たのは、 レイン様の孤独や思いがけない温かさだった。 そしていつしかぬいぐるみの分際で、皇帝陛下を愛し始めていたのだ。 レイン様のお役に立ちたい。 その一心で聖獣ラビと契約を交わし不思議な魔法を使えるようにも なった。 なのにレイン様の反勢力派に捕らえられてしまう。 私はレイン様の弱みになりたくなかった。 だから彼らと一緒にこの世から消えるつもりだったのに。 騎士達を率いたレイン様が反勢力のアジトへ突入してきたのだ。 これは私、キャンディラビットがぬいぐるみになって冷酷皇帝陛下レイン様に溺愛される、ちょっと不思議なお話です。 (土曜日曜の二日間で一気に完結まで更新いたしますので、安心してお楽しみください。 よろしくお願いいたします)

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。 誤字訂正ありがとうございました。4話の助詞を修正しました。

【完結】お嬢様だけがそれを知らない

春風由実
恋愛
公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者でもあるお嬢様には秘密があった。 しかしそれはあっという間に公然の秘密となっていて? それを知らないお嬢様は、日々あれこれと悩んでいる模様。 「この子たちと離れるくらいなら。いっそこの子たちを連れて国外に逃げ──」 王太子殿下、サプライズとか言っている場合ではなくなりました! 今すぐ、対応してください!今すぐです! ※ゆるゆると不定期更新予定です。 ※2022.2.22のスペシャルな猫の日にどうしても投稿したかっただけ。 ※カクヨムにも投稿しています。 世界中の猫が幸せでありますように。 にゃん。にゃんにゃん。にゃん。にゃんにゃん。にゃ~。

処理中です...