ラノベでリアルに婚約破棄を描いてみたら、王家が傾いた

鷹 綾

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第二十八話 示された答え

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第二十八話 示された答え

 南方使節が王都を去ってから、三日が過ぎた。

 王城は、慌ただしくもなく、油断もしていない。
 むしろ――予定通りだった。

 新王は、評議会を招集する。

「外に向けて、こちらの姿勢を示す」

 それは、威嚇ではない。
 説明でもない。

 確認だ。

 宰相が問い返す。

「軍事演習を公開しますか?」

「いいや。
 武力は、誤解を招く」

 新王は、別の案を出した。

「条約を、見せる」

 評議会の空気が、わずかに引き締まる。

「――公開、ですか」

「概要だけだ。
 だが、十分だろう」

 王家と公爵家連合、教会との三者協定。
 今回の騒動を経て整理された、
 権限・責任・介入条件を明文化した文書。

 それを、各国の大使館に一斉に送付する。

 宰相は、ゆっくりと頷いた。

「“空白は存在しない”と示すわけですね」

「その通り」

 余地を与えなければ、
 誤算は起きない。

 一方、エノー公爵邸。

 イザベルは、その報せを聞き、静かに微笑んだ。

「賢明ですわ」

 侍女が言う。

「少し、踏み込みすぎでは?」

「いいえ」

 イザベルは、首を振る。

「踏み込んでいるのではありません。
 境界線を可視化しているだけ」

 外から見えない線ほど、
 勝手に越えられやすい。

 ならば、最初から見せればいい。

 修道院では、名を失った男が、
 遠方から届いた噂話を耳にしていた。

「条約を、外に……」

 彼は、小さく息を吐く。

「……やり方が、違うな」

 かつての自分なら、
 力を誇示し、恐れさせようとしただろう。

 だが、新王は違う。

 恐れさせるのではなく、
 理解させにいっている。

 それが、どれほど強いかを、
 彼は、もう知っている。

 数日後。

 各国の反応は、驚くほど一致していた。

「……想定より、安定している」

「王権と諸侯の関係が、明確だ」

「介入の余地がない」

 探りは、そこで終わった。

 通商交渉は、
 純粋な利害の話へと戻る。

 王都の市場では、商人たちが噂する。

「最近、外国商人が強気にならないな」

「足元を見られなくなったんだろ」

 それは、誇れることではない。
 だが、確かな成果だ。

 イザベルは、王城から届いた非公式の礼状を読み終え、机に置いた。

「……役目は、終わりましたわね」

 公爵家が前に出る必要はない。

 線は、もう十分に引かれている。

 夕暮れ。

 新王は、執務室で一人、窓の外を見ていた。

「……示した答えは、これでいい」

 宰相が、静かに言う。

「はい。
 これ以上は、蛇足でしょう」

 国は、
 叫ばなくても、
 剣を振るわなくても、
 強さを示せる段階に入った。

 イザベルもまた、同じ空を見上げている。

 愚かな王太子が壊しかけたものは、
 ただ修復されたのではない。

 より分かりやすく、
 より越えにくい形に作り替えられた。

「……これが、正しい“ざまぁ”ですわね」

 誰かが破滅することではない。
 二度と同じ愚行が通らなくなること。

 第二十八話は、
 この国が内にも外にも、
 はっきりと答えを示した日を描いていた。

 ――ここに、空白はない。
 越えるなら、最初から代償を覚悟せよ。
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