婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

鷹 綾

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第15話: 逃亡と告白

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 第15話: 逃亡と告白

神殿の扉が重く閉まり、ヴィオラとセイルは奥の広間に立っていた。壁には古い壁画が並び、影の結晶が天井から淡く輝いている。中央の祭壇に、予言書が置かれていた。古びた革表紙に、影の紋章が刻まれている。

ヴィオラは息を荒げ、セイルの手を握った。

「ここまで来られた……」

セイルは周囲を警戒しながら、予言書に手を伸ばした。

「これだ。『影の娘が、漆黒の王子を導き、王国を闇から光へ』」

ヴィオラは予言書を開き、ページをめくった。古い文字が、影のように揺らぐ。守護者の声が、頭に響いた。

『読め。君の力が、証明される』

ヴィオラは文字を読み上げた。

「影の継承者が、裏切りの炎を乗り越え、王子と共に立つ時、王国は永遠の平和を得る」

セイルの瞳が揺れた。

「俺と……君が、共に」

ヴィオラは頷き、セイルを見た。

「私たちなら、できるわ」

だが、その瞬間、神殿の扉が激しく叩かれた。外から、兵士たちの声。

「開けろ! 漆黒の王太子を捕らえろ!」

アルディオンとセリナの部下たちが、追ってきたのだ。セリナの偽りの光が、扉の隙間から漏れ、影を抑え込もうとする。

「逃げないと……!」

セイルが剣を抜いた。ヴィオラは影を広げ、扉を幻影で覆った。兵士たちは扉を開け、幻影の神殿に突入する。

「今よ!」

二人は裏口から抜け出し、庭園を駆け抜けた。影の糸が道を覆い、追っ手を惑わす。だが、セリナの光が追ってくる。

「逃がさないわ!」

ヴィオラは影を振り絞り、幻影を生み出した。自分の姿を何体も作り、兵士たちを混乱させる。

「セイル、馬小屋へ!」

二人は王宮の馬小屋に飛び込み、馬に飛び乗った。セイルが馬を駆り、ヴィオラは後ろから影で道を照らす。

王都の門へ向かう道中、追っ手が迫る。アルディオン本人が馬を駆り、剣を振り上げた。

「ヴィオレッタ! お前は俺のものだ!」

ヴィオラの胸に、怒りが燃えた。

「もう、違うわ!」

影の糸がアルディオンの馬を絡め、転ばせた。アルディオンが地面に落ち、怒声が響く。

「くそっ!」

セリナの光が飛んでくるが、ヴィオラの影が飲み込み、消す。

「セリナ……あなたの本当の力なんて、ないのよ!」

セリナが叫んだ。

「黙れ!」

だが、二人は門を抜け、王都を離れた。夜の街道を、馬を駆って逃げる。

森の奥で、ようやく追っ手を振り切った。二人は馬を止め、息を荒げた。

「生き延びた……」

セイルがヴィオラを抱きしめた。

「君のおかげだ。ヴィオラ……」

ヴィオラはセイルの胸に顔を埋め、涙が溢れた。

「セイル……怖かった。でも、あなたがいてくれたから」

セイルはヴィオラの頰を優しく拭った。

「俺もだ。君がいなければ、俺は諦めていたかもしれない」

森の静けさの中で、二人は見つめ合った。月光が、銀髪と黒髪を照らす。

セイルは、ゆっくりと口を開いた。

「ヴィオラ……俺は、君を愛している」

ヴィオラの瞳が、大きく見開かれた。

「セイル……」

セイルはヴィオラの唇に、優しく唇を重ねた。初めてのキス。温かく、甘く、影のように優しい。

ヴィオラは目を閉じ、セイルの首に腕を回した。心が、溶けるように温かくなる。

キスが終わり、二人は額を合わせた。

「俺は、君を王妃に迎えたい。俺の国を、君と一緒に取り戻す」

ヴィオラは涙を浮かべ、頷いた。

「私も……セイルを愛してる。ずっと、一緒にいるわ」

二人は再び馬に乗り、隣国の奥地へ向かった。影の神殿の予言が、二人の未来を照らす。

だが、王都では、アルディオンが立ち上がり、セリナに命じた。

「二人を、必ず捕らえろ。俺の王位を脅かすなら、殺せ」

セリナの瞳に、暗い嫉妬の炎が燃えた。

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