婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

鷹 綾

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第20話: 心の支え

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第20話: 心の支え

王宮の広間は、戦いの傷跡を残したまま静かに佇んでいた。倒れた剣や割れた鎧が散らばり、影の結晶の欠片が床に光を反射している。ヴィオラは窓辺に立ち、夜の闇を見つめていた。セイルは彼女の後ろに立ち、静かに肩を抱いた。

「ヴィオラ……疲れただろう」

ヴィオラはセイルの手に自分の手を重ね、ゆっくり振り返った。

「少し……レオンの裏切りが、胸に刺さってる」

セイルの銀瞳が、優しくヴィオラを見つめた。

「俺もだ。あいつは、幼い頃から一緒に遊んだ仲間だった。信じていたのに……」

ヴィオラはセイルの胸に顔を寄せた。

「セイル……私、怖くなったわ。信じていた人が、いつ裏切るかわからないって」

セイルはヴィオラを強く抱きしめた。温かな体温が、彼女の震えを静める。

「俺も怖い。だが、君だけは違う。君は、俺の光だ」

ヴィオラは目を閉じ、セイルの心臓の音を聞いた。規則正しく、強く響く音。

「セイル……私も、あなたを信じてる。でも、心が揺らぐ時があるの。婚約破棄の時みたいに、愛される価値がないって思ってしまう」

セイルはヴィオラの顔を両手で包み、額を合わせた。

「そんなことはない。君は、俺のすべてだ。影の継承者として、強さとして、そして……俺の恋人として」

ヴィオラの瞳に、涙が浮かんだ。

「セイル……ありがとう」

セイルはヴィオラの唇に優しくキスをした。甘く、深いキス。ヴィオラはセイルの首に腕を回し、応えた。

キスが終わり、二人は額を合わせたまま、静かに言葉を交わした。

「俺は、君を王妃に迎えたい。俺の国を、君と一緒に守りたい」

ヴィオラは頷き、微笑んだ。

「私も……セイルの隣にいたい。ずっと、一緒に」

セイルはヴィオラの手を取り、広間の中央へ導いた。そこに、影の結晶の欠片が置かれている。セイルは欠片を拾い、ヴィオラの胸に当てた。

「この結晶は、君の力の証。俺の心も、君のものだ」

ヴィオラは結晶を握り、影を呼び出した。黒い糸が二人の周りを優しく包み、温かな光を生む。守護者の声が、穏やかに響いた。

『お前たちの絆は、真実だ。恐れを捨て、進め』

ヴィオラはセイルを見上げた。

「セイル……私、強くなりたい。あなたを支えられるくらいに」

セイルは微笑んだ。

「君は、もう十分強い。俺が、君を支える番だ」

二人は広間の窓から、外の夜空を見上げた。月が、漆黒の空に浮かぶ。影のランプが、王都を優しく照らす。

「明日、王位継承の儀式を行う。皆に、君を紹介する」

ヴィオラは頷いた。

「わかった……セイルと一緒に、堂々と」

セイルはヴィオラを抱き上げ、優しくベッドへ運んだ。疲れた体を休めさせる。

「今夜は、ゆっくり休め。俺が、そばにいる」

ヴィオラはセイルの胸に寄りかかり、目を閉じた。

「セイル……愛してる」

セイルはヴィオラの髪を撫で、囁いた。

「俺も……永遠に、愛してる」

二人は互いの温もりを感じながら、眠りについた。心の支えが、二人を強く結びつける。

だが、王宮の地下牢では、セリナが独り、暗闇の中で笑っていた。牢の扉に、わずかな光が漏れる。

「まだ……終わっていないわ。私の光は、消えない」

裏切りの連鎖は、静かに続きを待っていた。

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