婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

第29話: 華やかな儀式

第29話: 華やかな儀式

アストリア王宮の大広間は、華やかな光に満ちていた。黒い大理石の床に銀の模様が描かれ、天井からは影の結晶が無数に吊り下げられ、青白い光を放っている。壁には紫と銀の布が飾られ、花々が影の魔法で優しく揺れていた。今日、漆黒の王セイルと王妃ヴィオラの結婚式が執り行われる。国民、貴族、影の魔法使いたちが集まり、広間は人で埋め尽くされていた。

ヴィオラは控え室で、鏡の前に立っていた。純白のドレスに紫の刺繍が施され、胸元には影の結晶のペンダントが輝く。黒髪を優雅に結い上げ、紫の瞳が朝陽に映えて美しかった。侍女のリリアが、ドレスの裾を整えながら言った。

「ヴィオレッタ様……本当に綺麗ですわ。王妃様に相応しい」

ヴィオラは微笑み、リリアの手を握った。

「ありがとう、リリア。今日は、私の人生で一番の幸せな日よ」

扉が開き、セイルが入ってきた。漆黒の礼服に銀の装飾が施され、銀髪が朝陽に輝く。セイルはヴィオラを見て、息を呑んだ。

「ヴィオラ……君は、俺の夢そのものだ」

ヴィオラは頰を赤らめ、セイルに近づいた。

「セイル……あなたも、とても素敵よ」

セイルはヴィオラの手を取り、優しくキスをした。

「俺の王妃……今日から、永遠に君のものだ」

二人は手をつなぎ、広間へ向かった。扉が開くと、広間から歓声が上がった。国民たちが立ち上がり、拍手と祝福の声を上げる。

「王様！ 王妃様！」

セイルとヴィオラは玉座の前に立ち、ガルドが儀式を執り行った。影の結晶が輝き、二人の周りを包む。

「漆黒の王セイル・フォン・シャドウと、王妃ヴィオラ・フォン・セレスティア。今日、二人は永遠の愛を誓う。影と光が一つとなり、王国を永遠に照らすことを」

ガルドの声が響く。二人は互いを見つめ、指輪を交換した。銀と紫の石が嵌まった指輪が、二人の絆を象徴する。

セイルはヴィオラの手を取り、静かに言った。

「ヴィオラ……俺は君を愛する。どんな時も、守る。喜びも、悲しみも、分かち合う」

ヴィオラは涙を浮かべ、頷いた。

「セイル……私も、あなたを愛する。あなたの影となり、光となる。永遠に、傍にいるわ」

セイルはヴィオラを抱き寄せ、優しくキスをした。広間から、歓声が沸き上がる。影の結晶が輝き、花びらが舞い散った。

「王様！ 王妃様！」

儀式が終わり、二人はバルコニーへ出た。国民たちが王宮の前庭に集まり、祝福の声を上げる。セイルはヴィオラを抱きしめ、耳元で囁いた。

「ヴィオラ……俺の王妃」

ヴィオラはセイルの胸に顔を埋め、微笑んだ。

「私の王様……」

夕方、二人は私室に戻り、二人きりになった。セイルはヴィオラを抱き上げ、ベッドに運んだ。

「今日から、俺たちは夫婦だ」

ヴィオラは頰を赤らめ、セイルの首に腕を回した。

「ええ……セイルの妻よ」

セイルはヴィオラの唇にキスをした。優しく、深く、愛を確かめ合うキス。二人は互いの体温を感じ、夜を共に過ごした。

朝、二人は庭園で散歩した。花々が咲き、影の魔法が優しく揺れる。セイルはヴィオラの手を取り、湖畔へ向かった。

「ヴィオラ……これからも、ずっと一緒に」

ヴィオラは頷き、セイルの胸に寄りかかった。

「永遠に……愛してる」

華やかな儀式は、二人の愛を永遠のものとした。王国は、影と光の調和の中で、新しい時代を迎えた。