婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

第30話: エピローグ - 輝く未来

第30話: エピローグ - 輝く未来

アストリア王宮の庭園は、数年後の春に満ちていた。桜のような影の花が満開に咲き、風に優しく揺れている。湖畔のベンチに、ヴィオラは座り、膝の上に小さな男の子を抱いていた。黒髪に紫がかった瞳、銀色の髪の毛先がわずかに混じった子は、セイルに似て穏やかな笑みを浮かべている。

「母様……お花、きれい」

男の子が小さな手で花を指差した。ヴィオラは優しく頷き、子を抱きしめた。

「ええ……影の花よ。父様の魔法で、ずっと咲いているの」

そこへ、セイルが現れた。漆黒の王の衣装ではなく、シンプルな黒のシャツとマント。銀髪を風に揺らし、穏やかな笑みを浮かべて近づいてくる。

「ヴィオラ、ルイ……待たせたか？」

セイルはベンチに座り、ルイを抱き上げた。ルイはセイルの胸に飛びつき、笑った。

「父様！ 今日は魔法、教えてくれる？」

セイルは頷き、ヴィオラの肩を抱いた。

「もちろん。今日は、家族で湖畔の魔法を練習しよう」

ヴィオラはセイルの胸に寄りかかり、微笑んだ。

「セイル……幸せね。こんな日が来るなんて」

セイルはヴィオラの額にキスをした。

「俺もだ。君と出会ってから、すべてが変わった」

湖畔で、三人は手をつなぎ、影の魔法を練習した。セイルが小さな影の蝶を生み、ルイが喜んで追いかける。ヴィオラは影の糸を広げ、蝶を優しく包んだ。家族の笑い声が、湖面に響く。

夕暮れ、二人はバルコニーで王都を見下ろした。ルイはセイルの膝で眠り、ヴィオラはセイルの腕に寄りかかった。

「セイル……あの時、婚約破棄されて、絶望したわ。でも、今は……すべてが報われた」

セイルはヴィオラを抱きしめた。

「俺も、影の中で生きていた。でも、君が俺の光になってくれた」

ヴィオラはセイルの瞳を見つめた。

「互いを高め合う愛……それが、真実の愛ね」

セイルは頷き、ヴィオラの唇にキスをした。優しく、深く、永遠を誓うキス。

「ヴィオラ……ありがとう。俺の王妃、俺の妻、俺のすべて」

ヴィオラは涙を浮かべ、微笑んだ。

「セイル……私の王様、私の夫、私の永遠の愛」

王都の夜空に、星が輝く。影のランプが優しく灯り、王国は平和に満ちていた。

遠くの地で、アルディオンは小さな村で静かに暮らしていた。かつての野心は消え、ただの農夫として日々を過ごす。セリナは貧民街で、子供たちに花を教え、穏やかな笑みを浮かべていた。

「もう、いいわ……本当の幸せは、ここにある」

過去の傷は癒え、それぞれの道で生きる。

王宮の庭で、ヴィオラとセイルはルイを抱き、星空を見上げた。

「セイル……これからも、ずっと一緒に」

セイルは頷き、ヴィオラを抱きしめた。

「永遠に……君と、家族と」

影と光が調和し、王国は輝く未来へ進む。真実の愛は、永遠に続く。