20 / 32
20話 事故に見せかけた殺意
しおりを挟む
20話 事故に見せかけた殺意
オルフィナが異変をはっきり感じたのは、その三日後だった。
表向きには何も変わっていない。
ヴォルゼック伯爵家からの使いは来る。屋敷への出入りも止まっていない。義母も相変わらず機嫌がよく、オルフィナに向かって「次はどんなドレスにするの」と笑っている。
けれど、見えないところが変わっていた。
まず、金の出方が鈍くなった。
以前なら頼めばその日のうちに届いた見本が、一日、二日と遅れるようになった。返事も曖昧だ。
いま手配中です。
最良の品を選ばせております。
少し時期を見た方が。
言葉は丁寧だが、実際には止められている。
そしてもう一つ。
屋敷の外で、妙に視線を感じることが増えた。
最初は思い込みだと思った。だが二度、三度と続けば気味が悪い。
窓の外に見知らぬ男が立っている。
買い物帰りの馬車の後ろに、同じ色の外套がちらつく。
通りの向こうで、何かを確かめるようにこちらを見る顔がある。
オルフィナはそのたびに気づかないふりをした。
認めたくなかったのだ。
自分が見張られているかもしれないなんて。
それではまるで、伯爵家に守られている婚約者ではなく、檻に入れられた獣ではないか。
その日、義母は昼食の席で明るく言った。
「オルフィナ、今日は少し気分転換に出かけたらどう? ずっとお部屋にいてもつまらないでしょう」
オルフィナはスープを口に運ぶ手を止める。
「気分転換?」
「ええ。新しいリボンでも見に行ったら? ほら、このところあなた、少し元気がないもの」
義母の言葉は優しい。
だがオルフィナの胸には、ぞわりと嫌なものが走った。
なぜ急に、そんなことを言うのか。
いや、考えすぎだ、と彼女はすぐに自分を叱る。
義母がそんな裏を読んでいるはずがない。ただ単に、自分の機嫌を取っているだけだ。
「……そうですわね」
オルフィナは笑顔を作った。
「少し街へ出てみますわ」
「ええ、それがいいわ。たまには別の空気も吸わないと」
義母は満足そうに頷いた。
その笑顔を見ていると、余計に不安が増した。
自分だけが何かを知らされていないような、そんな置いていかれる感じがしたのだ。
午後、オルフィナは二人の侍女と護衛を伴って馬車に乗った。
向かう先は、高級商店街の端にあるリボンと小物の店。
普段ならもっと華やかな店を選ぶところだが、今日は目立たない方がいい気がした。
馬車の中で、オルフィナは何度も指先を組み直した。
落ち着かない。
窓の外を流れる王都の景色はいつも通りなのに、自分だけが妙にその中から浮いている気がする。
店へ着いてからも、その感覚は消えなかった。
色とりどりのリボンを前にしても心が弾まない。
店主が勧める春物の飾りも、どれも薄っぺらく見える。
以前なら、こういう時こそ派手に買って気分を持ち直していたはずなのに、今日はその“いつもの自分”に戻れない。
「オルフィナ様、こちらのお色はいかがでしょう」
侍女の声に、オルフィナはぼんやりと頷いた。
「ええ……それでいいわ」
その時だった。
表通りの方から、突然、馬がいななく大きな声が聞こえた。
続いて、何かが激しくぶつかる音。
「危ない!」
誰かが叫ぶ。
店内が一瞬で騒然となる。
オルフィナが振り返る間もなく、店の前を通っていた荷馬車が、まるで制御を失ったようにこちらへ突っ込んできた。
「きゃっ……!」
悲鳴が上がる。
ガラスが砕ける。
店主が身を伏せる。
オルフィナは咄嗟に逃げようとしたが、裾を踏み、体勢を崩した。
目の前で大きな車輪がきしむ。
次の瞬間、自分は死ぬのだと、奇妙なほどはっきり分かった。
けれど、衝撃は来なかった。
代わりに、横から誰かに乱暴に引き倒される。
床へ転がり、肩を強く打つ。
そのすぐ上を、荷馬車の破片が飛んでいった。
耳鳴りがする。
何が起きたのか分からないまま顔を上げると、護衛とは違う男が自分の前に立っていた。
見覚えのない男。
だが動きは無駄がなく、ただの通行人には見えない。
「立てますか」
低い声だった。
オルフィナは口を開いたが、声にならない。
その間にも、通りでは騒ぎが広がっている。
馬は倒れ、御者は投げ出され、荷台の箱が散乱していた。
誰かが言う。
「事故だ!」
別の誰かが叫ぶ。
「いや、あれ、最初から店を狙って――」
そこまで聞いて、オルフィナの背中に冷たいものが走った。
狙って。
その言葉が、なぜか妙に胸へ刺さる。
ただの事故ではない。
もしそうだとしたら。
もし本当に、自分を狙ったのだとしたら。
「……ゼルカイン様」
無意識にその名が唇から漏れた。
けれど返事はない。
代わりに、目の前の男が短く言う。
「ここを離れます」
「え……」
「今すぐ」
男の手が、強くオルフィナの腕を引く。
侍女たちも泣きそうな顔で近寄ってくるが、男は彼女たちへも鋭く言った。
「護衛が足りない。別の馬車を回せ」
その声音には迷いがなかった。
あまりにも自然に人を動かすので、オルフィナは逆に怖くなった。
誰。
この男は誰。
どうして自分を守るような動きをするの。
混乱する頭の中に、ひとつの可能性が浮かぶ。
王宮。
もしかして、これは王宮の人間なのか。
そこまで考えた時、オルフィナは本格的に震えだした。
事故ではない。
誰かが自分を殺そうとした。
そして、誰かがそれを知っていて、先に守りの手を置いていた。
その二つが同時に成り立つなら、もう答えは一つしかない。
伯爵家が、自分を切ろうとしている。
「いや……」
オルフィナはか細い声を漏らす。
「いやよ……」
男は表情ひとつ変えずに言う。
「ここでは話せません」
そのまま裏口へ連れ出され、用意されていた別の馬車へ押し込まれる。
侍女たちは別の車へ。
護衛は二人、怪我人の処理に回されたらしい。
オルフィナは馬車の中で、自分の腕を抱きしめた。
全身が冷たい。
肩が痛い。
喉がひりつく。
そして何より、頭の奥が真っ白だった。
――本当に、あの人たちは私を。
思い出すのは、ゼルカインの静かな顔だ。
いまは余計なことを言わず、静かにしていろ。
あれは忠告ではなかった。
命令だった。
従わなければどうなるかを、もう決めた上での。
「……嘘」
ぽろりと涙が落ちる。
化粧が崩れるのも構わず、オルフィナは震えながら呟いた。
「そんなの、嘘よ……」
けれど嘘ではなかった。
馬車が止まった先は王宮ではなく、王家の管理する別の保護施設だった。
表向きは商人の家族を匿うための場所だという。
だが実際には、密かに証人や保護対象を移すための場所らしい。
通された小部屋は質素だった。
飾り気のない寝台と椅子と水差しがあるだけ。
オルフィナはその部屋へ入った瞬間、膝から崩れ落ちた。
ここは伯爵家の客間ではない。
公爵家の豪奢な私室でもない。
ただ、何かに怯える者が身を縮めるための部屋だ。
それだけで、自分が置かれた立場が嫌でも分かる。
しばらくして、部屋の扉が開いた。
入ってきたのは、見知った顔だった。
ルヴェリアではない。
ディルハルトでもない。
王宮で見かけたことのある文官だ。
その男は、感情を見せずに一礼した。
「オルフィナ嬢。あなたは本日、何者かにより事故を装って殺害されかけました」
その言葉を、オルフィナは否定できなかった。
否定したかった。
気のせいだと言ってほしかった。
でも無理だ。
あの荷馬車の向きも、速度も、止まらなさも、偶然とは思えなかった。
「……どうして」
唇が震える。
「どうして、こんな」
文官は答えない。
代わりに静かに告げる。
「心当たりがおありでしょう」
その一言で、オルフィナは完全に崩れた。
顔を覆い、肩を震わせる。
ゼルカイン。
伯爵家。
奥の部屋。
金貨。
型。
薬液。
全部がいっせいに押し寄せてきて、もう見ないふりができない。
「私……」
涙で言葉が途切れる。
「私、殺されるの……?」
文官は沈黙した。
それが答えだった。
オルフィナはそこで初めて、本当の意味で理解した。
自分は愛されていなかった。
守られてもいなかった。
便利だから飾られ、危険になったから消されようとした。
それだけなのだと。
その夜、保護施設の別室では、ディルハルトが短く報告を受けていた。
「間に合いました。軽傷で済んでいます」
「よし」
「本人はかなり動揺しています」
当然だろう、とディルハルトは思う。
そしてその報告を聞きながら、隣に立つルヴェリアは無言だった。
表情は変わらない。
けれどその沈黙の硬さで分かる。
彼女もまた、すべてを理解しているのだ。
トカゲの尻尾は、ただ切られるだけではない。
暴れないよう、最初から潰される。
「……ここまでやるのね」
ようやくルヴェリアが言った。
ディルハルトは短く答える。
「ああ」
「なら、もう迷う余地はありませんね」
その声はひどく静かだった。
怒鳴らない。
泣かない。
けれどその静けさの底で、何かが完全に固まったのが分かった。
一方、小部屋の寝台で、オルフィナは震えながら毛布を掴んでいた。
助けてほしい。
誰かに。
姉にでも、王太子にでも、誰でもいい。
そう思った時にはもう、自分がどれほど追い詰められているかを認めてしまっていた。
切り捨てられるべき女。
その札が、自分の額に貼られた音を、オルフィナはようやく聞いたのだった。
オルフィナが異変をはっきり感じたのは、その三日後だった。
表向きには何も変わっていない。
ヴォルゼック伯爵家からの使いは来る。屋敷への出入りも止まっていない。義母も相変わらず機嫌がよく、オルフィナに向かって「次はどんなドレスにするの」と笑っている。
けれど、見えないところが変わっていた。
まず、金の出方が鈍くなった。
以前なら頼めばその日のうちに届いた見本が、一日、二日と遅れるようになった。返事も曖昧だ。
いま手配中です。
最良の品を選ばせております。
少し時期を見た方が。
言葉は丁寧だが、実際には止められている。
そしてもう一つ。
屋敷の外で、妙に視線を感じることが増えた。
最初は思い込みだと思った。だが二度、三度と続けば気味が悪い。
窓の外に見知らぬ男が立っている。
買い物帰りの馬車の後ろに、同じ色の外套がちらつく。
通りの向こうで、何かを確かめるようにこちらを見る顔がある。
オルフィナはそのたびに気づかないふりをした。
認めたくなかったのだ。
自分が見張られているかもしれないなんて。
それではまるで、伯爵家に守られている婚約者ではなく、檻に入れられた獣ではないか。
その日、義母は昼食の席で明るく言った。
「オルフィナ、今日は少し気分転換に出かけたらどう? ずっとお部屋にいてもつまらないでしょう」
オルフィナはスープを口に運ぶ手を止める。
「気分転換?」
「ええ。新しいリボンでも見に行ったら? ほら、このところあなた、少し元気がないもの」
義母の言葉は優しい。
だがオルフィナの胸には、ぞわりと嫌なものが走った。
なぜ急に、そんなことを言うのか。
いや、考えすぎだ、と彼女はすぐに自分を叱る。
義母がそんな裏を読んでいるはずがない。ただ単に、自分の機嫌を取っているだけだ。
「……そうですわね」
オルフィナは笑顔を作った。
「少し街へ出てみますわ」
「ええ、それがいいわ。たまには別の空気も吸わないと」
義母は満足そうに頷いた。
その笑顔を見ていると、余計に不安が増した。
自分だけが何かを知らされていないような、そんな置いていかれる感じがしたのだ。
午後、オルフィナは二人の侍女と護衛を伴って馬車に乗った。
向かう先は、高級商店街の端にあるリボンと小物の店。
普段ならもっと華やかな店を選ぶところだが、今日は目立たない方がいい気がした。
馬車の中で、オルフィナは何度も指先を組み直した。
落ち着かない。
窓の外を流れる王都の景色はいつも通りなのに、自分だけが妙にその中から浮いている気がする。
店へ着いてからも、その感覚は消えなかった。
色とりどりのリボンを前にしても心が弾まない。
店主が勧める春物の飾りも、どれも薄っぺらく見える。
以前なら、こういう時こそ派手に買って気分を持ち直していたはずなのに、今日はその“いつもの自分”に戻れない。
「オルフィナ様、こちらのお色はいかがでしょう」
侍女の声に、オルフィナはぼんやりと頷いた。
「ええ……それでいいわ」
その時だった。
表通りの方から、突然、馬がいななく大きな声が聞こえた。
続いて、何かが激しくぶつかる音。
「危ない!」
誰かが叫ぶ。
店内が一瞬で騒然となる。
オルフィナが振り返る間もなく、店の前を通っていた荷馬車が、まるで制御を失ったようにこちらへ突っ込んできた。
「きゃっ……!」
悲鳴が上がる。
ガラスが砕ける。
店主が身を伏せる。
オルフィナは咄嗟に逃げようとしたが、裾を踏み、体勢を崩した。
目の前で大きな車輪がきしむ。
次の瞬間、自分は死ぬのだと、奇妙なほどはっきり分かった。
けれど、衝撃は来なかった。
代わりに、横から誰かに乱暴に引き倒される。
床へ転がり、肩を強く打つ。
そのすぐ上を、荷馬車の破片が飛んでいった。
耳鳴りがする。
何が起きたのか分からないまま顔を上げると、護衛とは違う男が自分の前に立っていた。
見覚えのない男。
だが動きは無駄がなく、ただの通行人には見えない。
「立てますか」
低い声だった。
オルフィナは口を開いたが、声にならない。
その間にも、通りでは騒ぎが広がっている。
馬は倒れ、御者は投げ出され、荷台の箱が散乱していた。
誰かが言う。
「事故だ!」
別の誰かが叫ぶ。
「いや、あれ、最初から店を狙って――」
そこまで聞いて、オルフィナの背中に冷たいものが走った。
狙って。
その言葉が、なぜか妙に胸へ刺さる。
ただの事故ではない。
もしそうだとしたら。
もし本当に、自分を狙ったのだとしたら。
「……ゼルカイン様」
無意識にその名が唇から漏れた。
けれど返事はない。
代わりに、目の前の男が短く言う。
「ここを離れます」
「え……」
「今すぐ」
男の手が、強くオルフィナの腕を引く。
侍女たちも泣きそうな顔で近寄ってくるが、男は彼女たちへも鋭く言った。
「護衛が足りない。別の馬車を回せ」
その声音には迷いがなかった。
あまりにも自然に人を動かすので、オルフィナは逆に怖くなった。
誰。
この男は誰。
どうして自分を守るような動きをするの。
混乱する頭の中に、ひとつの可能性が浮かぶ。
王宮。
もしかして、これは王宮の人間なのか。
そこまで考えた時、オルフィナは本格的に震えだした。
事故ではない。
誰かが自分を殺そうとした。
そして、誰かがそれを知っていて、先に守りの手を置いていた。
その二つが同時に成り立つなら、もう答えは一つしかない。
伯爵家が、自分を切ろうとしている。
「いや……」
オルフィナはか細い声を漏らす。
「いやよ……」
男は表情ひとつ変えずに言う。
「ここでは話せません」
そのまま裏口へ連れ出され、用意されていた別の馬車へ押し込まれる。
侍女たちは別の車へ。
護衛は二人、怪我人の処理に回されたらしい。
オルフィナは馬車の中で、自分の腕を抱きしめた。
全身が冷たい。
肩が痛い。
喉がひりつく。
そして何より、頭の奥が真っ白だった。
――本当に、あの人たちは私を。
思い出すのは、ゼルカインの静かな顔だ。
いまは余計なことを言わず、静かにしていろ。
あれは忠告ではなかった。
命令だった。
従わなければどうなるかを、もう決めた上での。
「……嘘」
ぽろりと涙が落ちる。
化粧が崩れるのも構わず、オルフィナは震えながら呟いた。
「そんなの、嘘よ……」
けれど嘘ではなかった。
馬車が止まった先は王宮ではなく、王家の管理する別の保護施設だった。
表向きは商人の家族を匿うための場所だという。
だが実際には、密かに証人や保護対象を移すための場所らしい。
通された小部屋は質素だった。
飾り気のない寝台と椅子と水差しがあるだけ。
オルフィナはその部屋へ入った瞬間、膝から崩れ落ちた。
ここは伯爵家の客間ではない。
公爵家の豪奢な私室でもない。
ただ、何かに怯える者が身を縮めるための部屋だ。
それだけで、自分が置かれた立場が嫌でも分かる。
しばらくして、部屋の扉が開いた。
入ってきたのは、見知った顔だった。
ルヴェリアではない。
ディルハルトでもない。
王宮で見かけたことのある文官だ。
その男は、感情を見せずに一礼した。
「オルフィナ嬢。あなたは本日、何者かにより事故を装って殺害されかけました」
その言葉を、オルフィナは否定できなかった。
否定したかった。
気のせいだと言ってほしかった。
でも無理だ。
あの荷馬車の向きも、速度も、止まらなさも、偶然とは思えなかった。
「……どうして」
唇が震える。
「どうして、こんな」
文官は答えない。
代わりに静かに告げる。
「心当たりがおありでしょう」
その一言で、オルフィナは完全に崩れた。
顔を覆い、肩を震わせる。
ゼルカイン。
伯爵家。
奥の部屋。
金貨。
型。
薬液。
全部がいっせいに押し寄せてきて、もう見ないふりができない。
「私……」
涙で言葉が途切れる。
「私、殺されるの……?」
文官は沈黙した。
それが答えだった。
オルフィナはそこで初めて、本当の意味で理解した。
自分は愛されていなかった。
守られてもいなかった。
便利だから飾られ、危険になったから消されようとした。
それだけなのだと。
その夜、保護施設の別室では、ディルハルトが短く報告を受けていた。
「間に合いました。軽傷で済んでいます」
「よし」
「本人はかなり動揺しています」
当然だろう、とディルハルトは思う。
そしてその報告を聞きながら、隣に立つルヴェリアは無言だった。
表情は変わらない。
けれどその沈黙の硬さで分かる。
彼女もまた、すべてを理解しているのだ。
トカゲの尻尾は、ただ切られるだけではない。
暴れないよう、最初から潰される。
「……ここまでやるのね」
ようやくルヴェリアが言った。
ディルハルトは短く答える。
「ああ」
「なら、もう迷う余地はありませんね」
その声はひどく静かだった。
怒鳴らない。
泣かない。
けれどその静けさの底で、何かが完全に固まったのが分かった。
一方、小部屋の寝台で、オルフィナは震えながら毛布を掴んでいた。
助けてほしい。
誰かに。
姉にでも、王太子にでも、誰でもいい。
そう思った時にはもう、自分がどれほど追い詰められているかを認めてしまっていた。
切り捨てられるべき女。
その札が、自分の額に貼られた音を、オルフィナはようやく聞いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる