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第8話 視線の先にあるもの
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第8話 視線の先にあるもの
学院の一期生が最初の成果を出してからというもの、屋敷への来客は目に見えて増えた。
表向きは祝意。
実際は観察。
制度は成功すれば称賛されるが、同時に値踏みもされる。
私は応接室の隅で、父の応対を静かに見守っていた。
「見事ですな、公爵」
「過分なお言葉です」
「我が家の三男も、来期から参加させたい」
父は穏やかに頷く。
「志があるのであれば歓迎いたします」
言葉は柔らかい。
だが、基準は譲らない。
参加家が増えれば増えるほど、選抜の目は厳しくなる。
私はその基準案を父に示していた。
基礎試験と推薦状。
単なる家格ではなく、学ぶ意志を重視する。
「広げるのではなかったのか」
父が問いかける。
「広げます」
私は即答する。
「ですが、土台が崩れては意味がありません」
質を守る。
それは、最初から揺らいでいない方針だ。
夕刻、講師陣との会議が開かれた。
参加家が増えたことで、広間は手狭になりつつある。
増築の計画が持ち上がる。
「校舎を建てるのですか」
若い講師が目を輝かせる。
校舎。
その言葉に、私は一瞬だけ胸が高鳴った。
だが、すぐに冷静になる。
「まだ早いです」
私が言うと、室内が静まる。
「形にこだわれば、反発を招きます」
今はあくまで、公爵家の敷地内での教育。
国家規模の施設ではない。
慎重に、だが確実に。
会議の後、父が私に声をかける。
「校舎を欲している顔をしていた」
「……少しだけ」
「欲は悪ではない」
「ですが、順序を誤れば潰されます」
父は満足げに笑った。
「よく分かっている」
その数日後、王宮から正式な招待状が届く。
舞踏会。
ウォーク・アロングサイド王太子主催。
私は封を切りながら、息を整える。
避けては通れない。
学院が広がるほど、王家の視線は近づく。
舞踏会当日。
煌びやかな灯りと音楽。
私は母の手ほどきを受けた礼を守り、静かに会場へ入る。
男社会の象徴のような空間。
女性は装飾。
男性は主役。
それが、この国の常識。
殿下はすぐに私を見つけた。
「トレイルブレイザー公爵令嬢」
「殿下」
「学院は順調と聞く」
「父の尽力のおかげです」
私は微笑む。
自分の名は出さない。
「君は常に父を立てる」
「事実ですわ」
殿下は軽く笑う。
「だが、実際に動いているのは君だろう」
私は視線を逸らさない。
「動く許可をいただいているだけです」
音楽が変わる。
「一曲、いかがか」
断る理由はない。
私は殿下の手を取る。
踊りながら、殿下は低く問いかけた。
「一つ聞いてもよいか」
「なんでしょう」
「君の理想のタイプは」
私は一瞬、まばたきをする。
「政略結婚しか許されぬ立場の方が、そんなことをお聞きになりますか」
「後学のためだ」
後学。
私は心の中で小さく笑う。
「そうですわね。お父様のような方でしょうか」
殿下の足取りが、わずかに乱れた。
「それは、手強い」
「光栄ですわ」
「君の結婚は、政略結婚ではないのだろうな」
「さあ」
私は柔らかく微笑む。
「決定権は父にありますので、私には分かりません」
殿下は沈黙する。
押せば、公爵と正面から向き合うことになる。
それは簡単ではない。
曲が終わる。
「君は、強いな」
「強くなければ、制度は作れません」
私は一礼する。
「ですが、私はまだ未熟です」
殿下は微笑んだ。
「その未熟さが、恐ろしい」
舞踏会は続く。
だが、私の中で一つの確信が生まれていた。
学院は、王家の視界に完全に入った。
それは危険でもあり、機会でもある。
屋敷へ戻る馬車の中で、私は窓の外を見つめる。
未来は分からない。
王太子が敵になるのか、理解者になるのか。
今はまだ、判断できない。
だが私は、目的を見失わない。
より多くの教育の機会。
それが根底。
学院は始まったばかりだ。
そして、私自身もまた、試され始めている。
学院の一期生が最初の成果を出してからというもの、屋敷への来客は目に見えて増えた。
表向きは祝意。
実際は観察。
制度は成功すれば称賛されるが、同時に値踏みもされる。
私は応接室の隅で、父の応対を静かに見守っていた。
「見事ですな、公爵」
「過分なお言葉です」
「我が家の三男も、来期から参加させたい」
父は穏やかに頷く。
「志があるのであれば歓迎いたします」
言葉は柔らかい。
だが、基準は譲らない。
参加家が増えれば増えるほど、選抜の目は厳しくなる。
私はその基準案を父に示していた。
基礎試験と推薦状。
単なる家格ではなく、学ぶ意志を重視する。
「広げるのではなかったのか」
父が問いかける。
「広げます」
私は即答する。
「ですが、土台が崩れては意味がありません」
質を守る。
それは、最初から揺らいでいない方針だ。
夕刻、講師陣との会議が開かれた。
参加家が増えたことで、広間は手狭になりつつある。
増築の計画が持ち上がる。
「校舎を建てるのですか」
若い講師が目を輝かせる。
校舎。
その言葉に、私は一瞬だけ胸が高鳴った。
だが、すぐに冷静になる。
「まだ早いです」
私が言うと、室内が静まる。
「形にこだわれば、反発を招きます」
今はあくまで、公爵家の敷地内での教育。
国家規模の施設ではない。
慎重に、だが確実に。
会議の後、父が私に声をかける。
「校舎を欲している顔をしていた」
「……少しだけ」
「欲は悪ではない」
「ですが、順序を誤れば潰されます」
父は満足げに笑った。
「よく分かっている」
その数日後、王宮から正式な招待状が届く。
舞踏会。
ウォーク・アロングサイド王太子主催。
私は封を切りながら、息を整える。
避けては通れない。
学院が広がるほど、王家の視線は近づく。
舞踏会当日。
煌びやかな灯りと音楽。
私は母の手ほどきを受けた礼を守り、静かに会場へ入る。
男社会の象徴のような空間。
女性は装飾。
男性は主役。
それが、この国の常識。
殿下はすぐに私を見つけた。
「トレイルブレイザー公爵令嬢」
「殿下」
「学院は順調と聞く」
「父の尽力のおかげです」
私は微笑む。
自分の名は出さない。
「君は常に父を立てる」
「事実ですわ」
殿下は軽く笑う。
「だが、実際に動いているのは君だろう」
私は視線を逸らさない。
「動く許可をいただいているだけです」
音楽が変わる。
「一曲、いかがか」
断る理由はない。
私は殿下の手を取る。
踊りながら、殿下は低く問いかけた。
「一つ聞いてもよいか」
「なんでしょう」
「君の理想のタイプは」
私は一瞬、まばたきをする。
「政略結婚しか許されぬ立場の方が、そんなことをお聞きになりますか」
「後学のためだ」
後学。
私は心の中で小さく笑う。
「そうですわね。お父様のような方でしょうか」
殿下の足取りが、わずかに乱れた。
「それは、手強い」
「光栄ですわ」
「君の結婚は、政略結婚ではないのだろうな」
「さあ」
私は柔らかく微笑む。
「決定権は父にありますので、私には分かりません」
殿下は沈黙する。
押せば、公爵と正面から向き合うことになる。
それは簡単ではない。
曲が終わる。
「君は、強いな」
「強くなければ、制度は作れません」
私は一礼する。
「ですが、私はまだ未熟です」
殿下は微笑んだ。
「その未熟さが、恐ろしい」
舞踏会は続く。
だが、私の中で一つの確信が生まれていた。
学院は、王家の視界に完全に入った。
それは危険でもあり、機会でもある。
屋敷へ戻る馬車の中で、私は窓の外を見つめる。
未来は分からない。
王太子が敵になるのか、理解者になるのか。
今はまだ、判断できない。
だが私は、目的を見失わない。
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それが根底。
学院は始まったばかりだ。
そして、私自身もまた、試され始めている。
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