32 / 40
第32話 理由を問われる側
しおりを挟む
第32話 理由を問われる側
王宮に集まった声は、もはや噂ではなかった。
正式な意見書。
抗議文。
そして――説明を求める要求。
「……では、
本日の議題に入る」
会議室に、緊張が走る。
これまで“通っていた案”が、
改めて精査される場だった。
「この施策は、
前例があります」
声を上げたのは、
以前から影響力を持っていた貴族の一人。
「前例があるから、
進める――
それで十分では?」
以前なら、
その一言で通っていた。
だが、今は違う。
「……前例の“結果”は?」
アークトゥルスの問いは、
静かだった。
「……結果、とは……」
「成功したのか。
それとも、
問題が残ったのか」
会議室が、静まり返る。
問い自体は、
特別なものではない。
だが――
答える準備をしていなかった。
「……当時は、
問題にならなかった」
苦し紛れの返答。
「それは、
“見過ごされた”だけでは?」
アークトゥルスは、
淡々と続ける。
「理由を示せない案は、
通らない」
声を荒げない。
責めもしない。
ただ――
線を引くだけ。
沈黙ののち、
議長が告げる。
「……本件は、
差し戻しとする」
その瞬間、
何人かの顔が強張った。
(……拒否された)
それが、
はっきりと形を取った瞬間だった。
会議後。
廊下で、低い声が交わされる。
「……殿下は、
我々を信用していない」
「いや……
信用以前に、
理由を求めているだけだ」
「……それが、
面倒なのだ」
その言葉が、
本音だった。
一方、ミラは、
少し離れた場所から、
その様子を見ていた。
(……今度は、
理由を問われる側)
かつては、
自分が盾になっていた。
今は――
殿下自身が、
問いを向けている。
夜。
アークトゥルスは、
書斎で椅子に深く腰掛けていた。
(……拒否した)
その事実が、
胸に残る。
正しかったのか。
厳しすぎなかったか。
答えは、
すぐには出ない。
だが。
(……理由を、
聞かなかった頃よりは、
前に進んでいる)
それだけは、
はっきりしていた。
同じ頃。
デネブは、協議会で
こんな言葉を聞いていた。
「……最近、
王宮では、
理由を問われるらしいですね」
誰かが、
半ば皮肉を込めて言う。
デネブは、
淡々と答えた。
「当然ですわ。
理由を問われない決定など、
長くは持ちません」
その言葉は、
静かだが、
揺るがなかった。
王宮では、
不満が、
“拒否”として顕在化し始めている。
だが――
それは同時に、
選ばれる基準が、
明確になったということでもあった。
第32話は、
ざまぁの核心に近づく一歩。
声を上げた者たちは、
ついに気づく。
――
問題は、
殿下が変わったことではない。
自分たちが、
理由を持っていなかったことだった。
王宮に集まった声は、もはや噂ではなかった。
正式な意見書。
抗議文。
そして――説明を求める要求。
「……では、
本日の議題に入る」
会議室に、緊張が走る。
これまで“通っていた案”が、
改めて精査される場だった。
「この施策は、
前例があります」
声を上げたのは、
以前から影響力を持っていた貴族の一人。
「前例があるから、
進める――
それで十分では?」
以前なら、
その一言で通っていた。
だが、今は違う。
「……前例の“結果”は?」
アークトゥルスの問いは、
静かだった。
「……結果、とは……」
「成功したのか。
それとも、
問題が残ったのか」
会議室が、静まり返る。
問い自体は、
特別なものではない。
だが――
答える準備をしていなかった。
「……当時は、
問題にならなかった」
苦し紛れの返答。
「それは、
“見過ごされた”だけでは?」
アークトゥルスは、
淡々と続ける。
「理由を示せない案は、
通らない」
声を荒げない。
責めもしない。
ただ――
線を引くだけ。
沈黙ののち、
議長が告げる。
「……本件は、
差し戻しとする」
その瞬間、
何人かの顔が強張った。
(……拒否された)
それが、
はっきりと形を取った瞬間だった。
会議後。
廊下で、低い声が交わされる。
「……殿下は、
我々を信用していない」
「いや……
信用以前に、
理由を求めているだけだ」
「……それが、
面倒なのだ」
その言葉が、
本音だった。
一方、ミラは、
少し離れた場所から、
その様子を見ていた。
(……今度は、
理由を問われる側)
かつては、
自分が盾になっていた。
今は――
殿下自身が、
問いを向けている。
夜。
アークトゥルスは、
書斎で椅子に深く腰掛けていた。
(……拒否した)
その事実が、
胸に残る。
正しかったのか。
厳しすぎなかったか。
答えは、
すぐには出ない。
だが。
(……理由を、
聞かなかった頃よりは、
前に進んでいる)
それだけは、
はっきりしていた。
同じ頃。
デネブは、協議会で
こんな言葉を聞いていた。
「……最近、
王宮では、
理由を問われるらしいですね」
誰かが、
半ば皮肉を込めて言う。
デネブは、
淡々と答えた。
「当然ですわ。
理由を問われない決定など、
長くは持ちません」
その言葉は、
静かだが、
揺るがなかった。
王宮では、
不満が、
“拒否”として顕在化し始めている。
だが――
それは同時に、
選ばれる基準が、
明確になったということでもあった。
第32話は、
ざまぁの核心に近づく一歩。
声を上げた者たちは、
ついに気づく。
――
問題は、
殿下が変わったことではない。
自分たちが、
理由を持っていなかったことだった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!
ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」
特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18)
最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。
そしてカルミアの口が動く。
「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」
オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。
「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」
この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる