追放された悪役令嬢は最強魔法で復讐し、隣国王子に永遠に愛される

鷹 綾

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第8話 謎の美男子との出会い

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 第8話 謎の美男子との出会い

ノルドフォールの村は、わずか数日で息を吹き返し始めていた。

エメロードの治癒魔法で病が消え、闇と治癒の融合魔法で土壌が肥沃になった。枯れていた畑には緑が広がり、領民たちは久しぶりに笑顔を取り戻していた。

しかし、脅威はまだ残っていた。

村の北、深い森の奥から──魔物たちが頻繁に現れるようになった。

「ゴブリンの群れが、また村に近づいてる!」

「昨夜はオオカミ型の魔狼が三匹、牲畜を襲ったんだ!」

領民たちの不安な声が、毎朝のようにエメロードの耳に届く。

エメロードは一人で森に入り、闇魔法で魔物を退治していた。

影の触手を操り、瞬時に首を刎ねる。召喚した闇の蝶で毒を撒き、群れを壊滅させる。

だが、魔物の数は増える一方だった。

「この森の奥に、巣窟があるはず……」

エメロードは決意し、ある朝、単身で深い森へ向かった。

リアナには「村の守りを頼む」と言い残して。

森は暗く、霧が立ち込め、魔物の気配が濃厚だ。

木々がうねり、足元は腐葉土で滑る。

エメロードは闇のマントを纏い、音もなく進む。

やがて、開けた場所に出た。

そこには、巨大な魔狼が一匹──倒れていた。

体長三メートルはあろうかという黒い魔狼。鋭い牙と爪が、月光のように輝いている。

しかし、腹部に深い傷を負い、息も絶え絶えだ。

周囲には、ゴブリンの死体が十数体散らばっている。

「この魔狼が、ゴブリンたちを倒したの?」

エメロードは不思議に思いながら、近づいた。

魔狼の傍らに、一人の男が倒れていた。

黒髪に銀の混じった長い髪、端正な顔立ち。黒い外套に身を包み、腰に剣を佩いている。

年齢は二十代半ばか。美男子──という言葉がぴったりの、息を呑むような容姿。

だが、左腕と胸に深い傷を負い、血が流れている。意識を失っている。

エメロードはすぐに膝をつき、男の傷を診た。

「重傷ね……このままでは死ぬわ」

彼女は迷わず治癒魔法を発動させた。

柔らかな緑の光が男の体を包む。

傷口が閉じ、血が止まり、顔色が戻っていく。

禁呪級の治癒魔法──通常なら数ヶ月かかる傷を、数分で完治させる。

男の瞼が、ゆっくりと開いた。

深い紫色の瞳が、エメロードを捉える。

「……ここは?」

低く、落ち着いた声。

エメロードは微笑んだ。

「森の中よ。あなた、魔物と戦っていたのね」

男はゆっくりと体を起こし、自分の傷がないことに気づいた。

「……治したのか? 君が」

「ええ。放っておけなかったから」

男はエメロードをじっと見つめ、静かに頭を下げた。

「命を救われた。感謝する」

「気にしないで。むしろ、あなたがゴブリンたちを倒してくれたおかげで、村が助かったわ」

男は周囲のゴブリンの死体を見て、苦笑した。

「大したことはしていない。魔狼に気を取られ、油断しただけだ」

そのとき、倒れていた魔狼が最後の力を振り絞り、咆哮を上げた。

エメロードは即座に闇の触手を伸ばし、魔狼の首を貫いた。

魔狼は断末魔の声を上げ、動かなくなった。

男が、驚いたようにエメロードを見た。

「闇魔法……しかも、相当な腕前だな」

エメロードは肩をすくめた。

「少し、ね」

男は立ち上がり、外套の埃を払う。

「俺はレグナム。旅の剣士だ。この森を通りかかり、魔物に襲われた」

「私はエメロード。この領地の領主よ」

レグナムが、わずかに眉を上げた。

「領主……? こんな辺境に、君のような美しい女性が?」

エメロードはくすりと笑った。

「事情があってね。追放されて、ここに来たの」

レグナムは少し考え込み、静かに言った。

「追放……か。俺も、似たようなものだ」

二人はしばらく無言で立ち尽くした。

森の風が、二人の髪を揺らす。

レグナムが、ふと口を開いた。

「傷は治ったが、まだ体が重い。近くに、休めるところはないか?」

エメロードは頷いた。

「私の屋敷があるわ。村まで一緒に戻りましょう」

二人は並んで森を抜け、村へ向かった。

道中、レグナムがぽつりと呟いた。

「君の魔法……普通じゃないな。治癒も闇も、高位のものだ」

「気づいたのね」

「剣士として、魔力の流れはわかる。君は、相当な才能の持ち主だ」

エメロードは微笑んだ。

「ありがとう。でも、まだまだよ」

村に着くと、領民たちが驚いた顔で二人を迎えた。

「領主様! 無事でよかった!」

「その方は……?」

エメロードは簡単に説明した。

「レグナムさん。魔物を倒してくれて、怪我を負ったの。私が治したわ」

領民たちが、レグナムに感謝の言葉を浴びせる。

レグナムは少し照れくさそうに頭を掻いた。

屋敷に戻り、エメロードはレグナムに部屋を用意させた。

リアナが、温かい食事と湯浴みの準備をする。

食卓で、二人は向かい合って座った。

レグナムが、スープを一口飲んで言った。

「美味い……久しぶりに、まともな食事ができた」

「旅暮らしなのね」

「ああ。いろいろあって、国を離れて放浪している」

エメロードは静かに尋ねた。

「よかったら、少し休んでいって。魔物の脅威がまだ残っているし、あなたの剣があれば心強いわ」

レグナムは少し考え、頷いた。

「……お言葉に甘えよう。恩返しもしたい」

その夜、エメロードは屋根に上り、星を見上げていた。

レグナムの存在が、なぜか心をざわつかせる。

(美しい人だった……そして、強い)

(でも、どこか寂しげな瞳をしていた)

一方、レグナムは与えられた部屋で、窓から月を見ていた。

(エメロード……不思議な女性だ)

(追放されたというのに、あんなに強い魔法を)

(そして、あの瞳……復讐の炎を宿している)

二人はまだ知らない。

この出会いが、運命を変えるものになることを。

辺境の夜は静かだった。

しかし、魔物の気配は、さらに濃くなっていく。

レグナムの滞在が、領地に新たな風を吹き込む──そんな予感がした。
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