追放された悪役令嬢は最強魔法で復讐し、隣国王子に永遠に愛される

鷹 綾

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第10話 正体判明と、守るという誓い

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第10話 正体判明と、守るという誓い

ノルドフォールの村は、もはや荒廃の影を残していなかった。

エメロードの魔法とレグナムの剣、そして領民たちの努力が結実し、畑は黄金色の麦で埋まり、家々には新しい屋根が葺かれ、子供たちの笑い声が絶えない。

廃墟の召喚陣を破壊してから十日が経ち、魔物の脅威はほぼ消えていた。

その日、エメロードは屋敷の庭で召喚魔法の練習をしていた。

小さな魔法陣を描き、中級の守護獣を呼び出してみる。

現れたのは、黒い毛並みの巨大な狼──影狼(シャドウウルフ)。

狼はエメロードに忠誠を誓い、優しく鼻をすり寄せる。

「いい子ね。あなたはこれから、私の守りになるわ」

リアナが遠くから見守りながら、感嘆の声を上げた。

「お嬢様……本当に、どんどん強くなっています」

エメロードは微笑み、影狼を撫でながら答えた。

「まだまだよ。もっと大きなものを召喚できるようになりたいわ」

そのとき、庭の門が開き、レグナムが入ってきた。

手に、隣村から届いた手紙を持っている。

「エメロード、悪い知らせだ」

彼の表情が、いつもより硬い。

エメロードは影狼を一旦消し、レグナムに近づいた。

「どうしたの?」

レグナムは手紙を差し出した。

「隣の領地からだ。王都から監視の使者が回っているらしい。お前の領地が、急に豊かになったという噂が広がって」

エメロードの瞳が、鋭くなった。

「……もう、来たのね」

王都の目が、ようやく辺境に届き始めた。

セラとカーチスの耳にも、きっと入っているはずだ。

レグナムが、静かに続けた。

「使者は数日後にここに来るらしい。領地の状況を調査し、報告するつもりだ」

エメロードは少し考え込み、微笑んだ。

「いいわ。来るなら、歓迎してあげる」

しかし、レグナムは眉を寄せた。

「危険だ。もし王都が、お前を脅威と見なしたら……軍を遣わすかもしれない」

エメロードはレグナムの心配そうな顔を見て、胸が温かくなった。

「ありがとう、心配してくれて。でも、私はもう昔の私じゃない」

レグナムは一瞬黙り、深く息を吐いた。

「……エメロード。俺は、もう隠せない」

「隠す?」

レグナムはゆっくりと外套を脱ぎ、腰の剣を地面に置いた。

そして、静かに跪いた。

「俺の本名は、レグナム・フォン・ルクスフォード。隣国ルクスフォード王国の、第二王子だ」

エメロードの目が見開かれた。

「隣国の……王子?」

「ああ。だが、正統な王子ではない。母は側室で、俺は隠し子だ。王位継承権はないが、王族の血は引いている」

レグナムは俯いたまま、続けた。

「兄との王位争いに巻き込まれ、国を追われる形になった。変装して放浪し、この森を通りかかり……君と出会った」

エメロードは、驚きながらも静かに聞き続けた。

「だから、最初は正体を隠していた。だが、もう隠せない。君の力、君の領地──これを、王都が黙って見過ごすはずがない」

エメロードはゆっくりとレグナムの前まで歩み、跪いている彼の肩に手を置いた。

「顔を上げて、レグナム」

レグナムが顔を上げると、エメロードは優しく微笑んだ。

「ありがとう、正直に話してくれて。隠し子王子……それで、あなたの瞳にあの寂しさが宿っていたのね」

レグナムが、苦笑した。

「寂しい、か……まあ、そうかもしれない」

エメロードはさらに続けた。

「でも、私には関係ないわ。あなたはレグナム。私の領地を助け、側にいてくれた人。それだけで十分よ」

レグナムの紫の瞳が、揺れた。

「エメロード……」

突然、レグナムは立ち上がり、エメロードの手を取った。

強く、熱く。

「君の力、俺が守る」

その言葉は、宣言だった。

「王都が何をしようと、隣国から軍を遣わそうと──俺は君の側に立つ。君の才能、君の未来、すべてを俺が守る」

エメロードの胸が、激しく鳴った。

これまで、誰もこうして自分を守ると言ってくれなかった。

カーチスは捨て、父は見放し、兄すら遠くにいる。

しかし、今、この人が──本気で、自分を守ると言ってくれている。

「レグナム……」

エメロードの声が、わずかに震えた。

レグナムはさらに近づき、エメロードの瞳を真っ直ぐ見つめた。

「俺はもう、放浪者じゃない。ここが俺の居場所だ。君がいるこの場所が」

二人の距離が、ゆっくりと縮まる。

息が触れ合うほど近く。

しかし、そのとき──遠くから領民の叫び声が聞こえた。

「領主様! 森のほうから、煙が上がってます!」

二人ははっと顔を上げ、庭の外へ駆け出した。

村の外、森の端で──黒い煙が立ち上っている。

魔物の残党か、あるいは──別の何かが。

レグナムが剣を握り、エメロードが闇のマントを纏う。

「一緒に行きましょう」

「ああ。もちろん」

二人は並んで森へ向かった。

背中合わせで戦う準備をしながら。

溺愛のフラグが、完全に立った瞬間だった。

レグナムは心の中で誓った。

(この女性を、絶対に守る。どんな敵からも)

エメロードも、同じく思っていた。

(この人がいてくれるなら、私ももっと強くなれる)

王都の影が、ゆっくりと近づいてくる。

しかし、二人はもう一人ではない。

隠し子王子と最強の魔導師。

最強カップルの、物語が本格的に始まろうとしていた。

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