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第4話 封じられていた力が、目を覚ます
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第4話 封じられていた力が、目を覚ます
床に落ちたペンを、私はしばらく呆然と見つめていた。
――浮いた。
確かに、浮いたのだ。
「……落ち着きなさい、エレナ」
小さく自分に言い聞かせ、深呼吸をする。
鼓動は早い。けれど、不思議と恐怖はなかった。
(魔力……? 私が?)
これまで、何度も魔力測定を受けてきた。
幼少期からずっと、結果は同じ。
――魔法適性、なし。
それが理由で、私は「地味令嬢」と陰で囁かれ、
王太子妃としての価値も、低く見積もられてきた。
なのに、今。
胸の奥に、確かな“熱源”がある。
それは荒々しく暴れるでもなく、静かに、しかし確実に存在を主張していた。
「……試してみましょう」
私は、机の前に立ち、指先をそっと伸ばす。
ゲームの知識が、頭の中で自然と整理されていく。
――魔力は、力ではなく“流れ”。
――意志を通せば、応えてくる。
(だったわよね……)
前世で何度も聞いた設定を思い出しながら、意識を集中させる。
すると――。
空気が、わずかに震えた。
カーテンが、風もないのに揺れ、
燭台の炎がすっと伸びる。
「……っ!」
驚きと同時に、胸が高鳴る。
これは偶然じゃない。
確実に、私が“触れている”。
(でも……どうして今まで……?)
その疑問に答えるように、胸の奥で何かが軋む感覚がした。
――鍵が、外れる音。
突然、視界が反転する。
暗闇。
そして、無数の魔法陣。
絡み合い、幾重にも重なった、複雑な術式。
それらが、私の体を中心に張り巡らされているのが、なぜか分かった。
「……封印……?」
思わず、呟く。
ただ魔力がないのではない。
最初から――封じられていた。
しかも、これは単純な抑制ではない。
王国最高位の魔導師でも、容易には扱えないほどの高度な封印術。
(誰が……? いつ……?)
答えは、まだ見えない。
けれど、一つだけ確かなことがある。
「……この封印、ずっと弱っていた……?」
前世の記憶を取り戻したこと。
強い感情――恐怖と怒り、そして生きたいという願い。
それらが引き金となり、
封印は今、綻び始めている。
私は、静かに手を握りしめた。
怖くないと言えば、嘘になる。
この力が表に出れば、間違いなく目をつけられる。
でも――。
「……無力なまま、殺されるよりは……」
ずっと、選ばされる側だった。
耐えることしか、できなかった。
けれど、今は違う。
この力は、私のものだ。
誰かを傷つけるためじゃない。
――生き延びるために、使う。
私は、もう一度、意識を集中させた。
今度は、ほんのわずかだけ。
封印に触れ、撫でるように力を流す。
胸の奥で、応えるように“何か”が息をした。
「……大丈夫」
自分自身に向けて、そう呟く。
「急がない。焦らない。少しずつ……」
ゲームのシナリオは、まだ動いている。
私が知らない分岐も、きっとある。
だからこそ――。
(まずは、この力を理解する)
それが、処刑エンドを回避するための、
最初の一歩。
私は、静かにカーテンの外を見た。
夕闇に沈む王都。
そのどこかで、聖女は微笑み、王太子は満足げに未来を語っているのだろう。
――でも。
彼らの知らないところで、
“本来、表に出るはずのなかった力”が、確かに目を覚ましていた。
それは、まだ小さな火種。
けれど、やがて――すべてを焼き尽くすほどの光になる。
私は、そう確信していた。
床に落ちたペンを、私はしばらく呆然と見つめていた。
――浮いた。
確かに、浮いたのだ。
「……落ち着きなさい、エレナ」
小さく自分に言い聞かせ、深呼吸をする。
鼓動は早い。けれど、不思議と恐怖はなかった。
(魔力……? 私が?)
これまで、何度も魔力測定を受けてきた。
幼少期からずっと、結果は同じ。
――魔法適性、なし。
それが理由で、私は「地味令嬢」と陰で囁かれ、
王太子妃としての価値も、低く見積もられてきた。
なのに、今。
胸の奥に、確かな“熱源”がある。
それは荒々しく暴れるでもなく、静かに、しかし確実に存在を主張していた。
「……試してみましょう」
私は、机の前に立ち、指先をそっと伸ばす。
ゲームの知識が、頭の中で自然と整理されていく。
――魔力は、力ではなく“流れ”。
――意志を通せば、応えてくる。
(だったわよね……)
前世で何度も聞いた設定を思い出しながら、意識を集中させる。
すると――。
空気が、わずかに震えた。
カーテンが、風もないのに揺れ、
燭台の炎がすっと伸びる。
「……っ!」
驚きと同時に、胸が高鳴る。
これは偶然じゃない。
確実に、私が“触れている”。
(でも……どうして今まで……?)
その疑問に答えるように、胸の奥で何かが軋む感覚がした。
――鍵が、外れる音。
突然、視界が反転する。
暗闇。
そして、無数の魔法陣。
絡み合い、幾重にも重なった、複雑な術式。
それらが、私の体を中心に張り巡らされているのが、なぜか分かった。
「……封印……?」
思わず、呟く。
ただ魔力がないのではない。
最初から――封じられていた。
しかも、これは単純な抑制ではない。
王国最高位の魔導師でも、容易には扱えないほどの高度な封印術。
(誰が……? いつ……?)
答えは、まだ見えない。
けれど、一つだけ確かなことがある。
「……この封印、ずっと弱っていた……?」
前世の記憶を取り戻したこと。
強い感情――恐怖と怒り、そして生きたいという願い。
それらが引き金となり、
封印は今、綻び始めている。
私は、静かに手を握りしめた。
怖くないと言えば、嘘になる。
この力が表に出れば、間違いなく目をつけられる。
でも――。
「……無力なまま、殺されるよりは……」
ずっと、選ばされる側だった。
耐えることしか、できなかった。
けれど、今は違う。
この力は、私のものだ。
誰かを傷つけるためじゃない。
――生き延びるために、使う。
私は、もう一度、意識を集中させた。
今度は、ほんのわずかだけ。
封印に触れ、撫でるように力を流す。
胸の奥で、応えるように“何か”が息をした。
「……大丈夫」
自分自身に向けて、そう呟く。
「急がない。焦らない。少しずつ……」
ゲームのシナリオは、まだ動いている。
私が知らない分岐も、きっとある。
だからこそ――。
(まずは、この力を理解する)
それが、処刑エンドを回避するための、
最初の一歩。
私は、静かにカーテンの外を見た。
夕闇に沈む王都。
そのどこかで、聖女は微笑み、王太子は満足げに未来を語っているのだろう。
――でも。
彼らの知らないところで、
“本来、表に出るはずのなかった力”が、確かに目を覚ましていた。
それは、まだ小さな火種。
けれど、やがて――すべてを焼き尽くすほどの光になる。
私は、そう確信していた。
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