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第十八話 揺らぐ玉座
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第十八話 揺らぐ玉座
王宮の廊下はいつもと変わらず磨き上げられている。
だが、その空気はどこかざらついていた。
噂は、形を持ちはじめると早い。
「辺境が隣国と共同警備を始めたらしい」 「中央の指示ではないとか」
ひそやかな声が、柱の陰をすり抜けていく。
その日、王妃はルシアンを執務室へ呼び出した。
同席を命じられたのは、財務局長と外務官。
そしてフロレッタ。
「共同警備の件、承知しているか」
王妃の問いは、短い。
「報告は受けている」
ルシアンは腕を組む。
「辺境の判断だろう」
「中央の承認は」
「必要ない」
即答。
室内の空気が一瞬止まる。
王妃は視線を外さない。
「国家の軍事的判断に、承認が不要と?」
「過剰だと言っている。大袈裟だ」
ルシアンの声は揺らがない。
「戦は起きぬ」
「起きてからでは遅い」
王妃の声は低い。
「王太子は、最悪を想定する立場です」
沈黙。
フロレッタの指先が冷える。
王妃は次に、彼女を見る。
「あなたはどう思いますか」
突然の問い。
心臓が跳ねる。
「……共同警備は、抑止力になります」
慎重に言葉を選ぶ。
「中央の承認がないまま進むのは、体制の乱れを示す恐れがございます」
王妃は目を細める。
「続けなさい」
「承認を後追いで与える形で、秩序を保つべきかと」
室内にわずかな動き。
外務官が頷く。
王妃は静かに言う。
「及第」
その一言に、胸がわずかに軽くなる。
だがルシアンは眉をひそめる。
「承認など不要だと言っている」
「不要かどうかは、立場が決めます」
王妃の声は揺らがない。
「王太子が不要と思っても、国が不要とは限らない」
空気が冷える。
その場は解散となった。
廊下で、ルシアンがフロレッタを呼び止める。
「母上の言い分に同調するな」
「ですが……」
「私は間違っていない」
強い口調。
「辺境は大げさだ」
その断定に、胸がざわつく。
本当に?
一方、辺境。
共同警備の初日。
隣国の兵が到着する。
「挨拶は簡潔に」
ヴァレントが低く言う。
セラフィーナは前に出る。
「協力に感謝いたします」
対等な礼。
隣国の将が頷く。
「中央より迅速だな」
その一言に、周囲がわずかにざわつく。
セラフィーナは微笑む。
「現場は早いのです」
言葉は柔らかい。
だが事実は重い。
夕刻。
兵の巡回が始まる。
境界線に灯りが並ぶ。
静かな抑止。
ヴァレントが横に立つ。
「中央は承認を出すか」
「出すでしょう」
「なぜ」
「秩序を失えば、権威も失います」
彼は短く笑う。
「冷静だ」
「焦るのは、備えていない者です」
王宮。
夜の会議。
王妃は正式に承認を出した。
後追いの形。
秩序は保たれる。
だが一つ、事実が残る。
先に動いたのは、辺境。
王都ではない。
フロレッタは自室で灯りを落とす。
今日、初めて王妃に及第と言われた。
嬉しいはずなのに。
胸に残るのは、別の感情。
王子の自信と、王妃の現実。
どちらが玉座を支えるのか。
玉座は豪奢だ。
だが支柱が揺らげば、飾りは意味を持たない。
王宮の灯りはまだ強い。
けれど足元では、静かに地盤が動き始めている。
王宮の廊下はいつもと変わらず磨き上げられている。
だが、その空気はどこかざらついていた。
噂は、形を持ちはじめると早い。
「辺境が隣国と共同警備を始めたらしい」 「中央の指示ではないとか」
ひそやかな声が、柱の陰をすり抜けていく。
その日、王妃はルシアンを執務室へ呼び出した。
同席を命じられたのは、財務局長と外務官。
そしてフロレッタ。
「共同警備の件、承知しているか」
王妃の問いは、短い。
「報告は受けている」
ルシアンは腕を組む。
「辺境の判断だろう」
「中央の承認は」
「必要ない」
即答。
室内の空気が一瞬止まる。
王妃は視線を外さない。
「国家の軍事的判断に、承認が不要と?」
「過剰だと言っている。大袈裟だ」
ルシアンの声は揺らがない。
「戦は起きぬ」
「起きてからでは遅い」
王妃の声は低い。
「王太子は、最悪を想定する立場です」
沈黙。
フロレッタの指先が冷える。
王妃は次に、彼女を見る。
「あなたはどう思いますか」
突然の問い。
心臓が跳ねる。
「……共同警備は、抑止力になります」
慎重に言葉を選ぶ。
「中央の承認がないまま進むのは、体制の乱れを示す恐れがございます」
王妃は目を細める。
「続けなさい」
「承認を後追いで与える形で、秩序を保つべきかと」
室内にわずかな動き。
外務官が頷く。
王妃は静かに言う。
「及第」
その一言に、胸がわずかに軽くなる。
だがルシアンは眉をひそめる。
「承認など不要だと言っている」
「不要かどうかは、立場が決めます」
王妃の声は揺らがない。
「王太子が不要と思っても、国が不要とは限らない」
空気が冷える。
その場は解散となった。
廊下で、ルシアンがフロレッタを呼び止める。
「母上の言い分に同調するな」
「ですが……」
「私は間違っていない」
強い口調。
「辺境は大げさだ」
その断定に、胸がざわつく。
本当に?
一方、辺境。
共同警備の初日。
隣国の兵が到着する。
「挨拶は簡潔に」
ヴァレントが低く言う。
セラフィーナは前に出る。
「協力に感謝いたします」
対等な礼。
隣国の将が頷く。
「中央より迅速だな」
その一言に、周囲がわずかにざわつく。
セラフィーナは微笑む。
「現場は早いのです」
言葉は柔らかい。
だが事実は重い。
夕刻。
兵の巡回が始まる。
境界線に灯りが並ぶ。
静かな抑止。
ヴァレントが横に立つ。
「中央は承認を出すか」
「出すでしょう」
「なぜ」
「秩序を失えば、権威も失います」
彼は短く笑う。
「冷静だ」
「焦るのは、備えていない者です」
王宮。
夜の会議。
王妃は正式に承認を出した。
後追いの形。
秩序は保たれる。
だが一つ、事実が残る。
先に動いたのは、辺境。
王都ではない。
フロレッタは自室で灯りを落とす。
今日、初めて王妃に及第と言われた。
嬉しいはずなのに。
胸に残るのは、別の感情。
王子の自信と、王妃の現実。
どちらが玉座を支えるのか。
玉座は豪奢だ。
だが支柱が揺らげば、飾りは意味を持たない。
王宮の灯りはまだ強い。
けれど足元では、静かに地盤が動き始めている。
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