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第13話 王都の違和感
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第13話 王都の違和感
王都は、どこかおかしかった。
――正確に言えば、
アルトゥーラ・レグナードの周囲だけが、
取り残されているようだった。
「……最近、
商人たちの顔色がよくないな」
執務室で、アルトゥーラは苛立ちを隠さずに言った。
「はい……」
侍従が、慎重に言葉を選ぶ。
「取引の一部が、
隣国へ流れているようで……」
「隣国?」
「アンクレイブ公爵領です」
その名が出た瞬間、
アルトゥーラの眉が跳ね上がる。
「……また、そこか」
机に置かれた報告書を、
荒くめくる。
「通関迅速、物流安定、
価格変動が少ない……」
どれも、
本来なら王都が誇るべき要素だ。
「……なぜ、できている」
答えは、
もう分かっている。
だが、認めたくなかった。
---
同じ頃。
王宮の庭園では、
アウルス・セナートが花を眺めていた。
「殿下~」
甘えた声で近づく。
「最近、お忙しそうですね」
「……ああ」
生返事。
「無理なさらないでくださいね。
お仕事なんて、
殿下が決めればいいんですから」
その言葉に、
アルトゥーラは、思わず足を止めた。
「……決めれば、いい?」
「はい。
難しいことは、
よく分かりませんけど……」
悪気はない。
それが、なおさら厄介だった。
――以前なら。
(癒し、だったはずだ)
完璧なエミーラの隣で、
自分が“王子”でいられなかった反動。
だから、
“何も求めない少女”に、
安心していた。
だが、今は。
(……それでは、回らない)
現実が、
否応なく突きつけてくる。
「アウルス」
「はい?」
「……少しは、
国のことを学ぼうとは思わないのか?」
アウルスは、
一瞬きょとんとした後、
困ったように笑った。
「え~?
殿下がいるのに、
私が考える必要、あります?」
――決定的だった。
アルトゥーラは、
何も言えなくなった。
---
その夜。
執務室で、
彼は一人、酒杯を傾けていた。
「……完璧すぎる、か」
誰に言うでもなく、
呟く。
書類の山。
未決裁の案件。
不満を溜めた貴族たち。
以前は――
(彼女が、
全部、整えていた)
会議が荒れる前に。
問題が表に出る前に。
それを、
“当たり前”だと思っていた。
そして、切り捨てた。
「……馬鹿だな」
グラスを置き、
額に手を当てる。
「……本当に」
---
一方、アンクレイブ公爵領。
エミーラは、
新しい報告書を受け取っていた。
「……王都の商人が、
こちらへ移ってきていますね」
淡々とした声。
「こちらが、
選ばれているだけですわ」
ゼファーは、
隣で腕を組んでいた。
「……王都は、
混乱している」
「でしょうね」
エミーラは、
書類を閉じる。
「“誰かが何とかしてくれる”という前提は、
一番脆いのです」
ゼファーは、
静かに頷いた。
(……彼女は)
復讐を望んでいない。
ざまぁを狙ってもいない。
ただ、
“正しい場所で、正しく働いている”だけ。
それが、
何より残酷だった。
---
その夜。
王都では、
アルトゥーラが眠れずにいた。
脳裏に浮かぶのは、
静かに微笑む令嬢の姿。
(……戻ってくると思っていた)
婚約破棄すれば、
泣いて縋り、
後悔して――
そうなると、
どこかで思っていた。
だが。
(彼女は、
戻らなかった)
そして今。
誰よりも“選ばれている”。
王都に広がる違和感は、
やがて一つの結論へ収束していく。
――失ったのは、誰だったのか。
---
王都は、どこかおかしかった。
――正確に言えば、
アルトゥーラ・レグナードの周囲だけが、
取り残されているようだった。
「……最近、
商人たちの顔色がよくないな」
執務室で、アルトゥーラは苛立ちを隠さずに言った。
「はい……」
侍従が、慎重に言葉を選ぶ。
「取引の一部が、
隣国へ流れているようで……」
「隣国?」
「アンクレイブ公爵領です」
その名が出た瞬間、
アルトゥーラの眉が跳ね上がる。
「……また、そこか」
机に置かれた報告書を、
荒くめくる。
「通関迅速、物流安定、
価格変動が少ない……」
どれも、
本来なら王都が誇るべき要素だ。
「……なぜ、できている」
答えは、
もう分かっている。
だが、認めたくなかった。
---
同じ頃。
王宮の庭園では、
アウルス・セナートが花を眺めていた。
「殿下~」
甘えた声で近づく。
「最近、お忙しそうですね」
「……ああ」
生返事。
「無理なさらないでくださいね。
お仕事なんて、
殿下が決めればいいんですから」
その言葉に、
アルトゥーラは、思わず足を止めた。
「……決めれば、いい?」
「はい。
難しいことは、
よく分かりませんけど……」
悪気はない。
それが、なおさら厄介だった。
――以前なら。
(癒し、だったはずだ)
完璧なエミーラの隣で、
自分が“王子”でいられなかった反動。
だから、
“何も求めない少女”に、
安心していた。
だが、今は。
(……それでは、回らない)
現実が、
否応なく突きつけてくる。
「アウルス」
「はい?」
「……少しは、
国のことを学ぼうとは思わないのか?」
アウルスは、
一瞬きょとんとした後、
困ったように笑った。
「え~?
殿下がいるのに、
私が考える必要、あります?」
――決定的だった。
アルトゥーラは、
何も言えなくなった。
---
その夜。
執務室で、
彼は一人、酒杯を傾けていた。
「……完璧すぎる、か」
誰に言うでもなく、
呟く。
書類の山。
未決裁の案件。
不満を溜めた貴族たち。
以前は――
(彼女が、
全部、整えていた)
会議が荒れる前に。
問題が表に出る前に。
それを、
“当たり前”だと思っていた。
そして、切り捨てた。
「……馬鹿だな」
グラスを置き、
額に手を当てる。
「……本当に」
---
一方、アンクレイブ公爵領。
エミーラは、
新しい報告書を受け取っていた。
「……王都の商人が、
こちらへ移ってきていますね」
淡々とした声。
「こちらが、
選ばれているだけですわ」
ゼファーは、
隣で腕を組んでいた。
「……王都は、
混乱している」
「でしょうね」
エミーラは、
書類を閉じる。
「“誰かが何とかしてくれる”という前提は、
一番脆いのです」
ゼファーは、
静かに頷いた。
(……彼女は)
復讐を望んでいない。
ざまぁを狙ってもいない。
ただ、
“正しい場所で、正しく働いている”だけ。
それが、
何より残酷だった。
---
その夜。
王都では、
アルトゥーラが眠れずにいた。
脳裏に浮かぶのは、
静かに微笑む令嬢の姿。
(……戻ってくると思っていた)
婚約破棄すれば、
泣いて縋り、
後悔して――
そうなると、
どこかで思っていた。
だが。
(彼女は、
戻らなかった)
そして今。
誰よりも“選ばれている”。
王都に広がる違和感は、
やがて一つの結論へ収束していく。
――失ったのは、誰だったのか。
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