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第14話 再会の兆し
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第14話 再会の兆し
その知らせが届いたのは、
午後の執務がひと段落した頃だった。
「王都より、使者が参りました」
ハロルドの声に、
エミーラはペンを止めた。
「王都、ですか」
「はい。
名目は“交易調整の相談”ですが……」
ハロルドは一瞬、言葉を切る。
「実質的には、
“貴女を名指し”での要請かと」
空気が、静かに張りつめた。
エミーラは、
ゆっくりと背筋を伸ばす。
「……そう」
それ以上、感情は動かなかった。
執務室の扉が開き、
ゼファー・アンクレイブが入ってくる。
「聞いた」
短い一言。
「王都からの使者だな」
「ええ」
エミーラは、正直に答えた。
「私を通して、
話をしたいようです」
ゼファーは、
彼女を見下ろす位置で立ち止まった。
「どうする」
問いは、簡潔だった。
“命令”ではない。
“選択”を委ねている。
エミーラは、
一瞬だけ視線を伏せ――
そして、顔を上げた。
「会います」
ゼファーの眉が、わずかに動く。
「だが」
エミーラは、続けた。
「“戻るため”ではありません」
「当然だ」
即答。
「ここは、
君の居場所だ」
その言葉は、
もはや確認ではなかった。
---
翌日。
公爵邸の応接室に、
王都の使者が通された。
「エミーラ・ローゼンベルク様。
ご無沙汰しております」
丁重な態度。
だが、その裏に焦りが滲んでいる。
「王都では現在、
交易と行政の調整に
大きな混乱が生じておりまして……」
エミーラは、
静かに頷くだけ。
「そこで――」
使者は、言葉を選んだ。
「以前、
それらを見事にまとめていらした
貴女のお力を、
お借りできないかと……」
沈黙。
エミーラは、
しばらく使者を見つめていた。
その視線は、
責めるものでも、
嘲るものでもない。
ただ――
“事実を測る”目だった。
「それは、
王都の要請ですか?」
「は、はい」
「それとも――」
エミーラは、
静かに問いを重ねる。
「第一王子アルトゥーラ殿下、
個人のご意思ですか?」
使者の喉が、
ごくりと鳴った。
「……殿下の、ご意向も……」
――答えは、十分だった。
「お断りいたします」
きっぱりとした声。
使者が、目を見開く。
「エ、エミーラ様……
ご条件次第では……」
「条件の問題ではありません」
エミーラは、
微笑みすら浮かべなかった。
「私は、
“必要とされない場所”を
去りました」
静かな言葉が、
鋭く突き刺さる。
「今、
私を必要としているのは――」
彼女は、
背後に立つゼファーへ、
一瞬だけ視線を向けた。
「ここです」
使者は、
何も言えなくなった。
---
使者が去った後。
応接室には、
静寂が残った。
「……よかったのか」
ゼファーが、
低く問いかける。
「王都との関係に、
影響が出る」
「問題ありません」
エミーラは、
迷いなく答えた。
「私は、
“都合のいい時だけ呼ばれる存在”には、
戻りません」
ゼファーは、
その横顔を見つめ――
静かに頷いた。
「ならば」
彼は、
はっきりと言った。
「王都が、
こちらに頭を下げる日が来る」
それは、
威圧でも、挑発でもない。
ただの予測だった。
「君は、
ここでやるべきことをやればいい」
エミーラは、
少しだけ驚き、
そして微笑んだ。
「……心強いですわ」
その言葉に、
ゼファーは、ほんの一瞬だけ
視線を逸らした。
---
同じ頃。
王都の執務室で、
アルトゥーラ・レグナードは
報告を受けていた。
「……断られた?」
「は、はい……
はっきりと……」
アルトゥーラは、
椅子に深く腰を下ろす。
「……そうか」
それだけだった。
だが、胸の奥に広がるのは、
後悔でも、怒りでもない。
――恐怖。
(……本当に、
失ったのだ)
取り戻せると思っていたものが、
もう戻らないと、
はっきり突きつけられた恐怖だった。
再会の兆しは、
復縁ではなく、
決別として現れた。
---
その知らせが届いたのは、
午後の執務がひと段落した頃だった。
「王都より、使者が参りました」
ハロルドの声に、
エミーラはペンを止めた。
「王都、ですか」
「はい。
名目は“交易調整の相談”ですが……」
ハロルドは一瞬、言葉を切る。
「実質的には、
“貴女を名指し”での要請かと」
空気が、静かに張りつめた。
エミーラは、
ゆっくりと背筋を伸ばす。
「……そう」
それ以上、感情は動かなかった。
執務室の扉が開き、
ゼファー・アンクレイブが入ってくる。
「聞いた」
短い一言。
「王都からの使者だな」
「ええ」
エミーラは、正直に答えた。
「私を通して、
話をしたいようです」
ゼファーは、
彼女を見下ろす位置で立ち止まった。
「どうする」
問いは、簡潔だった。
“命令”ではない。
“選択”を委ねている。
エミーラは、
一瞬だけ視線を伏せ――
そして、顔を上げた。
「会います」
ゼファーの眉が、わずかに動く。
「だが」
エミーラは、続けた。
「“戻るため”ではありません」
「当然だ」
即答。
「ここは、
君の居場所だ」
その言葉は、
もはや確認ではなかった。
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翌日。
公爵邸の応接室に、
王都の使者が通された。
「エミーラ・ローゼンベルク様。
ご無沙汰しております」
丁重な態度。
だが、その裏に焦りが滲んでいる。
「王都では現在、
交易と行政の調整に
大きな混乱が生じておりまして……」
エミーラは、
静かに頷くだけ。
「そこで――」
使者は、言葉を選んだ。
「以前、
それらを見事にまとめていらした
貴女のお力を、
お借りできないかと……」
沈黙。
エミーラは、
しばらく使者を見つめていた。
その視線は、
責めるものでも、
嘲るものでもない。
ただ――
“事実を測る”目だった。
「それは、
王都の要請ですか?」
「は、はい」
「それとも――」
エミーラは、
静かに問いを重ねる。
「第一王子アルトゥーラ殿下、
個人のご意思ですか?」
使者の喉が、
ごくりと鳴った。
「……殿下の、ご意向も……」
――答えは、十分だった。
「お断りいたします」
きっぱりとした声。
使者が、目を見開く。
「エ、エミーラ様……
ご条件次第では……」
「条件の問題ではありません」
エミーラは、
微笑みすら浮かべなかった。
「私は、
“必要とされない場所”を
去りました」
静かな言葉が、
鋭く突き刺さる。
「今、
私を必要としているのは――」
彼女は、
背後に立つゼファーへ、
一瞬だけ視線を向けた。
「ここです」
使者は、
何も言えなくなった。
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使者が去った後。
応接室には、
静寂が残った。
「……よかったのか」
ゼファーが、
低く問いかける。
「王都との関係に、
影響が出る」
「問題ありません」
エミーラは、
迷いなく答えた。
「私は、
“都合のいい時だけ呼ばれる存在”には、
戻りません」
ゼファーは、
その横顔を見つめ――
静かに頷いた。
「ならば」
彼は、
はっきりと言った。
「王都が、
こちらに頭を下げる日が来る」
それは、
威圧でも、挑発でもない。
ただの予測だった。
「君は、
ここでやるべきことをやればいい」
エミーラは、
少しだけ驚き、
そして微笑んだ。
「……心強いですわ」
その言葉に、
ゼファーは、ほんの一瞬だけ
視線を逸らした。
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同じ頃。
王都の執務室で、
アルトゥーラ・レグナードは
報告を受けていた。
「……断られた?」
「は、はい……
はっきりと……」
アルトゥーラは、
椅子に深く腰を下ろす。
「……そうか」
それだけだった。
だが、胸の奥に広がるのは、
後悔でも、怒りでもない。
――恐怖。
(……本当に、
失ったのだ)
取り戻せると思っていたものが、
もう戻らないと、
はっきり突きつけられた恐怖だった。
再会の兆しは、
復縁ではなく、
決別として現れた。
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