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第二十三話 王妃の決断
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第二十三話 王妃の決断
新王太子の立太子からひと月が過ぎた頃、王宮から正式な招待が届いた。
差出人は、王妃。
公的な儀式ではなく、私的な面会を望むとある。
私は一瞬だけ思案し、応じることにした。
王宮の庭園は秋の気配を帯びていた。王妃は東屋で待っていた。以前よりも、表情が柔らかい。
「あなたのおかげで、私は守られました」
「私は契約を確認しただけです」
王妃は小さく笑う。
「それが一番難しいのよ」
彼女は静かに続ける。
「私は離縁を望んでいます」
その言葉は、庭の空気を止めた。
「王太子殿下とは」
「ええ。彼は公務を退く。私は王妃のまま、だが妻ではない」
政治的離縁。
王家では前例が少ない。
「可能ですか」
「教会法上、未完成を理由に」
私は王妃の目を見る。
「記録は封印されています」
「封印は事実を消しません」
彼女は強い。
責任を押しつけられなかったことで、初めて選択できる立場に立った。
「王妃であり続けることは」
「政治のために必要」
彼女は迷わない。
「だが妻としての契約は終わらせたい」
私は静かに答える。
「婚姻無効ではなく、特別離縁」
「それが最善かしら」
「王家の体面を守りつつ、あなたの自由を確保できます」
王妃は深く息を吐いた。
「自由」
その言葉を、彼女はゆっくりと噛みしめる。
数週間後、王宮から発表が出た。
王妃は宗教的誓約を強める形で、夫婦生活から退く。
王太子は名誉職として残るが、婚姻は実質的に解消。
表向きは信仰への献身。
実際は契約の終了。
王都は騒がなかった。
王妃の潔白はすでに確定している。
誰も彼女を責めない。
ヴァルケン家では、レオナルトが静かに呟いた。
「彼女もまた、白を選んだか」
王妃は後に修道院を訪れた。
公式ではない。
だが彼女は塔の上に立ち、王都を見下ろした。
「あなたは、最初からこうなると知っていたの」
「いいえ」
私は正直に答える。
「ただ、未完成を放置しなかっただけです」
王妃は笑う。
「それが一番難しいのよ」
修道院に戻り、私は帳簿を開く。
王家との契約は続く。
だが婚姻契約は終わった。
白い誓約は未完成のまま終わることもある。
だが終わりは敗北ではない。
選択だ。
夜、鐘が鳴る。
王宮の灯りは穏やかだ。
王妃は自由を得た。
王家は均衡を保った。
そして修道院は、再び一つの契約を静かに見届けた。
白は逃避ではない。
白は再定義だ。
それを知った者は、もう後戻りはしない。
新王太子の立太子からひと月が過ぎた頃、王宮から正式な招待が届いた。
差出人は、王妃。
公的な儀式ではなく、私的な面会を望むとある。
私は一瞬だけ思案し、応じることにした。
王宮の庭園は秋の気配を帯びていた。王妃は東屋で待っていた。以前よりも、表情が柔らかい。
「あなたのおかげで、私は守られました」
「私は契約を確認しただけです」
王妃は小さく笑う。
「それが一番難しいのよ」
彼女は静かに続ける。
「私は離縁を望んでいます」
その言葉は、庭の空気を止めた。
「王太子殿下とは」
「ええ。彼は公務を退く。私は王妃のまま、だが妻ではない」
政治的離縁。
王家では前例が少ない。
「可能ですか」
「教会法上、未完成を理由に」
私は王妃の目を見る。
「記録は封印されています」
「封印は事実を消しません」
彼女は強い。
責任を押しつけられなかったことで、初めて選択できる立場に立った。
「王妃であり続けることは」
「政治のために必要」
彼女は迷わない。
「だが妻としての契約は終わらせたい」
私は静かに答える。
「婚姻無効ではなく、特別離縁」
「それが最善かしら」
「王家の体面を守りつつ、あなたの自由を確保できます」
王妃は深く息を吐いた。
「自由」
その言葉を、彼女はゆっくりと噛みしめる。
数週間後、王宮から発表が出た。
王妃は宗教的誓約を強める形で、夫婦生活から退く。
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表向きは信仰への献身。
実際は契約の終了。
王都は騒がなかった。
王妃の潔白はすでに確定している。
誰も彼女を責めない。
ヴァルケン家では、レオナルトが静かに呟いた。
「彼女もまた、白を選んだか」
王妃は後に修道院を訪れた。
公式ではない。
だが彼女は塔の上に立ち、王都を見下ろした。
「あなたは、最初からこうなると知っていたの」
「いいえ」
私は正直に答える。
「ただ、未完成を放置しなかっただけです」
王妃は笑う。
「それが一番難しいのよ」
修道院に戻り、私は帳簿を開く。
王家との契約は続く。
だが婚姻契約は終わった。
白い誓約は未完成のまま終わることもある。
だが終わりは敗北ではない。
選択だ。
夜、鐘が鳴る。
王宮の灯りは穏やかだ。
王妃は自由を得た。
王家は均衡を保った。
そして修道院は、再び一つの契約を静かに見届けた。
白は逃避ではない。
白は再定義だ。
それを知った者は、もう後戻りはしない。
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