白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします

鷹 綾

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第三十六話 白の試練

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第三十六話 白の試練

 冬が訪れる前の冷たい雨が、修道院の石畳を濡らしていた。

 その日、王都で疫病の噂が立った。

 港湾地区から始まった発熱と咳。

 最初は軽症だった。

 だが数日で患者は倍増する。

 王宮は慌ただしく動いた。

 医師団が派遣され、港は一部封鎖。

 商人たちは不安を隠せない。

 経済が止まる。

 修道院にも患者が運ばれてきた。

 私たちは門を閉ざさない。

 だが無秩序も許さない。

 薬草庫を開放し、簡易診療所を設置。

 教育制度で育った女性医師たちが前線に立つ。

 白い衣は祈りの象徴だが、今は医療の現場だ。

 王妃から書簡が届く。

「支援を求む」

 私は即答する。

「全面協力いたします」

 王宮と修道院は合同対策本部を設置。

 情報共有。

 隔離区域の設定。

 物資の配給。

 商業ギルドも動いた。

 共同基金から緊急資金が拠出される。

 かつて対立した者たちが、同じ机に座る。

 白は独立している。

 だが孤立してはいない。

 数週間の緊張。

 感染は拡大するが、制御不能ではない。

 医師の一人が言う。

「早期対応が功を奏しています」

 数字が示す。

 死亡率は低い。

 港は段階的に再開。

 王は民衆に語りかける。

「恐れるな。対策は講じている」

 言葉は力を持つ。

 一方、ヴァルケンは現地監察として港に立っていた。

 防疫線の確認。

 物資の分配。

 彼は黙々と働く。

 かつての傲慢はない。

 修道院の診療所を訪れた時、彼は私と目を合わせた。

「感謝する」

 短い言葉。

「国のためです」

 私は答える。

 白い結婚は終わった。

 だが白い誓約は、今も続く。

 夜、雨は止んだ。

 鐘が鳴る。

 疫病は完全に消えてはいない。

 だが制御されている。

 危機は試練だ。

 均衡は試される。

 白は揺れた。

 だが崩れなかった。

 王権、王妃、修道院、商人。

 それぞれが役割を果たした。

 冬の空気が澄む。

 私は祈祷室に立つ。

 白は逃避ではない。

 危機の時こそ、立ち続ける色だ。
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