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第18話 保護
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第18話 保護
王都の夜は静かだった。
昼間は人で溢れる通りも、今は灯りがまばらに揺れるだけ。
その裏路地を、二人の女性が歩いていた。
リナと――
アウレリア。
リナはまだ息が乱れていた。
「はぁ……」
足も震えている。
ジオニック公爵家の屋敷から逃げて、どれくらい走ったのか。
恐怖で時間の感覚も曖昧だった。
アウレリアは振り返る。
「大丈夫ですか?」
落ち着いた声だった。
リナは頷く。
「……はい」
だが声は弱かった。
アウレリアは少し考え、言う。
「もう少し歩けば安全です」
「追っ手は来ていません」
リナは恐る恐る聞いた。
「どうして……」
「助けてくれるんですか」
アウレリアは歩きながら答える。
「偶然です」
「あなたが逃げるところを見ただけ」
リナは少し戸惑った。
「……それだけ?」
アウレリアは小さく笑う。
「それだけです」
しばらく沈黙が続く。
やがて二人は、大通りから離れた静かな住宅街へ入った。
古い石造りの家が並ぶ場所。
その一角で、アウレリアは立ち止まる。
「ここです」
小さな屋敷だった。
貴族の大邸宅ではない。
だが整った建物。
門を開け、庭を通る。
アウレリアは扉を開いた。
「どうぞ」
リナは少し躊躇した。
だが、後ろには戻れない。
彼女は中へ入る。
暖かい空気が広がった。
廊下にはランプの灯り。
静かな家だった。
奥から女性が出てくる。
年配の女性。
「お嬢様?」
アウレリアは言う。
「夜分すみません」
「客人です」
女性はリナを見る。
驚いた様子だったが、すぐに頷いた。
「すぐに部屋を用意します」
リナは慌てた。
「いえ、そんな」
アウレリアは言う。
「今夜だけです」
「休んでください」
リナの目に涙が浮かぶ。
「……ありがとうございます」
アウレリアは首を振った。
「礼はまだ早い」
「あなたの話を聞いてからです」
リナは驚いた。
アウレリアは椅子に座る。
そして言った。
「なぜ逃げたのですか」
その声は穏やかだった。
だが――
鋭かった。
リナは少し黙った。
そしてゆっくり言う。
「……怖かったんです」
アウレリアは何も言わない。
リナは続けた。
「最初は」
「優しい人だと思いました」
「真実の愛だって言ってくれて」
「身分なんて関係ないって」
声が震える。
「でも」
「屋敷に入ってから」
リナは俯いた。
「外に出られない」
「手紙も読まれる」
「使用人に見張られる」
アウレリアの目が細くなる。
リナは言った。
「それなのに」
「守るためだって」
小さな沈黙。
やがてアウレリアが言った。
「なるほど」
その声は静かだった。
リナは恐る恐る聞く。
「……やっぱり」
「私が悪いんでしょうか」
アウレリアは首を振る。
「いいえ」
そしてはっきり言った。
「あなたは間違っていません」
リナは目を見開く。
アウレリアは続ける。
「人は」
「檻に入れられるために生きているわけではない」
その言葉は、とても静かだった。
だが強かった。
リナの涙がこぼれる。
そのとき――
遠くで馬の音がした。
リナの顔が青くなる。
「……追っ手?」
アウレリアは窓の外を見る。
そして小さく言った。
「いいえ」
だが次の言葉は重かった。
「追っ手ではなく」
「本人でしょう」
リナの心臓が跳ねた。
その瞬間。
屋敷の門が激しく開く音がした。
そして――
怒鳴り声。
「リナ!」
聞き覚えのある声。
アドリアン。
リナの体が凍りつく。
アウレリアは静かに立ち上がった。
そして言った。
「……思ったより」
「早かったですね」
王都の夜は静かだった。
昼間は人で溢れる通りも、今は灯りがまばらに揺れるだけ。
その裏路地を、二人の女性が歩いていた。
リナと――
アウレリア。
リナはまだ息が乱れていた。
「はぁ……」
足も震えている。
ジオニック公爵家の屋敷から逃げて、どれくらい走ったのか。
恐怖で時間の感覚も曖昧だった。
アウレリアは振り返る。
「大丈夫ですか?」
落ち着いた声だった。
リナは頷く。
「……はい」
だが声は弱かった。
アウレリアは少し考え、言う。
「もう少し歩けば安全です」
「追っ手は来ていません」
リナは恐る恐る聞いた。
「どうして……」
「助けてくれるんですか」
アウレリアは歩きながら答える。
「偶然です」
「あなたが逃げるところを見ただけ」
リナは少し戸惑った。
「……それだけ?」
アウレリアは小さく笑う。
「それだけです」
しばらく沈黙が続く。
やがて二人は、大通りから離れた静かな住宅街へ入った。
古い石造りの家が並ぶ場所。
その一角で、アウレリアは立ち止まる。
「ここです」
小さな屋敷だった。
貴族の大邸宅ではない。
だが整った建物。
門を開け、庭を通る。
アウレリアは扉を開いた。
「どうぞ」
リナは少し躊躇した。
だが、後ろには戻れない。
彼女は中へ入る。
暖かい空気が広がった。
廊下にはランプの灯り。
静かな家だった。
奥から女性が出てくる。
年配の女性。
「お嬢様?」
アウレリアは言う。
「夜分すみません」
「客人です」
女性はリナを見る。
驚いた様子だったが、すぐに頷いた。
「すぐに部屋を用意します」
リナは慌てた。
「いえ、そんな」
アウレリアは言う。
「今夜だけです」
「休んでください」
リナの目に涙が浮かぶ。
「……ありがとうございます」
アウレリアは首を振った。
「礼はまだ早い」
「あなたの話を聞いてからです」
リナは驚いた。
アウレリアは椅子に座る。
そして言った。
「なぜ逃げたのですか」
その声は穏やかだった。
だが――
鋭かった。
リナは少し黙った。
そしてゆっくり言う。
「……怖かったんです」
アウレリアは何も言わない。
リナは続けた。
「最初は」
「優しい人だと思いました」
「真実の愛だって言ってくれて」
「身分なんて関係ないって」
声が震える。
「でも」
「屋敷に入ってから」
リナは俯いた。
「外に出られない」
「手紙も読まれる」
「使用人に見張られる」
アウレリアの目が細くなる。
リナは言った。
「それなのに」
「守るためだって」
小さな沈黙。
やがてアウレリアが言った。
「なるほど」
その声は静かだった。
リナは恐る恐る聞く。
「……やっぱり」
「私が悪いんでしょうか」
アウレリアは首を振る。
「いいえ」
そしてはっきり言った。
「あなたは間違っていません」
リナは目を見開く。
アウレリアは続ける。
「人は」
「檻に入れられるために生きているわけではない」
その言葉は、とても静かだった。
だが強かった。
リナの涙がこぼれる。
そのとき――
遠くで馬の音がした。
リナの顔が青くなる。
「……追っ手?」
アウレリアは窓の外を見る。
そして小さく言った。
「いいえ」
だが次の言葉は重かった。
「追っ手ではなく」
「本人でしょう」
リナの心臓が跳ねた。
その瞬間。
屋敷の門が激しく開く音がした。
そして――
怒鳴り声。
「リナ!」
聞き覚えのある声。
アドリアン。
リナの体が凍りつく。
アウレリアは静かに立ち上がった。
そして言った。
「……思ったより」
「早かったですね」
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