『平民を人間扱いしない公爵令息、あなたも平民です! ~系譜検察官の目は欺けません~

鷹 綾

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第24話 一般閲覧禁止資料

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第24話 一般閲覧禁止資料

王宮図書室の奥には、さらにもう一つ扉がある。

普通の閲覧者はそこまでだ。

だが、その扉の向こうには――
王国のより古い記録が保管されている。

アウレリアは書架の間を静かに歩いていた。

先ほど調べた貴族名鑑の内容が、頭の中で整理されていく。

三十年前。

それ以前の記録には、ジオニックの名前は存在しない。

「……偶然とは思えませんね」

小さく呟く。

だが、まだ断定はできない。

アウレリアは司書の机の前に戻った。

「すみません」

司書は顔を上げる。

「何だ」

「奥の資料を確認したいのですが」

司書は眉をひそめた。

「奥?」

「ええ」

アウレリアは落ち着いた声で続ける。

「土地台帳と紋章登録の原本を」

司書は腕を組んだ。

「一般閲覧は許可されていない」

その通りだった。

王宮図書室には、誰でも見られる資料と
閲覧許可が必要な資料がある。

特に貴族の土地記録や古い紋章登録は、王国の重要文書だった。

アウレリアは静かに言った。

「承知しています」

そして小さな封書を机に置いた。

王宮の紋章が押された封書だった。

司書はそれを見て、目を細める。

封を開き、中の書状を読む。

しばらくして、小さく息を吐いた。

「……なるほど」

書状を閉じる。

「ヴァレリス家の依頼か」

アウレリアは軽く頷いた。

「はい」

司書は苦笑した。

「最初からそう言えばいいものを」

そして立ち上がる。

「ついて来い」

二人は図書室の奥へ向かった。

重い木の扉。

司書が鍵を取り出す。

カチャリ、と音がした。

扉が開く。

その先には、薄暗い書庫が広がっていた。

古い棚が並び、箱や巻物が整然と置かれている。

「ここは王宮の保管庫だ」

司書は言う。

「古い土地台帳、紋章登録、爵位認定の記録がある」

アウレリアは静かに棚を見渡した。

「爵位認定の記録……」

司書は頷く。

「新しい貴族が誕生したとき、必ず記録される」

アウレリアの目が細くなる。

「そうですか」

司書は棚を指差した。

「公爵家の記録はあちらだ」

「ありがとうございます」

アウレリアは棚へ向かった。

箱を一つ取り出す。

そこには古い羊皮紙が束ねられていた。

王国が認めた爵位の記録。

ページをめくる。

侯爵家。
伯爵家。
子爵家。

そして――

公爵家。

アウレリアはゆっくりと読み進める。

ヴァルデン公爵家。
ルミナール公爵家。
フェルドラン公爵家。

そして――

ジオニック。

彼女の指が止まる。

「……」

羊皮紙には、確かに記録があった。

だが、その内容を読んだ瞬間。

アウレリアの表情が、わずかに変わった。

記録は三十年前。

それ以前の記述はない。

そして記録の端には、小さな追記があった。

爵位認定。

王命による。

アウレリアはしばらくその文書を見つめていた。

普通、公爵家は長い歴史を持つ。

王国創設以来、代々続く家がほとんどだ。

だがジオニック家は違う。

三十年前。

突然、公爵家として認められている。

アウレリアは静かに文書を閉じた。

「……なるほど」

司書が近づいてくる。

「何か見つかったか」

アウレリアは答えた。

「ええ」

そして言う。

「ジオニック公爵家は」

「三十年前に爵位を得ています」

司書は頷いた。

「そうだ」

「当時、王命で認められた」

アウレリアは少しだけ考える。

「それ以前の家系は?」

司書は肩をすくめた。

「知らん」

「この文書が最初だ」

アウレリアは再び羊皮紙を見た。

三十年前。

王命による爵位認定。

だが――

その前の記録が、どこにも無い。

普通の貴族なら、必ず残っているはずの記録が。

アウレリアはゆっくりと息を吐いた。

「不自然ですね」

司書は首を傾げる。

「そうか?」

「王が新しい貴族を作ることは珍しくない」

確かにそうだった。

戦功。

功績。

王の恩賞。

そうして新しい貴族が生まれることはある。

だが――

アウレリアは小さく呟く。

「公爵家でなければ」

司書が眉を上げる。

「何?」

アウレリアはそれ以上何も言わなかった。

ただ、もう一度文書を見つめる。

ジオニック公爵家。

三十年前。

王命による爵位認定。

だが、その家の過去は――

どこにも書かれていなかった。

王宮の書庫は、静まり返っている。

アウレリアはゆっくり文書を閉じた。

そして思う。

これはまだ、始まりに過ぎない。

ジオニック公爵家の秘密は――
もっと深い場所に隠されている。
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