真実の愛のお相手は弟の妻でした ―年上悪役令嬢は二十九歳―』

鷹 綾

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第十五話 年齢詐称結婚

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第十五話 年齢詐称結婚

アルヴェイン公爵邸の書斎。

机の上には、すでにいくつもの書類が整然と並べられていた。

結婚証明書。
教会の婚姻記録。
貴族戸籍。

そして――

社交界名簿。

フロレンティアは静かにその一冊を閉じた。

「確認できました」

執事レオナードが言う。

「すべて一致しております」

フロレンティアは紅茶を一口飲んだ。

「そう」

その声は穏やかだった。

まるで、天気の話でもしているかのように。

だが机の上の書類は、かなり深刻な内容を示していた。

レオナードが続ける。

「結婚時の年齢」

フロレンティアは書類を一枚持ち上げる。

そこにははっきり書かれていた。

ヴィオレッタ・オデット
年齢 十九歳

フロレンティアはその数字を見つめた。

「十九歳」

そして、もう一枚の書類を手に取る。

それは貴族戸籍だった。

生年

フロレンティアは軽く計算する。

そして静かに言った。

「結婚当時」

「二十八歳」

レオナードが頷く。

「九歳」

フロレンティアは微笑んだ。

「ずいぶん若返りましたね」

レオナードは慎重に言う。

「年齢詐称」

フロレンティアは静かに頷いた。

「しかも」

彼女は書類を机に並べた。

社交界名簿。

婚姻証明。

戸籍。

「計画的」

レオナードは息を吐く。

「伯爵家が」

フロレンティアは言う。

「当然でしょう」

彼女は椅子にもたれた。

「二十八歳の令嬢」

「しかも借金だらけの伯爵家」

レオナードが続ける。

「良い縁談は難しい」

フロレンティアは微笑む。

「でも」

彼女は書類を指で叩いた。

「十九歳なら」

レオナードが言う。

「若い花嫁」

フロレンティアは頷く。

「問題なし」

レオナードは少し迷ってから言う。

「つまり」

フロレンティアは答えた。

「弟は騙された」

書斎の空気が静かに重くなる。

フロレンティアは窓の外を見る。

庭の噴水の水音が聞こえる。

穏やかな午後だった。

だが彼女の言葉は冷静だった。

「ダリオンは」

「十七歳」

レオナードが言う。

「まだ成人前でした」

フロレンティアは小さく笑う。

「優しい子です」

「頼まれたら断れない」

レオナードは黙った。

フロレンティアは続ける。

「伯爵家は」

「年齢を偽り」

「弟と結婚した」

彼女は紅茶を置いた。

「そして今」

レオナードが静かに言う。

「王太子妃」

フロレンティアは微笑む。

「ええ」

彼女は書類を指で叩いた。

ヴィオレッタ・オデット
ダリオン・アルヴェイン

「人妻」

レオナードが頷く。

フロレンティアはゆっくり言った。

「しかも」

「年齢詐称」

レオナードが言う。

「かなり悪質です」

フロレンティアは肩をすくめた。

「でも」

彼女は微笑む。

「まだ何も起きていません」

レオナードが尋ねる。

「公表されますか」

フロレンティアは首を横に振る。

「いいえ」

そして静かに言った。

「まだ早い」

レオナードは頷く。

フロレンティアは窓の外を見ながら続けた。

「王太子は」

「真実の愛だと言っていましたね」

レオナードが答える。

「はい」

フロレンティアは小さく笑う。

「素敵ですね」

そして静かに続けた。

「人妻で」

「二十九歳」

彼女は微笑んだ。

「それでも」

「真実の愛」

レオナードは何も言わない。

フロレンティアは最後に書類を閉じた。

「年齢詐称」

彼女は静かに呟く。

そして。

ゆっくり微笑んだ。

「これは」

「とても面白い舞台になりそうですわね」
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