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第二十七話 王妃の座を巡る囁き
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第二十七話 王妃の座を巡る囁き
南方の港町の騒動が鎮まってから、城内の空気がわずかに変わりました。
露骨な敵意はない。
けれど、視線の質が違う。
「お嬢様、王族の縁戚の一部が……」
クララが言葉を選ぶ。
「“婚約は早計ではないか”と」
あら。
今度はそこですのね。
橋は機能している。
基金は安定。
王国も揺れていない。
ならば次は――
王妃の座そのもの。
王族縁戚のひとりが、晩餐の席で微笑みながら言いました。
「交易は結構。だが王妃は血筋も重んじられる」
私は杯を静かに置く。
「血筋は、公爵家にございます」
「しかしヴァルディアの血ではない」
当然の指摘。
「だからこそ橋になれます」
その一言で、場が止まる。
「内に偏れば、外を失います」
均衡。
「私はヴァルディアを侵す者ではございません」
静かに、しかし明確に。
「むしろ、ヴァルディアを広げる者でございます」
陛下は、何も言わず、ただ見ている。
翌日。
教育係が私に告げました。
「あなたは、いま試されている」
「存じております」
「王妃は、国の母」
「ええ」
「母は、血で選ばれる場合もある」
私は少しだけ微笑む。
「ならば、信頼で選ばれます」
その夜。
陛下が執務室で言いました。
「あなたの王妃就任を延期すべきだという声がある」
「承知しております」
「不安か」
私は一瞬、沈黙。
「わずかに」
正直に答える。
陛下は静かに頷いた。
「あなたは、この国をどう見る」
「合理で動く国」
「感情は」
「秩序の後に来るもの」
陛下は椅子から立ち、窓辺へ歩く。
「私は、あなたを選んだ」
その声は低く、重い。
「橋としてか」
私は問い返す。
「違う」
振り返る。
「王妃としてだ」
沈黙。
「だが、国が拒むなら」
私はゆっくりと言った。
「国を説きます」
「説けなければ」
「待ちます」
焦らぬ。
橋は急がない。
数日後。
王城で公開討議が開かれました。
血筋派の主張。
交易派の支持。
慎重派の沈黙。
私は、壇上に立ちました。
「私は、この国の血を引いてはおりません」
ざわめき。
「けれど、この国の未来を引き受ける覚悟はございます」
視線が集まる。
「橋は、外と内を繋ぐ」
「ヴァルディアが孤立せぬために」
「私は必要でございます」
言葉は、静かに落ちた。
数日後。
王妃就任の正式承認が下りました。
延期はなし。
夜。
私はひとり、灯りを落とす。
ロマンスは小説だけで充分。
だが。
王妃の座は、恋では得られぬ。
均衡と覚悟で、掴むもの。
エーヴェルハルト殿下は、王位を守る者。
アルノルト陛下は、国を支える者。
私は。
橋であり、そして――
この国の未来を背負う者。
風はまだ吹く。
だが。
橋は、いまや柱へと変わろうとしているのです。
南方の港町の騒動が鎮まってから、城内の空気がわずかに変わりました。
露骨な敵意はない。
けれど、視線の質が違う。
「お嬢様、王族の縁戚の一部が……」
クララが言葉を選ぶ。
「“婚約は早計ではないか”と」
あら。
今度はそこですのね。
橋は機能している。
基金は安定。
王国も揺れていない。
ならば次は――
王妃の座そのもの。
王族縁戚のひとりが、晩餐の席で微笑みながら言いました。
「交易は結構。だが王妃は血筋も重んじられる」
私は杯を静かに置く。
「血筋は、公爵家にございます」
「しかしヴァルディアの血ではない」
当然の指摘。
「だからこそ橋になれます」
その一言で、場が止まる。
「内に偏れば、外を失います」
均衡。
「私はヴァルディアを侵す者ではございません」
静かに、しかし明確に。
「むしろ、ヴァルディアを広げる者でございます」
陛下は、何も言わず、ただ見ている。
翌日。
教育係が私に告げました。
「あなたは、いま試されている」
「存じております」
「王妃は、国の母」
「ええ」
「母は、血で選ばれる場合もある」
私は少しだけ微笑む。
「ならば、信頼で選ばれます」
その夜。
陛下が執務室で言いました。
「あなたの王妃就任を延期すべきだという声がある」
「承知しております」
「不安か」
私は一瞬、沈黙。
「わずかに」
正直に答える。
陛下は静かに頷いた。
「あなたは、この国をどう見る」
「合理で動く国」
「感情は」
「秩序の後に来るもの」
陛下は椅子から立ち、窓辺へ歩く。
「私は、あなたを選んだ」
その声は低く、重い。
「橋としてか」
私は問い返す。
「違う」
振り返る。
「王妃としてだ」
沈黙。
「だが、国が拒むなら」
私はゆっくりと言った。
「国を説きます」
「説けなければ」
「待ちます」
焦らぬ。
橋は急がない。
数日後。
王城で公開討議が開かれました。
血筋派の主張。
交易派の支持。
慎重派の沈黙。
私は、壇上に立ちました。
「私は、この国の血を引いてはおりません」
ざわめき。
「けれど、この国の未来を引き受ける覚悟はございます」
視線が集まる。
「橋は、外と内を繋ぐ」
「ヴァルディアが孤立せぬために」
「私は必要でございます」
言葉は、静かに落ちた。
数日後。
王妃就任の正式承認が下りました。
延期はなし。
夜。
私はひとり、灯りを落とす。
ロマンスは小説だけで充分。
だが。
王妃の座は、恋では得られぬ。
均衡と覚悟で、掴むもの。
エーヴェルハルト殿下は、王位を守る者。
アルノルト陛下は、国を支える者。
私は。
橋であり、そして――
この国の未来を背負う者。
風はまだ吹く。
だが。
橋は、いまや柱へと変わろうとしているのです。
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