そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き

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おまけ(殿下視点)

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今日はセドリックとアリシア嬢の結婚式だ。

セドリックが隣国に婿入りした時は、私の婚約者探しが難航していて行きたくとも隣国に足を運ぶことが出来なかった。

しかし妹狂いであるセドリックとアリシア嬢との婚姻では直接祝いの言葉をかけてあげることが出来て本当に良かった。

国を再生させたセドリック一世にアリーシャ国の貴族達が我先にとお声をかけようと列をなしている。

セドリックの傍らでカラクリ人形のように規則正しい動きで外賓の対応をするアリシア嬢を見る。

既に思考は放棄しているようだ。
何も疑っていない。幸せそのものの笑顔。
セドリックに微笑まれ、耳元で何か囁かれ、わたくしもセドリックを愛しています!と壊れた楽器のように何度も言うアリシア嬢に苦笑いした。

まだ初夜前だが、はらにセドリックの子もいるそうだ。恐らく世間体を考慮して、国民への発表は初夜が済んだ後になるのだろう。

「セドリックは流れを持っていくのがうまいよなぁ」

ぼそっと呟くと公務として共に出席した婚約者のカサンドラが首を傾げた。

「殿下?」
「いや、めでたいなって」

そう言ってつい考える。
本当にめでたいのかな?  う~ん……とりあえずここは私も思考を放棄しておこう。

「……そうですわね。殿下の元婚約者であるアリシア様は婚約を解消した後も殿下の側近としてずっと側におりましたし、学園に上がったら今度は殿下の学友として生徒会でも交流が始まるのだと……わたくしいつか殿下をアリシア様に取られるのではとヒヤヒヤしておりましたが、それは杞憂だと反省致しました。あんなにも幸せそうに笑っておられるんですもの。今までずっとわたくしを支援し続けてくれたアリシア様を、今度は我が侯爵家が支援し、その婚姻の邪魔となる者を排除して、やっと婚姻に漕ぎ着けましたわ。わたくしの弟もアリシア様の義弟として公爵家の一員に加わったので万々歳ですわ」
「…………ほんと、セドリックは流れを持っていくのが上手いよなぁ」

先ほど幸せそうなセドリックに心からお祝いの言葉を贈った時、「ありがとう。今まで君を殺す目録リストに入れててごめん」と笑顔で言われた。胃の中に大量の氷をぶっこまれたような悪寒を感じた。「君もカサンドラ侯爵令嬢と早く幸せになってくれ」と続けて言われて急いで首を縦に振った。


「カサンドラ……学園を卒業したらすぐに結婚しようか」
「!?  ええっっ……しかし準備がっ」
「在学中に準備しよう、そうしよう、帰国したらすぐその準備を進めよう、ね?」
「……は、はぁい♡」



【終】
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