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6兄の流れには逆らえませんでした
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「お兄様、なんなんですか……わたくしを愛しているのですか?」
「ああ心から愛しているとも!」
「ではもうわたくしの物を欲しがったりしませんか?」
「二度としない! 本当にすまなかった!」
「……ちなみに近親婚って、血が濃くなるので危険ではありませんか?」
「それは大丈夫だ」
「……うん?」
「詳しくは言えないが、大丈夫だ。一代くらいなら大丈夫だという前例もある」
「……前例?」
「ああ。建国時はどこも大体近親婚だからな」
そんなお正月はどの家も大体おせちを食べるから、みたいなニュアンスで言われても事が重大なだけに困ります。
そういえば前世でもクレオパトラや卑弥呼も血の繋がった男性と結婚した……かもしれないという歴史文献を読んだことはある。実の息子との子を生んだ……かもしれないという神々のお話しも読んだことがある。それが本当かどうか事実は知らない。当時を知る者は既にいないのだから。……なら悪役令嬢アリシアのお兄様は妹の物を奪って悦ぶ最低の兄である……かもしれないし、そうじゃないかもしれないという事にもなり、お兄様はアリシアを破滅させるキャラである……かもしれないし、そうではなく実の妹を愛する……かもしれないという事にもなる。何をどう結びつければいいのか、いよいよ訳が解らなくなってきました。
「でもわたくし……近親婚はちょっと」
ちょっとどころか駄目ですよね。
昔は青い血を濃くするのが当然みたいな流れがあったので仕方なかったかもしれませんが、わざわざ今それをやることないですよね。
「不安なのはわかる。そうだ、隣国は経済破綻してたから再建国家として血を濃くするのが義務みたいな流れに持っていこう。ついでに国名も変えてアリシアに改名するか。隣国の発音だとアリーシャかな」
両親達からぱちぱちと拍手が鳴りました。「アリーシャ国!」「建国万歳!」「アリーシャ国!」満場一致、みたいな拍手音でした。お兄様が以前自宅にいた時もよくこんな雰囲気になったものです。流れを持っていくのが上手いのでしょうね。
私も負けじと声を出します。
優秀なお兄様にどこまで対抗できるかは解りませんが、私だって悪役令嬢として生まれてきました。この近親婚の流れを覆す事ができなければ、近い将来訪れるかもしれないカサンドラ侯爵令嬢の断罪をくい止めることすらできないでしょう。
「ではお兄様、アリーシャ国の高位貴族、その中でも王家の血が多少なりとも含まれる妙齢の令嬢を何人か側室に選んで下さい」
「その必要はない。アリーシャ国は一夫一妻制だ。安心しろ。そこは改名しても変わることはない」
ぱちぱちぱちぱち。
「し、しかしアリーシャ国の貴族令嬢を娶らず自国の貴族令嬢がお兄様の妃になったら真っ先に乗っ取りを疑われ、国民からの支持率が下がりませんか?」
「それはない。何故ならば支持率ゼロだった国民が俺が国王になった途端、支持率が50%に上がったからだ。勿論、アリーシャ国の貴族令嬢との縁談も話に上がった。しかし上がった途端、支持率が25%に下がった。アリーシャ国の国民は自国の貴族を余程信用していないのだろう。この事から推測するに、俺の妹であるアリシアが妃となれば支持率は100%になるだろう。喜ばしいことだ」
ぱちぱちぱちぱち。
先ほどより大きな拍手に包まれたお兄様が得意気に胸を張りました。王冠を頭に様になっています。
「アリーシャ国!」
「建国万歳!」
「アリーシャ万歳!」
「セドリック一世万歳!」
「わぁ~、おめでとうございますアリシアお嬢様!」
ぱちぱちぱちぱち。
意識が遠退いてきました。
そういえば前世では思考を放棄するとストレスが緩和されるとか本で読んだことがあります。考え過ぎはよくないということですね。
私は白眼を剥いて両手を叩きました。
ぱちぱちぱちぱち。
シンバルを鳴らす猿の玩具のように。
ぱちぱちぱちぱち。
「ああ心から愛しているとも!」
「ではもうわたくしの物を欲しがったりしませんか?」
「二度としない! 本当にすまなかった!」
「……ちなみに近親婚って、血が濃くなるので危険ではありませんか?」
「それは大丈夫だ」
「……うん?」
「詳しくは言えないが、大丈夫だ。一代くらいなら大丈夫だという前例もある」
「……前例?」
「ああ。建国時はどこも大体近親婚だからな」
そんなお正月はどの家も大体おせちを食べるから、みたいなニュアンスで言われても事が重大なだけに困ります。
そういえば前世でもクレオパトラや卑弥呼も血の繋がった男性と結婚した……かもしれないという歴史文献を読んだことはある。実の息子との子を生んだ……かもしれないという神々のお話しも読んだことがある。それが本当かどうか事実は知らない。当時を知る者は既にいないのだから。……なら悪役令嬢アリシアのお兄様は妹の物を奪って悦ぶ最低の兄である……かもしれないし、そうじゃないかもしれないという事にもなり、お兄様はアリシアを破滅させるキャラである……かもしれないし、そうではなく実の妹を愛する……かもしれないという事にもなる。何をどう結びつければいいのか、いよいよ訳が解らなくなってきました。
「でもわたくし……近親婚はちょっと」
ちょっとどころか駄目ですよね。
昔は青い血を濃くするのが当然みたいな流れがあったので仕方なかったかもしれませんが、わざわざ今それをやることないですよね。
「不安なのはわかる。そうだ、隣国は経済破綻してたから再建国家として血を濃くするのが義務みたいな流れに持っていこう。ついでに国名も変えてアリシアに改名するか。隣国の発音だとアリーシャかな」
両親達からぱちぱちと拍手が鳴りました。「アリーシャ国!」「建国万歳!」「アリーシャ国!」満場一致、みたいな拍手音でした。お兄様が以前自宅にいた時もよくこんな雰囲気になったものです。流れを持っていくのが上手いのでしょうね。
私も負けじと声を出します。
優秀なお兄様にどこまで対抗できるかは解りませんが、私だって悪役令嬢として生まれてきました。この近親婚の流れを覆す事ができなければ、近い将来訪れるかもしれないカサンドラ侯爵令嬢の断罪をくい止めることすらできないでしょう。
「ではお兄様、アリーシャ国の高位貴族、その中でも王家の血が多少なりとも含まれる妙齢の令嬢を何人か側室に選んで下さい」
「その必要はない。アリーシャ国は一夫一妻制だ。安心しろ。そこは改名しても変わることはない」
ぱちぱちぱちぱち。
「し、しかしアリーシャ国の貴族令嬢を娶らず自国の貴族令嬢がお兄様の妃になったら真っ先に乗っ取りを疑われ、国民からの支持率が下がりませんか?」
「それはない。何故ならば支持率ゼロだった国民が俺が国王になった途端、支持率が50%に上がったからだ。勿論、アリーシャ国の貴族令嬢との縁談も話に上がった。しかし上がった途端、支持率が25%に下がった。アリーシャ国の国民は自国の貴族を余程信用していないのだろう。この事から推測するに、俺の妹であるアリシアが妃となれば支持率は100%になるだろう。喜ばしいことだ」
ぱちぱちぱちぱち。
先ほどより大きな拍手に包まれたお兄様が得意気に胸を張りました。王冠を頭に様になっています。
「アリーシャ国!」
「建国万歳!」
「アリーシャ万歳!」
「セドリック一世万歳!」
「わぁ~、おめでとうございますアリシアお嬢様!」
ぱちぱちぱちぱち。
意識が遠退いてきました。
そういえば前世では思考を放棄するとストレスが緩和されるとか本で読んだことがあります。考え過ぎはよくないということですね。
私は白眼を剥いて両手を叩きました。
ぱちぱちぱちぱち。
シンバルを鳴らす猿の玩具のように。
ぱちぱちぱちぱち。
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