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ノンケの俺が開発されるまで
4 同居のスタート
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緊張しながらスタートした同居だったが帰宅はいつも俺の方が遅かった。得意先や新規クライアントの打ち合わせに駆けずり回ってるからだ。
「おかえり。ご飯炊いてあるからね。今日は塩鮭とほうれん草のお浸しと卵焼き。鍋に味噌汁もあるから」
部屋に自分以外の人間がいるなんて不思議だ。おかえりって言われるのが嬉しいと感じてしまう。
「ただいま。すまねえな。いつもありがとう」
それに俺は料理はまったくできない。たまには安住を手伝ってやろうとは思ってはいる。いるのだが……。
「僕は先に食べたから。部屋に籠るよ。おやすみ」
一緒に暮らし始めても安住は必要以上に俺に接触してこない。きっとあいつは俺が怖がってると思ってるんだ。何怖気ついてるんだ俺は。なんのために一緒に住み始めたんだか。
「あのっ。あのさ。良かったらちょっと資料の確認して欲しいんだ」
「資料? 昼間に社で渡したやつ以外に何かあるのか?」
「えっと。正直に言うと俺さ。一人で飯食うのってちょっと味気なくてさ。食べる間だけでも一緒に居てくれたらいいなって」
「その。僕もちょっとコーヒーが飲みたいなって思ってたんだ」
安住が照れくさそうに笑う。可愛い顔しやがって。
「じゃあこっちこいよ」
「……うん」
おずおずと俺の目の前に座る。反省してる大型犬みたいだ。
「あぁ。やっぱりお前が作った味噌汁は美味いな」
俺の一言でぱあぁと安住の顔が輝く。なんてわかりやすいんだろう。
「ありがとう。今日は豆腐としめじにしたんだ。何か食べたいものとかないか?」
「リクエストしていいのか?そうだなあ。鍋とかどうかな?」
「鍋かぁ。そういえばトマト鍋とか一時期流行ってたな。最後にチーズとごはんを加えてリゾットにして食うんだ」
「おおっ。それ!いいな。それにしようぜ」
「ふふふ。好き嫌いはないって言ってたからいつも適当に作ってたけど。やっぱりリクエストもらうとはりきり甲斐があるよ」
「そうか。じゃあこれからも一緒に考えようぜ。俺のばっかじゃなく、お前が食べたいもんも作ってくれよ」
「……倉沢は優しいな」
「ばあか!お前気ぃ使いすぎなんだよ。俺らはペアで阿吽の呼吸ができるぐらいお互いの事を分かり合えるようにならなきゃいけねえんだろ?」
「うん。うん、そうだな」
「ばか。泣くなよ」
「泣いてないよ。ただの花粉症」
「突然花粉症になったんだな?くくく。わかった。そういう事にしておいてやろう」
二人で片付けた後、ソファーでくつろぐいだ。久しぶりに仕事以外で安住と関わった気がする。やはり気が合うのか一緒に居ると話が弾むし楽しい。
「俺さ。安住の事嫌いじゃないよ」
「うん。わかってるよ」
「そうか。わかってくれてたのか」
「ぁあ。僕が暴走しただけだ」
暴走って? こいつそんなに俺の事が? いやいやいや。なんで俺なんだ? 安住はいい男だしモテ放題だろう?
「なぁ。お前さ。俺なんかのどこがいいの?」
「全部……ってごめん。ひかないでくれよ」
「だって、俺もうすぐ三十路だぞ。お前だったらもっと若くて良い子みつけられるだろう」
「僕は倉沢が良いんだ。前から君が好きなんだ。でもその気持ちを隠してきた。これからも隠していくつもりだったんだ。でも、君があんまりりにもカッコ可愛くて……」
「ぷっ!なんだよそのカッコ可愛いって」
「仕事をしてるときの倉沢はカッコいいよ。横顔が男らしくて精悍でさ。それに思いやりもあって。後輩の面倒見もいいし。すぐに行動に出るところもすごく好感がもてる。なのに、俺の前では素の表情でいてくれるところが可愛い」
「安住。褒めすぎ。俺はそんなにたいしたもんじゃねえよ」
「そういって謙遜するところも好きだ」
俺、真剣に口説かれてるんじゃないのか? だが待て。確かこいつ彼女が出来たって言ってた時もあったはずだ。
「お前彼女いたんじゃねえのか?」
「作ろうとはしたんだ。でも無理だった。倉沢は?」
「俺は彼女が出来ても長続きがしないんだ。仕事を優先にしてしまうからな。皆私より仕事が大事なんでしょって離れて行ったぜ」
「そうか。倉沢は仕事に対して誠実だからな。僕はそういうところも好きなんだけどな」
「まいったな。褒め殺しかよ」
照れ隠しに憎まれ口をたたく。
「今日はありがとうな。一緒に話せて嬉しかった」
安住が席をたとうとするのを俺は引き留めた。
「おいおい。俺の言った意味わかってないだろ?今日はじゃねえよ。これからはだ。明日からは時間が合うときは飯も一緒に食おうぜ。なるべく早く帰るようにするから待っててくれよな」
「いいのか?」
「当たり前だろ?鍋は二人で食うほうが美味いんだ」
安住の背後で尻尾がぶんぶん揺れてる幻覚が見えた気がした
次の日から二人で一緒に飯を食うようにした。帰りが遅くなっても俺が食べ終わるまで安住は食卓に居るようになり、結局寝る前まで俺らはリビングでまったりと過ごすのが日課となった。
別に二人でいても互いに違う事をしている時もあるし必要以上に干渉はしない。ただ、隣にいるぬくもりが心地よかった。
「おかえり。ご飯炊いてあるからね。今日は塩鮭とほうれん草のお浸しと卵焼き。鍋に味噌汁もあるから」
部屋に自分以外の人間がいるなんて不思議だ。おかえりって言われるのが嬉しいと感じてしまう。
「ただいま。すまねえな。いつもありがとう」
それに俺は料理はまったくできない。たまには安住を手伝ってやろうとは思ってはいる。いるのだが……。
「僕は先に食べたから。部屋に籠るよ。おやすみ」
一緒に暮らし始めても安住は必要以上に俺に接触してこない。きっとあいつは俺が怖がってると思ってるんだ。何怖気ついてるんだ俺は。なんのために一緒に住み始めたんだか。
「あのっ。あのさ。良かったらちょっと資料の確認して欲しいんだ」
「資料? 昼間に社で渡したやつ以外に何かあるのか?」
「えっと。正直に言うと俺さ。一人で飯食うのってちょっと味気なくてさ。食べる間だけでも一緒に居てくれたらいいなって」
「その。僕もちょっとコーヒーが飲みたいなって思ってたんだ」
安住が照れくさそうに笑う。可愛い顔しやがって。
「じゃあこっちこいよ」
「……うん」
おずおずと俺の目の前に座る。反省してる大型犬みたいだ。
「あぁ。やっぱりお前が作った味噌汁は美味いな」
俺の一言でぱあぁと安住の顔が輝く。なんてわかりやすいんだろう。
「ありがとう。今日は豆腐としめじにしたんだ。何か食べたいものとかないか?」
「リクエストしていいのか?そうだなあ。鍋とかどうかな?」
「鍋かぁ。そういえばトマト鍋とか一時期流行ってたな。最後にチーズとごはんを加えてリゾットにして食うんだ」
「おおっ。それ!いいな。それにしようぜ」
「ふふふ。好き嫌いはないって言ってたからいつも適当に作ってたけど。やっぱりリクエストもらうとはりきり甲斐があるよ」
「そうか。じゃあこれからも一緒に考えようぜ。俺のばっかじゃなく、お前が食べたいもんも作ってくれよ」
「……倉沢は優しいな」
「ばあか!お前気ぃ使いすぎなんだよ。俺らはペアで阿吽の呼吸ができるぐらいお互いの事を分かり合えるようにならなきゃいけねえんだろ?」
「うん。うん、そうだな」
「ばか。泣くなよ」
「泣いてないよ。ただの花粉症」
「突然花粉症になったんだな?くくく。わかった。そういう事にしておいてやろう」
二人で片付けた後、ソファーでくつろぐいだ。久しぶりに仕事以外で安住と関わった気がする。やはり気が合うのか一緒に居ると話が弾むし楽しい。
「俺さ。安住の事嫌いじゃないよ」
「うん。わかってるよ」
「そうか。わかってくれてたのか」
「ぁあ。僕が暴走しただけだ」
暴走って? こいつそんなに俺の事が? いやいやいや。なんで俺なんだ? 安住はいい男だしモテ放題だろう?
「なぁ。お前さ。俺なんかのどこがいいの?」
「全部……ってごめん。ひかないでくれよ」
「だって、俺もうすぐ三十路だぞ。お前だったらもっと若くて良い子みつけられるだろう」
「僕は倉沢が良いんだ。前から君が好きなんだ。でもその気持ちを隠してきた。これからも隠していくつもりだったんだ。でも、君があんまりりにもカッコ可愛くて……」
「ぷっ!なんだよそのカッコ可愛いって」
「仕事をしてるときの倉沢はカッコいいよ。横顔が男らしくて精悍でさ。それに思いやりもあって。後輩の面倒見もいいし。すぐに行動に出るところもすごく好感がもてる。なのに、俺の前では素の表情でいてくれるところが可愛い」
「安住。褒めすぎ。俺はそんなにたいしたもんじゃねえよ」
「そういって謙遜するところも好きだ」
俺、真剣に口説かれてるんじゃないのか? だが待て。確かこいつ彼女が出来たって言ってた時もあったはずだ。
「お前彼女いたんじゃねえのか?」
「作ろうとはしたんだ。でも無理だった。倉沢は?」
「俺は彼女が出来ても長続きがしないんだ。仕事を優先にしてしまうからな。皆私より仕事が大事なんでしょって離れて行ったぜ」
「そうか。倉沢は仕事に対して誠実だからな。僕はそういうところも好きなんだけどな」
「まいったな。褒め殺しかよ」
照れ隠しに憎まれ口をたたく。
「今日はありがとうな。一緒に話せて嬉しかった」
安住が席をたとうとするのを俺は引き留めた。
「おいおい。俺の言った意味わかってないだろ?今日はじゃねえよ。これからはだ。明日からは時間が合うときは飯も一緒に食おうぜ。なるべく早く帰るようにするから待っててくれよな」
「いいのか?」
「当たり前だろ?鍋は二人で食うほうが美味いんだ」
安住の背後で尻尾がぶんぶん揺れてる幻覚が見えた気がした
次の日から二人で一緒に飯を食うようにした。帰りが遅くなっても俺が食べ終わるまで安住は食卓に居るようになり、結局寝る前まで俺らはリビングでまったりと過ごすのが日課となった。
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