大阪らぷそてぃ

ゆうきぼし/優輝星

文字の大きさ
2 / 35
第一章 ハジメとすぐる

1新生活

しおりを挟む
 ある夏の昼下がり。大学生の僕、秋葉原すぐるは学食のカフェテラスで遅めのランチを食べていた。大学進学のため東京から関西に移り住んで早いもので3ヶ月あまり。少しずつこちらの生活にも慣れてきたところだ。

 僕が通っているこの大学は総合グローバル芸術大学と言って他方面に係るデザインや文化芸術などの育成にたずさわる国立大学だ。 

 学生の割合比率は優秀な才能を持つアルファが多い。だけど推薦枠や一般枠も充実していてベータやオメガも通える大学だ。そこに今回僕が在学しているアニメ映像デザイン科が新設された。CGアニメやアバターや各分野のキャラクターの動きや表現方法などを勉強しデジタル化を促進する役目を担うらしい。



「よう! ここあいてる?」

「え? はい。あいてますが……?」

 反射的に声をする方を見ると、にこにこと笑顔で作務衣を着た青年がドリンクを片手に立っていた。すっと通った鼻筋。男らしい太めの眉に切れ長の瞳。布の上からでも程よい筋肉がついてるとわかる体形。おそらくアルファなのだろう。

 昼を過ぎた学食はガラガラで人もまばらだ。別にココでなくてもあいてるのにと不満気に思っている僕を横目に、よっこらしょっと目の前に座ると話しかけてきた。

「なあ、あんた、長谷川教授の授業とっとるやろ?」

 1年の前期は全学科総合カリキュラムを受けないといけない。 

 その中のひとつの担当が長谷川教授だった。普段からダブルのスーツを着こなした紳士的な教授で新入生からの好感度も高かったはずだ。

「はい。そうですが?」

(なんだ唐突に? 同じ授業をとっていたのか? 何か気に障る事をしたのだろうか?)

「きいつけや。あいつあんたのこと狙っとるで」

 思いもかけない言葉に呆けた返事をしてしまった。

「へ? 狙っとるとはどういう意味なんでしょうか?」

「あいつ、あんたみたいな大人しそうで綺麗な子にちょっかいだしよんねん。そやさかい、声かけられてもついていったらあかんで」

「あ、あの、それはどういう?」

「ん? わからんか? あいつにバース性は関係ないねん。あいつ、男女関係なく、ベータでもアルファでも自分が気に入った綺麗な子にはちょっかいだしてくるんや」

「は? えええ~?」

「なんや、ほんまに知らんかったんか?」

「いや、だって。僕は綺麗とかそんなことはありませんから」

「何言うてんねん。あんたなかなか別嬪さんやで。あれか? 自分の良さに気づいてないっちゅうやつか?」



 高校時代、僕はオタクまっしぐらだった。髪も伸ばしっぱなし。人とコミュニケーションをとるのが苦手で、目立たない様に伊達眼鏡をかけいつも下を向いていた。そんな感じだったから誰からも綺麗だとか別嬪さんなどと言われたことはない。それに僕はベータだ。

 大学生になるのだからとイメチェンをかねて髪を切って眼鏡を外しただけである。

「か……からかうのもいい加減にしてください!」

「からこうてなんかないぜ。俺はこの大学は付属の高等部から通っとるさかい。あいつの悪評は耳に入っててん。みすみす目の前で善良な同級生が食われるのを見過ごせないだけや」

「うそ……同級生なの?」

 大人びた風体だったので、てっきり先輩だと思っていた。

「なんで嘘言わなあかんねん。いや、こっちこそすまんな。突然まくしたてられて、おっかなびっくりやわな? ごめんやで。かんにんしてな」

 へへへと笑う顔は案外可愛かった。結構良いやつなのかも知れない。



「俺1年の難波って言うねん。名前は壱と書いてハジメと読むんや。難波壱〈なんばはじめ〉」

「はぁ。えっと、僕は秋葉原すぐるといいます」

「すぐる君かぁ。ええ名前やなあ。なぁ。すぐるって呼び捨てにしてもええか? 俺のこともハジメって呼んでくれや。友達になろ!」

「う……うん。別にいいけど」

「そうか! ほな名前で呼んでみてや」

「えっと。ハジメ君?」

「ちゃうちゃう。ハジメって呼び捨てにしてくれや」

「は……ハジメ。あの……これでいいかな?」

「うんうん! ええで! すぐる! 今日から俺らは友達や!」

 これが僕とハジメの出会いだった。



 ハジメは気さくで人懐っこかった。僕が困ってることがあると何かにつけ親切に教えてくれる。だから僕は彼が面倒見のいい性格なのだと思い込んでいた。

「すぐる。悪いけど今週末あいてたらちょっと手伝ってくれへん?」

「うん。いいけど。どうしたのさ」

「週末のオープンキャンパスで藍染体験をすることになったんや。急やったから人手が足らんで困ってんねん。補助でいいから手伝ってくれると助かる」

「藍染って。僕やったたことがないのだけれど……それって僕も染めさせてもらえるの?」

「ええよ。すぐるは染物したことないんか?」

「うん。ないよ。でもせっかくこの大学に入ったし染物もやってみたいと思ってたんだ!」

 ハジメは染色デザイン専攻科だ。主に衣服に関するテキスタイル関連を勉強している。

 父親は有名なデザイナーらしい。だが彼はデザインよりも布自体に興味があるようだ。

「なんや。そんなん、はよう言うてくれたらいつでも教えてやったのに。そや。今からどうや? 今日はバイトもないんやろ?」

「え? いいの? 他専科の学生が混じったら怒られるんじゃないの?」

「かめへんかめへん。そんな固い事言うようなやつ、うちの科にはおらへんで」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす
BL
 αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。  努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。  世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。  失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。  しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。  あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?  コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。  小説家になろうにも掲載。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

君に二度、恋をした。

春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。 あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。 ――もう二度と会うこともないと思っていたのに。 大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。 変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。 「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」 初恋、すれ違い、再会、そして執着。 “好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか―― すれ違い×再会×俺様攻め 十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。

八月は僕のつがい

やなぎ怜
BL
冬生まれの雪宗(ゆきむね)は、だからかは定かではないが、夏に弱い。そして夏の月を冠する八月(はつき)にも、弱かった。αである八月の相手は愛らしい彼の従弟たるΩだろうと思いながら、平凡なβの雪宗は八月との関係を続けていた。八月が切り出すまでは、このぬるま湯につかったような関係を終わらせてやらない。そう思っていた雪宗だったが……。 ※オメガバース。性描写は薄く、主人公は面倒くさい性格です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~

大波小波
BL
 第二性がアルファの平 雅貴(たいら まさき)は、30代の若さで名門・平家の当主だ。  ある日、車で移動中に、雨の中ずぶ濡れでうずくまっている少年を拾う。  白沢 藍(しらさわ あい)と名乗るオメガの少年は、やつれてみすぼらしい。  雅貴は藍を屋敷に招き、健康を取り戻すまで滞在するよう勧める。  藍は雅貴をミステリアスと感じ、雅貴は藍を訳ありと思う。  心に深い傷を負った雅貴と、悲惨な身の上の藍。  少しずつ距離を縮めていく、二人の生活が始まる……。

恋は終わると愛になる ~富豪オレ様アルファは素直無欲なオメガに惹かれ、恋をし、愛を知る~

大波小波
BL
 神森 哲哉(かみもり てつや)は、整った顔立ちと筋肉質の体格に恵まれたアルファ青年だ。   富豪の家に生まれたが、事故で両親をいっぺんに亡くしてしまう。  遺産目当てに群がってきた親類たちに嫌気がさした哲哉は、人間不信に陥った。  ある日、哲哉は人身売買の闇サイトから、18歳のオメガ少年・白石 玲衣(しらいし れい)を買う。  玲衣は、小柄な体に細い手足。幼さの残る可憐な面立ちに、白い肌を持つ美しい少年だ。  だが彼は、ギャンブルで作った借金返済のため、実の父に売りに出された不幸な子でもあった。  描画のモデルにし、気が向けばベッドを共にする。  そんな新しい玩具のつもりで玲衣を買った、哲哉。  しかし彼は美的センスに優れており、これまでの少年たちとは違う魅力を発揮する。  この小さな少年に対して、哲哉は好意を抱き始めた。  玲衣もまた、自分を大切に扱ってくれる哲哉に、心を開いていく。

処理中です...