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第二章 朝比奈と高塚
1幼馴染と俺の過去
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「なあなあ朝比奈、聞いてくれよ」
また隣に座る男の惚気話が始まった。
「すぐるったらさ、俺に会いたいって気持ちが暴走して巣作りしたんやで。もうめっちゃ感動したわ。山積みになった俺の服の中からひょっこり顔をだして、潤んだ瞳で俺を見つめてたんや」
くぅ~と一人で身もだえてる。こいつは俺の幼馴染の難波壱や。
俺は朝比奈じゅん。ハジメからは朝比奈と呼ばれている。俺がそう呼んでくれと頼んだからや。
「……気色わりぃから身もだえんといて」
さっきから延々と恋人である秋葉原すぐるとの痴話話しを聞かされている。当の本人であるすぐるは体調を崩して休んでいた授業の臨時講義を受けに行っている。要するにすぐるが戻ってくるまでの時間つぶしというわけだ。昼過ぎのカフェテラスは学生もまばらで逆に変に目立つ。
「そういえば、この場所やったんや。すぐると初めて会話したのは」
「へぇ。どうせハジメから声かけたんやろ?」
「だったらなんや? 悪いんか?」
こいつはすぐるの事になると大人げない。それ以外に関してはリーダーシップも取れるし行動力もある男やのに。本当に残念なやつや。
「い~や。ぜんぜん。だってすぐる君大人しそうやったもん。最初のうちはちょっとおどおどした感じやったし。引っ込み思案なんかな? って思ってたんや」
「あ~。ちょっとそういうところはある。時々俺の後ろに隠れたりする。くくく。そこがまた可愛いんやで!」
「はいはい。わかりました。まあでも、最近は凄いよくなったやん? 自信をもって発言するようになったし、すぐる君は元がいいから背筋を伸ばすだけで見栄えがする。目もぱっちりしてるし小ぶりの鼻は可愛らしいし。ハジメにはもったいないくらいやわ」
「お前……すぐるに惚れるなよ」
「はあ? もぉなんやねんそれ! うっとぉしい男やな!」
ちょっと褒めただけで俺にまで噛み付くなんて。すぐるは俺にとっても友達やのに。本当に嫉妬深くて面倒くさい。こいつがこんなに恋に溺れるとは思わへんかった。幼馴染の新たな一面を垣間見た。いや、毎回見てるかな。
◇◆◇
俺とハジメは幼稚園からの腐れ縁や。
ハジメの親父さんと俺の父親が知り合いやったってのがきっかけで同じ幼稚園に通う事になった。早期幼児教育とかで有名な幼稚園で、なんでも卒なくこなすハジメに対し、あきらかに俺は浮いていた。
「こりゃ、じゅんはベータかもしれんな」
落胆した表情で言うたのは父親やった。父親の高塚家は代々続いた由緒正しい家系らしい。
俺には兄貴が一人。弟が一人。俺は次男にあたるが母親が違うため表だっては兄弟だとは名乗ってない。父親は俺を息子と認め、認知はしたが高塚の籍にはいれてはくれなかった。朝比奈は母方の姓なのだ。
父親はアルファだが、兄貴はベータだった。高塚家はアルファだけが家督を継げるらしい。苦肉の策で父親はオメガとの間にアルファが産まれやすいと外に子供を作ったのだ。それが俺だった。その後、歳の離れた弟ができたが念願かなってアルファだったらしく父親は喜んでいた。
俺は兄貴と仲が悪かった。そりゃそうだろう。そんな理由で出来た弟なんて俺だって嫌やと思う。それもオメガだし。
事が起こったのは俺が中学に入った頃やった。兄貴は高校生で、その日は兄貴の友達が数人うちに遊びに来ていた。その中にアルファがいたのだ。どうやらそいつに触発されてしまったらしい。
「こいつ、良い匂いがするぜ。オメガなんか? なんか艶っぽいな」
「ちょっと。やめとけって。弟やろ?」
「さあ、ただの居候なんかも」
「ほんまに血がつながってるんかなんてわからんやろ?」
「そうや。身体に聞いてみたらええやん。へへへ」
性欲にあふれた悪ガキたちの標的になり裸にされ乱暴された。
元々兄貴は父親に可愛がられてた俺に敵対心を持っていたようだ。アルファの悪友をわざと家に連れてきたのもそのせいだった。
朝比奈の姓を名乗っていても父親の元で暮らしていた俺は口に出して抵抗することが出来なかった。居候と言われた言葉が胸に深く突き刺さっていたからだ。見た目は普段どうりにふるまっていたつもりだったが、ハジメにだけは気づかれてしまった。
ハジメは俺から理由を聞きだすと単身で兄貴の元に乗り込んだのだ。
「俺のダチに手ぇだしたんはお前らか! 」
同じアルファでもハジメのほうが格が上だったようであっという間に全員を叩き潰すとそのまま俺の父親に怒鳴り込みに行きやがった。
「いくらあんたが父親でも朝比奈を軽んじてるんなら俺がどんな手を使ってでも守る。たとえ親父に手を借りてでもな」
こうして事件は発覚した。父親は何も知らなかったようで唖然としていたらしい。
「兄さん。しばらくじゅん君は僕が預かるで」
俺をこの家に置いておけないと言い出したのは父親の弟である亜紀良だった。
「すまんな。俺は親として最低だな」
「自覚してるなら長男は躾けなおしときなよ」
「育て方が悪かったのかな」
「そうや。気づいてなかったの? 長男ほっといてアルファの子にかかりっきりだったやん。そりゃ性格悪くなるわ」
「う……。お前は相変わらず辛辣やな」
「当然のことを言うただけや」
この日を境に俺は叔父である高塚亜紀良に引き取られたのだ。
ちなみに俺の口調が辛辣なのはこの人の影響である。
また隣に座る男の惚気話が始まった。
「すぐるったらさ、俺に会いたいって気持ちが暴走して巣作りしたんやで。もうめっちゃ感動したわ。山積みになった俺の服の中からひょっこり顔をだして、潤んだ瞳で俺を見つめてたんや」
くぅ~と一人で身もだえてる。こいつは俺の幼馴染の難波壱や。
俺は朝比奈じゅん。ハジメからは朝比奈と呼ばれている。俺がそう呼んでくれと頼んだからや。
「……気色わりぃから身もだえんといて」
さっきから延々と恋人である秋葉原すぐるとの痴話話しを聞かされている。当の本人であるすぐるは体調を崩して休んでいた授業の臨時講義を受けに行っている。要するにすぐるが戻ってくるまでの時間つぶしというわけだ。昼過ぎのカフェテラスは学生もまばらで逆に変に目立つ。
「そういえば、この場所やったんや。すぐると初めて会話したのは」
「へぇ。どうせハジメから声かけたんやろ?」
「だったらなんや? 悪いんか?」
こいつはすぐるの事になると大人げない。それ以外に関してはリーダーシップも取れるし行動力もある男やのに。本当に残念なやつや。
「い~や。ぜんぜん。だってすぐる君大人しそうやったもん。最初のうちはちょっとおどおどした感じやったし。引っ込み思案なんかな? って思ってたんや」
「あ~。ちょっとそういうところはある。時々俺の後ろに隠れたりする。くくく。そこがまた可愛いんやで!」
「はいはい。わかりました。まあでも、最近は凄いよくなったやん? 自信をもって発言するようになったし、すぐる君は元がいいから背筋を伸ばすだけで見栄えがする。目もぱっちりしてるし小ぶりの鼻は可愛らしいし。ハジメにはもったいないくらいやわ」
「お前……すぐるに惚れるなよ」
「はあ? もぉなんやねんそれ! うっとぉしい男やな!」
ちょっと褒めただけで俺にまで噛み付くなんて。すぐるは俺にとっても友達やのに。本当に嫉妬深くて面倒くさい。こいつがこんなに恋に溺れるとは思わへんかった。幼馴染の新たな一面を垣間見た。いや、毎回見てるかな。
◇◆◇
俺とハジメは幼稚園からの腐れ縁や。
ハジメの親父さんと俺の父親が知り合いやったってのがきっかけで同じ幼稚園に通う事になった。早期幼児教育とかで有名な幼稚園で、なんでも卒なくこなすハジメに対し、あきらかに俺は浮いていた。
「こりゃ、じゅんはベータかもしれんな」
落胆した表情で言うたのは父親やった。父親の高塚家は代々続いた由緒正しい家系らしい。
俺には兄貴が一人。弟が一人。俺は次男にあたるが母親が違うため表だっては兄弟だとは名乗ってない。父親は俺を息子と認め、認知はしたが高塚の籍にはいれてはくれなかった。朝比奈は母方の姓なのだ。
父親はアルファだが、兄貴はベータだった。高塚家はアルファだけが家督を継げるらしい。苦肉の策で父親はオメガとの間にアルファが産まれやすいと外に子供を作ったのだ。それが俺だった。その後、歳の離れた弟ができたが念願かなってアルファだったらしく父親は喜んでいた。
俺は兄貴と仲が悪かった。そりゃそうだろう。そんな理由で出来た弟なんて俺だって嫌やと思う。それもオメガだし。
事が起こったのは俺が中学に入った頃やった。兄貴は高校生で、その日は兄貴の友達が数人うちに遊びに来ていた。その中にアルファがいたのだ。どうやらそいつに触発されてしまったらしい。
「こいつ、良い匂いがするぜ。オメガなんか? なんか艶っぽいな」
「ちょっと。やめとけって。弟やろ?」
「さあ、ただの居候なんかも」
「ほんまに血がつながってるんかなんてわからんやろ?」
「そうや。身体に聞いてみたらええやん。へへへ」
性欲にあふれた悪ガキたちの標的になり裸にされ乱暴された。
元々兄貴は父親に可愛がられてた俺に敵対心を持っていたようだ。アルファの悪友をわざと家に連れてきたのもそのせいだった。
朝比奈の姓を名乗っていても父親の元で暮らしていた俺は口に出して抵抗することが出来なかった。居候と言われた言葉が胸に深く突き刺さっていたからだ。見た目は普段どうりにふるまっていたつもりだったが、ハジメにだけは気づかれてしまった。
ハジメは俺から理由を聞きだすと単身で兄貴の元に乗り込んだのだ。
「俺のダチに手ぇだしたんはお前らか! 」
同じアルファでもハジメのほうが格が上だったようであっという間に全員を叩き潰すとそのまま俺の父親に怒鳴り込みに行きやがった。
「いくらあんたが父親でも朝比奈を軽んじてるんなら俺がどんな手を使ってでも守る。たとえ親父に手を借りてでもな」
こうして事件は発覚した。父親は何も知らなかったようで唖然としていたらしい。
「兄さん。しばらくじゅん君は僕が預かるで」
俺をこの家に置いておけないと言い出したのは父親の弟である亜紀良だった。
「すまんな。俺は親として最低だな」
「自覚してるなら長男は躾けなおしときなよ」
「育て方が悪かったのかな」
「そうや。気づいてなかったの? 長男ほっといてアルファの子にかかりっきりだったやん。そりゃ性格悪くなるわ」
「う……。お前は相変わらず辛辣やな」
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この日を境に俺は叔父である高塚亜紀良に引き取られたのだ。
ちなみに俺の口調が辛辣なのはこの人の影響である。
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