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第三章 家族とは
2-1 初モデル
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「すぐる? すぐるも来たんか?」
声をする方に振り向くとそこには女神がいた。真っ白なドレスに透き通るようなオーガンジーのリボンを幾重にも身にまとっていた。腰まで伸びた銀髪。瞬きするたび長いまつげが目元に影を落とす。白い肌にほんのり色づいたピンクの唇がほほ笑んでいた。
「ぼ、ぼく。知り合いに女神さまなんていたかな?」
「は? 何言うてんねん。しっかり見てみろ! こいつは朝比奈や」
「ええええ! めっちゃ綺麗。女神様一緒に写真を撮らせてください!」
「ぷ! ぶぁはははは! なんやその反応。すぐるはほんまに面白いなあ」
女神が僕の前で笑い転げた。
「朝比奈は小さい時から親父に頼まれてモデルの仕事をしてくれてるんや」
「ハジメの親父さんの頼みやからな」
確かに女性にしては低い声だ。間違いなく朝比奈の声だとわかるのに。まるで女神が地上に降臨したかのような神々しさを感じる。
「拝んでしまいそうだよ」
「なんでやねん」
「メイクさんの技だよ。この髪もかつら。ちゃんと股間にはイチモツがついてるで」
「いやいや。わざと夢を壊すようなことは言わないで~」
「しかし、すぐるも連れて来るって言うてくれたらよかったのに」
「言わんでもわかるかなって思ったんや」
「言ってくれないとわからんで」
「言わないとわからないよ」
「わ、悪い。二人して怒るなよ」
「怒ってないけど。僕、朝比奈さんがモデルしてるって知らなかった」
「それは、俺がモデルをするのはハジメの親父さんの服だけやから。一応性別不詳ってことにしてもらってるねん。だから見た目もどっちかわからんようメイクしてもらってる」
「そうだったの?」
「うん。隠してるわけじゃないけど。あんまりメディアとかに載りたくないねん。いろいろ探られるのは嫌だからね」
そうか。朝比奈にも人に知られたくない事があるのだろう。
「そうや、すぐるくん。この建物の中全部見た? 和洋折衷やで。一階の奥は和室になってた。二階のバルコニーからの景色は最高やったで。後で回っておいでよ。背景課題の参考になると思うで」
「本当ですか? 僕も気になってたんです! はい。後で行ってみます」
朝比奈とは開演前に会う約束をし、一旦分かれて一階の奥へと入ってみる。
「へえ。ここに使われている木材は外国のものなんかな?」
ハジメが柱に手を添えて材質の確認をしていた。何かまたインスピレーションがわいたのかもしれない。ハジメは新素材の布を開発中だ。自然素材だけでなく金属や食材まで。あらゆるモノから素材になるものを集めて回っている。原子分解まで考えて糸にしていくと布に出来るのだという。僕には理解できない。こういう時はそっとしておく。想像力を働かせてる時は邪魔をしたくない。
「僕、和室のほうに先に行ってるね」
異国風に装飾がされている扉を開けるとそこには畳が敷かれていた。
平机の傍には座布団が置いてあり、ふすまや障子が使われていた。それなのに天井には極彩色の壁画が描かれている。不思議な空間だった。浮世絵を思わせるようでいて東洋アジアっぽい。
「まるで異世界アニメの中に出てきそうな和室だな」
「ふむ。言いえて妙だな」
ふいに低音が聞こえてきてドキッとする。そこにはダブルスーツを着た紳士が立っていた。他に誰もいないと思ったから独り言を言ったのに。存在感を消していたとしか考えれない。
「すみません。誰もいないと思っていたものですから」
「いや、かまわない。実に的を得た感想やった。僕もこの空間をなんと口にすればいいんか悩んでいたんや」
「そうでしたか」
急にぐっと距離を詰められて壁際まで後ずさる。俗にいう壁ドンに近い状態だ。
「…………ふむ。容姿からみると原石といったところやな。なるほど。磨き方によっては良い色合いになりそうやな。君名前は?」
「す、すぐるといいます。あの、貴方は?」
「もしもし僕や。いい人材が見つかったぞ。さっき言っていた衣装にあうんやないか? すぐに来てくれ」
僕の問いかけに答えずにどこかと携帯で話し始めた。整った顔立ちに筋肉質な身体。この人はアルファなのかもしれない。関係者の方かな?何故か僕を逃さないように壁際に追い詰められた気がする。
「おい! 今すぐにすぐるから離れろ!」
後からやって来たハジメが飛びかかって来る。
「おや?」
「……っと。なんやあんたか」
殴り合いになるかと思ったが、知り合いだったのか? 互いに顔を見合わせると眉間に皺を寄せあった。ハジメが僕の手をひいて自分の元に引き寄せる。
「久しぶりやな」
「そうですね」
「ハジメくんが居るということはその子は君のか?」
「ええ。僕のですよ。高塚さん」
え? この人が高塚さん? 確か朝比奈さんの恋人だったはず。
「今日は朝比奈に会いに来たのですか?」
「そうだが、それだけやない。難波くんにも会いに来たんや」
「親父に会いに来たんですか? 仕事の話で?」
「いや、プライベートや」
なんだか刺々しい口調の二人に。僕はどうしていいのかわからなくなる。
声をする方に振り向くとそこには女神がいた。真っ白なドレスに透き通るようなオーガンジーのリボンを幾重にも身にまとっていた。腰まで伸びた銀髪。瞬きするたび長いまつげが目元に影を落とす。白い肌にほんのり色づいたピンクの唇がほほ笑んでいた。
「ぼ、ぼく。知り合いに女神さまなんていたかな?」
「は? 何言うてんねん。しっかり見てみろ! こいつは朝比奈や」
「ええええ! めっちゃ綺麗。女神様一緒に写真を撮らせてください!」
「ぷ! ぶぁはははは! なんやその反応。すぐるはほんまに面白いなあ」
女神が僕の前で笑い転げた。
「朝比奈は小さい時から親父に頼まれてモデルの仕事をしてくれてるんや」
「ハジメの親父さんの頼みやからな」
確かに女性にしては低い声だ。間違いなく朝比奈の声だとわかるのに。まるで女神が地上に降臨したかのような神々しさを感じる。
「拝んでしまいそうだよ」
「なんでやねん」
「メイクさんの技だよ。この髪もかつら。ちゃんと股間にはイチモツがついてるで」
「いやいや。わざと夢を壊すようなことは言わないで~」
「しかし、すぐるも連れて来るって言うてくれたらよかったのに」
「言わんでもわかるかなって思ったんや」
「言ってくれないとわからんで」
「言わないとわからないよ」
「わ、悪い。二人して怒るなよ」
「怒ってないけど。僕、朝比奈さんがモデルしてるって知らなかった」
「それは、俺がモデルをするのはハジメの親父さんの服だけやから。一応性別不詳ってことにしてもらってるねん。だから見た目もどっちかわからんようメイクしてもらってる」
「そうだったの?」
「うん。隠してるわけじゃないけど。あんまりメディアとかに載りたくないねん。いろいろ探られるのは嫌だからね」
そうか。朝比奈にも人に知られたくない事があるのだろう。
「そうや、すぐるくん。この建物の中全部見た? 和洋折衷やで。一階の奥は和室になってた。二階のバルコニーからの景色は最高やったで。後で回っておいでよ。背景課題の参考になると思うで」
「本当ですか? 僕も気になってたんです! はい。後で行ってみます」
朝比奈とは開演前に会う約束をし、一旦分かれて一階の奥へと入ってみる。
「へえ。ここに使われている木材は外国のものなんかな?」
ハジメが柱に手を添えて材質の確認をしていた。何かまたインスピレーションがわいたのかもしれない。ハジメは新素材の布を開発中だ。自然素材だけでなく金属や食材まで。あらゆるモノから素材になるものを集めて回っている。原子分解まで考えて糸にしていくと布に出来るのだという。僕には理解できない。こういう時はそっとしておく。想像力を働かせてる時は邪魔をしたくない。
「僕、和室のほうに先に行ってるね」
異国風に装飾がされている扉を開けるとそこには畳が敷かれていた。
平机の傍には座布団が置いてあり、ふすまや障子が使われていた。それなのに天井には極彩色の壁画が描かれている。不思議な空間だった。浮世絵を思わせるようでいて東洋アジアっぽい。
「まるで異世界アニメの中に出てきそうな和室だな」
「ふむ。言いえて妙だな」
ふいに低音が聞こえてきてドキッとする。そこにはダブルスーツを着た紳士が立っていた。他に誰もいないと思ったから独り言を言ったのに。存在感を消していたとしか考えれない。
「すみません。誰もいないと思っていたものですから」
「いや、かまわない。実に的を得た感想やった。僕もこの空間をなんと口にすればいいんか悩んでいたんや」
「そうでしたか」
急にぐっと距離を詰められて壁際まで後ずさる。俗にいう壁ドンに近い状態だ。
「…………ふむ。容姿からみると原石といったところやな。なるほど。磨き方によっては良い色合いになりそうやな。君名前は?」
「す、すぐるといいます。あの、貴方は?」
「もしもし僕や。いい人材が見つかったぞ。さっき言っていた衣装にあうんやないか? すぐに来てくれ」
僕の問いかけに答えずにどこかと携帯で話し始めた。整った顔立ちに筋肉質な身体。この人はアルファなのかもしれない。関係者の方かな?何故か僕を逃さないように壁際に追い詰められた気がする。
「おい! 今すぐにすぐるから離れろ!」
後からやって来たハジメが飛びかかって来る。
「おや?」
「……っと。なんやあんたか」
殴り合いになるかと思ったが、知り合いだったのか? 互いに顔を見合わせると眉間に皺を寄せあった。ハジメが僕の手をひいて自分の元に引き寄せる。
「久しぶりやな」
「そうですね」
「ハジメくんが居るということはその子は君のか?」
「ええ。僕のですよ。高塚さん」
え? この人が高塚さん? 確か朝比奈さんの恋人だったはず。
「今日は朝比奈に会いに来たのですか?」
「そうだが、それだけやない。難波くんにも会いに来たんや」
「親父に会いに来たんですか? 仕事の話で?」
「いや、プライベートや」
なんだか刺々しい口調の二人に。僕はどうしていいのかわからなくなる。
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