大阪らぷそてぃ

ゆうきぼし/優輝星

文字の大きさ
31 / 35
第三章 家族とは

9  真相

しおりを挟む
「…………」
「…………」
 草壁は茫然としている。その目からは涙がとめどなくあふれていた。

「なるほど。人に歴史ありだな」
「ああ。やはりそういうことか」
 観客と化していたハジメ父と高塚が沈黙を破った。

「見せもんじゃねえんだよ!」
 立花が怒鳴る。
「でも僕は知りたいことがわかりました。……ありがとうございます。立花さんも言いづらかったと思います。草壁さんはご存じなかったのでしょう? ならば責任を感じることはないです」
「すぐる。大丈夫か?」
 ハジメがそっと僕の手を握る。心なしか僕の手は震えていたようだ。
「うん。大丈夫。だって母さんは僕には悲しそうな顔を見せなかったんだよ。好きな人の子を産めて幸せだったって思うよ」
 ううううと草壁のむせび泣く声が聞こえた。
「お前は本当に梓によく似ているよ」
 立花が苦しそうな顔をする。


「じゃあ、僕らが聞きたいことを尋ねてもいいかね?」
 高塚が足を組みなおして顎をあげた。
「君、今は探偵事務所を開いてるようだね? すぐるくんに近づいたのは本当は高塚の本家からの依頼がきっかけじゃないのかな?」
「…………ぐ」
「うちのお家騒動にすぐるくんを巻き込まない様に脅して離れさせようとしたんやないんか?。だいたい名刺はフェイクやったのに。名前だけは本名を名乗るなんて、草壁がこちらにおる事に気づいてて牽制したんやないのかい?」
「……そうだ。前情報としてあの日、高塚の分家が本気で乗っ取りを考えてるからそれを阻止するように動きだせと指示が来たんや」
「乗っ取りやなんて。なんでそんなことになってるんや」
「朝比奈じゅん。あんたが関連してる。あんたが本家の血筋だからだ。今まで分家は血筋やなくアルファという繋がりだけだったから周りも油断していた。だが、そこで本家の血筋と婚姻を結び、アルファの子ができるとなると。名目上、高塚亜紀良の子は本家の子と肩を並べる地位となる」

「やっぱそうなるんや。めんどくさいなあ」
 軽口をたたいたのはハジメ父だった。
「こういうのがあるから僕はお家代々とかいう家系は嫌なんだよねえ」
「俺もそう思う。もう朝比奈の弟に家督を譲っちゃえばいいのに」
 ハジメも同じようなことを言い出す。似た者親子というところか。
「だが、あいつはまだ小学生や。無理強いしたくない」
 朝比奈は難しい顔をする。そりゃそうだよね。僕だって弟がまだ小さいのに家督を継げなんて言えないよ。

「そこは兄貴と相談中や。今回手を出してきたのは義姉さんのほうやろう」
 高塚が眉間に皺を寄せる。マフィアの首領ドンみたいな顔になっている。
「げっ……おばさんかいな。そりゃ大変やな」
 ハジメが肩をすくめる。
「怖い方なの?」
「ああ。アルファの女性は気が強い人が多いねん」
 という事は本家の奥さんはアルファなのだろう。
「ちなみに俺のおかんと姉貴もアルファや」
「ええ! そうだったんだ」
 これは気を引き締めねばなるまい。ハジメ母は今回は事業が忙しくて会えなくて残念とメールだけはいただいている。お姉さんのほうは海外で妊娠中だそうで、出産後帰国時に会う予定だ。




「なんの因果か。こんなことになるなんてなあ。あれから俺は警察をやめた。人を守るためになった職だったが、好きな人を一人……守ることも出来ない自分に嫌気がさしたからだ。だが結局できることは人探しや身辺調査で、仕方なく探偵事務所を開業してるってわけさ。警察関連の情報なら伝手があるしな」
 立花がしみじみといった感じでうなだれる。
「ふむ。立花と言うたな。君、僕と組みたまえ」
 あれ。この高塚の口調、この間僕に急にDNA鑑定をしろと言い出した時と一緒だ。横に居る朝比奈を見るとめっちゃ眉間に皺を寄せてる。これはまた悪い癖が出だしたとか思ってそうな顔だな。こういう人たちに囲まれているせいか最近人の顔を見るだけでなんとなく雰囲気がわかってきた。

「はあ? 急に何を言いだすんだ?」
「僕の子飼いにならへんか? 逆に本家の動向を教えてくれるとありがたい」
「二重スパイ? おお。危険な勤務だね。ひどい目にあわない? 大丈夫なの?」
「ぷは。ホンマにすぐるは言動が可愛いな」
 ハジメが僕の頭をなでる。どうして?子供扱いされてるような気がする。
「すぐる君にはそのままでいて欲しい。うんうん。ええ子や。うちの子にしよう」
「だから俺の婚約者やって」
 難波家の親子漫才は無視しておこう。

「報酬は二倍だす。たまにすぐる君にも会える。何も難しいことやない。僕は時期が来れば相続放棄をするつもりや。だがじゅんや僕らの子供の事はずっと見張られることになるやろう。その時のために少しだけ早く情報が欲しいだけや。どうや。これも縁や。いやこうなる宿命やったんやないかな?」
「宿命って怖いことを言うな。……だが悪い話じゃないな」
「無理強いはせえへん。定期的に報告がもらえるなら報酬は保証する。返事は?」
 高塚の問いかけに立花は自分のよれよれのシャツをじっと見つめてわかったと返事をした。


「残りは草壁やな」
 ハジメ父がテーブルに突っ伏している草壁に声をかけた。
「……僕はどうしたらいいんでしょうか?」
 泣きすぎて真っ赤に腫れた眼をしたまま僕を見つめる。
「あの、僕は何も望んではいません。ずっと父親はいませんでしたし、それが当たり前だったので今更父親だと言われても僕自身どうしていいかわからないので。気にしないで下さい」
「いや、気にするやろ……げっ」
 高塚がつっこみを入れてきたが、すぐに朝比奈に肘鉄をくらっていた。

「そうか。すぐる君の気持ちは分かったで。それで草壁はどうしたいんや」
 ハジメ父が優しく問いかける。だが僕にはその声が優しすぎて怖かった。まるで草壁の次の一言を待ち構えているようだった。
「ぼ、僕は。僕に出来る事をしたい」
「じゃあ草壁は何ができるんや」
「それは…………見守ること……です」
「うん。よしよし。そうか。そうやな。今の草壁にできることはないな。それがわかっているだけでも合格としとこか。過ぎ去ったことを悔やみすぎても仕方がない。人は前を向いて生きていかなあかんからな。だからと言って忘れ去ってしまってもあかん。人は学ぶもんや。草壁は今は昔ほどベータ性に捕らわれてはいないやろ? だったらその生き方を示してみたらいいんやないかな。それをきっとすぐる君のお母さんは望んでいたんだろう」
「はい。……はい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす
BL
 αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。  努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。  世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。  失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。  しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。  あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?  コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。  小説家になろうにも掲載。

君に会いに行こう

大波小波
BL
 第二性がアルファの九丈 玄馬(くじょう げんま)は、若くして組の頭となった極道だ。  さびれた商店街を再開発するため、玄馬はあるカフェに立ち退きを迫り始める。  ところが、そこで出会ったオメガの桂 幸樹(かつら こうき)に、惹かれてしまう。  立ち退きを拒むマスターの弱みを握ろうと、幸樹に近づいた玄馬だったが、次第に本気になってゆく……。

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

君と運命になっていく

やらぎはら響
BL
母親から冷遇されている町田伊織(まちだいおり)は病気だから薬を欠かさず飲むことを厳命されていた。 ある日倒れて伊織はオメガであり今まで飲むように言われていたのは強い抑制剤だと教えられる。 体調を整えるためにも世界バース保護機関にアルファとのマッチングをするよう言われてしまった。 マッチング相手は外国人のリルトで、大きくて大人の男なのに何だか子犬のように可愛く見えてしまい絆されていく。

運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

春夏
BL
【完結しました】 『確率は100』の if story です。 本編は現代日本で知り合った2人が異世界でイチャラブする話ですが、こちらは2人が異世界に行かなかったら…の話です。Rには※つけます(5章以降)。「確率」とは違う2人の関係をお楽しみいただけたら嬉しいです。

パパ活は塾の帰りに。

茜琉ぴーたん
BL
 塾講師の下滝は、生徒の赤坂少年のことが気になっている。  彼は最近どうも元気が無く、挙動不審で落ち着かない。  悩みでもあるのかと下滝が助け舟を出したら、事態は思わぬ方向へと走り出す。 (58話+番外5話) *性描写あります。

処理中です...