詩片の灯影② 〜過去から来た言葉と未来へ届ける言葉

桜のはなびら

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噛み合い

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 ある日休み時間の教室で。
 
「ねええ、何でさっきのグループワークあんま喋んなかったの?」
「ね。厚東さん国語得意じゃん。助けてほしかったんだけどなぁ」

 真帆は、複数の女生徒に囲まれていた。

「……だって、みんな『昔の文章を読んで何のためになるのか』とか、登場人物の行動を『キモい』とか騒いでて、ちゃんとやる感じじゃなかったじゃん」

 真帆を咎めるような論調に、真帆は悪びれる様子もなく答えている。
 事実真帆は、自分が悪かったことなど何一つないと信じていたし、どちらかと言えば真剣に見えなかった周りの生徒らの方に問題があると考えていた。


「えー、ちょっとふざけただけじゃん」

「ねえ? グループワークはちゃんとやってたし」

「ちゃんと……? 草壁先生は、古典の作品と、それを原典とした現代の作品を読み比べて、共通点や相違点を洗い出すってテーマにしていたはずだよ。それは、文体の違いによる内容や読みへの影響を図る目的だと思う。でも、みんなが議論してたのって登場人物の行動ばかりだし、今の自分たちの倫理観や価値観に当てはめて感情や感覚で是非を論じてるだけじゃ……」

「そういうの、わかってんならなおさら参加してほしかったんだけど」

美紀みき……! ......ねえ、厚東さん? 先生自由にやって良いって言ってたじゃん。グループで出した考え方が、ひとつの形だって。だとしたら、グループの一員の厚東さんも参加すべきだし、意見や考えがあるならそれを出してグループの意見を形作るべきじゃない?」

「そーそー。カベセンこうも言ってたっしょ。グループワークの目的は積極的に意見交換してお互いの意見を尊重するコミュニケーションにもあるって」

「……先生のことカベセンって呼ぶの、あんま好きじゃない……」

「は? 今そんな話してなくない?」

「美紀!」

「いやいやいやいや……えー、まじ厚東さんカベセンとなんかあんじゃない?」

「ちょっと、志田しだちゃんも待って……!」

「下世話なことしか考えられない人に言っても仕方ない。私と先生の関係性はそんなくだらないものじゃない」

「へー、じゃあなんかあるって認めるってことじゃん。どっちが下世話よ」

「志田ちゃんっ! ……厚東さん、それて良いの? そのやり方って、草壁先生が言っていたことと合ってる? 別に私たちだって、下手に出てまで一緒にやってほしいなんて懇願するつもりは無いよ。ただ、どうせやるなら一緒にって……」

「別に、頼んでないから……みんなの邪魔はしないよ」

「……そう」

「チーコぉ……もーいーよ。行こ。時間無駄にしたわー」「まじそれー」
「…………うん……」


「…………」
 
 
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