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対峙
しおりを挟むある日の会議室で。
「お父さん、もうやめて。草壁先生は悪くない。むしろ私を助けてくれた」
「真帆は黙ってなさい。……どう思います? 十六歳なんてまだ子どもです。洗脳とまでは言いませんが……うちの子は少々内向的というか夢見がちというか、ある種の幼さがある。グルーミングはしやすかったでしょうねぇ」
「勝手に決めつけないで! 私のことなのに、私が黙ってお父さんが話すの? 勝手に決めつけたお父さんの中だけの真実を?」
「いい加減に……!」
「厚東さん。言い分はお伺いします。しかしですね、ご息女もご本人が仰る通り当事者です。大きな声を出されると威圧されてしまって本当のことが言えなくなってしまうかもしれません。真帆さんも、お父様にはお父様のお考えがあります。それは邪魔してはいけない。真帆さんは真帆さんの考えや言い分を、お父様との対立ではなく仰ってください」
「当事者ね……しかしその当事者が、既にこの有様なわけです。親の言うことも聞きやしない。それは家庭内での教育の範疇とおっしゃるのかもしれませんがね……この際、真帆の態度や在り方はいったん置いておくとしてもです。実態として生じている下衆な噂! これは家庭内の問題で生じたものではないでしょう? 学校があり、先生がおられるから起こった。そうでしかないのでは?」
「本件の起因となった要素です。当然事実関係の調査は進めています。結論から申し上げれば、当校及び当該教師に法的にも社会通念的にも問題となる言動や行動は確認できませんでした」
「でたよ。学校問題でよくある隠ぺい体質ってやつですか? その『確認できませんでした』って表現も卑怯ですよね。調査能力の低さから真実を暴けなかったことも『確認できない』になるわけですから。そして、確認できなかったことはなかったことにされるのです。実際は在っても、確認することができなかったというだけで」
「無いことを証明しろというのは、悪魔の証明って言うんだよ。証拠や証明は、訴えてる側がするの。問題があるとするならお父さん。お父さんが問題があったとする証拠を出さないとならないんだよ? 学校を追求する前に自分はどうなの?」
「真帆……! おまえっ……理屈ばかりぺらぺらと......!」
「……くだらない噂が問題で、そのことでお父さんが怒ってるなら……そのことに関しての原因なら、たぶん私解ってる。私が、言ったんだよ。先生とは特別だって。なにがどうとかって話なら、言いたくない。誰かを納得させるためだけに簡単な言葉で表して安易な形を与えたくない。ひとつ言えるのは、下世話な噂好きを喜ばすようなくだらない生き方はしているつもりは無いし、今後もする気はないよ。更に言えばそんな連中とは関わりたくもない。それは、くだらないうわさ話に振り回されてるくだらない人も同様」
これは自信をもって言えると、そんなに娘を信用できないのかと、真帆は強い眼差しで父親を見据えていた。
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