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本章

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 いろいろ巡っていたらどれも美味しそうで、アキさんが買ってくれたヤンニョムチキンの他、チーズハットグとたこ焼きも買った。たこ焼きは祷とシェアするので、そこまでたくさん食べるわけではない。
 ドリンクは控え室として用意された会議室のあるビルの一階に入っているコンビニで麦茶を買った。

 控室ではメイクが本格的に進行していて、ダンサーたちは口数が減ってきている。
 バテリアのメンバーも今日やるバツカーダのパターンや、ショーで使用する曲の音源を音量を落として流したり、打楽器のヘッド部分のネジをしめたりと、準備を進めていた。

 わたしと祷は食事を終えたら、スタッフTシャツに着替え、サポーター用袋にドリンクと紙コップ、衣装補修セットを入れた。
 控え室は施錠されるから貴重品の預かりは必要ない。わたしたちはバテリアの音出しのタイミングで一緒に出ることにしていた。
 イベント前のバテリアの様子も見ておきたかった。



 控え室のあるビルの外で、バテリアが音を出す。
 それだけでもひとが集まってくる。
 集まってきたひとの中には、「これはなんの音楽なのか」「何時にどこで披露するのか」などを訊いてくるひとがいた。
 祷が笑顔で丁寧に答え、「ぜひ観にきてください!」とPRをしていた。チームのリーフレットを渡すことも忘れない。
 わたしも負けてられないと思い、集まっているひとにこちらからリーフレットを渡しに行き、この後のパレードの開始時間やコースを伝えて回った。

 完スタ時間近くになると主催の担当の方と主催側のスタッフのひとたちがやってきた。
 パレード開始の位置は控え室のあるビルから少し歩く。ここからアテンドしてくれるのだ。

 程なくしてダンサーも降りてきた。着替えは既に済んでいるので、パフォーマンスはしていないのに注目や感嘆の声を浴びている。
 羽根飾りが大きく、エレベーターに乗れる人数が限られるので何回かに分けて次々とパシスタが集まってくる。
 身軽なマランドロたちは階段で降りてきたようだ。

 バンドのメンバーは先にステージの方に向かった。ショーはパレード後だからまだかなり早いが、音響のセッティングや楽器のチューニングなどをおこなう。
 スムーズに終えることができたら、しばらくは待機となるが、遠くからバテリアの音が聞こえたくらいのタイミングから、ステージにも観客が集まっているようなら、MCや歌などで観客を温めながら近づきつつあるバテリアの音を楽しむ趣向も考えているようだ。


 全員が集まったのを確認し、主催の担当者の先導で移動開始。ビルのひとたちやビル付近の屋台のひとたちからの「いってらっしゃい!」「がんばって!」の声を受け、手を振り応えながらの出陣だ。みんな良い顔をしていた。

 なんだかわたしも気合が入ってきた。
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