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本章
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主催の担当者に先導されてパレードのスタート位置まで移動する。
暦上は晩秋だ。空気は軽く、それほど暑くはないが、よく晴れていて日差しは強い。
移動中もスタート位置でのスタンバイしているところでも給水をして回った。
少し時間に余裕があったようで、パフォーマンス後に汗でメイクや髪型が崩れる前にと、カメラマンさんに集合写真を撮ることになった。サポーターのわたしたちも入れてもらえた。
改めて思えば、これがわたしにとっての初のイベント体験だ。
サポーターとはいえなんだか緊張してきた。
パレードの先頭はマランドロ三人が務める。
先導する担当の方とアルモニアとハルさんの三人が何か話していた。ハルさんが近くにいた祷を呼び、何かを伝えている。
頷いた祷が走って来た。
すれ違いざま、「はじまるよ!」と言って、そのまま後方へと向かう。
バテリアを指揮する『ヂレトール』に何かをことづけしている。きっとハルさんからの伝令だ。
伝え終わった祷が戻って来た。
給水の分担は特に明確に決められてはいないが、なんとなく祷がダンサーグループの前半、わたしがダンサーグループの後半を中心に回る感じになっていた。
ヂレトールのカウントの声が響く。続いてバテリアの音がこだました。
始まった!
すごい。なんかすごい。
音が身体を震わせ、近くのダンサーたちが嬌声をあげ、手を叩いて観客を煽りながら踊り始めた。
パレードの先端には三人のマランドロ。ダンサー後半をカバーしているわたしの位置からはよく見えないが、ハルさんは『パンデイロ』というタンバリンのような形状の楽器を持ってきていて、手を叩く代わりに楽器を叩いて観客を盛り上げていた。
ゆっくりとパレードが動く。
パレードの隊列を実行委員のひとたちがトラロープで囲ってくれるが、観客のひとたちとは触れ合えるくらいの距離で、演者の迫力が観客を盛り上げ、観客の盛り上がりが演者を奮い立たせていた。
すごいすごい!
パレードが進み周りの観客は通り過ぎていっているのに、どの位置でも盛り上がっていた。
一緒になって踊っているひと。
ダンサーとハイタッチしているひと。
みんな笑顔だ。
はじめて柊に誘われて観に行ったイベントもパレードだった。
その時と同じような光景だが、パレードの内側から観客側を見るとまた全然印象が違っている。
これは演者側でしかわからない興奮だった。
サポーターだって演者側にいるのだ。見れば前方の祷も、後方にいるほかのサポーターも、手を叩いたり声をあげたりしている。わたしも手を叩いたり跳ねたりしながらパレードについていった。
特に我が事のように嬉しいと思ったのは、パレードを追ってずっとついて来てくれた小さな女の子とそのお母さん。
『ソルエス』が届けたサンバにこんなに夢中になってくれるなんて!
パレード終点の溜まりのところでは、隊列は乱れ、ダンサーが入り乱れてのパフォーマンスになった。
マランドロが次々パシスタをエスコートして来て踊らせたり、即興でダンサー同士が絡んだり。
帯同しているカメラマンや、地域のケーブルテレビのカメラにアピールしているダンサーもいる。みんなポーズが素敵で、芸能人みたいだ。
バテリアは楽器を鳴らしっっぱなしだ。
バテリアはずっと演奏していて、基本演奏中は給水は受けない。
長いパレードだから絶対疲れているはずなのに、みんな笑顔で演奏していた。
タンボリンやショカーリョの奏者たちはリズムに合わせて体を揺らしたり、ジャンプしたりと、動きを揃えて演奏している。躍動感があるし、見ていてとても楽しそう。
スルドのジャックさん、チカさん、キョウさんも長いパレードを笑顔でサンバのリズムの軸を守り続けていた。一定のリズムには安定感と安心感があり、楽器の重量に伴う疲労など感じさせない余裕があったが、きっと実際はかなり大変なのだろうな。
そうか、ただ正しく演奏すれば良いと言うわけじゃない。バテリアもパレードの一部。観客が見に来ている隊列の一部なのだ。
見られていると言うことも意識しないといけない。
暦上は晩秋だ。空気は軽く、それほど暑くはないが、よく晴れていて日差しは強い。
移動中もスタート位置でのスタンバイしているところでも給水をして回った。
少し時間に余裕があったようで、パフォーマンス後に汗でメイクや髪型が崩れる前にと、カメラマンさんに集合写真を撮ることになった。サポーターのわたしたちも入れてもらえた。
改めて思えば、これがわたしにとっての初のイベント体験だ。
サポーターとはいえなんだか緊張してきた。
パレードの先頭はマランドロ三人が務める。
先導する担当の方とアルモニアとハルさんの三人が何か話していた。ハルさんが近くにいた祷を呼び、何かを伝えている。
頷いた祷が走って来た。
すれ違いざま、「はじまるよ!」と言って、そのまま後方へと向かう。
バテリアを指揮する『ヂレトール』に何かをことづけしている。きっとハルさんからの伝令だ。
伝え終わった祷が戻って来た。
給水の分担は特に明確に決められてはいないが、なんとなく祷がダンサーグループの前半、わたしがダンサーグループの後半を中心に回る感じになっていた。
ヂレトールのカウントの声が響く。続いてバテリアの音がこだました。
始まった!
すごい。なんかすごい。
音が身体を震わせ、近くのダンサーたちが嬌声をあげ、手を叩いて観客を煽りながら踊り始めた。
パレードの先端には三人のマランドロ。ダンサー後半をカバーしているわたしの位置からはよく見えないが、ハルさんは『パンデイロ』というタンバリンのような形状の楽器を持ってきていて、手を叩く代わりに楽器を叩いて観客を盛り上げていた。
ゆっくりとパレードが動く。
パレードの隊列を実行委員のひとたちがトラロープで囲ってくれるが、観客のひとたちとは触れ合えるくらいの距離で、演者の迫力が観客を盛り上げ、観客の盛り上がりが演者を奮い立たせていた。
すごいすごい!
パレードが進み周りの観客は通り過ぎていっているのに、どの位置でも盛り上がっていた。
一緒になって踊っているひと。
ダンサーとハイタッチしているひと。
みんな笑顔だ。
はじめて柊に誘われて観に行ったイベントもパレードだった。
その時と同じような光景だが、パレードの内側から観客側を見るとまた全然印象が違っている。
これは演者側でしかわからない興奮だった。
サポーターだって演者側にいるのだ。見れば前方の祷も、後方にいるほかのサポーターも、手を叩いたり声をあげたりしている。わたしも手を叩いたり跳ねたりしながらパレードについていった。
特に我が事のように嬉しいと思ったのは、パレードを追ってずっとついて来てくれた小さな女の子とそのお母さん。
『ソルエス』が届けたサンバにこんなに夢中になってくれるなんて!
パレード終点の溜まりのところでは、隊列は乱れ、ダンサーが入り乱れてのパフォーマンスになった。
マランドロが次々パシスタをエスコートして来て踊らせたり、即興でダンサー同士が絡んだり。
帯同しているカメラマンや、地域のケーブルテレビのカメラにアピールしているダンサーもいる。みんなポーズが素敵で、芸能人みたいだ。
バテリアは楽器を鳴らしっっぱなしだ。
バテリアはずっと演奏していて、基本演奏中は給水は受けない。
長いパレードだから絶対疲れているはずなのに、みんな笑顔で演奏していた。
タンボリンやショカーリョの奏者たちはリズムに合わせて体を揺らしたり、ジャンプしたりと、動きを揃えて演奏している。躍動感があるし、見ていてとても楽しそう。
スルドのジャックさん、チカさん、キョウさんも長いパレードを笑顔でサンバのリズムの軸を守り続けていた。一定のリズムには安定感と安心感があり、楽器の重量に伴う疲労など感じさせない余裕があったが、きっと実際はかなり大変なのだろうな。
そうか、ただ正しく演奏すれば良いと言うわけじゃない。バテリアもパレードの一部。観客が見に来ている隊列の一部なのだ。
見られていると言うことも意識しないといけない。
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