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本章

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 バテリアのキメでダンサーが全員ビタッとポーズを決めた。
 周りから大きな拍手と歓声があがる。

 サポーターだけど、わたしもパレードの中の一員のような気持ちで、その歓喜を身に受けた。


 ずっとついて来ていた母娘に、主催のスタッフさんが、次はステージでのショーがあることと、その時間を伝えていた。



 パレードの終点から少し移動してステージの脇で出番を待つ出演者たち。
 パレード中はほとんど給水を受けられていないバテリアメンバーを中心に給水をして回る。程なくバテリアはステージ上で隊列を組み、バンドが音声チェックを終えたらすぐに演奏が始まる。
 ダンサーはプログラムの順番でそれぞれの出番になったら出ていくので、まだ舞台袖で待機の姿勢だ。
 バテリアがステージ上に移動し始めたあたりでダンサーにも給水していく。
『クリアンサス』と呼ばれる子どものダンサー(と言っても中学生でわたしもそう変わらない年齢だが)でゆうという子が、痛そうに踵をさすっていた。

「ゆうちゃん、どうしたの?」

 訊くと、靴擦れで踵が擦りむけてしまったようだ。
 サンバシューズを外して患部を見る。血も出ていて痛そうだった。

「がんちゃん、そのまま足首固定してて」

 様子に気づいた祷が小走りで寄ってきて、スタッフ用のカバンの中からテーピングを取り出し、手際よく患部を保護していく。

「シューズ履ける?」

「うん」

「どう?」

「大丈夫、痛くない。これなら踊れる!」

 嬉しそうに言うゆうちゃんに、笑顔で「がんばって! でも無理しちゃだめだよ」と祷。ゆうちゃんはわたしと祷に元気よく「ありがとう!」と言って同じタイミングで出る予定のクリアンサスの仲間の元に戻って行った。


 給水や塩分タブレットの提供も一巡した頃、司会者による『ソルエス』の紹介が始まった。

 チーム紹介が終わると、いよいよ始まる。
『カバキーニョ』の軽快な前奏が大きなスピーカーから流れてきた。先日のプレゼン時の祷が演奏したウクレレも格好良かったが、より甲高く鋭い音が焦燥感のような感情を掻き立てて、出演前の昂りを煽っているようだった。

 ダンサーたちの緊張が伝播したようで、わたしもドキドキしてきた。

 ヂレトールのホイッスルが響き、バテリアの演奏が加わる。
 歌い手『カントーラ』のゆきえさんとアリスンの歌がメロディとリズムに乗って会場を包むと同時に、最初のダンサーたちがステージに登場した。会場からは演奏の音に負けないどよめきと歓声が上がった。

 そこから先は怒濤の展開で、曲が変わるごとにダンサーたちは編成を変え入れ替わり立ち替わりステージに立ち、それぞれの曲に合わせたパフォーマンスを繰り広げた。

 集団の群舞であったり。

 少数で息の合わせたコレオ(振り付け)であったり。

 実力はダンサーたちが順にソロでフリーで踊ったり。

 バテリアの女王という立ち位置のトップダンサーのひとり、『ハイーニャ・ダ・バテリア』を担うダンサーがバテリアの隊列に入って行ってバテリアを鼓舞し、バテリアも応えるようにハイーニャを煽ったり。

 最後は全ダンサーが出てきて、観客にギリギリまで近づいて会場を大いに盛り上げていた。


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