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本章

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 集合場所の駅前のロータリーには、すでにしいちゃんが来ていた。

「おはよー」

「はよー」

「わたし二番目?」

「んーん、ルカとみやちゃんももう来てる。今コンビニ行ってる」

 ルカは少し不思議そうに辺りを見回した。

「あれ? がんちゃんだけ?」

 集合場所にはわたしは車で来ると言ってあった。祷と一緒に。

「お姉ちゃんも一緒だよ。駅の逆側に行っちゃって、こっち側に出るの大変そうですぐいける自信がないからって、わたしだけ降りて駅の中通ってこっちに来たの。なので、遅れたらごめんなさいって」

 祷も最近は運転に慣れてきたようだけど、道などに詳しくなったわけではないし、想定していなかったことに関しての対応には弱いようだ。

「そーなんだ? まだ集合時間前だからあせらなくても良いけどね。でも意外。柊のお姉さんもだけど、がんちゃんのお姉さんもしっかりしてそうな印象だったから、間違えちゃってるのなんかかわいい」

 祷はいつもはしっかりしてるよ。それに能力だって高いんだから。
 祷は意外と抜けているところもあるよ。結構かわいいんだから。

 祷のことを言われ、優秀な姉を誇示したくもあり、本当は親しみやすい可愛らしさもあることを理解してもらいたくもあり、何やら複雑な気持ちでリアクションを迷っていたら、三方向から同時に声が上がった。

「あ、がんちゃーん、おはよー」
「おはよー!」

 袋いっぱいに商品が詰まったコンビニ袋をふたりして両手に持ったルカとみやちゃん。

「しいちー、がんちゃん! おはよっ」
「おはよう。お待たせしちゃった?」

 駅からやってきた柊と穂積さん。

「おはよ、お待たせー、ごめんね、逆側に行っちゃってー」
 ロータリーの一般車両を停められるところに停まった車の中から出てきて、わたしとルカに集まりつつある集団に向かって声をかける祷。

 みんな、お待たせと言っているけどまだ集合十五分前だ。柊でさえ。まあ穂積さんがついてるんだから当然と言えば当然か。

「おはよう」
「おはようございまーす」

 穂積さんや祷の挨拶に、一応みんな丁寧な挨拶をしている。

「今日は混ぜてもらっちゃってありがとうね」

 穂積さんがいうと、しいちゃん、ルカ、みやちゃんは「ご一緒できて嬉しいです」「今日楽しみでした!」などと殊勝なことを言っている。何故か柊が得意げな顔をしていた。


「みんな揃ってるの? あとは.....」

「うん、もう来るって」

 祷の問いに、スマートフォンの画面を確認して答えた。

 駅前の信号で止まっているらしい。「もう着く」とのメッセージがまさに今届いた。




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