144 / 215
バイアーナ、サラ
しおりを挟む
サラは『パシスタ』のほか、コステイロを身に付けないドレスで踊ったり、『バイアーナ』で参加したりと、手薄なポジションに積極的に入ってくれる『ソルエス』のユーリティリープレーヤーだ。
今日は『バイアーナ』がジナひとりだけになってしまいそうだったので、サラは『バイアーナ』で参加していた。
今日はふたりきりの『バイアーナ』同士で長いパレードとステージをやり切った戦友だ。新たな友情でも芽生えたのだろうか。
サラは私の手からジナを守ろうと身体を張っている。
なるほど、確かにサラの言う通り、早くもジナはよくわからないことを言うようになっている。もしくは同じことばかり喋っている。それも意味のない内容の。これが「できあがっている」と言うやつかもしれない。
しかし、甘い。サラの持つグラスも空ではないか。ジナが壊れてしまったのなら、サラが受け止めなくては、ね。
「サラー。いぇー」
ジナの真似をしながらからのグラスにワインを注いでやる。
「えー⁉︎」
困ったような表情をしているサラ。それで逃れられるとでも?
「いぇー」
笑顔で私のグラスをサラのものに重ねる。もちろん、私はノンアルコールだ。
会話にすらなっていないやり取りながら、サラに何かが伝わったのか、こくこくとワインを飲んでいる。
「うわー、いのり魔性―」
「いのり、キャバクラに勤めたらすごい売り上げ叩き出しそー」
横並びにいたみこととゆうがいじってくる。
ゆうは童顔でかわいい。
そんな幼い顔立ちのゆうから、キャバクラなんて言葉が出てきて一瞬どきりとしたが、ゆうももう中学生だ。
ゆうの顔の印象は以前に見せてもらった小学生の頃とあまり変わっていない。
幼稚園の頃からサンバを続けている実は大ベテランだが、その頃の写真と比べても変わってないまである。
が、身体は順調に育っていて、知り合って数か月の私でさえ、初めて会った日よりも背が伸びてるのではと思うほどだ。精神面や知識面だって日に日に成長しているのだろう。
みんな、この『ソルエス』に入って、一緒に練習したり、イベントに出たり。浅草サンバカーニバルでは、テーマを作ったり衣装を造ったりもする。
時には意見がぶつかったり、揉めたりもするらしい。
家族のような団体だけど、新しい人が入る一方、辞めていってしまうひともいる。
老若男女、いろんな他人が集まって、笑ったり騒いだり、時には怒ったり泣いたりしながらも、一年一年を過ごしている。
子どもたちの成長には目を見張るものがあるが、おとなのみんなだって等しく日々を重ねている。
今、私はすごく楽しい。
この楽しい場は、この場にいるみんなが創っている。
その時間が積み上がって日々となり、月日となる。
私にこんなにも楽しい時間をくれた『ソルエス』に、私もみんなが楽しめる時間を、機会を創っていきたい。そんな『ソルエス』に入りたいと思うひとを、増やしていきたいな。
今日は『バイアーナ』がジナひとりだけになってしまいそうだったので、サラは『バイアーナ』で参加していた。
今日はふたりきりの『バイアーナ』同士で長いパレードとステージをやり切った戦友だ。新たな友情でも芽生えたのだろうか。
サラは私の手からジナを守ろうと身体を張っている。
なるほど、確かにサラの言う通り、早くもジナはよくわからないことを言うようになっている。もしくは同じことばかり喋っている。それも意味のない内容の。これが「できあがっている」と言うやつかもしれない。
しかし、甘い。サラの持つグラスも空ではないか。ジナが壊れてしまったのなら、サラが受け止めなくては、ね。
「サラー。いぇー」
ジナの真似をしながらからのグラスにワインを注いでやる。
「えー⁉︎」
困ったような表情をしているサラ。それで逃れられるとでも?
「いぇー」
笑顔で私のグラスをサラのものに重ねる。もちろん、私はノンアルコールだ。
会話にすらなっていないやり取りながら、サラに何かが伝わったのか、こくこくとワインを飲んでいる。
「うわー、いのり魔性―」
「いのり、キャバクラに勤めたらすごい売り上げ叩き出しそー」
横並びにいたみこととゆうがいじってくる。
ゆうは童顔でかわいい。
そんな幼い顔立ちのゆうから、キャバクラなんて言葉が出てきて一瞬どきりとしたが、ゆうももう中学生だ。
ゆうの顔の印象は以前に見せてもらった小学生の頃とあまり変わっていない。
幼稚園の頃からサンバを続けている実は大ベテランだが、その頃の写真と比べても変わってないまである。
が、身体は順調に育っていて、知り合って数か月の私でさえ、初めて会った日よりも背が伸びてるのではと思うほどだ。精神面や知識面だって日に日に成長しているのだろう。
みんな、この『ソルエス』に入って、一緒に練習したり、イベントに出たり。浅草サンバカーニバルでは、テーマを作ったり衣装を造ったりもする。
時には意見がぶつかったり、揉めたりもするらしい。
家族のような団体だけど、新しい人が入る一方、辞めていってしまうひともいる。
老若男女、いろんな他人が集まって、笑ったり騒いだり、時には怒ったり泣いたりしながらも、一年一年を過ごしている。
子どもたちの成長には目を見張るものがあるが、おとなのみんなだって等しく日々を重ねている。
今、私はすごく楽しい。
この楽しい場は、この場にいるみんなが創っている。
その時間が積み上がって日々となり、月日となる。
私にこんなにも楽しい時間をくれた『ソルエス』に、私もみんなが楽しめる時間を、機会を創っていきたい。そんな『ソルエス』に入りたいと思うひとを、増やしていきたいな。
0
あなたにおすすめの小説
スルドの声(交響) primeira desejo
桜のはなびら
キャラ文芸
小柄な体型に地味な見た目。趣味もない。そんな目立たない少女は、心に少しだけ鬱屈した思いを抱えて生きてきた。
高校生になっても始めたのはバイトだけで、それ以外は変わり映えのない日々。
ある日の出会いが、彼女のそんな生活を一変させた。
出会ったのは、スルド。
サンバのパレードで打楽器隊が使用する打楽器の中でも特に大きな音を轟かせる大太鼓。
姉のこと。
両親のこと。
自分の名前。
生まれた時から自分と共にあったそれらへの想いを、少女はスルドの音に乗せて解き放つ。
※表紙はaiで作成しました。イメージです。実際のスルドはもっと高さのある大太鼓です。
千紫万紅のパシスタ 累なる色編
桜のはなびら
キャラ文芸
文樹瑠衣(あやきるい)は、サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の立ち上げメンバーのひとりを祖父に持ち、母の茉瑠(マル、サンバネームは「マルガ」)とともに、ダンサーとして幼い頃から活躍していた。
周囲からもてはやされていたこともあり、レベルの高いダンサーとしての自覚と自負と自信を持っていた瑠衣。
しかし成長するに従い、「子どもなのに上手」と言うその付加価値が薄れていくことを自覚し始め、大人になってしまえば単なる歴の長いダンサーのひとりとなってしまいそうな未来予想に焦りを覚えていた。
そこで、名実ともに特別な存在である、各チームに一人しか存在が許されていないトップダンサーの称号、「ハイーニャ・ダ・バテリア」を目指す。
二十歳になるまで残り六年を、ハイーニャになるための六年とし、ロードマップを計画した瑠衣。
いざ、その道を進み始めた瑠衣だったが......。
※表紙はaiで作成しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
太陽と星のバンデイラ
桜のはなびら
キャラ文芸
〜メウコラソン〜
心のままに。
新駅の開業が計画されているベッドタウンでのできごと。
新駅の開業予定地周辺には開発の手が入り始め、にわかに騒がしくなる一方、旧駅周辺の商店街は取り残されたような状態で少しずつ衰退していた。
商店街のパン屋の娘である弧峰慈杏(こみねじあん)は、店を畳むという父に代わり、店を継ぐ決意をしていた。それは、やりがいを感じていた広告代理店の仕事を、尊敬していた上司を、かわいがっていたチームメンバーを捨てる選択でもある。
葛藤の中、相談に乗ってくれていた恋人との会話から、父がお店を継続する状況を作り出す案が生まれた。
かつて商店街が振興のために立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』と商店街主催のお祭りを使って、父の翻意を促すことができないか。
慈杏と恋人、仕事のメンバーに父自身を加え、計画を進めていく。
慈杏たちの計画に立ちはだかるのは、都市開発に携わる二人の男だった。二人はこの街に憎しみにも似た感情を持っていた。
二人は新駅周辺の開発を進める傍ら、商店街エリアの衰退を促進させるべく、裏社会とも通じ治安を悪化させる施策を進めていた。
※表紙はaiで作成しました。
スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
大学生となった誉。
慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。
想像もできなかったこともあったりして。
周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。
誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。
スルド。
それはサンバで使用する打楽器のひとつ。
嘗て。
何も。その手には何も無いと思い知った時。
何もかもを諦め。
無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。
唯一でも随一でなくても。
主役なんかでなくても。
多数の中の一人に過ぎなかったとしても。
それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。
気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。
スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。
配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。
過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。
自分には必要ないと思っていた。
それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。
誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。
もう一度。
今度はこの世界でもう一度。
誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。
果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。
スルドの声(共鳴) terceira esperança
桜のはなびら
現代文学
日々を楽しく生きる。
望にとって、それはなによりも大切なこと。
大げさな夢も、大それた目標も、無くたって人生の価値が下がるわけではない。
それでも、心の奥に燻る思いには気が付いていた。
向かうべき場所。
到着したい場所。
そこに向かって懸命に突き進んでいる者。
得るべきもの。
手に入れたいもの。
それに向かって必死に手を伸ばしている者。
全部自分の都合じゃん。
全部自分の欲得じゃん。
などと嘯いてはみても、やっぱりそういうひとたちの努力は美しかった。
そういう対象がある者が羨ましかった。
望みを持たない望が、望みを得ていく物語。
スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
何かを諦めて。
代わりに得たもの。
色部誉にとってそれは、『サンバ』という音楽で使用する打楽器、『スルド』だった。
大学進学を機に入ったサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』で、入会早々に大きな企画を成功させた誉。
かつて、心血を注ぎ、寝食を忘れて取り組んでいたバレエの世界では、一度たりとも届くことのなかった栄光。
どれだけの人に支えられていても。
コンクールの舞台上ではひとり。
ひとりで戦い、他者を押し退け、限られた席に座る。
そのような世界には適性のなかった誉は、サンバの世界で知ることになる。
誉は多くの人に支えられていることを。
多くの人が、誉のやろうとしている企画を助けに来てくれた。
成功を収めた企画の発起人という栄誉を手に入れた誉。
誉の周りには、新たに人が集まってくる。
それは、誉の世界を広げるはずだ。
広がる世界が、良いか悪いかはともかくとして。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる