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第35話 曾祖父と祖父
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3日後、朝早くから副村長とその息子は村を出て、枯れた『春の草原』を歩いていた。
その2人の後ろを付いて行ったのは白い髪の妖精。まだ人間と契約していない為、妖精を見ることができる人間にしか姿が見えない。その利点を利用して副村長親子の尾行をすることになった。
一方スミレは、副村長親子の遥か上空を飛んでいた。スミレはケインと契約している為、すべての人間に姿が見える。近づくと尾行していることがばれてしまうため、上空から親子の行き先を確認することになった。スミレが移動する経路はヴァーグのパソコンに地図として記録されるため、何かあった時、すぐに駆け付けることができる。
今日、喫茶店は臨時休業となった。三日目に休業の告知をしていた為、親たちからの反発はなかった。
喫茶店にはヴァーグ、エテ王子、リオだけがおり、ヴァーグとエテ王子はパソコンの画面に映し出されたスミレと白い髪の妖精が身に着けたブローチから送られてくる映像を見つめている。
リオは王都に戻った際、王立研究院から持ってきた冬の女神を契約を結んでいた人間の事が書かれている書物と格闘していた。六人掛けのテーブルに山積みにされた書物は、1人で持つのも苦労する大きな厚い本から、誰かが書き残した直筆の紙の束まであり、ヴァーグから借りたアイテムボックス機能付きのカバンに詰め込んで戻ってきた。
因みにケインはレストランの助っ人に駆り出されている。ケインの祖母アンが所属する老人会のお茶会の為、20人近くいる参加者のケーキ作りに追われているようだ。一段落つき次第、ヴァーグたちに合流する。
パソコンの画面に映し出されている映像は、枯れた『春の草原』を歩く副村長親子が映し出されているだけで、何の変化もない。ただ、親子の足元は枯れた草花から、草花が全く生えていない地面へと変わり、徐々に森に近づいている事を物語っていた。
「う~…ん?」
画面を見ていたヴァーグが首を傾げた。
「どうかされたんですか?」
「副村長、もしかして森に行き慣れていないのかな?」
「どういうことですか?」
「これを見て。親子の真後ろを尾行している白い髪の妖精さんの通った道を地図に記されているんだけど、蛇行しながら歩いているみたい」
パソコンの画面には三つの画面が映し出されていた。スミレから見た上空からの映像、白い髪の妖精から見た親子の後ろ姿の映像、そして村周辺の地図にスミレ(紫)と白い髪の妖精(黄色)がたどった道筋が記された画像だ。妖精たちがたどった道筋は地図を蛇行しながら記されていた。映像を見る限り、2人の妖精が親子を見失った様子はなく、しっかりと姿を捕らえられている。
「副村長は初めて行くのかもしれませんね」
「息子が通い慣れているけど、親が口出しをしている…とか? でも、妖精たちにはマイク付きのインカムを渡しているから、会話も聞こえるはずなんだけど…」
「2人とも通い慣れていない感じですね。どうやって一度に大量の薔薇や花を持ち帰ることができたのだろう」
エテ王子は、映像に映る親子が大きな袋を持っていない事に疑問を抱いた。大量の花を持ち帰るのならそれなりに大きな袋が欲しいはずだ。だが親子は手に何も持っていない。リュックの中にしまっているのか?と思ったが、2人ともリュックすら持っていない。ではどうやって…?
「…アイテムボックス…」
「え?」
「この親子、アイテムボックスを持ってる」
映像に映る親子の肩からは、芸術祭の時に村人に配った小さなカバンが掛けられていた。ウエストポーチよりは大きいが、見た目では薔薇の花だけを摘み、四つか五つ入るか入らないかの大きさだ。とても茎付きの薔薇を入れられる大きさではない。
「アイテムボックス?」
「わたしの不思議道具の一つ。リオさんが王都に戻るときに貸した無限に物を入れられる魔法のカバンなの。芸術祭で荷物の運搬に使うために村人の代表者に配ったんだけど、すべて回収しているし、在庫もあっている。一体誰から貰ったの?」
アイテムボックスは女神から買える物。一般の人間が買える代物ではない。だとすると、自分以外にこの世界に来た異世界人がいるのかもしれない。女神が何人かこの世界に送り込んでいるのかもしれない。異世界からやってきたのは自分独りだと思い込んでいたが、思わぬ『同業者』が現れたのかもしれない。
その時、一通のメールが入った。女神からのメールだ。
すぐに読みたい衝動に駆られたが、すぐ隣にはエテ王子がいる。彼の前で読むわけにはいかない。前回のメールは幸いにも誰も覗いていなかった。だからすぐに読むことが出来た。
ヴァーグはチラッとエテ王子を見た。
何かを察したのか、エテ王子は「リオの様子を見てくる」と席をはずしてくれた。
ホッと安心したヴァーグは急いで女神アイコンをクリックした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
|何故、アイテムボックスを持っているのか|
|気になりますよね? |
|わたくしも不思議でたまりません。 |
|あなたがいるその世界は、わたくしが管理|
|しています。 |
|ですので、わたくしの許可なしに他の世界|
|の人間が入り込むなんてありえません。 |
|詳しく調査してみますわ。 |
|わたくしが管理している世界を荒そうなん|
|て怖いもの知らずですわ( ̄ー+ ̄)ニヤリ |
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一番最後の顔文字にヴァーグは身が震えた。真実を突き止めた時、女神の怒りが爆発しそうだ。
女神のメールから予想外の出来事と分かった。
だが、ヴァーグは何も焦っていなかった。
(前の世界で予想外の出来事ばかり起こっていたから、何とも思わないわ)
ヴァーグにとって、この予想外の出来事も経験値の積み重ねとでも思っているのだろう。むしろ、色々起きる出来事を楽しんでいるように見える。
パソコンを見ながらニヤニヤとしているヴァーグを横目に、エテ王子はリオの目の前に座り、積まれた書物の一つを手に取った。ピンク色の表紙のその本は研究内容や過去の歴史が描かれている物ではなく、ただの恋愛小説だった。誰が書いたのかわからないが、人間と契約を結んだ精霊が主人公のようだ。
「リオ、この小説はなんだ?」
机に伏せていたリオは、いつの間にか目の前に座っていたエテ王子の姿に驚き、椅子から転げ落ちた。
「お…王子!? いつの間に!?」
「ついさっきだよ。で、これは誰が書いたんだ?」
「そ…それは過去の文献をもとに、僕の母が趣味で書いた本です。過去の文献を参考にしているだけあって、史実を巧みに織り込ませながら書き上げた最高傑作!!…っと本人が自慢していました」
「お前の母親、そんな趣味があったのか?」
いつもお堅い研究ばかりしているリオの母親からは想像つかない。本当に書いたのか?と疑いの目でリオを見るエテ王子。
「王子! 人は見た目で判断してはいけません! 僕の兄がいい例ではありませんか!!」
リオのその言葉に、エテ王子は「あ、そうだった」と納得した。そこまでエテ王子を納得させるリオの兄は一体何者なんだろう。
まだ妖精たちも目的地についていないようなので、エテ王子は暇つぶしにその小説を読むことにした。ただの恋愛小説だと思い込んでいたが、そこは王立研究院でお堅い研究をしているリオの母が書いただけはある。主人公である精霊の眼から見た国の歴史が詳しく描かれていた。下手に書物を漁るより詳しく書かれた国の歴史にエテ王子は夢中で読み続けた。
レストランで行われている老人会のお茶会は、出席者全員が違うケーキを注文したため、ケインとラインハルトは厨房の中を走り回っていた。事前に聞いた話では、全員同じケーキでいいと聞かされていたのに、その場になって全員が違うケーキを注文してきたのだ。あらかじめ作って置いたケーキを販売に回し、急いで作り直したケインとラインハルトから愚痴は一つもこぼれなかった。
側で見ていたジャンは呆気に取られていた。
「凄い…咄嗟に対応している……」
出席者は20人。20人が一つも被ることなく違うケーキを注文したという事は、20種類のケーキを作らなくてはならない。この店には20種類もないため、ほぼオーダーメイドのケーキを作らなくてはいけなかった。
「なんでメニュー以外のケーキも作れるんだ?」
ジャンはメニューにもない、ただ口頭で「こういうケーキが食べたい」という注文にも瞬時に答えるケインとラインハルトにただただ驚くばかりだ。
「この村の爺様婆様は我儘で頑固だからな。慣れればすぐに対応できるさ」
さらりというケインは、長い間この村で暮らしているから、馴染みの客の好みなど理解しているが、まだ移り住んで一年も経っていないラインハルトが柔軟に対応していることが驚く。王都で一緒に働いていた時より逞しく見えた。
「よし、これが終わったら俺は抜けるぞ!!」
そう叫びながらケインが作っているのは、小麦粉と卵と牛乳を混ぜた液体をフライパンではなく、四角い卵焼き用のフライパンで薄く焼き、それを生クリームを間に挟みながら積み重ねたミルクレープと呼ばれるケーキだった。四角いミルクレープを四つ作ると、一口サイズの正方形にカットした。
大きなお皿に20個並べると、残ったミルクレープは、銀色のバッドに詰め込み、ラップをかけて用意してあった大きなバスケットに詰め込んだ。銀色のバッドに入らなかった物は小さな皿に積み重ねた。
「ジャン、この小さい皿は今日の夕飯の賄として出してくれ」
「え!? いいのか!?」
「そのために作った。今晩は戻れるかわからないからな」
「ヴァーグさんのお手伝い?」
「そんなところ。じゃ、祖母ちゃんたちにこれを出したら、俺は上がるからな」
ケインは左手にバスケット、右手にミルクレープを20個乗せた大きな皿を持つと、「後は頼んだよ!」と厨房にいたラインハルトに声を掛けるとホールへと姿を消した。
いつの間にか頼りになる存在になったケインを見て、ラインハルトは小さく笑った。
「どうした?」
急に笑い出すラインハルトに、ジャンが声を掛けた。
「いや、ケインも変わったなって思っていただけ」
「そんなに変わったのか?」
「父さんの話だと、あの見た目だから小さい頃からからかわれていたらしく、しかも究極の方向音痴で、何をやっても成し遂げられなかったようだ。だけど、ヴァーグさんと出会ってあいつは変わった。今年の新年祭で見たこともない料理を作って、国王陛下の接客も完璧で、なんか悔しかった。あいつが出来るのならオレも出来る。そう思ってここで働かせてほしいって頼んだんだ。だけど、実際働いて見たら、あいつにあって、オレにない物を発見してしまった。初めて敗北を味わったよ」
「完璧なお前から見ても、凄い存在だったんだな」
ケインは凄い奴と言うラインハルト。だが、ジャンからしてみたらラインハルトも凄い人だと感じる。一緒に働いていた時よりも柔軟性があり、周りへの気配りも見習わなくてはと思う所もある。それはケインに刺激された事もあるが、一番の要因はヴァーグと出会ったことだろうと、ジャンは気づいていた。
「祖母ちゃん、これ、作りすぎたからみんなで食べて」
大皿に乗った一口サイズのミルクレープをテーブルに置かれると、老人会の人たちは歓声を上げた。
「いいのかい、ケイン」
「いいって、いいって」
「でも、無理言ってみんな違うケーキを作ってくれただろ? 迷惑だっただろ?」
「そんなことないよ。皆が喜んでくれるだけで俺は嬉しいから。それに、祖母ちゃんに俺が作ったケーキを食べてもらえて嬉しいよ」
「こっちこそありがとうね」
「じゃ、俺は出かけるから」
「ごゆっくり」とケインはアンに挨拶をしてレストランを出ていった。
そのケインをアンは追いかけた。
ケインは一階のロビーでエミーとコロリスと談笑していた。
「ケイン」
「どうしたの、祖母ちゃん」
「実はお前に話したことがあるんだけど……」
「今?」
「……ううん、また今度にするね。お前も忙しそうだから」
「そう? あ、祖母ちゃん、教えてほしい事があるんだけど、俺の曾祖父ちゃんの名前って何? この間、ゲン祖父さんが曾祖父ちゃんに会ったことあるって言うんだけど、名前を思い出せないんだって」
「わたしの父の名前かい? 父はアルバートだよ」
「じゃあ、祖母ちゃんの祖父ちゃんは?」
「わたしのお祖父さん? フィリップだけど…どうしてそんなことを聞くんだい?」
「ゲン祖父さんが教えてくれってしつこいんだよ。今、作っている騎士団の武器に関係あるのかな?」
「…そう…」
「おっと、のんびりしてられないや。エミー姉さん、今日は帰って来れないかもしれないから、後はよろしく」
軽く片手を掲げたケインは「じゃ!」と短く挨拶をすると、宿を飛び出して行った。
なぜ、ケインが曽祖父たちの名前を聞き出したのか、アンは不思議でならなかった。ゲンが知りたいのなら直接本人が聞いてこればいいのに、ケインを通す意味が解らなかった。
「お祖母さん、ケインの事が気になる?」
ケインと同じくアンに孫であるエミーは、腑に落ちない顔をしているアンが気になった。
「ケインを見ていると、亡くなった祖母と父にそっくりで、昔を思い出してしまうんだよ」
「「お祖母様とお父様?」」
エミーとコロリスは同時に首を傾げた。
「エミーもお嫁に行ってしまうし、ケインも大きくなったから、本当のことを話さないといけない時期になってしまったのかね」
「お祖母さん、それは家族だけが聞けるお話ですか?」
「そうだね。親族だけの内緒ごとだからね」
「そのお話、コロリスさんのご婚約者が聞くことはできませんか?」
「コロリスさんの婚約者…かい?」
「ええ。コロリスさん、エテ様にも聞いていただいたほうがいいのではないかと思うんです。私の曾お祖父さまは王宮から騎士団にスカウトされたことがあるそうなんです。絶対にエテ様もお聞きになったほうがいいですよね?」
コロリスはエミーが必死に勧める理由がわからなかった。だが「王宮」というキーワードが出た途端、それが何を意味するのか瞬時に理解できた。
コロリスは「エテ様に報告してきます」と告げると宿を飛び出して行った。宿を出たばかりのケインに追いつけば、エテ王子の処へ行けそうな気がしたのだ。
「コロリスさんの婚約者とは一体誰なんだい?」
「お祖母さんには衝撃が強いかもしれませんけど…」
そう前置きして、エミーはアンの耳元でエテ王子の事を話した。
案の定、アンは大きく目を見開き驚いた顔を見せた。
喫茶店に向かうケインに追いついたコロリスは2人でヴァーグ達のいる喫茶店に向かうことにした。
店に到着する手前で、喫茶店から飛び出してくるリオを見かけた。リオはケインとコロリスに気付くことなく、どこかへと走り去っていった。
「何があったのでしょうか?」
しばらく呆然と立ち尽くしていると、今度はエテ王子が飛び出してきた。
「エテ様!」
「コロリス、エミー嬢と買い物をするんじゃなかったのか?」
「どうしてもお教えしたい事がありまして…。それより、なにかありましたか?」
「どうもこうもないよ。副村長親子が立ち入り禁止の国有地に足を踏み入れたんだ。やっぱり、あの薔薇は人間が近づいてはいけない場所に生息していたようだ。親父に逮捕状を発行してもらいに王都に戻る所だ」
「わたしもお供します!」
「いや、コロリスはここで待っていろ」
「グリフォンのヴァンに乗っていけば、王都まで早く行けます。でもヴァンはわたしのいう事しか聞きません。それに王様にお聞きしたい事があります」
「あの話はまた後でもいいだろ?」
「その事ではありません。ケインさんの曾お祖父様とそのお父様の事です」
「ケインの曾祖父?」
エテ王子はケインを見た。
ケインは何も聞いていない事なので、バスケットを持っていない方の手を大きく顔の前で左右に振った。
嘘を付いているようには見えないコロリスの表情に、エテ王子は小さく頷いた。
「わかった。ケイン、お前はヴァーグさんと共に『妖精の里』に向かってくれ。リオには森の近くで待機するようにリチャードたちに伝えに行った。俺も王都から戻り次第、合流する」
「わかりました。連絡方法はどうするんですか?」
「ヴァーグさんからインカムを借りたから大丈夫だ。コロリス、王都に戻るぞ」
「はい!」
コロリスは保育所の庭にドラゴンのアクアと戯れているグリフォンのヴァンを呼んだ。
呼ばれたヴァンは羽根を大きく羽ばたかせながらコロリスの前に降り立った。
「今から王都まで飛んでほしいんだけど、お願いできるかしら?」
コロリスの問いかけにヴァンは大きく頷いた。
「今回もエテ様を乗せてほしいんだけどいい?」
二つ目の問いかけに、ヴァンはエテ王子の顔をじっと見つめた。
断られるかな~と心配していたが、ヴァンは二回大きく頷き、エテ王子の前に座り、彼が乗りやすい体勢をとった。
「ケイン、すぐに戻る」
ヴァンに乗ったエテ王子とコロリスは、一路王都へと向かった。
ヴァンが飛び立ってすぐに、店の中からヴァーグが飛び出してきた。
「あ…あれ? エテさんは?」
ドラゴンのアクアに、エテ王子を王都まで送り届けるように頼んだはずなのに、アクアはまだ庭にいるのに、エテ王子の姿は何処にもなかった。
「エテさんだったら、コロリスさんとグリフォンに乗って王都に向かいましたよ」
「ケイン、レストランの方はいいの?」
「一段落つきましたから。『妖精の里』に向かうんですよね? お供します」
「ケインが着いてきてくれるのなら、あれを持って行った方がいいわね。ちょっと待ってて。準備してくる」
ヴァーグは再び店の中に飛び込んでいった。
その直後、ケインの隣にドラゴンのオルシアが降り立った。
「オルシア」
「『妖精の里』に行くのだろ? 我に乗っていくといい」
「手伝ってくれるの?」
「ああ。それに、少し気になることがある」
「気になる事?」
「北の空から精霊の気配を感じた。何かが起きるかもしれない」
空を見上げたオルシアに釣られて、ケインも空を見上げた。
頭上は青い空が広がっていたが、北側には厚い雲が広がっていた。長年の経験からあれは雪雲だろう。もうすぐ本格的な冬がやってくる。この辺りも白い雪に覆われることになる。
しばらくして、トランクを片手にヴァーグが店から出てきた。
外で待機していたケインと共にオルシアに乗り込み、『妖精の里』へと向かった。
<つづく>
その2人の後ろを付いて行ったのは白い髪の妖精。まだ人間と契約していない為、妖精を見ることができる人間にしか姿が見えない。その利点を利用して副村長親子の尾行をすることになった。
一方スミレは、副村長親子の遥か上空を飛んでいた。スミレはケインと契約している為、すべての人間に姿が見える。近づくと尾行していることがばれてしまうため、上空から親子の行き先を確認することになった。スミレが移動する経路はヴァーグのパソコンに地図として記録されるため、何かあった時、すぐに駆け付けることができる。
今日、喫茶店は臨時休業となった。三日目に休業の告知をしていた為、親たちからの反発はなかった。
喫茶店にはヴァーグ、エテ王子、リオだけがおり、ヴァーグとエテ王子はパソコンの画面に映し出されたスミレと白い髪の妖精が身に着けたブローチから送られてくる映像を見つめている。
リオは王都に戻った際、王立研究院から持ってきた冬の女神を契約を結んでいた人間の事が書かれている書物と格闘していた。六人掛けのテーブルに山積みにされた書物は、1人で持つのも苦労する大きな厚い本から、誰かが書き残した直筆の紙の束まであり、ヴァーグから借りたアイテムボックス機能付きのカバンに詰め込んで戻ってきた。
因みにケインはレストランの助っ人に駆り出されている。ケインの祖母アンが所属する老人会のお茶会の為、20人近くいる参加者のケーキ作りに追われているようだ。一段落つき次第、ヴァーグたちに合流する。
パソコンの画面に映し出されている映像は、枯れた『春の草原』を歩く副村長親子が映し出されているだけで、何の変化もない。ただ、親子の足元は枯れた草花から、草花が全く生えていない地面へと変わり、徐々に森に近づいている事を物語っていた。
「う~…ん?」
画面を見ていたヴァーグが首を傾げた。
「どうかされたんですか?」
「副村長、もしかして森に行き慣れていないのかな?」
「どういうことですか?」
「これを見て。親子の真後ろを尾行している白い髪の妖精さんの通った道を地図に記されているんだけど、蛇行しながら歩いているみたい」
パソコンの画面には三つの画面が映し出されていた。スミレから見た上空からの映像、白い髪の妖精から見た親子の後ろ姿の映像、そして村周辺の地図にスミレ(紫)と白い髪の妖精(黄色)がたどった道筋が記された画像だ。妖精たちがたどった道筋は地図を蛇行しながら記されていた。映像を見る限り、2人の妖精が親子を見失った様子はなく、しっかりと姿を捕らえられている。
「副村長は初めて行くのかもしれませんね」
「息子が通い慣れているけど、親が口出しをしている…とか? でも、妖精たちにはマイク付きのインカムを渡しているから、会話も聞こえるはずなんだけど…」
「2人とも通い慣れていない感じですね。どうやって一度に大量の薔薇や花を持ち帰ることができたのだろう」
エテ王子は、映像に映る親子が大きな袋を持っていない事に疑問を抱いた。大量の花を持ち帰るのならそれなりに大きな袋が欲しいはずだ。だが親子は手に何も持っていない。リュックの中にしまっているのか?と思ったが、2人ともリュックすら持っていない。ではどうやって…?
「…アイテムボックス…」
「え?」
「この親子、アイテムボックスを持ってる」
映像に映る親子の肩からは、芸術祭の時に村人に配った小さなカバンが掛けられていた。ウエストポーチよりは大きいが、見た目では薔薇の花だけを摘み、四つか五つ入るか入らないかの大きさだ。とても茎付きの薔薇を入れられる大きさではない。
「アイテムボックス?」
「わたしの不思議道具の一つ。リオさんが王都に戻るときに貸した無限に物を入れられる魔法のカバンなの。芸術祭で荷物の運搬に使うために村人の代表者に配ったんだけど、すべて回収しているし、在庫もあっている。一体誰から貰ったの?」
アイテムボックスは女神から買える物。一般の人間が買える代物ではない。だとすると、自分以外にこの世界に来た異世界人がいるのかもしれない。女神が何人かこの世界に送り込んでいるのかもしれない。異世界からやってきたのは自分独りだと思い込んでいたが、思わぬ『同業者』が現れたのかもしれない。
その時、一通のメールが入った。女神からのメールだ。
すぐに読みたい衝動に駆られたが、すぐ隣にはエテ王子がいる。彼の前で読むわけにはいかない。前回のメールは幸いにも誰も覗いていなかった。だからすぐに読むことが出来た。
ヴァーグはチラッとエテ王子を見た。
何かを察したのか、エテ王子は「リオの様子を見てくる」と席をはずしてくれた。
ホッと安心したヴァーグは急いで女神アイコンをクリックした。
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|何故、アイテムボックスを持っているのか|
|気になりますよね? |
|わたくしも不思議でたまりません。 |
|あなたがいるその世界は、わたくしが管理|
|しています。 |
|ですので、わたくしの許可なしに他の世界|
|の人間が入り込むなんてありえません。 |
|詳しく調査してみますわ。 |
|わたくしが管理している世界を荒そうなん|
|て怖いもの知らずですわ( ̄ー+ ̄)ニヤリ |
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一番最後の顔文字にヴァーグは身が震えた。真実を突き止めた時、女神の怒りが爆発しそうだ。
女神のメールから予想外の出来事と分かった。
だが、ヴァーグは何も焦っていなかった。
(前の世界で予想外の出来事ばかり起こっていたから、何とも思わないわ)
ヴァーグにとって、この予想外の出来事も経験値の積み重ねとでも思っているのだろう。むしろ、色々起きる出来事を楽しんでいるように見える。
パソコンを見ながらニヤニヤとしているヴァーグを横目に、エテ王子はリオの目の前に座り、積まれた書物の一つを手に取った。ピンク色の表紙のその本は研究内容や過去の歴史が描かれている物ではなく、ただの恋愛小説だった。誰が書いたのかわからないが、人間と契約を結んだ精霊が主人公のようだ。
「リオ、この小説はなんだ?」
机に伏せていたリオは、いつの間にか目の前に座っていたエテ王子の姿に驚き、椅子から転げ落ちた。
「お…王子!? いつの間に!?」
「ついさっきだよ。で、これは誰が書いたんだ?」
「そ…それは過去の文献をもとに、僕の母が趣味で書いた本です。過去の文献を参考にしているだけあって、史実を巧みに織り込ませながら書き上げた最高傑作!!…っと本人が自慢していました」
「お前の母親、そんな趣味があったのか?」
いつもお堅い研究ばかりしているリオの母親からは想像つかない。本当に書いたのか?と疑いの目でリオを見るエテ王子。
「王子! 人は見た目で判断してはいけません! 僕の兄がいい例ではありませんか!!」
リオのその言葉に、エテ王子は「あ、そうだった」と納得した。そこまでエテ王子を納得させるリオの兄は一体何者なんだろう。
まだ妖精たちも目的地についていないようなので、エテ王子は暇つぶしにその小説を読むことにした。ただの恋愛小説だと思い込んでいたが、そこは王立研究院でお堅い研究をしているリオの母が書いただけはある。主人公である精霊の眼から見た国の歴史が詳しく描かれていた。下手に書物を漁るより詳しく書かれた国の歴史にエテ王子は夢中で読み続けた。
レストランで行われている老人会のお茶会は、出席者全員が違うケーキを注文したため、ケインとラインハルトは厨房の中を走り回っていた。事前に聞いた話では、全員同じケーキでいいと聞かされていたのに、その場になって全員が違うケーキを注文してきたのだ。あらかじめ作って置いたケーキを販売に回し、急いで作り直したケインとラインハルトから愚痴は一つもこぼれなかった。
側で見ていたジャンは呆気に取られていた。
「凄い…咄嗟に対応している……」
出席者は20人。20人が一つも被ることなく違うケーキを注文したという事は、20種類のケーキを作らなくてはならない。この店には20種類もないため、ほぼオーダーメイドのケーキを作らなくてはいけなかった。
「なんでメニュー以外のケーキも作れるんだ?」
ジャンはメニューにもない、ただ口頭で「こういうケーキが食べたい」という注文にも瞬時に答えるケインとラインハルトにただただ驚くばかりだ。
「この村の爺様婆様は我儘で頑固だからな。慣れればすぐに対応できるさ」
さらりというケインは、長い間この村で暮らしているから、馴染みの客の好みなど理解しているが、まだ移り住んで一年も経っていないラインハルトが柔軟に対応していることが驚く。王都で一緒に働いていた時より逞しく見えた。
「よし、これが終わったら俺は抜けるぞ!!」
そう叫びながらケインが作っているのは、小麦粉と卵と牛乳を混ぜた液体をフライパンではなく、四角い卵焼き用のフライパンで薄く焼き、それを生クリームを間に挟みながら積み重ねたミルクレープと呼ばれるケーキだった。四角いミルクレープを四つ作ると、一口サイズの正方形にカットした。
大きなお皿に20個並べると、残ったミルクレープは、銀色のバッドに詰め込み、ラップをかけて用意してあった大きなバスケットに詰め込んだ。銀色のバッドに入らなかった物は小さな皿に積み重ねた。
「ジャン、この小さい皿は今日の夕飯の賄として出してくれ」
「え!? いいのか!?」
「そのために作った。今晩は戻れるかわからないからな」
「ヴァーグさんのお手伝い?」
「そんなところ。じゃ、祖母ちゃんたちにこれを出したら、俺は上がるからな」
ケインは左手にバスケット、右手にミルクレープを20個乗せた大きな皿を持つと、「後は頼んだよ!」と厨房にいたラインハルトに声を掛けるとホールへと姿を消した。
いつの間にか頼りになる存在になったケインを見て、ラインハルトは小さく笑った。
「どうした?」
急に笑い出すラインハルトに、ジャンが声を掛けた。
「いや、ケインも変わったなって思っていただけ」
「そんなに変わったのか?」
「父さんの話だと、あの見た目だから小さい頃からからかわれていたらしく、しかも究極の方向音痴で、何をやっても成し遂げられなかったようだ。だけど、ヴァーグさんと出会ってあいつは変わった。今年の新年祭で見たこともない料理を作って、国王陛下の接客も完璧で、なんか悔しかった。あいつが出来るのならオレも出来る。そう思ってここで働かせてほしいって頼んだんだ。だけど、実際働いて見たら、あいつにあって、オレにない物を発見してしまった。初めて敗北を味わったよ」
「完璧なお前から見ても、凄い存在だったんだな」
ケインは凄い奴と言うラインハルト。だが、ジャンからしてみたらラインハルトも凄い人だと感じる。一緒に働いていた時よりも柔軟性があり、周りへの気配りも見習わなくてはと思う所もある。それはケインに刺激された事もあるが、一番の要因はヴァーグと出会ったことだろうと、ジャンは気づいていた。
「祖母ちゃん、これ、作りすぎたからみんなで食べて」
大皿に乗った一口サイズのミルクレープをテーブルに置かれると、老人会の人たちは歓声を上げた。
「いいのかい、ケイン」
「いいって、いいって」
「でも、無理言ってみんな違うケーキを作ってくれただろ? 迷惑だっただろ?」
「そんなことないよ。皆が喜んでくれるだけで俺は嬉しいから。それに、祖母ちゃんに俺が作ったケーキを食べてもらえて嬉しいよ」
「こっちこそありがとうね」
「じゃ、俺は出かけるから」
「ごゆっくり」とケインはアンに挨拶をしてレストランを出ていった。
そのケインをアンは追いかけた。
ケインは一階のロビーでエミーとコロリスと談笑していた。
「ケイン」
「どうしたの、祖母ちゃん」
「実はお前に話したことがあるんだけど……」
「今?」
「……ううん、また今度にするね。お前も忙しそうだから」
「そう? あ、祖母ちゃん、教えてほしい事があるんだけど、俺の曾祖父ちゃんの名前って何? この間、ゲン祖父さんが曾祖父ちゃんに会ったことあるって言うんだけど、名前を思い出せないんだって」
「わたしの父の名前かい? 父はアルバートだよ」
「じゃあ、祖母ちゃんの祖父ちゃんは?」
「わたしのお祖父さん? フィリップだけど…どうしてそんなことを聞くんだい?」
「ゲン祖父さんが教えてくれってしつこいんだよ。今、作っている騎士団の武器に関係あるのかな?」
「…そう…」
「おっと、のんびりしてられないや。エミー姉さん、今日は帰って来れないかもしれないから、後はよろしく」
軽く片手を掲げたケインは「じゃ!」と短く挨拶をすると、宿を飛び出して行った。
なぜ、ケインが曽祖父たちの名前を聞き出したのか、アンは不思議でならなかった。ゲンが知りたいのなら直接本人が聞いてこればいいのに、ケインを通す意味が解らなかった。
「お祖母さん、ケインの事が気になる?」
ケインと同じくアンに孫であるエミーは、腑に落ちない顔をしているアンが気になった。
「ケインを見ていると、亡くなった祖母と父にそっくりで、昔を思い出してしまうんだよ」
「「お祖母様とお父様?」」
エミーとコロリスは同時に首を傾げた。
「エミーもお嫁に行ってしまうし、ケインも大きくなったから、本当のことを話さないといけない時期になってしまったのかね」
「お祖母さん、それは家族だけが聞けるお話ですか?」
「そうだね。親族だけの内緒ごとだからね」
「そのお話、コロリスさんのご婚約者が聞くことはできませんか?」
「コロリスさんの婚約者…かい?」
「ええ。コロリスさん、エテ様にも聞いていただいたほうがいいのではないかと思うんです。私の曾お祖父さまは王宮から騎士団にスカウトされたことがあるそうなんです。絶対にエテ様もお聞きになったほうがいいですよね?」
コロリスはエミーが必死に勧める理由がわからなかった。だが「王宮」というキーワードが出た途端、それが何を意味するのか瞬時に理解できた。
コロリスは「エテ様に報告してきます」と告げると宿を飛び出して行った。宿を出たばかりのケインに追いつけば、エテ王子の処へ行けそうな気がしたのだ。
「コロリスさんの婚約者とは一体誰なんだい?」
「お祖母さんには衝撃が強いかもしれませんけど…」
そう前置きして、エミーはアンの耳元でエテ王子の事を話した。
案の定、アンは大きく目を見開き驚いた顔を見せた。
喫茶店に向かうケインに追いついたコロリスは2人でヴァーグ達のいる喫茶店に向かうことにした。
店に到着する手前で、喫茶店から飛び出してくるリオを見かけた。リオはケインとコロリスに気付くことなく、どこかへと走り去っていった。
「何があったのでしょうか?」
しばらく呆然と立ち尽くしていると、今度はエテ王子が飛び出してきた。
「エテ様!」
「コロリス、エミー嬢と買い物をするんじゃなかったのか?」
「どうしてもお教えしたい事がありまして…。それより、なにかありましたか?」
「どうもこうもないよ。副村長親子が立ち入り禁止の国有地に足を踏み入れたんだ。やっぱり、あの薔薇は人間が近づいてはいけない場所に生息していたようだ。親父に逮捕状を発行してもらいに王都に戻る所だ」
「わたしもお供します!」
「いや、コロリスはここで待っていろ」
「グリフォンのヴァンに乗っていけば、王都まで早く行けます。でもヴァンはわたしのいう事しか聞きません。それに王様にお聞きしたい事があります」
「あの話はまた後でもいいだろ?」
「その事ではありません。ケインさんの曾お祖父様とそのお父様の事です」
「ケインの曾祖父?」
エテ王子はケインを見た。
ケインは何も聞いていない事なので、バスケットを持っていない方の手を大きく顔の前で左右に振った。
嘘を付いているようには見えないコロリスの表情に、エテ王子は小さく頷いた。
「わかった。ケイン、お前はヴァーグさんと共に『妖精の里』に向かってくれ。リオには森の近くで待機するようにリチャードたちに伝えに行った。俺も王都から戻り次第、合流する」
「わかりました。連絡方法はどうするんですか?」
「ヴァーグさんからインカムを借りたから大丈夫だ。コロリス、王都に戻るぞ」
「はい!」
コロリスは保育所の庭にドラゴンのアクアと戯れているグリフォンのヴァンを呼んだ。
呼ばれたヴァンは羽根を大きく羽ばたかせながらコロリスの前に降り立った。
「今から王都まで飛んでほしいんだけど、お願いできるかしら?」
コロリスの問いかけにヴァンは大きく頷いた。
「今回もエテ様を乗せてほしいんだけどいい?」
二つ目の問いかけに、ヴァンはエテ王子の顔をじっと見つめた。
断られるかな~と心配していたが、ヴァンは二回大きく頷き、エテ王子の前に座り、彼が乗りやすい体勢をとった。
「ケイン、すぐに戻る」
ヴァンに乗ったエテ王子とコロリスは、一路王都へと向かった。
ヴァンが飛び立ってすぐに、店の中からヴァーグが飛び出してきた。
「あ…あれ? エテさんは?」
ドラゴンのアクアに、エテ王子を王都まで送り届けるように頼んだはずなのに、アクアはまだ庭にいるのに、エテ王子の姿は何処にもなかった。
「エテさんだったら、コロリスさんとグリフォンに乗って王都に向かいましたよ」
「ケイン、レストランの方はいいの?」
「一段落つきましたから。『妖精の里』に向かうんですよね? お供します」
「ケインが着いてきてくれるのなら、あれを持って行った方がいいわね。ちょっと待ってて。準備してくる」
ヴァーグは再び店の中に飛び込んでいった。
その直後、ケインの隣にドラゴンのオルシアが降り立った。
「オルシア」
「『妖精の里』に行くのだろ? 我に乗っていくといい」
「手伝ってくれるの?」
「ああ。それに、少し気になることがある」
「気になる事?」
「北の空から精霊の気配を感じた。何かが起きるかもしれない」
空を見上げたオルシアに釣られて、ケインも空を見上げた。
頭上は青い空が広がっていたが、北側には厚い雲が広がっていた。長年の経験からあれは雪雲だろう。もうすぐ本格的な冬がやってくる。この辺りも白い雪に覆われることになる。
しばらくして、トランクを片手にヴァーグが店から出てきた。
外で待機していたケインと共にオルシアに乗り込み、『妖精の里』へと向かった。
<つづく>
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