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第46話 薔薇の花言葉
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夕方、ゲンの工房にやってきたリオは、ケインが提案したガラス製品を作ることにした。
「とりあえず、丸い形で作ってみますね」
手慣れた様子で、ガラスの素を高温に熱した石窯の中に入れ、作業を進めていくリオ。
棒の先に着いていた粒状のガラスの素は、窯の中で赤く溶け始め、棒をクルクルと回すことで溶け始めたガラスの素は棒に巻き付いていた。
しばらくして窯から取り出すと、作業台の上に置かれた直径5cm、厚さ1cmの丸い型の中に流し込んだ。そしてすぐに鉄の棒のような物で平らにし、上から透明な箱を被せた。
「この箱は?」
「ガラスを冷やす為に必要な道具です。研究院で開発した【氷の結晶】を使った物です」
「え? 【氷の結晶】って存在するの?」
ケインにくっついてきたヴァーグは、新たな結晶の存在に驚いた。
「北の山の中に溶ける事のない氷がある洞窟があるんです。その奥にある湖から採取したと聞いています。ですが、今ではその場所がどこにあるのかもわからず、結晶の採掘も不可能になっています」
「だからわしが言ったじゃろ。物を冷やすことができる結晶も作ってくれって」
後ろからリオを見ていたゲンが口を挟んできた。
「ガラス細工は冷やすことが大切な工程ですからね。急激に冷やすと割れてしまうこともあるんです。魔法玉に使用するガラス玉は薄く仕上げますので、この箱はとても重要な物になります」
「刃物は焼き上げた後、形を整えて水の中で急激に冷やすことで、強度が増すんじゃよ。だから大量の水が欲しい」
「それで【水の結晶】が必要なのか」
「しかも冷たい水でなくてはならない。結晶が手に入ったことで、わしたちの作業も楽になったわい!」
いつもの豪快な笑いをしながら、ケインの背中をバシバシと叩くゲン。
その横でヴァーグは【氷の結晶】が取れたという場所について考えていた。
「……溶ける事のない氷のある洞窟……か」
ヴァーグにはそれに似た場所がある事を知っている。
それはレストランの厨房にある冷凍庫だ。この冷凍庫は主にアイスや飲み物に使う氷しか入れていない。もしかしたら大量の水を凍らせたら結晶ができるのかも?と思った。だが、ただ氷を作るだけでは結晶は生まれない気がした。【炎の結晶】がお湯を沸かす装置の中から見つかったように、何か衝撃が必要なのかもしれない。
それを考えると、なぜ【水の結晶】は井戸の中から見つかるのだろうか。それもゲンの鍛冶場のある井戸からしか見つかっていない。そしてなぜ15日周期で貯まるのか。
数分後、箱を外すと、そこには型に収まった透明な丸い平らなガラスが出来上がっていた。
型を外し、淵をやすりで削ると、リオは二つの丸い平らなガラスを組み合わせた。蓋を締めるように回しながら嵌め込むと、綺麗に繋ぎ目が消え、厚さ2cmの一枚の平たいガラスが完成した。
「これでいいですか?」
リオがケインの前に差し出すと、ケインは「これこれ!!」と興奮したように喜んだ。
「ただ、このままだと外れる可能性がありますので、周囲に薄いガラスを張り付けて外れないようにすることもできます。接着剤でも可能です」
「じゃあ…」
ケインは持参したカバンの中から、小さな麻袋を取り出し、空いている作業台の上に中身を広げた。
麻袋の中に入っていたのは、ビニールハウスで育てている花だった。小さい蕾や綺麗に咲かなかった小さな花などがあり、ケインはこの花を二枚のガラスの間に挟んで、ペンダントを作ろうとしていたのだ。
「なるほど。間に花を挟んでアクセサリーにするのか。わしの工房で働くアクセサリー職人にも教えたやりたい」
今まで誰も考えなかったアイデアにゲンは感心している。
リオもガラスの器の中に花を入れることはあったが、こうしたアクセサリーを作ることは思い浮かばなかった。
「ねえ、リオさん。この二枚のガラスの間に空洞を作ることはできる?」
「空洞…ですか? なにか中に入れるんですか?」
「ちょっとね」
「可能ですけど……今から作りましょうか?」
「お願いします」
ヴァーグも何か思いついたのか、リオに中が空洞になるように同じ物を作ってもらうように頼んだ。
すぐにそれは出来上がり、小さな器の様なガラスの片方に青色の小さなビーズを1/3埋まるように入れた。そしてもう一つのガラスを重ね、外れないように周囲を薄いガラスで纏ってもらった。
「これは面白い」
「中で物が動くのは斬新です」
ヴァーグが作ったのは、軽く振ることで、丸いガラスの中でビーズが動くペンダントトップだった。
「いい出来、いい出来! こういうアクセサリーが欲しかったの!!」
出来上がりに満足するヴァーグは嬉しそうにペンダントトップを握りしめた。
実は前の世界にいた時、これに似たペンダントを雑誌で見かけたことがあった。そのペンダントは中が宝石だったので、当時中学生だったヴァーグには手が出ない値段。それでもどうしても欲しかったヴァーグは安い物を探し続けたが、結局見つからなかった。
今回、ケインが考えたアイデアに、急に昔のことを思い出し、ここぞとばかりに作ることにしたのだ。
一方、ケインは間に挟む花の種類で迷っていた。
クリスティーヌ王女に似合う花を考えると、どうしても薔薇の花しか思いつかない。
「ヴァーグさん、どうしたらいいですか?」
結局彼女に助けを求めるケイン。
「薔薇の花だと、押し花にするよりかは、こっちの空洞の方を使った方がいいと思うわ」
「え? なんで?」
「押し花にするとちゃんとした工程を得ないと、花が傷ついてそこから傷んでしまうことがあるの。この空洞の方と使えば、ある魔法の水を使えば長持ちするわ」
「魔法の水?」
「で、どの花にするの?」
さらっと交わされたケインは、もう少し突っ込みたかったようだ。
ケインが用意したのは白薔薇と赤薔薇、そしてピンク色の薔薇の三種類だった。
「赤や白だと花言葉的に、王妃様が勘違いしそう」
「花言葉?」
「赤は『あなたを愛しています』、白は『私はあなたに相応しい』っていう花言葉があるのよ」
「え!!?? そうなんですか!!??」
すでに片づけに入っていたリオが驚いた顔でヴァーグを見てきた。
「ええ、そうよ。リオさん、カトリーヌさんに渡した時(*第15話参照)、知ってて白薔薇を使ったんじゃなかったの?」
「あの時はたまたま目に入っただけでして、カトリーヌ様に似合うかなと思って使っただけで…」
「じゃあ、何も知らずに白薔薇を渡したの? 本数にも意味があるの、知らなかったの!?」
「本数にも意味があるんですか!?」
「それも知らなかったのね……」
ただの偶然とはいえ、リオにとっては結果オーライだったわけだから、いまさら後悔することもない。
王都に戻った時、どういう顔でカトリーヌに会おうか、そればかり気になっているだけだ。
「で、ピンクは? 花言葉ってあるんですか?」
放置されていたケインが、すこし怒ったような声を出した。
「ピンクは『可愛い人』とか『美しい少女』っていう意味があるわ」
「『可愛い人』……うん、それにしよう」
(本当は『愛の誓い』っていう花言葉もあるんだよね……)という言葉は封印しておこうと思うヴァーグだった。
ヴァーグがビーズを入れた物と同じガラスの中にピンク色の小さな薔薇の花を入れた。
「無理でもいいから5本入れなさい!」
というヴァーグのアドバイスを受け、小さな小さなピンク色の薔薇の花を5本押し込むと、魔法の水を中に流し込んだ。そして蓋となるもう一つのガラスを合わせ、隙間を接着剤で固定した。
「この魔法の水ってなんですか?」
「シエルの鱗を溶かした水よ」
「なんでシエル?」
「シエルの鱗は品質を変えない効能があるでしょ? 少しでも長持ちさせるために使っただけよ」
「でも、少し粘りがありましたよね?」
「少量の洗剤を入れているから。よくスノードームを作る時に身近な材料として使われていたみたいなの」
「「「すのーどーむ???」」」
初めて聞く言葉に、ケイン、リオ、ゲンの三人は同時に同じ方向に首を傾げた。
この世界ではスノードームというものが存在しないようだ。
ヴァーグはパソコンを取り出し、スノードームと呼ばれる置物の画像を画面に映し出し、三人に見せた。
画面に映し出された画像は、丸いガラスの様な容器に土台が付いており、ガラスの中には小さな人形が置かれていた。その人形は赤い服を着て、白い髭を生やした老人で、優しそうな笑みを浮かべている。画像を見る限りはただの置物のようだ。
「丸いガラス玉の中に花や雪が舞う置物なの。材料さえ簡単に揃えば誰でも作ることができるのよ」
そう言いながら、今度は動画を見せた。
映し出された動画は、丸いガラス玉の中をキラキラと何かが舞っていた。言われてみれば雪が舞っているように見える。
「これは…」
「女の子なら喜びそう」
「ほぉほぉ。王室に献上しても申し分ない物だ」
「中に入れる物を変えれば、バリエーションは無限大よ。それこそ誕生日プレゼントとして贈る人もいるぐらいなんだから」
「へぇ~~」
今まで見たこともない置物に、リオは興味津々だった。
ゲンも新しい名品として作れないかと、頭の中で色々とアイデアを考えていた。
「ヴァーグさん、これ、本当に誰でも作れますか?」
「ええ。材料さえ揃えば」
「……」
「ケインも作ってみる?」
「作ってみたいですけど……これ、デイジーの会社に提案してもいいですか?」
「デイジーの?」
「結婚式を挙げるカップルに、記念となる品物を作りたいって言ってたんですけど、これだったら記念になりますよね? それに両親にあげるプレゼントにも相応しいと思うんです」
「なるほど。だったらいくつか試作を作ってみたらどうかな? パソコンの画像よりかは実際に物があったら説明しやすいでしょ? リオさん、片づけている所申し訳ないんですけど、直径10cmぐらいのガラス玉を作ってもらえませんか? できれば土台となる物も作りたいんですけど…」
「まだ火は落としていないので大丈夫ですよ」
「土台ならわしに任せろ。木材でよければすぐに作る」
「本当ですか!? じゃあ、今、設計図を書きますね!!」
急遽、スノードームを作ることになり、ヴァーグはすぐに設計図を書き始めた。
リオは空洞のある細い棒の先に溶けたガラスをつけ、息を吹き込んで丸いガラスを作り始めた。
隣の建物へと出かけていたゲンは、いくつかの木材を用意し、設計図に合わせて土台を作った。
ケインはヴァーグに頼まれ、色のついた紙を細かく切り刻んでいた。
夜を徹して作り上げた試作品は、翌日にはデイジーの元へと届けられた。
丸いガラス玉の中に、ゲンが木で作った新郎新婦の人形が置かれており、その足元にはキラキラとした細かい粒のような物が敷き詰められている。中は液体が入っているのか景色が歪んで見えたが、それでも濁ってはいなかった。
「これがその『すのーどーむ』っていう物なの?」
不思議そうに覗き込むナンシーは、色々な角度から覗き込んでいた。
デイジーもただの置物のように見え、これが結婚式を挙げる新郎新婦の記念品になるとは思えなかった。
「こうして置くとただの置物だけど……」
説明していたケインはスノードームを手に取り、それを逆さまにした。そして元に戻すとテーブルの上に置き直した。
テーブルの上に置かれたスノードームは、新郎新婦の人形の周りに桜の花びらが舞った。キラキラとした細かい粒も同時に舞っており、デイジーもナンシーも驚いた表情を見せている。
「凄い!!」
「どうなっているの!? 中に何が入っているの!?」
食いつく様に見入るデイジーとナンシーを見て、ヴァーグはクスクスと笑った。
「中に入っているのは紙を切って作った物よ。最初は桜の花も本物を使おうと思ったんだけと、意外と薄くて綺麗に舞わなかったの。それで厚紙を使って桜の花びらを作ってみたの。キラキラしている細かい粒は色のついたガラスになる前の砂を使っているの」
「作り方も簡単で、中に入れる物を変えれば、自分だけのオリジナルが作れるんだって。俺も作ってみた」
ケインは2人が見入っているスノードームの隣に、もう一回り小さいスノードームを置いた。ガラス玉の中にはリオが作ってくれたガラスの薔薇の花の束が置かれており、底にはキラキラとした細かい粒が敷き詰められていた。
先ほどと同じように一旦逆さまにし元に戻すと、ピンクの薔薇の花びらがキラキラと輝くガラスの粒と共に舞い散った。
「これ、ケインが作ったの!?」
「リオさんとゲン祖父さんに手伝ってもらったけど、ほぼ一人で作った。中に入れるパーツとか、花びらとかを沢山用意すれば、誰でも簡単に作れるよ。式を挙げる2人の記念にしてもいいし、両親へのプレゼントにしてもいいし、使い道は沢山あると思う」
「たしかにこれはいいわ」
「王都にもない物だから、この村の名物になりそうだね。デイジー、凄くいいアイデアだね!」
「でも、値段的にはどれぐらいで提供したらいいんですか? 結構手が込んでますよね?」
「それはゲンさん達と相談した方がいいわ。一つ作るのにいくらにするのか、ガラス玉の大きさで値段を変えて、パーツごとに追加料金にするのか、それは仕入れ費用を考えて値段設定するといいわ」
「ゲンさんなら格安で引き受けてくれるはずだから」…と一言添えた。
実際、ゲンは利益をあまり気にしていない。自分の鍛冶場にいる職人たちが安定した職に就けることを最優先にしており、特に新人には大きな仕事を任せ、自信を付けさせている。
村にはリオのようなガラス細工職人は3~4人しかいない。まだ一人前と呼べるには程遠い実力だ。なぜなら、この村ではガラスは窓ガラスに利用するだけで、他の使い道がなかったのだ。
デイジーがこのスノードームを利用してくれれば、ガラス細工職人の仕事の幅も広がる。
「で、ケイン。あなたが作ったこのスノードームを、見本として貸してほしいんだけど…」
デイジーがそう訊ねると、
「ダメだ! これはプレゼントにするんだから!!」
と、テーブルの上に置かれた自分が作ったスノードームを握りしめた。
ケインはこの自作のスノードームをクリスティーヌ王女へのプレゼントにすることを決めたようだ。
スノードームは、デイジーの会社で正式に取り入れることになった。
ガラス玉の大きさは全部で3種類。直径10cmと15cmの円形と、一辺が10cmの正方形の三つ。値段は大きさによって変わり、そこはゲンと要相談となった。
中に入れる小物に関しては、ゲンの工房で働く職人たちが作ってくれることになった。これらの値段も要相談となったが、新郎新婦が苦にならない値段に設定できるように、仕入れ値も抑えてくれるようだ。
なによりも、製鉄やガラス細工の工程で必要な強い火力と大量の水が半永久的に確保できたことで、大量生産できるようになり、価格が抑えられるようになったのだ。
偶然とはいえ、最高品質の【炎の結晶】を大量に生み出したことは、もちろん国王の耳にも入った。国で管理すると近隣諸国から何を言われるかわからないので、【水の結晶】と共に村で管理するという事になった。管理の責任者はヴァーグとゲンの2人。いずれ村にエテ王子が住むようになるので、それまで代理という形で管理を任された。
そして薔薇から生まれたクリスタルにも、ある効力が備わっている事がわかった。
「と、言っても、戦いには使えない物ですが」
研究を続けていたリオは、薔薇から生まれたクリスタルに【ローズクリスタル】と名付けた。今まで人間が足を踏み入れる事が出来ない土地で生息していたこともあり、どの文献を読んでもこのクリスタルの事が書かれておらず、研究所の責任者の父親と相談して新しく名前を付けることになった。
見た目は白いただの結晶に見え、クリスタルを割っても何の変化もない。戦いの女神が作ったと言われているが、戦闘用の植物を操る結晶ではないようだ。
「じゃあ、何のために作ったのかしら?」
戦闘用ではないという事は実用的な何かだと思われるが、日常生活で植物を必要とする事柄は思いつかない。
「兄に古文書などを調べてもらったのですが、もしかしたら戦闘に使える結晶と同時に使うのではないか…とのことでした。例えば【風の結晶】と共に使うとか…」
「風?」
「文献に残されていたのですが、『強い風と共に大量の花びらが視界を遮った』という言葉があったそうです」
「強い風…? 木の葉隠れのことかな?」
「コノハガクレ? なんですか?」
「戦術の一つなんだけど、強い風を起こして、さらに木の葉などを周辺をに拡散して敵の視界を遮る戦い方なの。戦うって言うよりも逃げるための戦術なんだけどね」
「そんな戦術、可能なんですか?」
「さぁ? 私は聞いたことがあるだけだから、実際に出来るかは知らないわ」
「文献も戦いの女神が出始めた頃の物でしたので、事実かは分かりませんね」
「それはこれから追求していくとして、この【ローズクリスタル】と名付けた結晶には、どんな効力が備わっていたの?」
「花びらが出せます」
「……は?」
「他の魔法玉と同じように作ると、割れた拍子に花びらが大量に出るんです。初めて作った時、謝って薔薇の花びらが入ってしまったんです。取り出そうとしましたが、一度作った魔法玉は壊さない限り元に戻せないんです。それで割ってみたら大量の薔薇の花びらが出てきました。他の花びらを試した所、材料に使った花が大量に出るんです」
「それだけ…?」
「はい、それだけです。だから戦いには使えないんです」
「確かに強い風が吹けば、木の葉隠れになるわね……」
だけど……ヴァーグは防御用としてこのクリスタルを生み出した戦いの女王に違和感を感じる。文献に残された魔法玉はすべて攻撃用。傷を癒す治癒の結晶もあると言うが、怪我人を治す為にはあってもおかしくない。なのに、いままで防御用の魔法玉の存在を、ヴァーグは一度も耳にしたことがない。
(水の壁とか土の壁とか、そういうのが作れる魔法玉はないのかな?)
攻撃が最大の防御という言葉を耳にしたとこはあるが、それでも防御用の物がない事に疑問を感じる。
もしかしたら、このクリスタルは戦い用ではなく、他の事に使っていたのではないだろうか。
例えば、漫画などでよく見る戦いに勝利した時の凱旋パレードの花吹雪。国民に小さな魔法玉を渡し、それを放り投げるだけで魔法玉が割れるようにし、パレードに華を添えた……とか。
「花吹雪……?」
そこまで考えて、ヴァーグはハッとした。
「リオさん!」
「は…はい!?」
「手を貸してください!!」
何かを思いついたヴァーグは、リオに【ある物】を作ってもらえないかと話を持ち掛けた。
前にいた世界では当たり前のようにあった物。それは誕生日会に欠かせない『クラッカー』と呼ばれる物だ。
設計図には円錐形で作られた紙製の器の中に、【ローズクリスタル】を使った魔法玉を入れ、円錐の頂点に当たる窄まったところから紐を垂らし、その紐を引っ張ると中の魔法玉が割れ、花が飛び出す……と書かれてあった。
実物を見たことがあるヴァーグは簡単に説明するが、初めて目にするリオは頭をフル回転させて、なんとかヴァーグの説明を聞き取った。実際に紙を円錐にして作ってみたり、段々と要領が解ってきたリオがこうしたらどうか、ああしたらどうかとアイデアを出し、スノードームの作成と同じように夜を徹して製作が続いた。
魔法玉を使った『クラッカー』のお披露目は王妃主催のお茶会と称したクリスティーヌ王女の誕生会。
<つづく>
「とりあえず、丸い形で作ってみますね」
手慣れた様子で、ガラスの素を高温に熱した石窯の中に入れ、作業を進めていくリオ。
棒の先に着いていた粒状のガラスの素は、窯の中で赤く溶け始め、棒をクルクルと回すことで溶け始めたガラスの素は棒に巻き付いていた。
しばらくして窯から取り出すと、作業台の上に置かれた直径5cm、厚さ1cmの丸い型の中に流し込んだ。そしてすぐに鉄の棒のような物で平らにし、上から透明な箱を被せた。
「この箱は?」
「ガラスを冷やす為に必要な道具です。研究院で開発した【氷の結晶】を使った物です」
「え? 【氷の結晶】って存在するの?」
ケインにくっついてきたヴァーグは、新たな結晶の存在に驚いた。
「北の山の中に溶ける事のない氷がある洞窟があるんです。その奥にある湖から採取したと聞いています。ですが、今ではその場所がどこにあるのかもわからず、結晶の採掘も不可能になっています」
「だからわしが言ったじゃろ。物を冷やすことができる結晶も作ってくれって」
後ろからリオを見ていたゲンが口を挟んできた。
「ガラス細工は冷やすことが大切な工程ですからね。急激に冷やすと割れてしまうこともあるんです。魔法玉に使用するガラス玉は薄く仕上げますので、この箱はとても重要な物になります」
「刃物は焼き上げた後、形を整えて水の中で急激に冷やすことで、強度が増すんじゃよ。だから大量の水が欲しい」
「それで【水の結晶】が必要なのか」
「しかも冷たい水でなくてはならない。結晶が手に入ったことで、わしたちの作業も楽になったわい!」
いつもの豪快な笑いをしながら、ケインの背中をバシバシと叩くゲン。
その横でヴァーグは【氷の結晶】が取れたという場所について考えていた。
「……溶ける事のない氷のある洞窟……か」
ヴァーグにはそれに似た場所がある事を知っている。
それはレストランの厨房にある冷凍庫だ。この冷凍庫は主にアイスや飲み物に使う氷しか入れていない。もしかしたら大量の水を凍らせたら結晶ができるのかも?と思った。だが、ただ氷を作るだけでは結晶は生まれない気がした。【炎の結晶】がお湯を沸かす装置の中から見つかったように、何か衝撃が必要なのかもしれない。
それを考えると、なぜ【水の結晶】は井戸の中から見つかるのだろうか。それもゲンの鍛冶場のある井戸からしか見つかっていない。そしてなぜ15日周期で貯まるのか。
数分後、箱を外すと、そこには型に収まった透明な丸い平らなガラスが出来上がっていた。
型を外し、淵をやすりで削ると、リオは二つの丸い平らなガラスを組み合わせた。蓋を締めるように回しながら嵌め込むと、綺麗に繋ぎ目が消え、厚さ2cmの一枚の平たいガラスが完成した。
「これでいいですか?」
リオがケインの前に差し出すと、ケインは「これこれ!!」と興奮したように喜んだ。
「ただ、このままだと外れる可能性がありますので、周囲に薄いガラスを張り付けて外れないようにすることもできます。接着剤でも可能です」
「じゃあ…」
ケインは持参したカバンの中から、小さな麻袋を取り出し、空いている作業台の上に中身を広げた。
麻袋の中に入っていたのは、ビニールハウスで育てている花だった。小さい蕾や綺麗に咲かなかった小さな花などがあり、ケインはこの花を二枚のガラスの間に挟んで、ペンダントを作ろうとしていたのだ。
「なるほど。間に花を挟んでアクセサリーにするのか。わしの工房で働くアクセサリー職人にも教えたやりたい」
今まで誰も考えなかったアイデアにゲンは感心している。
リオもガラスの器の中に花を入れることはあったが、こうしたアクセサリーを作ることは思い浮かばなかった。
「ねえ、リオさん。この二枚のガラスの間に空洞を作ることはできる?」
「空洞…ですか? なにか中に入れるんですか?」
「ちょっとね」
「可能ですけど……今から作りましょうか?」
「お願いします」
ヴァーグも何か思いついたのか、リオに中が空洞になるように同じ物を作ってもらうように頼んだ。
すぐにそれは出来上がり、小さな器の様なガラスの片方に青色の小さなビーズを1/3埋まるように入れた。そしてもう一つのガラスを重ね、外れないように周囲を薄いガラスで纏ってもらった。
「これは面白い」
「中で物が動くのは斬新です」
ヴァーグが作ったのは、軽く振ることで、丸いガラスの中でビーズが動くペンダントトップだった。
「いい出来、いい出来! こういうアクセサリーが欲しかったの!!」
出来上がりに満足するヴァーグは嬉しそうにペンダントトップを握りしめた。
実は前の世界にいた時、これに似たペンダントを雑誌で見かけたことがあった。そのペンダントは中が宝石だったので、当時中学生だったヴァーグには手が出ない値段。それでもどうしても欲しかったヴァーグは安い物を探し続けたが、結局見つからなかった。
今回、ケインが考えたアイデアに、急に昔のことを思い出し、ここぞとばかりに作ることにしたのだ。
一方、ケインは間に挟む花の種類で迷っていた。
クリスティーヌ王女に似合う花を考えると、どうしても薔薇の花しか思いつかない。
「ヴァーグさん、どうしたらいいですか?」
結局彼女に助けを求めるケイン。
「薔薇の花だと、押し花にするよりかは、こっちの空洞の方を使った方がいいと思うわ」
「え? なんで?」
「押し花にするとちゃんとした工程を得ないと、花が傷ついてそこから傷んでしまうことがあるの。この空洞の方と使えば、ある魔法の水を使えば長持ちするわ」
「魔法の水?」
「で、どの花にするの?」
さらっと交わされたケインは、もう少し突っ込みたかったようだ。
ケインが用意したのは白薔薇と赤薔薇、そしてピンク色の薔薇の三種類だった。
「赤や白だと花言葉的に、王妃様が勘違いしそう」
「花言葉?」
「赤は『あなたを愛しています』、白は『私はあなたに相応しい』っていう花言葉があるのよ」
「え!!?? そうなんですか!!??」
すでに片づけに入っていたリオが驚いた顔でヴァーグを見てきた。
「ええ、そうよ。リオさん、カトリーヌさんに渡した時(*第15話参照)、知ってて白薔薇を使ったんじゃなかったの?」
「あの時はたまたま目に入っただけでして、カトリーヌ様に似合うかなと思って使っただけで…」
「じゃあ、何も知らずに白薔薇を渡したの? 本数にも意味があるの、知らなかったの!?」
「本数にも意味があるんですか!?」
「それも知らなかったのね……」
ただの偶然とはいえ、リオにとっては結果オーライだったわけだから、いまさら後悔することもない。
王都に戻った時、どういう顔でカトリーヌに会おうか、そればかり気になっているだけだ。
「で、ピンクは? 花言葉ってあるんですか?」
放置されていたケインが、すこし怒ったような声を出した。
「ピンクは『可愛い人』とか『美しい少女』っていう意味があるわ」
「『可愛い人』……うん、それにしよう」
(本当は『愛の誓い』っていう花言葉もあるんだよね……)という言葉は封印しておこうと思うヴァーグだった。
ヴァーグがビーズを入れた物と同じガラスの中にピンク色の小さな薔薇の花を入れた。
「無理でもいいから5本入れなさい!」
というヴァーグのアドバイスを受け、小さな小さなピンク色の薔薇の花を5本押し込むと、魔法の水を中に流し込んだ。そして蓋となるもう一つのガラスを合わせ、隙間を接着剤で固定した。
「この魔法の水ってなんですか?」
「シエルの鱗を溶かした水よ」
「なんでシエル?」
「シエルの鱗は品質を変えない効能があるでしょ? 少しでも長持ちさせるために使っただけよ」
「でも、少し粘りがありましたよね?」
「少量の洗剤を入れているから。よくスノードームを作る時に身近な材料として使われていたみたいなの」
「「「すのーどーむ???」」」
初めて聞く言葉に、ケイン、リオ、ゲンの三人は同時に同じ方向に首を傾げた。
この世界ではスノードームというものが存在しないようだ。
ヴァーグはパソコンを取り出し、スノードームと呼ばれる置物の画像を画面に映し出し、三人に見せた。
画面に映し出された画像は、丸いガラスの様な容器に土台が付いており、ガラスの中には小さな人形が置かれていた。その人形は赤い服を着て、白い髭を生やした老人で、優しそうな笑みを浮かべている。画像を見る限りはただの置物のようだ。
「丸いガラス玉の中に花や雪が舞う置物なの。材料さえ簡単に揃えば誰でも作ることができるのよ」
そう言いながら、今度は動画を見せた。
映し出された動画は、丸いガラス玉の中をキラキラと何かが舞っていた。言われてみれば雪が舞っているように見える。
「これは…」
「女の子なら喜びそう」
「ほぉほぉ。王室に献上しても申し分ない物だ」
「中に入れる物を変えれば、バリエーションは無限大よ。それこそ誕生日プレゼントとして贈る人もいるぐらいなんだから」
「へぇ~~」
今まで見たこともない置物に、リオは興味津々だった。
ゲンも新しい名品として作れないかと、頭の中で色々とアイデアを考えていた。
「ヴァーグさん、これ、本当に誰でも作れますか?」
「ええ。材料さえ揃えば」
「……」
「ケインも作ってみる?」
「作ってみたいですけど……これ、デイジーの会社に提案してもいいですか?」
「デイジーの?」
「結婚式を挙げるカップルに、記念となる品物を作りたいって言ってたんですけど、これだったら記念になりますよね? それに両親にあげるプレゼントにも相応しいと思うんです」
「なるほど。だったらいくつか試作を作ってみたらどうかな? パソコンの画像よりかは実際に物があったら説明しやすいでしょ? リオさん、片づけている所申し訳ないんですけど、直径10cmぐらいのガラス玉を作ってもらえませんか? できれば土台となる物も作りたいんですけど…」
「まだ火は落としていないので大丈夫ですよ」
「土台ならわしに任せろ。木材でよければすぐに作る」
「本当ですか!? じゃあ、今、設計図を書きますね!!」
急遽、スノードームを作ることになり、ヴァーグはすぐに設計図を書き始めた。
リオは空洞のある細い棒の先に溶けたガラスをつけ、息を吹き込んで丸いガラスを作り始めた。
隣の建物へと出かけていたゲンは、いくつかの木材を用意し、設計図に合わせて土台を作った。
ケインはヴァーグに頼まれ、色のついた紙を細かく切り刻んでいた。
夜を徹して作り上げた試作品は、翌日にはデイジーの元へと届けられた。
丸いガラス玉の中に、ゲンが木で作った新郎新婦の人形が置かれており、その足元にはキラキラとした細かい粒のような物が敷き詰められている。中は液体が入っているのか景色が歪んで見えたが、それでも濁ってはいなかった。
「これがその『すのーどーむ』っていう物なの?」
不思議そうに覗き込むナンシーは、色々な角度から覗き込んでいた。
デイジーもただの置物のように見え、これが結婚式を挙げる新郎新婦の記念品になるとは思えなかった。
「こうして置くとただの置物だけど……」
説明していたケインはスノードームを手に取り、それを逆さまにした。そして元に戻すとテーブルの上に置き直した。
テーブルの上に置かれたスノードームは、新郎新婦の人形の周りに桜の花びらが舞った。キラキラとした細かい粒も同時に舞っており、デイジーもナンシーも驚いた表情を見せている。
「凄い!!」
「どうなっているの!? 中に何が入っているの!?」
食いつく様に見入るデイジーとナンシーを見て、ヴァーグはクスクスと笑った。
「中に入っているのは紙を切って作った物よ。最初は桜の花も本物を使おうと思ったんだけと、意外と薄くて綺麗に舞わなかったの。それで厚紙を使って桜の花びらを作ってみたの。キラキラしている細かい粒は色のついたガラスになる前の砂を使っているの」
「作り方も簡単で、中に入れる物を変えれば、自分だけのオリジナルが作れるんだって。俺も作ってみた」
ケインは2人が見入っているスノードームの隣に、もう一回り小さいスノードームを置いた。ガラス玉の中にはリオが作ってくれたガラスの薔薇の花の束が置かれており、底にはキラキラとした細かい粒が敷き詰められていた。
先ほどと同じように一旦逆さまにし元に戻すと、ピンクの薔薇の花びらがキラキラと輝くガラスの粒と共に舞い散った。
「これ、ケインが作ったの!?」
「リオさんとゲン祖父さんに手伝ってもらったけど、ほぼ一人で作った。中に入れるパーツとか、花びらとかを沢山用意すれば、誰でも簡単に作れるよ。式を挙げる2人の記念にしてもいいし、両親へのプレゼントにしてもいいし、使い道は沢山あると思う」
「たしかにこれはいいわ」
「王都にもない物だから、この村の名物になりそうだね。デイジー、凄くいいアイデアだね!」
「でも、値段的にはどれぐらいで提供したらいいんですか? 結構手が込んでますよね?」
「それはゲンさん達と相談した方がいいわ。一つ作るのにいくらにするのか、ガラス玉の大きさで値段を変えて、パーツごとに追加料金にするのか、それは仕入れ費用を考えて値段設定するといいわ」
「ゲンさんなら格安で引き受けてくれるはずだから」…と一言添えた。
実際、ゲンは利益をあまり気にしていない。自分の鍛冶場にいる職人たちが安定した職に就けることを最優先にしており、特に新人には大きな仕事を任せ、自信を付けさせている。
村にはリオのようなガラス細工職人は3~4人しかいない。まだ一人前と呼べるには程遠い実力だ。なぜなら、この村ではガラスは窓ガラスに利用するだけで、他の使い道がなかったのだ。
デイジーがこのスノードームを利用してくれれば、ガラス細工職人の仕事の幅も広がる。
「で、ケイン。あなたが作ったこのスノードームを、見本として貸してほしいんだけど…」
デイジーがそう訊ねると、
「ダメだ! これはプレゼントにするんだから!!」
と、テーブルの上に置かれた自分が作ったスノードームを握りしめた。
ケインはこの自作のスノードームをクリスティーヌ王女へのプレゼントにすることを決めたようだ。
スノードームは、デイジーの会社で正式に取り入れることになった。
ガラス玉の大きさは全部で3種類。直径10cmと15cmの円形と、一辺が10cmの正方形の三つ。値段は大きさによって変わり、そこはゲンと要相談となった。
中に入れる小物に関しては、ゲンの工房で働く職人たちが作ってくれることになった。これらの値段も要相談となったが、新郎新婦が苦にならない値段に設定できるように、仕入れ値も抑えてくれるようだ。
なによりも、製鉄やガラス細工の工程で必要な強い火力と大量の水が半永久的に確保できたことで、大量生産できるようになり、価格が抑えられるようになったのだ。
偶然とはいえ、最高品質の【炎の結晶】を大量に生み出したことは、もちろん国王の耳にも入った。国で管理すると近隣諸国から何を言われるかわからないので、【水の結晶】と共に村で管理するという事になった。管理の責任者はヴァーグとゲンの2人。いずれ村にエテ王子が住むようになるので、それまで代理という形で管理を任された。
そして薔薇から生まれたクリスタルにも、ある効力が備わっている事がわかった。
「と、言っても、戦いには使えない物ですが」
研究を続けていたリオは、薔薇から生まれたクリスタルに【ローズクリスタル】と名付けた。今まで人間が足を踏み入れる事が出来ない土地で生息していたこともあり、どの文献を読んでもこのクリスタルの事が書かれておらず、研究所の責任者の父親と相談して新しく名前を付けることになった。
見た目は白いただの結晶に見え、クリスタルを割っても何の変化もない。戦いの女神が作ったと言われているが、戦闘用の植物を操る結晶ではないようだ。
「じゃあ、何のために作ったのかしら?」
戦闘用ではないという事は実用的な何かだと思われるが、日常生活で植物を必要とする事柄は思いつかない。
「兄に古文書などを調べてもらったのですが、もしかしたら戦闘に使える結晶と同時に使うのではないか…とのことでした。例えば【風の結晶】と共に使うとか…」
「風?」
「文献に残されていたのですが、『強い風と共に大量の花びらが視界を遮った』という言葉があったそうです」
「強い風…? 木の葉隠れのことかな?」
「コノハガクレ? なんですか?」
「戦術の一つなんだけど、強い風を起こして、さらに木の葉などを周辺をに拡散して敵の視界を遮る戦い方なの。戦うって言うよりも逃げるための戦術なんだけどね」
「そんな戦術、可能なんですか?」
「さぁ? 私は聞いたことがあるだけだから、実際に出来るかは知らないわ」
「文献も戦いの女神が出始めた頃の物でしたので、事実かは分かりませんね」
「それはこれから追求していくとして、この【ローズクリスタル】と名付けた結晶には、どんな効力が備わっていたの?」
「花びらが出せます」
「……は?」
「他の魔法玉と同じように作ると、割れた拍子に花びらが大量に出るんです。初めて作った時、謝って薔薇の花びらが入ってしまったんです。取り出そうとしましたが、一度作った魔法玉は壊さない限り元に戻せないんです。それで割ってみたら大量の薔薇の花びらが出てきました。他の花びらを試した所、材料に使った花が大量に出るんです」
「それだけ…?」
「はい、それだけです。だから戦いには使えないんです」
「確かに強い風が吹けば、木の葉隠れになるわね……」
だけど……ヴァーグは防御用としてこのクリスタルを生み出した戦いの女王に違和感を感じる。文献に残された魔法玉はすべて攻撃用。傷を癒す治癒の結晶もあると言うが、怪我人を治す為にはあってもおかしくない。なのに、いままで防御用の魔法玉の存在を、ヴァーグは一度も耳にしたことがない。
(水の壁とか土の壁とか、そういうのが作れる魔法玉はないのかな?)
攻撃が最大の防御という言葉を耳にしたとこはあるが、それでも防御用の物がない事に疑問を感じる。
もしかしたら、このクリスタルは戦い用ではなく、他の事に使っていたのではないだろうか。
例えば、漫画などでよく見る戦いに勝利した時の凱旋パレードの花吹雪。国民に小さな魔法玉を渡し、それを放り投げるだけで魔法玉が割れるようにし、パレードに華を添えた……とか。
「花吹雪……?」
そこまで考えて、ヴァーグはハッとした。
「リオさん!」
「は…はい!?」
「手を貸してください!!」
何かを思いついたヴァーグは、リオに【ある物】を作ってもらえないかと話を持ち掛けた。
前にいた世界では当たり前のようにあった物。それは誕生日会に欠かせない『クラッカー』と呼ばれる物だ。
設計図には円錐形で作られた紙製の器の中に、【ローズクリスタル】を使った魔法玉を入れ、円錐の頂点に当たる窄まったところから紐を垂らし、その紐を引っ張ると中の魔法玉が割れ、花が飛び出す……と書かれてあった。
実物を見たことがあるヴァーグは簡単に説明するが、初めて目にするリオは頭をフル回転させて、なんとかヴァーグの説明を聞き取った。実際に紙を円錐にして作ってみたり、段々と要領が解ってきたリオがこうしたらどうか、ああしたらどうかとアイデアを出し、スノードームの作成と同じように夜を徹して製作が続いた。
魔法玉を使った『クラッカー』のお披露目は王妃主催のお茶会と称したクリスティーヌ王女の誕生会。
<つづく>
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