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第48話 芽生える恋心
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マックスとメアリーはシエルに乗って王都を発った。
途中まで心配だからと、警護という名目でエテ王子とコロリスがグリフォンのヴァンに乗って送ることになった。
王都に残ったケインたちはミゼル侯爵家に場所を移し、クリスティーヌ王女とルイーズ王女も一泊のお泊りの用意をして侯爵家へと向かった。
ルイーズ王女の母は外泊することに反対はしなかった。国王から同年代の友達が出来たことを教えられ、最初は身分もない人など!!と怒っていたが、最近はルイーズ王女自体が反発するようになり、親子の関係はひびが入っているように感じる。娘との交流も無くなり、彼女の行動にいちいち口を挟まなくなったのだ。
クリスティーヌ王女の母親ジュリエッタは大激怒した。嫁入り前の娘が外泊するなど言語道断!!!とヒステリックになっていたが、リチャードとエミーの結婚披露宴で提供する料理の打ち合わせがあると告げると、あっさりと外泊を認めてくれた。
ジュリエッタはミゼル侯爵家を敵に回したくないのだ。先代国王と同じ血を引き、最悪の場合、ミゼル侯爵家が王室を支配することが出来るかもしれないからだ。
ステラ王国の国王は在位35年と決まっている。万が一、在位終了までの間に国王が亡くなられた場合、一応、最年長の第一王女が王位を継ぐが、その後に正式な国王即位の会議が行われる。この場合、王位継承権を持つ者以外にも、歴代国王の子孫から相応しい人物がいれば、その人が即位する。
今、一番国王の地位に近いのはエテ王子だと言われている。だが、エテ王子は王室を離れるという噂を聞く。そうなるとエテ王子の次に相応しいと思われているのがリチャードなのだ。エテ王子の親友であり、騎士団の団長、交流関係も広く、王立研究院とも関わりを持っている。そんな人物を大臣たちが見逃がすはずがない。
今の自分の地位を保つためには、敵に回したくない人物に刃向かいたくないのだろう。
侯爵家では、当主のミゼル侯爵が来客を笑顔で出迎えた。
「いらっしゃい!!」
12月は交代で休暇を取る国境警備隊。ミゼル侯爵は昨日から年が変わる頃まで休暇を貰っている。
「お世話になります、公爵」
エミーが挨拶をすると、公爵はかっかっかっ!とゲンに似た豪快な笑いをした。
「そんな畏まらなくていい。エミー嬢はこの屋敷に嫁いでくる身だ。自分の家だと思いなさい」
「ありがとうございます」
「リチャード、ちゃんとエミー嬢をエスコートするんだぞ」
「はい、父上」
リチャードはエミーを正面の大階段を登った右側の2階へと案内した。2階の一室をエミー専用の部屋にしたらしい。その出来栄えを見てもらいたいようだ。
「ルイーズ様と双子ちゃんも、お部屋に案内しますわ。今日はわたくしの隣の部屋をご用意しますね」
カトリーヌはルイーズ王女と双子をリチャード達とは反対側の2階に案内した。
「アン様はわたくしとお茶を楽しみませんか? お聞きしたいお話が沢山ありますの」
ミゼル侯爵夫人はアンをサロンに案内した。今からリチャードとエミーの結婚式について話すようだが、侯爵夫人にはもう一つ聞かなければならない事がある。それはアンの祖父と父の事について。王妃からアンの祖父と父の事について聞き出せることがあれば聞いてほしいと頼まれているのだ。
残ったケインは公爵に厨房を貸してくれないかと願い出た。
「厨房を?」
「泊めていただくお礼に夕飯を作ります。お気に召すかわかりませんが」
「何!? 作ってくれるのかね!?」
「王都ではあまり食べられていない料理で申し訳ないのですが…」
「構わん! 構わん!! そなたは芸術祭で国王陛下に『たい焼き』なる物を献上した青年だろ? あれは本当に美味しかった。陛下がお気に召すはずだ。それと同じ物を作ってくれるのかね?」
「『たい焼き』は専用の機械が必要なので、今日は子供に人気の料理を作れたらな…と思っています」
「期待して待っておるぞ!」
バシバシとケインの背中を叩くと、公爵はまた豪快な笑いと共に、サロンへと場所を移した侯爵夫人の元へと向かった。
「あ…あの!」
厨房へと向かおうとしたケインをクリスティーヌ王女が呼び止めた。
「わたくしもご一緒してもよろしいですか?」
「今日はデザートは作らないですけど…」
「それでも構いません。どのようなお料理を作るのか見せてください」
「俺は構わないけど……手伝ってもらうかもしれませんがいいですか?」
「はい!」
元気に返事をするクリスティーヌ王女。
彼女を見てケインは胸の奥が締め付けられる感覚に陥った。ヴァーグに対しても同じ気持ちになったことはあるが、クリスティーヌ王女を見ると心臓のドキドキが止まらない。
厨房の入り口近くまで来ると、クリスティーヌ王女はケインにあるお願いをした。
「ケインさん、厨房にいる間だけ王女であることを隠していただけませんか?」
「何故?」
「料理人たちにご迷惑になると思うのです。ですので、どうか名前だけで呼んでいただけないでしょうか? あと、出来れば敬語も無くしていただきたいのですが…」
「……」
「無理……ですよね」
「いや、あの、その……王女様に対して呼び捨てでいいんですか?」
「構いません。できれば『クリス』と呼んでいただきたいのですが……」
「……わかりまし……じゃなくて、わかった。……その……あの……クリス……」
「ありがとうございます!」
笑顔を見せるクリスティーヌ王女。
その笑顔にケインの心臓が飛び上がった。
な…なんなんだ、この気持ちは…!!
ヴァーグに対してドキッとしたことはある。この国では見かけない黒髪に黒い瞳の神秘的な容姿に惹かれていた。
だけどクリスティーヌ王女に対しては心臓のドキドキが止まらない。
王女が可愛く見えるし、愛おしくも思う。
これが…恋!?
初めての体験にケインは戸惑った。
まてまて、相手は王女だ。自分とは身分が違い過ぎる。
そう自分に言い聞かせた。
厨房では執事から話を聞いていた料理長が大歓迎してくれた。
「今日はよろしくお願いします」
ケインが挨拶をすると料理長や料理人たちが一斉に頭を下げた。
芸術祭以降、料理長は村からレシピを取り寄せて、ヴァーグが作る料理を作り続けている。だが、味がどうも定まらず、リチャードやカトリーヌから何度もダメ出しを受けている。
今日は間近でその料理を作る所が見れるので、嬉しくてたまらないのだ。
厨房に備え付けられた貯蔵庫で、ケインはお目当ての材料をすべて見つける事が出来た。
「じゃあ、今日はハンバーグとオムライスを作りたいと思います」
「『はんばーぐ』?」
「『おむらいす』?」
まだレシピを取り寄せていない料理なのか、料理長を始め全員の首が傾いた。
「簡単に説明すると、お肉を焼いた料理と、チキンライスっていうケチャップで炒めたご飯を卵で包んだ物です。これにサラダとスープを付けたいと思うんですが……あれ?」
ケインは料理人の中に、ある人物を見つけた。それは芸術祭の時、ここでカレーを作った時にご飯を炊いてくれた青年だった。
「たしか、芸術祭の時、ご飯を炊いてくれましたよね?」
「は…はい!」
「今日もお願いしてもいいですか?」
「はい! 喜んで!!」
ケインに頼まれた青年ーポールというらしいーは、元気よく挨拶をすると、すぐにご飯を炊く準備に取り掛かった。
ポールのきびきびとした動きに料理長が驚いていた。いつもなら誰かの陰に隠れて、自分から動くとしたらゴミの片づけなどの雑用。何かを作ることでこんなに動くところを見たことがなかった。
その後、ハンバーグを作る工程へと移った。
まずタマネギをみじん切りにし、フライパンで炒める。タマネギが透き通ってきたら一度ボウルにあげ、粗熱を取る。
その間に肉の用意をする。今回は豚肉と牛肉の合いびき肉を使う。この厨房にはひき肉がなかったので、ブロック状の肉を包丁で細かく切る作業がいる。
何人かの料理人で肉を細かくしでいる間に、手が空いている料理人はサラダとスープを作ることになった。
サラダはレタスやキュウリを食べやすい大きさに切り、皿に盛り付けてトマトを乗せるだけ。
スープはトウモロコシを磨り潰したペースト状の物があったので、それとミルクを入れて鍋で温まるだけ。
すぐに手が空く料理人が出てきたので、予定にはなかったデザートと作ることにした。材料があるので何でも作ることはできるが、メイン料理がボリュームがあるので、豪華な物は作れない。口直しのさっぱりした物を作りたかったが、ケインはそれが思い浮かばなかった。
腕を組んで考え事をしているケインに、クリスティーヌ王女が声を掛けた。
「どうかされたのですか?」
「いや、デザートを作ろうと思っているんだけど、簡単に作れて、さっぱりした物が思い浮かばなくて……」
「簡単に作れて、さっぱりした物……ですか?」
「思った以上にボリュームが出ちゃったんだよ。口直しにデザートを作りたかったな」
ヴァーグがいれば的確なアドバイスを貰えたはず。いつも彼女を見てきたから自分もできると思っていたが、やはりヴァーグのようにはいかなかった。
「それでしたら……一品一品を小さくしてみたらいかがでしょうか? 1つのお皿に乗せられる大きさにすれば、品数は多くても食べきれる量になると思うんです」
「小さく?」
「ルイーズは食が細いので、よく一品一品を小さくしてもらっているんです。それに一つのお皿にいくつもののお料理が乗っていると見た目も華やかだと思うんです」
「なるほど。料理長、お聞きしてもいいですか?」
料理人に指示を出していた料理長に、大きめの皿はないかとケインは訪ねた。
するといつもは舞踏会の時に何種類物の料理が乗せられるように、4分割に区切られた四角い皿を用意してくれた。大きさも一人前には最適だ。
「これはいい。ここにハンバーグを乗せて、こっちにオムライス。ここにサラダを乗せれば、余ったところにデザートが乗せられる」
「スープはいつものように添えるだけで大丈夫ですね」
「クリス、いいアイデアをありがとう!」
ケインは思わずクリスティーヌ王女の手を握ってお礼を言った。
が、すぐに自分が行った行動に気付き、慌てて手を離した。
「ご…ごめん」
「いえ……」
お互いに顔を赤くして、顔を背ける2人。
間近で見ていた料理長は「若いですな~~」と笑みを浮かべていた。
クリスティーヌ王女の思い付きで、一つの皿に何種類も乗せることにより、最初に考えていた分量よりも多く作れることになった。余った分は屋敷で働く使用人たちに食べてもらおうと、無駄なく作り上げることにした。
細かく切り刻んだ豚肉と牛肉をボウルに入れ、そこに粗熱のとれたタマネギを加える。塩コショウを味付けし、卵を加え、パン粉も少量加える。そして一気にかき混ぜた。
量が多いので何個かのボウルに分け、皆で手分けしてハンバーグの種を作った。
フライパンを熱し、形を整えたハンバーグを焼いていく。
その間、別のコンロでクリスティーヌ王女がケインの指導の元、ホットケーキを手際よく作っていた。何枚も何枚も作り、手の空いた料理人が焼きあがったホットケーキを一口サイズの正方形に切り分けていった。
クリスティーヌ王女の横のコンロではケインがイチゴとブルーベリーのジャムを作っていた。
「そうやって煮詰めていくのですね」
鍋の中でぐつぐつと煮えたぎるイチゴを見て、クリスティーヌ王女は手順を必死に覚えている。
「火が強すぎると焦げてしまうし、逆に長時間に詰めてしまうと苦くなってしまうので、火を止めるタイミングが重要なんだ。最初は味見しながら見ていた方がいいよ。慣れるとどれぐらいで火を止めればいいのかすぐにわかるから」
ケインも何回も失敗してきた。失敗してきたから、タイミングという物を掴めるようになった。
いつかヴァーグに追いつくという目標で料理をしているが、まだまだ肩を並べる事すらできない自分の実力に焦りも感じる。だが、誰かに教えることで成長するという事も実感している。
厨房にハンバーグのいい香りが漂う始める頃、ポールが担当していたご飯が炊けた。
ケインは細かく切った鶏肉を炒め、同じフライパンにご飯を入れ、ケチャップで色を付けながら炒めた。そして炒め終わったご飯をボウルに移し、また同じ作業を続けていった。
大量のチキンライスが出来上がると、小さめのフライパンに卵を流し込み、薄い卵焼きを作り始めた。
本当ならここにチキンライスを乗せて卵で包むのだが、初めての人には難しすぎる。そこでケインは発想を変え、薄い卵焼きを作り、それをまな板の上に乗せる。広げられた卵焼きの上にチキンライスを乗せ、四隅を中央に持ってきて正方形になるように包み込む。卵が重なり合った部分を下にして皿に盛り、ケチャップを少量掛ける。
初めてオムライスを作った時、ヴァーグが失敗しない方法として、ケインとラインハルトに教えたやり方だ。
「綺麗!!」
「まるで宝箱のようだ」
「これなら技術はいらないと思うんです。誰でもできますので、俺が卵を焼くので、皆さんはチキンライスを包んでください」
「はい!!」
料理人たちは楽しそうにチキンライスを包みだした。
この屋敷で働く使用人全員の分も作ることになったので、膨大な量となる。フライパンで何枚も何枚も卵焼きを作っていると、ケインは腕が痛くなってきたのか、何回も腕を揉む姿が見られた。洗い物をしているポールが手を止めてケインの事を凝視した。
「お前もやってみるか?」
料理長が急に後ろから声をかけてきた。
「りょ…料理長!!」
「お前は遠慮してばっかりで、本当に自分がやりたいことをやろうとしない。自分から動くのも修行の一つだ」
料理長がいう事も理解できる。たしかに自分は何をやりたいと言う欲がない。それは自分もよくわかっている。だけど、誰かにやってくれと言われれば、それが自分に与えられた仕事なんだと確信し、真剣に取り組んできた。
だけど、言われる仕事はゴミ捨てだったり、洗い物だったり、野菜の皮むきだったり雑用ばかりで、実はまだコンロの前に立ったことがないのだ。
「ケイン殿! ポールを手伝わせます! 指示を与えてやってください」
コンロの前で腕を何回も揉んで、肩をグルグルと回していたケインは「お願いします」と返事をした。
「ほら、行って来い」
料理長に背中を押されて、ポールは初めてコンロの前に立った。
おずおずとやってきたポールは、ケインの横に立った。
「あ…あの、よろしくお願いします」
「手伝ってもらえると助かります。こんな大勢の料理、あんまり作ったことがなくて困っていたんです」
「それで、何をすれば…」
「まずは卵をボウルに割ってください。よくかき混ぜたら、フライパンに油を引いて、油が温まったらお玉一杯分を流し込むんです。で、フライパンを回しながら薄い卵焼きを作ってほしいんです」
「……」
「どうかしましたか?」
「あ……コンロの前に立つのが初めてで……」
「誰でも初めてのことはありますよ。ある人が言っていたんです。経験値は0から始まる。それを1にするためにはやってみないと…って。失敗してもいいんです。それも経験値になりますから」
ケインの言葉にポールはハッとした。
騎士団にいた頃、失敗は許されない事だった。失敗=命にかかわると上司から教えられ、極力苦手な事に手を付けないようにしていた。それが原因で騎士団に馴染めず、この屋敷に雇われた。この屋敷に来てからも苦手な事、やった事がない事には手を出さないでいた。失敗が怖いからだ。
だが、ケインの言葉を聞いて、自分が間違っていたことに気付いた。
失敗してもいいんだ。
失敗も経験値になるんだ。
ポールは大きく深呼吸をして、意を決してコンロの前に立った。
初めて卵を割るのに失敗しなかった。いつも先輩料理人の手元を見てイメージトレーニングをしていたからだ。
ケインと同じタイミングでフライパンに卵を流し入れた。
ケインと同じようにフライパンを回し、薄い卵焼きを綺麗に作っていった。
ケインが卵焼きをひっくり返すタイミングで、同じように自分もひっくり返した。初めてなのにとこも破れずに綺麗にひっくり返せた。
ケインと同じタイミングでフライパンから卵焼きをまな板へと移した。
まな板にはケインが作った卵焼きと、全く同じ綺麗な卵焼きが並べられた。
「すごいよ! 初めてなのに完璧だよ!!」
ケインの歓声に、他の料理人も「凄い! 凄い!」とポールを褒めた。
近くで見ていた料理長は拍手をしている。
「ポールさんって、料理の才能があるかもしれないですよ。もっともっといろんな事にチャレンジした方が絶対にいいですよ!」
「ただの偶然だと思いますけど……」
「偶然でも、これはポールさんの実力なんですよ。だって、ポールさんが炊くご飯、美味しいんですよ。もっと自信持っていい!!」
「ケイン殿の言う通りだ。ポール、これがお前に実力なんだ」
「料理長…」
「ケイン殿、ポールにもっともっと指導していただけないでしょうか? こいつは自分から動くことはしない奴なんです。でもそれは自分自身を信用していないことなんです。ケイン殿に指導していただけたら、きっとこの厨房で一番の料理人になると思います」
「料理長、それは大袈裟です! 僕は見よう見真似でやっただけで…」
「つまり、ポールさんは人の技術を再現できる能力があるってことですよね。俺の師匠であるヴァーグさんも、真似ることが一番の近道って言ってました。料理長、実は今日の王妃様のお茶会で、宮廷料理人を村のレストランに留学させたらどうかって話していたんです。まだヴァーグさんとは話していないんですが、もしヴァーグさんがいいよって言ってくれたら、ポールさんを留学させませんか?」
「りゅうがく? なんですか、それは?」
「違う土地で自分が勉強したい事を学ぶ事です。村のレストランで修業するってことです」
「そんなことが可能なのかね!?」
「ヴァーグさん次第ですけど」
「もしそれが実現できるのなら、是非ともお願いしたい。ポールも実力を伸ばせることでしょう」
料理長からしてみれば願ってもない事。
ヴァーグなら絶対OKを出す自信があるケインは、村に帰ったら話してみる事を約束した。
少し時間は掛かったが、夕飯は使用人全員の分も作る事が出来、公爵の計らいで、屋敷で働くすべての使用人たち全員が同じ部屋で同時に食べることになった。
普通の貴族の屋敷では、使用人が主と同じ部屋で食事はとらない。それが決まりだからだ。
だが、ミゼル侯爵は小さい頃、いつも一人で食事を摂っていた。父も母も忙しいと言っていつもどこかへと出かけてしまう。執事や侍女たちに一緒に食べようと言っても、決まりだからと冷たくされていた。
そんな思いをさせたくない公爵は、自分が家にいる限り決まって家族全員で食事を摂る。リチャードもカトリーヌもそれが当たり前だと思っていた。初めて他の貴族たちと違うと気づいたのは、学校に通い始めてからだ。
全員が席に着くと、公爵が食事の前のお祈りをし、「さぁ、食べてくれ!」と食事開始の合図をした。
4分割に区切られた四角い皿には、右手前には黄色い卵に包まれたオムライス、左手前には茶色いソースのかかったハンバーグ、右奥にはレタスを引き、その上に一口サイズに切り分けたサイコロ状のキュウリとトマト、丸く薄く切られたハムが三枚、花の形に見立てて添えられていた。左奥には正方形に切られたホットケーキが三枚重ねられており、左側にはイチゴのジャムが、右側にはブルーベリーのジャムがリボンのように掛かっていた。ホットケーキの真ん中には生クリームが添えられており、見た目が華やかだ。
別の器にはトウモロコシのスープが添えられ、一度に何種類も食べられるスタイルに、公爵夫人も使用人たちも歓声を上げている。
「この肉はステーキとは違う食感だ」
一口ハンバーグを頬張った侯爵は、いつも食べるステーキと違う食感に驚いていた。
「お肉を細かく切り刻んで、タマネギや調味料と一緒に捏ねあげ焼いていますので、子供もお年寄りも食べる事が出来ます」
ケインの説明通り、固いステーキと違い、口の中でホロホロと崩れる。そんなに力を入れて噛む必要もない。
現に庭師として働いている最年長の男性も、双子に挟まれて食事を摂っているアンも、何の抵抗のなく食べているのが伺える。
「実に美味しい。このオムライスという物も色が華やかだ。中から赤いご飯が出てきた時は驚いたが、味がしっかりしている。こんな美味しい物を食べたことがない」
「本当に素晴らしいですわ。リチャードもカトリーヌも、村ではこんなに美味しい物を食べていただなんて羨ましいわ」
「新年祭では出店するのかね?」
「はい。国王様から中央広場を自由に使っていいと許可を得ましたので、新作を販売する予定です」
「何? 新作だと?」
「はい。今回は体が温まる食事をテーマに販売します」
新年祭に出店することを知った侯爵は、休暇の延長を願い出ると宣言した。毎年、新しい年が明けると赴任先に戻っていた為、一度も新年祭に出たことがない。去年も中央広場に国王大絶賛の店が出店した事を、赴任先への移動中に聞いたぐらいだ。
芸術祭の時は息子の結婚のことでバタバタとしてしまい、国王に献上されたたい焼きとたこ焼きしか食べる事が出来なかった。
今度の新年祭は何が何でも休みを取るように『指揮官』の権利を大いに使うようだ。
夕食の時間が終わり、それぞれが持ち場や自分の部屋に戻ると、屋敷に中は静かになった。
なかなか寝付けないケインは、気分転換に中庭へとやってきた。
「あれ?」
中庭を見渡していると、中央の東屋に人影が見えた。その人影に引きつけられるようにケインは東屋へと足を向けた。
そこにいたのはクリスティーヌ王女だ。
月に光を浴びた亜麻色の髪がキラキラと輝き、ケインは思わず彼女を見入ってしまった。
それと同時にまた心臓がドキドキとしてきた。目の前にいるクリスティーヌ王女に聞こえるのではないかと思うほど、自分の耳に響いている。
以前、リチャードに言われた言葉が頭の中で鳴り響いた。
「王女がお前の事を気に入ったからだろ」
嘘だと思いたかった言葉。
むしろ、自分が王女の事を気にしている気がする。
デイジーやナンシーには抱かない感情。ヴァーグとは違うときめき。
俺は……彼女の事が好きなのだろうか……。
王女と一般市民という身分の壁がある。それがあるからそんなはずはないと決めつけていたが、どうやらケインはクリスティーヌ王女に恋してしまったようだ。
空を見上げていたクリスティーヌ王女は、すぐ側に人影がある事に気づき、その方向を向いた。
不安そうな顔を見せていたが、そこにいるのがケインだとわかると安心した笑顔を見せた。
「ケインさんも眠れないのですか?」
クリスティーヌ王女のの問いかけに我に返ったケインは小さく頷いた。
「わたくしもなんです。お茶会からずっと気持ちが高揚していて、目が覚めてしまったんです。こんな気持ちは初めてですわ」
「……そう……ですか」
「王宮からも月をよく見上げていましたが、ここからにあげる月はまた違う感じがします」
クリスティーヌ王女の視線の先には大きな月があり、その下には大きな池が夜空を映していた。もう冬も始まったと言うのに、今は風も吹かず、寒さは感じられなかった。
「……」
「……」
お互いに言葉はなかった。
クリスティーヌ王女は東屋のベンチに座り、ケインは東屋の外で立っている。2人の距離はあるが、まるで2人だけがこの世界にいるかのように錯覚する。
「あの、ケインさん。今日はありがとうございました」
「…え?」
「王妃様主催とはいえ、わたくしの誕生日を祝っていただき、そしてここでは王女という事を隠していただき、本当にありがとうございました」
「……喜んでいただけて光栄です…」
「それに、お茶会の時から『クリス』と呼んでいただき、わたくし、とても嬉しかったですわ」
「あ…あれは!! 王女様に対して馴れ馴れしくしてしまい申し訳ございません」
普通に話そうとしていても、やはり王女という身分が邪魔をしているのか、堅苦しい言葉しか出てこない。
クリスティーヌ王女は気にしていないようだが、ケインは夕食作りの時のように親しく話す気にはならなかった。
再び沈黙が訪れ、今まで吹いていなかった風も吹き始めた。
「そろそろお部屋に戻りましょうか」
ベンチから立ち上がったクリスティーヌ王女は東屋の階段下にいたケインの処へと降りてきた。
隣に並ぶと、ますます直視できなくなったケインは、視線を地面に落とした。
「ケインさん?」
名前を呼ばれ、ケインは視線を上げると、彼女の前にある物と突き出した。
ケインが彼女の前に差し出したのは、ガラスで作られた薔薇の花束が入ったスノードームだ。
「あの、これ……誕生日プレゼントです」
「わたくしに?」
「本当はお茶会で渡そうと思っていたのですが、恥ずかしくて……。王女様だから高価な物じゃなくちゃいけないって思っていたんですが、俺にはお金もないし、王女に相応しい物は買えないし……。だからリオさんに協力してもらってこれを作りました」
絶対に視線を合わせないケインの顔が真っ赤になっていた。
クリスティーヌ王女は差し出されたスノードームを受け取り、大事そうに抱えた。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「本当ですか?」
「ええ。異性から誕生日プレゼントを貰ったのは初めてです」
「…初めて……?」
「母がすべて回収してしまいますから。王位継承者を持つ者として相応しい相手でなければ贈り物もいただけません。15年生きていますが、今年は最高の誕生日です」
「喜んでいただけて、俺も嬉しいです」
クリスティーヌ王女は贈り物が余程嬉しかったのか、受け取ったスノードームを月にかざして眺めた。
丸いガラスの部分が月明りを受け、キラキラと輝いている。クリスティーヌ王女は初めて見る光景に嬉しそうに角度を何度も変えて見飽きることなく眺め続けた。
「こうすると、もっと素敵な光景が見れますよ」
ケインは月に向かって伸ばしているクリスティーヌ王女の手に重ねるように、自分の腕を伸ばし、スノードームをひっくり返した。ガラスの中に底に貯まっていた薔薇の花とキラキラ輝く砂が下に落ちてくると、再び元に戻した。
月の光を浴びてガラスでできた薔薇の花束に、ピンク色の花びらとキラキラした粒状の砂が舞い、幻想的な光景を作り出した。
その光景にクリスティーヌ王女は歓声を上げた。
「凄い! 凄いです!!」
「これはスノードームという物です。中に入れる物を変えれば、色々な景色が見えます。例えば海の中とか…」
そこまで言って、ケインはクリスティーヌ王女に視線を向けた。
が、すぐ側に彼女の顔がある事に気付き、今、自分が彼女にどれだけくっついているのかに気付かされた。
お互いに視線が合い、2人は急に離れた。
2人の顔が赤く火照っている。
心臓もドキドキ言っている。
時折吹く風が妙に心地いい。
「あ…あの、すみませんでした。王女様に失礼な事を…」
「……いえ……」
「……」
「……」
「あの、王女様。もし……もし、お許しいただけるのでしたら、俺からも『クリス様』とお呼びしてもよろしいでしょうか? お名前が長いので呼びにくいと言うか……あ、いえ! 決してお名前に不満があるわけではありません。とても素敵なお名前ですし、あの……その……」
「……嫌です……」
「そうですよね……王女様に対して失礼ですよね。申し訳ございません」
「『様』は付けないでください。『クリス』だけでお願いします」
「……よろしいのですか?」
「はい」
「……」
「……」
「……じゃあ……あの……その……」
「……」
「…お……おやすみなさい、クリス」
そう言い切って、ケインは一度もクリスティーヌ王女の顔を見ることなく走り去った。
「あ、ケインさん!」
呼びかけに反応し、数メートル走ったところでケインは立ち止まり、クリスティーヌ王女の方を振り向いた。
そして彼女に向かって笑顔を見せた。
「お誕生日おめでとう! おやすみ、クリス!」
そう叫んで、ケインは走り去った。
「ありがとうございます……ケイン」
彼から貰ったスノードームを大事に抱え、走り去るケインの後ろ姿に、クリスティーヌ王女は小さく呟いた。
<つづく>
途中まで心配だからと、警護という名目でエテ王子とコロリスがグリフォンのヴァンに乗って送ることになった。
王都に残ったケインたちはミゼル侯爵家に場所を移し、クリスティーヌ王女とルイーズ王女も一泊のお泊りの用意をして侯爵家へと向かった。
ルイーズ王女の母は外泊することに反対はしなかった。国王から同年代の友達が出来たことを教えられ、最初は身分もない人など!!と怒っていたが、最近はルイーズ王女自体が反発するようになり、親子の関係はひびが入っているように感じる。娘との交流も無くなり、彼女の行動にいちいち口を挟まなくなったのだ。
クリスティーヌ王女の母親ジュリエッタは大激怒した。嫁入り前の娘が外泊するなど言語道断!!!とヒステリックになっていたが、リチャードとエミーの結婚披露宴で提供する料理の打ち合わせがあると告げると、あっさりと外泊を認めてくれた。
ジュリエッタはミゼル侯爵家を敵に回したくないのだ。先代国王と同じ血を引き、最悪の場合、ミゼル侯爵家が王室を支配することが出来るかもしれないからだ。
ステラ王国の国王は在位35年と決まっている。万が一、在位終了までの間に国王が亡くなられた場合、一応、最年長の第一王女が王位を継ぐが、その後に正式な国王即位の会議が行われる。この場合、王位継承権を持つ者以外にも、歴代国王の子孫から相応しい人物がいれば、その人が即位する。
今、一番国王の地位に近いのはエテ王子だと言われている。だが、エテ王子は王室を離れるという噂を聞く。そうなるとエテ王子の次に相応しいと思われているのがリチャードなのだ。エテ王子の親友であり、騎士団の団長、交流関係も広く、王立研究院とも関わりを持っている。そんな人物を大臣たちが見逃がすはずがない。
今の自分の地位を保つためには、敵に回したくない人物に刃向かいたくないのだろう。
侯爵家では、当主のミゼル侯爵が来客を笑顔で出迎えた。
「いらっしゃい!!」
12月は交代で休暇を取る国境警備隊。ミゼル侯爵は昨日から年が変わる頃まで休暇を貰っている。
「お世話になります、公爵」
エミーが挨拶をすると、公爵はかっかっかっ!とゲンに似た豪快な笑いをした。
「そんな畏まらなくていい。エミー嬢はこの屋敷に嫁いでくる身だ。自分の家だと思いなさい」
「ありがとうございます」
「リチャード、ちゃんとエミー嬢をエスコートするんだぞ」
「はい、父上」
リチャードはエミーを正面の大階段を登った右側の2階へと案内した。2階の一室をエミー専用の部屋にしたらしい。その出来栄えを見てもらいたいようだ。
「ルイーズ様と双子ちゃんも、お部屋に案内しますわ。今日はわたくしの隣の部屋をご用意しますね」
カトリーヌはルイーズ王女と双子をリチャード達とは反対側の2階に案内した。
「アン様はわたくしとお茶を楽しみませんか? お聞きしたいお話が沢山ありますの」
ミゼル侯爵夫人はアンをサロンに案内した。今からリチャードとエミーの結婚式について話すようだが、侯爵夫人にはもう一つ聞かなければならない事がある。それはアンの祖父と父の事について。王妃からアンの祖父と父の事について聞き出せることがあれば聞いてほしいと頼まれているのだ。
残ったケインは公爵に厨房を貸してくれないかと願い出た。
「厨房を?」
「泊めていただくお礼に夕飯を作ります。お気に召すかわかりませんが」
「何!? 作ってくれるのかね!?」
「王都ではあまり食べられていない料理で申し訳ないのですが…」
「構わん! 構わん!! そなたは芸術祭で国王陛下に『たい焼き』なる物を献上した青年だろ? あれは本当に美味しかった。陛下がお気に召すはずだ。それと同じ物を作ってくれるのかね?」
「『たい焼き』は専用の機械が必要なので、今日は子供に人気の料理を作れたらな…と思っています」
「期待して待っておるぞ!」
バシバシとケインの背中を叩くと、公爵はまた豪快な笑いと共に、サロンへと場所を移した侯爵夫人の元へと向かった。
「あ…あの!」
厨房へと向かおうとしたケインをクリスティーヌ王女が呼び止めた。
「わたくしもご一緒してもよろしいですか?」
「今日はデザートは作らないですけど…」
「それでも構いません。どのようなお料理を作るのか見せてください」
「俺は構わないけど……手伝ってもらうかもしれませんがいいですか?」
「はい!」
元気に返事をするクリスティーヌ王女。
彼女を見てケインは胸の奥が締め付けられる感覚に陥った。ヴァーグに対しても同じ気持ちになったことはあるが、クリスティーヌ王女を見ると心臓のドキドキが止まらない。
厨房の入り口近くまで来ると、クリスティーヌ王女はケインにあるお願いをした。
「ケインさん、厨房にいる間だけ王女であることを隠していただけませんか?」
「何故?」
「料理人たちにご迷惑になると思うのです。ですので、どうか名前だけで呼んでいただけないでしょうか? あと、出来れば敬語も無くしていただきたいのですが…」
「……」
「無理……ですよね」
「いや、あの、その……王女様に対して呼び捨てでいいんですか?」
「構いません。できれば『クリス』と呼んでいただきたいのですが……」
「……わかりまし……じゃなくて、わかった。……その……あの……クリス……」
「ありがとうございます!」
笑顔を見せるクリスティーヌ王女。
その笑顔にケインの心臓が飛び上がった。
な…なんなんだ、この気持ちは…!!
ヴァーグに対してドキッとしたことはある。この国では見かけない黒髪に黒い瞳の神秘的な容姿に惹かれていた。
だけどクリスティーヌ王女に対しては心臓のドキドキが止まらない。
王女が可愛く見えるし、愛おしくも思う。
これが…恋!?
初めての体験にケインは戸惑った。
まてまて、相手は王女だ。自分とは身分が違い過ぎる。
そう自分に言い聞かせた。
厨房では執事から話を聞いていた料理長が大歓迎してくれた。
「今日はよろしくお願いします」
ケインが挨拶をすると料理長や料理人たちが一斉に頭を下げた。
芸術祭以降、料理長は村からレシピを取り寄せて、ヴァーグが作る料理を作り続けている。だが、味がどうも定まらず、リチャードやカトリーヌから何度もダメ出しを受けている。
今日は間近でその料理を作る所が見れるので、嬉しくてたまらないのだ。
厨房に備え付けられた貯蔵庫で、ケインはお目当ての材料をすべて見つける事が出来た。
「じゃあ、今日はハンバーグとオムライスを作りたいと思います」
「『はんばーぐ』?」
「『おむらいす』?」
まだレシピを取り寄せていない料理なのか、料理長を始め全員の首が傾いた。
「簡単に説明すると、お肉を焼いた料理と、チキンライスっていうケチャップで炒めたご飯を卵で包んだ物です。これにサラダとスープを付けたいと思うんですが……あれ?」
ケインは料理人の中に、ある人物を見つけた。それは芸術祭の時、ここでカレーを作った時にご飯を炊いてくれた青年だった。
「たしか、芸術祭の時、ご飯を炊いてくれましたよね?」
「は…はい!」
「今日もお願いしてもいいですか?」
「はい! 喜んで!!」
ケインに頼まれた青年ーポールというらしいーは、元気よく挨拶をすると、すぐにご飯を炊く準備に取り掛かった。
ポールのきびきびとした動きに料理長が驚いていた。いつもなら誰かの陰に隠れて、自分から動くとしたらゴミの片づけなどの雑用。何かを作ることでこんなに動くところを見たことがなかった。
その後、ハンバーグを作る工程へと移った。
まずタマネギをみじん切りにし、フライパンで炒める。タマネギが透き通ってきたら一度ボウルにあげ、粗熱を取る。
その間に肉の用意をする。今回は豚肉と牛肉の合いびき肉を使う。この厨房にはひき肉がなかったので、ブロック状の肉を包丁で細かく切る作業がいる。
何人かの料理人で肉を細かくしでいる間に、手が空いている料理人はサラダとスープを作ることになった。
サラダはレタスやキュウリを食べやすい大きさに切り、皿に盛り付けてトマトを乗せるだけ。
スープはトウモロコシを磨り潰したペースト状の物があったので、それとミルクを入れて鍋で温まるだけ。
すぐに手が空く料理人が出てきたので、予定にはなかったデザートと作ることにした。材料があるので何でも作ることはできるが、メイン料理がボリュームがあるので、豪華な物は作れない。口直しのさっぱりした物を作りたかったが、ケインはそれが思い浮かばなかった。
腕を組んで考え事をしているケインに、クリスティーヌ王女が声を掛けた。
「どうかされたのですか?」
「いや、デザートを作ろうと思っているんだけど、簡単に作れて、さっぱりした物が思い浮かばなくて……」
「簡単に作れて、さっぱりした物……ですか?」
「思った以上にボリュームが出ちゃったんだよ。口直しにデザートを作りたかったな」
ヴァーグがいれば的確なアドバイスを貰えたはず。いつも彼女を見てきたから自分もできると思っていたが、やはりヴァーグのようにはいかなかった。
「それでしたら……一品一品を小さくしてみたらいかがでしょうか? 1つのお皿に乗せられる大きさにすれば、品数は多くても食べきれる量になると思うんです」
「小さく?」
「ルイーズは食が細いので、よく一品一品を小さくしてもらっているんです。それに一つのお皿にいくつもののお料理が乗っていると見た目も華やかだと思うんです」
「なるほど。料理長、お聞きしてもいいですか?」
料理人に指示を出していた料理長に、大きめの皿はないかとケインは訪ねた。
するといつもは舞踏会の時に何種類物の料理が乗せられるように、4分割に区切られた四角い皿を用意してくれた。大きさも一人前には最適だ。
「これはいい。ここにハンバーグを乗せて、こっちにオムライス。ここにサラダを乗せれば、余ったところにデザートが乗せられる」
「スープはいつものように添えるだけで大丈夫ですね」
「クリス、いいアイデアをありがとう!」
ケインは思わずクリスティーヌ王女の手を握ってお礼を言った。
が、すぐに自分が行った行動に気付き、慌てて手を離した。
「ご…ごめん」
「いえ……」
お互いに顔を赤くして、顔を背ける2人。
間近で見ていた料理長は「若いですな~~」と笑みを浮かべていた。
クリスティーヌ王女の思い付きで、一つの皿に何種類も乗せることにより、最初に考えていた分量よりも多く作れることになった。余った分は屋敷で働く使用人たちに食べてもらおうと、無駄なく作り上げることにした。
細かく切り刻んだ豚肉と牛肉をボウルに入れ、そこに粗熱のとれたタマネギを加える。塩コショウを味付けし、卵を加え、パン粉も少量加える。そして一気にかき混ぜた。
量が多いので何個かのボウルに分け、皆で手分けしてハンバーグの種を作った。
フライパンを熱し、形を整えたハンバーグを焼いていく。
その間、別のコンロでクリスティーヌ王女がケインの指導の元、ホットケーキを手際よく作っていた。何枚も何枚も作り、手の空いた料理人が焼きあがったホットケーキを一口サイズの正方形に切り分けていった。
クリスティーヌ王女の横のコンロではケインがイチゴとブルーベリーのジャムを作っていた。
「そうやって煮詰めていくのですね」
鍋の中でぐつぐつと煮えたぎるイチゴを見て、クリスティーヌ王女は手順を必死に覚えている。
「火が強すぎると焦げてしまうし、逆に長時間に詰めてしまうと苦くなってしまうので、火を止めるタイミングが重要なんだ。最初は味見しながら見ていた方がいいよ。慣れるとどれぐらいで火を止めればいいのかすぐにわかるから」
ケインも何回も失敗してきた。失敗してきたから、タイミングという物を掴めるようになった。
いつかヴァーグに追いつくという目標で料理をしているが、まだまだ肩を並べる事すらできない自分の実力に焦りも感じる。だが、誰かに教えることで成長するという事も実感している。
厨房にハンバーグのいい香りが漂う始める頃、ポールが担当していたご飯が炊けた。
ケインは細かく切った鶏肉を炒め、同じフライパンにご飯を入れ、ケチャップで色を付けながら炒めた。そして炒め終わったご飯をボウルに移し、また同じ作業を続けていった。
大量のチキンライスが出来上がると、小さめのフライパンに卵を流し込み、薄い卵焼きを作り始めた。
本当ならここにチキンライスを乗せて卵で包むのだが、初めての人には難しすぎる。そこでケインは発想を変え、薄い卵焼きを作り、それをまな板の上に乗せる。広げられた卵焼きの上にチキンライスを乗せ、四隅を中央に持ってきて正方形になるように包み込む。卵が重なり合った部分を下にして皿に盛り、ケチャップを少量掛ける。
初めてオムライスを作った時、ヴァーグが失敗しない方法として、ケインとラインハルトに教えたやり方だ。
「綺麗!!」
「まるで宝箱のようだ」
「これなら技術はいらないと思うんです。誰でもできますので、俺が卵を焼くので、皆さんはチキンライスを包んでください」
「はい!!」
料理人たちは楽しそうにチキンライスを包みだした。
この屋敷で働く使用人全員の分も作ることになったので、膨大な量となる。フライパンで何枚も何枚も卵焼きを作っていると、ケインは腕が痛くなってきたのか、何回も腕を揉む姿が見られた。洗い物をしているポールが手を止めてケインの事を凝視した。
「お前もやってみるか?」
料理長が急に後ろから声をかけてきた。
「りょ…料理長!!」
「お前は遠慮してばっかりで、本当に自分がやりたいことをやろうとしない。自分から動くのも修行の一つだ」
料理長がいう事も理解できる。たしかに自分は何をやりたいと言う欲がない。それは自分もよくわかっている。だけど、誰かにやってくれと言われれば、それが自分に与えられた仕事なんだと確信し、真剣に取り組んできた。
だけど、言われる仕事はゴミ捨てだったり、洗い物だったり、野菜の皮むきだったり雑用ばかりで、実はまだコンロの前に立ったことがないのだ。
「ケイン殿! ポールを手伝わせます! 指示を与えてやってください」
コンロの前で腕を何回も揉んで、肩をグルグルと回していたケインは「お願いします」と返事をした。
「ほら、行って来い」
料理長に背中を押されて、ポールは初めてコンロの前に立った。
おずおずとやってきたポールは、ケインの横に立った。
「あ…あの、よろしくお願いします」
「手伝ってもらえると助かります。こんな大勢の料理、あんまり作ったことがなくて困っていたんです」
「それで、何をすれば…」
「まずは卵をボウルに割ってください。よくかき混ぜたら、フライパンに油を引いて、油が温まったらお玉一杯分を流し込むんです。で、フライパンを回しながら薄い卵焼きを作ってほしいんです」
「……」
「どうかしましたか?」
「あ……コンロの前に立つのが初めてで……」
「誰でも初めてのことはありますよ。ある人が言っていたんです。経験値は0から始まる。それを1にするためにはやってみないと…って。失敗してもいいんです。それも経験値になりますから」
ケインの言葉にポールはハッとした。
騎士団にいた頃、失敗は許されない事だった。失敗=命にかかわると上司から教えられ、極力苦手な事に手を付けないようにしていた。それが原因で騎士団に馴染めず、この屋敷に雇われた。この屋敷に来てからも苦手な事、やった事がない事には手を出さないでいた。失敗が怖いからだ。
だが、ケインの言葉を聞いて、自分が間違っていたことに気付いた。
失敗してもいいんだ。
失敗も経験値になるんだ。
ポールは大きく深呼吸をして、意を決してコンロの前に立った。
初めて卵を割るのに失敗しなかった。いつも先輩料理人の手元を見てイメージトレーニングをしていたからだ。
ケインと同じタイミングでフライパンに卵を流し入れた。
ケインと同じようにフライパンを回し、薄い卵焼きを綺麗に作っていった。
ケインが卵焼きをひっくり返すタイミングで、同じように自分もひっくり返した。初めてなのにとこも破れずに綺麗にひっくり返せた。
ケインと同じタイミングでフライパンから卵焼きをまな板へと移した。
まな板にはケインが作った卵焼きと、全く同じ綺麗な卵焼きが並べられた。
「すごいよ! 初めてなのに完璧だよ!!」
ケインの歓声に、他の料理人も「凄い! 凄い!」とポールを褒めた。
近くで見ていた料理長は拍手をしている。
「ポールさんって、料理の才能があるかもしれないですよ。もっともっといろんな事にチャレンジした方が絶対にいいですよ!」
「ただの偶然だと思いますけど……」
「偶然でも、これはポールさんの実力なんですよ。だって、ポールさんが炊くご飯、美味しいんですよ。もっと自信持っていい!!」
「ケイン殿の言う通りだ。ポール、これがお前に実力なんだ」
「料理長…」
「ケイン殿、ポールにもっともっと指導していただけないでしょうか? こいつは自分から動くことはしない奴なんです。でもそれは自分自身を信用していないことなんです。ケイン殿に指導していただけたら、きっとこの厨房で一番の料理人になると思います」
「料理長、それは大袈裟です! 僕は見よう見真似でやっただけで…」
「つまり、ポールさんは人の技術を再現できる能力があるってことですよね。俺の師匠であるヴァーグさんも、真似ることが一番の近道って言ってました。料理長、実は今日の王妃様のお茶会で、宮廷料理人を村のレストランに留学させたらどうかって話していたんです。まだヴァーグさんとは話していないんですが、もしヴァーグさんがいいよって言ってくれたら、ポールさんを留学させませんか?」
「りゅうがく? なんですか、それは?」
「違う土地で自分が勉強したい事を学ぶ事です。村のレストランで修業するってことです」
「そんなことが可能なのかね!?」
「ヴァーグさん次第ですけど」
「もしそれが実現できるのなら、是非ともお願いしたい。ポールも実力を伸ばせることでしょう」
料理長からしてみれば願ってもない事。
ヴァーグなら絶対OKを出す自信があるケインは、村に帰ったら話してみる事を約束した。
少し時間は掛かったが、夕飯は使用人全員の分も作る事が出来、公爵の計らいで、屋敷で働くすべての使用人たち全員が同じ部屋で同時に食べることになった。
普通の貴族の屋敷では、使用人が主と同じ部屋で食事はとらない。それが決まりだからだ。
だが、ミゼル侯爵は小さい頃、いつも一人で食事を摂っていた。父も母も忙しいと言っていつもどこかへと出かけてしまう。執事や侍女たちに一緒に食べようと言っても、決まりだからと冷たくされていた。
そんな思いをさせたくない公爵は、自分が家にいる限り決まって家族全員で食事を摂る。リチャードもカトリーヌもそれが当たり前だと思っていた。初めて他の貴族たちと違うと気づいたのは、学校に通い始めてからだ。
全員が席に着くと、公爵が食事の前のお祈りをし、「さぁ、食べてくれ!」と食事開始の合図をした。
4分割に区切られた四角い皿には、右手前には黄色い卵に包まれたオムライス、左手前には茶色いソースのかかったハンバーグ、右奥にはレタスを引き、その上に一口サイズに切り分けたサイコロ状のキュウリとトマト、丸く薄く切られたハムが三枚、花の形に見立てて添えられていた。左奥には正方形に切られたホットケーキが三枚重ねられており、左側にはイチゴのジャムが、右側にはブルーベリーのジャムがリボンのように掛かっていた。ホットケーキの真ん中には生クリームが添えられており、見た目が華やかだ。
別の器にはトウモロコシのスープが添えられ、一度に何種類も食べられるスタイルに、公爵夫人も使用人たちも歓声を上げている。
「この肉はステーキとは違う食感だ」
一口ハンバーグを頬張った侯爵は、いつも食べるステーキと違う食感に驚いていた。
「お肉を細かく切り刻んで、タマネギや調味料と一緒に捏ねあげ焼いていますので、子供もお年寄りも食べる事が出来ます」
ケインの説明通り、固いステーキと違い、口の中でホロホロと崩れる。そんなに力を入れて噛む必要もない。
現に庭師として働いている最年長の男性も、双子に挟まれて食事を摂っているアンも、何の抵抗のなく食べているのが伺える。
「実に美味しい。このオムライスという物も色が華やかだ。中から赤いご飯が出てきた時は驚いたが、味がしっかりしている。こんな美味しい物を食べたことがない」
「本当に素晴らしいですわ。リチャードもカトリーヌも、村ではこんなに美味しい物を食べていただなんて羨ましいわ」
「新年祭では出店するのかね?」
「はい。国王様から中央広場を自由に使っていいと許可を得ましたので、新作を販売する予定です」
「何? 新作だと?」
「はい。今回は体が温まる食事をテーマに販売します」
新年祭に出店することを知った侯爵は、休暇の延長を願い出ると宣言した。毎年、新しい年が明けると赴任先に戻っていた為、一度も新年祭に出たことがない。去年も中央広場に国王大絶賛の店が出店した事を、赴任先への移動中に聞いたぐらいだ。
芸術祭の時は息子の結婚のことでバタバタとしてしまい、国王に献上されたたい焼きとたこ焼きしか食べる事が出来なかった。
今度の新年祭は何が何でも休みを取るように『指揮官』の権利を大いに使うようだ。
夕食の時間が終わり、それぞれが持ち場や自分の部屋に戻ると、屋敷に中は静かになった。
なかなか寝付けないケインは、気分転換に中庭へとやってきた。
「あれ?」
中庭を見渡していると、中央の東屋に人影が見えた。その人影に引きつけられるようにケインは東屋へと足を向けた。
そこにいたのはクリスティーヌ王女だ。
月に光を浴びた亜麻色の髪がキラキラと輝き、ケインは思わず彼女を見入ってしまった。
それと同時にまた心臓がドキドキとしてきた。目の前にいるクリスティーヌ王女に聞こえるのではないかと思うほど、自分の耳に響いている。
以前、リチャードに言われた言葉が頭の中で鳴り響いた。
「王女がお前の事を気に入ったからだろ」
嘘だと思いたかった言葉。
むしろ、自分が王女の事を気にしている気がする。
デイジーやナンシーには抱かない感情。ヴァーグとは違うときめき。
俺は……彼女の事が好きなのだろうか……。
王女と一般市民という身分の壁がある。それがあるからそんなはずはないと決めつけていたが、どうやらケインはクリスティーヌ王女に恋してしまったようだ。
空を見上げていたクリスティーヌ王女は、すぐ側に人影がある事に気づき、その方向を向いた。
不安そうな顔を見せていたが、そこにいるのがケインだとわかると安心した笑顔を見せた。
「ケインさんも眠れないのですか?」
クリスティーヌ王女のの問いかけに我に返ったケインは小さく頷いた。
「わたくしもなんです。お茶会からずっと気持ちが高揚していて、目が覚めてしまったんです。こんな気持ちは初めてですわ」
「……そう……ですか」
「王宮からも月をよく見上げていましたが、ここからにあげる月はまた違う感じがします」
クリスティーヌ王女の視線の先には大きな月があり、その下には大きな池が夜空を映していた。もう冬も始まったと言うのに、今は風も吹かず、寒さは感じられなかった。
「……」
「……」
お互いに言葉はなかった。
クリスティーヌ王女は東屋のベンチに座り、ケインは東屋の外で立っている。2人の距離はあるが、まるで2人だけがこの世界にいるかのように錯覚する。
「あの、ケインさん。今日はありがとうございました」
「…え?」
「王妃様主催とはいえ、わたくしの誕生日を祝っていただき、そしてここでは王女という事を隠していただき、本当にありがとうございました」
「……喜んでいただけて光栄です…」
「それに、お茶会の時から『クリス』と呼んでいただき、わたくし、とても嬉しかったですわ」
「あ…あれは!! 王女様に対して馴れ馴れしくしてしまい申し訳ございません」
普通に話そうとしていても、やはり王女という身分が邪魔をしているのか、堅苦しい言葉しか出てこない。
クリスティーヌ王女は気にしていないようだが、ケインは夕食作りの時のように親しく話す気にはならなかった。
再び沈黙が訪れ、今まで吹いていなかった風も吹き始めた。
「そろそろお部屋に戻りましょうか」
ベンチから立ち上がったクリスティーヌ王女は東屋の階段下にいたケインの処へと降りてきた。
隣に並ぶと、ますます直視できなくなったケインは、視線を地面に落とした。
「ケインさん?」
名前を呼ばれ、ケインは視線を上げると、彼女の前にある物と突き出した。
ケインが彼女の前に差し出したのは、ガラスで作られた薔薇の花束が入ったスノードームだ。
「あの、これ……誕生日プレゼントです」
「わたくしに?」
「本当はお茶会で渡そうと思っていたのですが、恥ずかしくて……。王女様だから高価な物じゃなくちゃいけないって思っていたんですが、俺にはお金もないし、王女に相応しい物は買えないし……。だからリオさんに協力してもらってこれを作りました」
絶対に視線を合わせないケインの顔が真っ赤になっていた。
クリスティーヌ王女は差し出されたスノードームを受け取り、大事そうに抱えた。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「本当ですか?」
「ええ。異性から誕生日プレゼントを貰ったのは初めてです」
「…初めて……?」
「母がすべて回収してしまいますから。王位継承者を持つ者として相応しい相手でなければ贈り物もいただけません。15年生きていますが、今年は最高の誕生日です」
「喜んでいただけて、俺も嬉しいです」
クリスティーヌ王女は贈り物が余程嬉しかったのか、受け取ったスノードームを月にかざして眺めた。
丸いガラスの部分が月明りを受け、キラキラと輝いている。クリスティーヌ王女は初めて見る光景に嬉しそうに角度を何度も変えて見飽きることなく眺め続けた。
「こうすると、もっと素敵な光景が見れますよ」
ケインは月に向かって伸ばしているクリスティーヌ王女の手に重ねるように、自分の腕を伸ばし、スノードームをひっくり返した。ガラスの中に底に貯まっていた薔薇の花とキラキラ輝く砂が下に落ちてくると、再び元に戻した。
月の光を浴びてガラスでできた薔薇の花束に、ピンク色の花びらとキラキラした粒状の砂が舞い、幻想的な光景を作り出した。
その光景にクリスティーヌ王女は歓声を上げた。
「凄い! 凄いです!!」
「これはスノードームという物です。中に入れる物を変えれば、色々な景色が見えます。例えば海の中とか…」
そこまで言って、ケインはクリスティーヌ王女に視線を向けた。
が、すぐ側に彼女の顔がある事に気付き、今、自分が彼女にどれだけくっついているのかに気付かされた。
お互いに視線が合い、2人は急に離れた。
2人の顔が赤く火照っている。
心臓もドキドキ言っている。
時折吹く風が妙に心地いい。
「あ…あの、すみませんでした。王女様に失礼な事を…」
「……いえ……」
「……」
「……」
「あの、王女様。もし……もし、お許しいただけるのでしたら、俺からも『クリス様』とお呼びしてもよろしいでしょうか? お名前が長いので呼びにくいと言うか……あ、いえ! 決してお名前に不満があるわけではありません。とても素敵なお名前ですし、あの……その……」
「……嫌です……」
「そうですよね……王女様に対して失礼ですよね。申し訳ございません」
「『様』は付けないでください。『クリス』だけでお願いします」
「……よろしいのですか?」
「はい」
「……」
「……」
「……じゃあ……あの……その……」
「……」
「…お……おやすみなさい、クリス」
そう言い切って、ケインは一度もクリスティーヌ王女の顔を見ることなく走り去った。
「あ、ケインさん!」
呼びかけに反応し、数メートル走ったところでケインは立ち止まり、クリスティーヌ王女の方を振り向いた。
そして彼女に向かって笑顔を見せた。
「お誕生日おめでとう! おやすみ、クリス!」
そう叫んで、ケインは走り去った。
「ありがとうございます……ケイン」
彼から貰ったスノードームを大事に抱え、走り去るケインの後ろ姿に、クリスティーヌ王女は小さく呟いた。
<つづく>
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