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学園生活
愛しい
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「大丈夫だったか?」
執務室の扉を入って、そう声をかけてきた。
ちらっとだけ視線を向け、「あぁ」とそっけない返事だけして、机に積み上げられている書類に目を通す。
そっけない対応に慣れているようで、相手の男はソファーにドスンと腰を落とした。
「で、どうだったんだ?」
「あの者達は捕らえて引き渡しただろ?」
「あぁ、引き渡されたけど、結構痛めつけていたな」
「それがどうした。殺してないだけマシだろ?後はそっちの仕事だ。勿論、余罪やその他も調べ上げてくれるんだろうな、背後関係も含めて」
あらかた書類整理が落ち着き、ペンを置いて、机からソファーへと移動する。
艶やかな黒髪は、書類整理で邪魔にならないように背後で一つに束ねられている。
年齢はいくつかは、判りかねないが、スラリとした美丈夫である。
見た目と年齢があっていないように見えるのは、妖である証拠とも言える。
そして、同じくソファーに座っている者も…
「あれが、例の子か?」
「あぁ、そうだ。私のですから、ちょっかいをださないでくださいね。でないと知りませんよ」
「お前もついに見つけたんだな。運命の…」
「えぇ、まさかここまで待たされるとは思いませんでしたよ。少しお寝坊さんのようでね。可愛いでしょ。お陰で、他の者も興味を示してるようですが…渡す気も逃がす気もありませんから」
「お前に目をつけられたんなら、逃げれんだろうな…」
「人のこと言えるんですか?」
「言えねえなぁ…」
上位の妖には、運命の番が『人』に多く現れる。
それが何故かはわからない。
それゆえに、アルファ性が多いのだろうが…
美しく、賢く、強くなければ、自分達よりもか弱い人を守り通す事はできないし、好いてもらえないかもしれない。
数年前の雨の日、仕事で車での移動中、急に感じるものがあった。
いてもたっても居れず、すぐさま車を停め、雨の中感じるままに足を運んだ。
そこにいたのは、涙に濡れ、何か悲しい事があったのか、悲観に暮れた人の子だった。
常日頃の自分なら、そのような者に目もくれず、勿論相手にもしないのだが、まさに雷が落ちたかのように、強く惹きつけられるものがあり、胸の鼓動も早くなった。
その者から感じられるフェロモンも、愛おしくてたまらない…
すぐさま、悲しみに暮れている愛しい者を抱きしめ、車に乗せ、自宅に連れ帰った。
その場に置いていきたくなかった。
それに、身体が熱く、顔色も悪く感じ、長雨に打たれ続けたせいで、風邪をひいてしまったように感じたからだ。
急ぎ着替えさせ、医師に見せた。
衣服には学生証が入っており、その者の名前などがわかった。
このまま、屋敷のこの部屋に囲い込みたいとも思ったが、まだ相手は未成年だ。
彼の自宅に連絡し、少し体調が落ち着いた頃に車で送った。
膝の上に抱き締めるようにし、頬に唇にそっと自分の唇を滑らす。
番だと、うなじをグッと噛んで刻印を刻みつけたいところだが、未成年ということもあり、軽く甘噛みに抑えた。
それも本来ならダメなのだろうが、押さえきれなかった。
何故なら、甘噛みでも刻印は薄らと付くのだ。だがそれはあくまで仮契約の様な物で、ある条件で消えて無くなる物だ。だから、自分の中で良しとした。
「このぐらいなら、わかりにくいだろう…」
そう思った。
家に届け、壊物の様に彼の部屋まで誰にも触れさせず運んだ。
ベットに横たわらせて、乱れた髪をそっと整えてやる。
薬もよく効いてきたのか、今ではスヤスヤと眠りについていた。
そっと部屋のドアを閉め、彼の家族に向き合い、彼の事を聞きながら、諸事情を説明した。
彼の両親は驚いていたが、今後のことを踏まえて少し相談して、その場を離れた。
それ以後は、彼の両親と手紙のやり取りや、影の者達を護衛につかせて、絶えず報告させていた。
時に見守るぐらいは出来たが…それが、彼の両親との取り決めであった。
でないと、つい襲って自分のものにしてしまいそうだったからだ…
運命の番に対して、どうしても我慢しきれないのがアルファの特徴の一つとも言えるのかも知れない…
執務室の扉を入って、そう声をかけてきた。
ちらっとだけ視線を向け、「あぁ」とそっけない返事だけして、机に積み上げられている書類に目を通す。
そっけない対応に慣れているようで、相手の男はソファーにドスンと腰を落とした。
「で、どうだったんだ?」
「あの者達は捕らえて引き渡しただろ?」
「あぁ、引き渡されたけど、結構痛めつけていたな」
「それがどうした。殺してないだけマシだろ?後はそっちの仕事だ。勿論、余罪やその他も調べ上げてくれるんだろうな、背後関係も含めて」
あらかた書類整理が落ち着き、ペンを置いて、机からソファーへと移動する。
艶やかな黒髪は、書類整理で邪魔にならないように背後で一つに束ねられている。
年齢はいくつかは、判りかねないが、スラリとした美丈夫である。
見た目と年齢があっていないように見えるのは、妖である証拠とも言える。
そして、同じくソファーに座っている者も…
「あれが、例の子か?」
「あぁ、そうだ。私のですから、ちょっかいをださないでくださいね。でないと知りませんよ」
「お前もついに見つけたんだな。運命の…」
「えぇ、まさかここまで待たされるとは思いませんでしたよ。少しお寝坊さんのようでね。可愛いでしょ。お陰で、他の者も興味を示してるようですが…渡す気も逃がす気もありませんから」
「お前に目をつけられたんなら、逃げれんだろうな…」
「人のこと言えるんですか?」
「言えねえなぁ…」
上位の妖には、運命の番が『人』に多く現れる。
それが何故かはわからない。
それゆえに、アルファ性が多いのだろうが…
美しく、賢く、強くなければ、自分達よりもか弱い人を守り通す事はできないし、好いてもらえないかもしれない。
数年前の雨の日、仕事で車での移動中、急に感じるものがあった。
いてもたっても居れず、すぐさま車を停め、雨の中感じるままに足を運んだ。
そこにいたのは、涙に濡れ、何か悲しい事があったのか、悲観に暮れた人の子だった。
常日頃の自分なら、そのような者に目もくれず、勿論相手にもしないのだが、まさに雷が落ちたかのように、強く惹きつけられるものがあり、胸の鼓動も早くなった。
その者から感じられるフェロモンも、愛おしくてたまらない…
すぐさま、悲しみに暮れている愛しい者を抱きしめ、車に乗せ、自宅に連れ帰った。
その場に置いていきたくなかった。
それに、身体が熱く、顔色も悪く感じ、長雨に打たれ続けたせいで、風邪をひいてしまったように感じたからだ。
急ぎ着替えさせ、医師に見せた。
衣服には学生証が入っており、その者の名前などがわかった。
このまま、屋敷のこの部屋に囲い込みたいとも思ったが、まだ相手は未成年だ。
彼の自宅に連絡し、少し体調が落ち着いた頃に車で送った。
膝の上に抱き締めるようにし、頬に唇にそっと自分の唇を滑らす。
番だと、うなじをグッと噛んで刻印を刻みつけたいところだが、未成年ということもあり、軽く甘噛みに抑えた。
それも本来ならダメなのだろうが、押さえきれなかった。
何故なら、甘噛みでも刻印は薄らと付くのだ。だがそれはあくまで仮契約の様な物で、ある条件で消えて無くなる物だ。だから、自分の中で良しとした。
「このぐらいなら、わかりにくいだろう…」
そう思った。
家に届け、壊物の様に彼の部屋まで誰にも触れさせず運んだ。
ベットに横たわらせて、乱れた髪をそっと整えてやる。
薬もよく効いてきたのか、今ではスヤスヤと眠りについていた。
そっと部屋のドアを閉め、彼の家族に向き合い、彼の事を聞きながら、諸事情を説明した。
彼の両親は驚いていたが、今後のことを踏まえて少し相談して、その場を離れた。
それ以後は、彼の両親と手紙のやり取りや、影の者達を護衛につかせて、絶えず報告させていた。
時に見守るぐらいは出来たが…それが、彼の両親との取り決めであった。
でないと、つい襲って自分のものにしてしまいそうだったからだ…
運命の番に対して、どうしても我慢しきれないのがアルファの特徴の一つとも言えるのかも知れない…
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