22 / 302
学園生活
愛しい………
しおりを挟む
「はぁ…………」
ついつい大きなため息をついてしまう。
「そんなため息ついてると、幸せが逃げるぞ」
そう言って、クスッと笑う。
「ふん、ほっといてくれ。もう少しで愛しい彼との距離を縮める事が出来ると思った矢先に、こんな事が起こったのですよ。ため息ぐらいつきます。彼があの場に来て、声をかけようと思った所に…いくら離れた場所にいたとはいえ、あんな物を彼に飲まされて…私の…に反応したのもあるでしょうが、彼にしたら初めてのヒートでしょう。今まで起こしたという報告はあがっていませんから…」
「そんな情報まで報告させてるのかよ?」
「勿論です。何かあれば、直ぐにでも飛んで行きたかったのですから…」
「でもよ、他の者に噛ませない様に渡してたんだろう?」
「勿論渡してますよ。彼の両親を通してですが。さっきも確認しましたが付けてくれてました」
そう、彼の首には、彼のうなじを守る様に装飾品を付けさせていた。
襟のある服では見えにくく、華美にならない物を配慮し、また、付け心地にも考慮した一品だ。
それに、自分の魔力で付加した効力もある。
本当は、他の者達を牽制する物を付加したかったのだが、それをすると友人などが出来なくなる可能性があり、愛しい彼を辛い学園生活の中に置きたくなかったし、彼の両親からも強く願われたからやめた。
彼が危険な目にあった場合の察知と位置がわかるものと、いざという時の防御。
そして、自分の元に転移させる物を付けた。
今回は彼の居場所を追跡し、何とか守る事ができた。
仕事柄、今回はそう堅苦しいものではなかったのだが、多くの者達が寄って来た。
社交辞令の挨拶や会話をしない訳にもいかなかった。
勿論、彼の行動も注意はしてたんだけどね…
人混みをかけわけるようにして追いかけた。
彼が押し倒されているのを見てカッとなり、魔力で弾き飛ばした。
勿論、彼に不埒な行いをしようとした者だけだ。
彼を怯えさせない様に、瞳を掌で覆い隠し見えない様にして
「大丈夫だから、これを飲んで…」
そう言って彼の甘く柔らかい唇に触れた。
彼の唇の隙間を無理にでもこじ開けようと思ったが、ヒートによる動悸などのせいか、直ぐにわずかな隙間ができた。
すかさず舌を差し込んで、唾液を流し込む。
番のアルファであり、妖魔である者の体液は、その者に対しての万能薬になる。
反対もしかり…
頬を紅潮させ、素直にコクリと喉を鳴らして嚥下してくれた。
それで良い…
「そうだ。良い子だ。それで良い。大丈夫だから…」
彼と自分の香りが、自分達の周りに立ち込める。
甘い香りを吸い込んで、頭がクラクラした…
甘いと言っても、甘ったるい感じじゃない。
でも、好みの香り……
襲ってしまいたくなる衝動を抑え込む。
こんな私の気持ちを、この子はわかってくれるのだろうか…
しだいに彼の体から力が抜けていき、私に縋る様に手を伸ばされた。
無意識かも知れないが、嬉しくてたまらない…
伸ばされた手を掴み、引き寄せて抱きしめると、彼はそのまま意識を手放した。
屋敷に連れ帰りたいが、そういう訳にもいかず、かといって…
抱き上げて、影の者に不届き者であるこの者達を騎士団に引き渡し、一雅(かずまさ)に背後関係やその他を調べ報告するよう指示した。
一雅は古くからの友人であり、同じアルファの妖だ。
そして信頼できる軍部のトップでもある。
彼に任せれば間違いないだろうし…
腕の中で眠りに落ちている愛しい者を、壊物の様に包み込んで車に乗って彼の屋敷、部屋のベットまで送り届けた。
そっと首には付けている物を外し、唇と舌で彼の肌を感じ、甘噛みする。
早く彼に自分のものである印をしっかりと刻みたい…
そう思いながら、名残惜しいが後にした…
そんな一連を思い出す。
「なにニヤついてるんだ。思い出しか?」
「あぁ、そうだね」
「げっ、そんな微笑み見せるだなんて、いつもの作り笑いじゃないんだな…怖…」
「失礼だね。で、例のは?」
「あぁ、調べはついてるよ。というか。お前も調べたんだろ?」
「まぁ…」
「でさ、許可出してくれるんだろ?」
スッと出された書類に目を通す。
影からの報告もあったが…やっぱりな…
報告書と許可願にサインをする。
「頼んだよ」
「任せろや!」
ニヤリと笑って、受け取り
「じゃま、そういう事で…」
そう言ってソファーから立ち上がり、ドアに向かう。
ドアを開け、出て行こうとして振り向いた。
「お前の事だから大丈夫だと思うが、無茶するなよ雅貴(まさたか)」
「あぁ、わかっているよ一雅」
ついつい大きなため息をついてしまう。
「そんなため息ついてると、幸せが逃げるぞ」
そう言って、クスッと笑う。
「ふん、ほっといてくれ。もう少しで愛しい彼との距離を縮める事が出来ると思った矢先に、こんな事が起こったのですよ。ため息ぐらいつきます。彼があの場に来て、声をかけようと思った所に…いくら離れた場所にいたとはいえ、あんな物を彼に飲まされて…私の…に反応したのもあるでしょうが、彼にしたら初めてのヒートでしょう。今まで起こしたという報告はあがっていませんから…」
「そんな情報まで報告させてるのかよ?」
「勿論です。何かあれば、直ぐにでも飛んで行きたかったのですから…」
「でもよ、他の者に噛ませない様に渡してたんだろう?」
「勿論渡してますよ。彼の両親を通してですが。さっきも確認しましたが付けてくれてました」
そう、彼の首には、彼のうなじを守る様に装飾品を付けさせていた。
襟のある服では見えにくく、華美にならない物を配慮し、また、付け心地にも考慮した一品だ。
それに、自分の魔力で付加した効力もある。
本当は、他の者達を牽制する物を付加したかったのだが、それをすると友人などが出来なくなる可能性があり、愛しい彼を辛い学園生活の中に置きたくなかったし、彼の両親からも強く願われたからやめた。
彼が危険な目にあった場合の察知と位置がわかるものと、いざという時の防御。
そして、自分の元に転移させる物を付けた。
今回は彼の居場所を追跡し、何とか守る事ができた。
仕事柄、今回はそう堅苦しいものではなかったのだが、多くの者達が寄って来た。
社交辞令の挨拶や会話をしない訳にもいかなかった。
勿論、彼の行動も注意はしてたんだけどね…
人混みをかけわけるようにして追いかけた。
彼が押し倒されているのを見てカッとなり、魔力で弾き飛ばした。
勿論、彼に不埒な行いをしようとした者だけだ。
彼を怯えさせない様に、瞳を掌で覆い隠し見えない様にして
「大丈夫だから、これを飲んで…」
そう言って彼の甘く柔らかい唇に触れた。
彼の唇の隙間を無理にでもこじ開けようと思ったが、ヒートによる動悸などのせいか、直ぐにわずかな隙間ができた。
すかさず舌を差し込んで、唾液を流し込む。
番のアルファであり、妖魔である者の体液は、その者に対しての万能薬になる。
反対もしかり…
頬を紅潮させ、素直にコクリと喉を鳴らして嚥下してくれた。
それで良い…
「そうだ。良い子だ。それで良い。大丈夫だから…」
彼と自分の香りが、自分達の周りに立ち込める。
甘い香りを吸い込んで、頭がクラクラした…
甘いと言っても、甘ったるい感じじゃない。
でも、好みの香り……
襲ってしまいたくなる衝動を抑え込む。
こんな私の気持ちを、この子はわかってくれるのだろうか…
しだいに彼の体から力が抜けていき、私に縋る様に手を伸ばされた。
無意識かも知れないが、嬉しくてたまらない…
伸ばされた手を掴み、引き寄せて抱きしめると、彼はそのまま意識を手放した。
屋敷に連れ帰りたいが、そういう訳にもいかず、かといって…
抱き上げて、影の者に不届き者であるこの者達を騎士団に引き渡し、一雅(かずまさ)に背後関係やその他を調べ報告するよう指示した。
一雅は古くからの友人であり、同じアルファの妖だ。
そして信頼できる軍部のトップでもある。
彼に任せれば間違いないだろうし…
腕の中で眠りに落ちている愛しい者を、壊物の様に包み込んで車に乗って彼の屋敷、部屋のベットまで送り届けた。
そっと首には付けている物を外し、唇と舌で彼の肌を感じ、甘噛みする。
早く彼に自分のものである印をしっかりと刻みたい…
そう思いながら、名残惜しいが後にした…
そんな一連を思い出す。
「なにニヤついてるんだ。思い出しか?」
「あぁ、そうだね」
「げっ、そんな微笑み見せるだなんて、いつもの作り笑いじゃないんだな…怖…」
「失礼だね。で、例のは?」
「あぁ、調べはついてるよ。というか。お前も調べたんだろ?」
「まぁ…」
「でさ、許可出してくれるんだろ?」
スッと出された書類に目を通す。
影からの報告もあったが…やっぱりな…
報告書と許可願にサインをする。
「頼んだよ」
「任せろや!」
ニヤリと笑って、受け取り
「じゃま、そういう事で…」
そう言ってソファーから立ち上がり、ドアに向かう。
ドアを開け、出て行こうとして振り向いた。
「お前の事だから大丈夫だと思うが、無茶するなよ雅貴(まさたか)」
「あぁ、わかっているよ一雅」
36
あなたにおすすめの小説
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
セカンドライフ!
みなみ ゆうき
BL
主人公 光希《みつき》(高1)は恵まれた容姿で常に女の子に囲まれる生活を送っていた。
来るもの拒まず去るもの追わずというスタンスでリア充を満喫しているつもりだったのだが、
ある日、それまで自分で認識していた自分というものが全て崩れ去る出来事が。
全てに嫌気がさし、引きこもりになろうと考えた光希だったが、あえなく断念。
従兄弟が理事長を務める山奥の全寮制男子校で今までの自分を全て捨て、修行僧のような生活を送ることを決意する。
下半身ゆるめ、気紛れ、自己中、ちょっとナルシストな主人公が今までと全く違う自分になって地味で真面目なセカンドライフを送ろうと奮闘するが、色んな意味で目を付けられトラブルになっていく話。
2019/7/26 本編完結。
番外編も投入予定。
ムーンライトノベルズ様にも同時投稿。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる