オメガ転生。

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学園生活

事件です(雅貴)

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翔より早く目が覚め、愛しい者の寝顔を見る。
頸から、私のものである証がみえ、にやけてしまう。

もう少しこのひと時を堪能したいが、昨日の事件の後始末があるから、急いで登城しないといけない。

翔を起こさないようにそっとベットから下り、身支度を整えて部屋を出る。

「おはようございます」
「あぁ、日嗣、如月を」
「翔様のお世話ですね。如月には伝えています。」
「そうか…」

葛城 日嗣(かつらぎ ひつぎ)は私の側近であり、執事でもある。
仕事もプライベートも常に側にいる信頼できる者だ。
もう少し自分を大切にしても良いとは思うのだが…

「朝食の準備も出来ています。すぐ食べられて、出かけられますか?」
「あぁ。鬼道院から報告はいっていると思うが、私の仕事もあるしね」

思わずニヤリと笑ってしまう。許すわけない。徹底的にやる!!

「そんな顔、翔様に見せれませんね。逃げられますよ」
「ふん、見せませんよ。彼にはね。逃がしもしませんが」
「かわいそう…」
「何か言ったか?」
「いいえ、別に…それならば急ぎませんと」

そうせかされて、急いで食事を終えて、車で城に向かった。
日嗣と共に、執務室に向かい、その後謁見を申し得て、皇帝に会いに行く。
と言うか、アイツの身内の事だ、アイツからこちらに来たら良いのに!!
まぁ、身分の事もあるが、実際は…

この事は国家機密にも引っかかるから…
そう、妖と人との協定。
それは、各国で微妙に違うが、ほぼ同じ。
下々の者は知らず存ぜずの事だから…

報告書を確認し、時間を確認して、指定された場所に赴いた。

ドアの前には護衛の騎士が立ち、声をかけて入室の許可をもらう。
騎士の1人がドアを開け、中に入ると、少し疲れ切ったこの国のトップである皇帝がソファーに座るよう促してきた。
言われた通りに座る。

「すまないね。我が一族の者がやらかしてくれて」
「本当ですね。きちんと締めておいてくださいよ!」

お互い気心が知れている。
この場だから、好き勝手言えるのだが…

皇 鷹晃(すめらぎ たかあきら)
この国皇帝であり、皇一門の長。
神族の末裔であり、アルファの男だ。見た目は女性の様に頼りない様にも見えるが、それが自分の見た目を熟知した演技だと知っている者は知っている。
そう、かなりの曲者だ。

「本当に申し訳ないね。片親が早く亡くなって、周りの者達に甘やかされ、良い様にされていた様だ。歳がいっての子供だったしね、尚更だ…まぁ、良い餌ではあったけど、やり過ぎだ」
「仮にも身内にそんな事言って良いのですか?」
「身内と言っても…まぁ、それは横に置いておいて、それで、どうなってる?」
「神殿も一掃出来そうですよ」
「それは良かった。」

そう話している間に、テーブルにはお茶の準備がされていった。

「君達、下がっていていいよ」

そう言うと、スッと部屋から従者が出ていった。

「鷹晃、何企んでるんですか?」
「これを機に、神殿の力を少し削ぎ落としておこうと思ってね。あと、隣国との交渉も…」
「隣国?」
「そう、友好関係と婚姻協定ですね」
「…」
「そうそう、捕らえた者達の処遇は任せておくよ。あの子以外。」

「あの子って、ヤツが一番気に食わないのですが!私の大切なものに対して…」
「分かっています。それは本当に申し訳なかったと思います。君達、妖の番いがどれほど大切なものかは理解しているつもりです。ですが」
「なら、ヤツの処分の許可を!」
「それは出来かねます。身内だからと言うわけではないのですよ。隣国との交渉です。情報は貴方の方が握っているでしょ?宰相殿?」
「うっ…」
「ですからね、皇族のアルファであるあの子を、まずはオメガ落ちさせます。そして、隣国のアズバルト殿がどうしても嫁に欲しいと以前から言ってきてましてね、あの子は嫌がっていましたが…自分はアルファであるから、あり得ないとも…でも、罰としてオメガ落ちさせれば、可能ですし…良い罰であると同時に、国のためにもなる。どうかこれで妥協していただけませんか?」

アルファがオメガに落ちるのは、余程のことでない限りあり得ない。
それも、かなりの特殊な方法であるから、尚更だ。
しかも、あの国の…

「わかりました。その件はお任せします」
「ありがとう」

そう言うと、その後は穏やかな会話で終わった。
神族の末裔である皇族は、普通の人よりは長生きだ。
神族の血の濃さや、遺伝的な事も多少あり、全ての皇族が同じだけど長生きとは言い切れないが。
そして、他にも何か有るのだろう。
皇一族の極秘として…

まぁ、そんな事もあり、我らとの付き合いも長い。
古くからの友人でもある彼の性格からして、この辺で折れるしかないと判断して、話を合わせ、事後処理を行うべく自分の執務室に戻った。
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