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4章 四日目 芸術鑑賞会
4-1 いつもより少し早い朝
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いつものように朝が来た。
窓の外ではチチチと小鳥が鳴いて、枕元ではスマホが……。
「まだ鳴ってないな」
俺は今日、いつもより早く目覚めていた。
自分でも幼稚だとは思うが、テンションが上って目が覚めてしまったのだ。
別に芸術になんて大して興味はないのに、それでもそういうイベントごとがあるという事実に対して、少し興奮してしまう。
まあ、仕方のないことなのかもしれないな。
ホームルームでバスの席順を決めてから、早いものでもう一週間が経った。
つまり今日は――
「っと」
ピピピピと鳴り出したスマホのアラームを止める。
いつもの(二度寝しそうになる)時間を確認してから、俺はベッドから降りた。
「今日はすっかり目が覚めてるな」
睡眠時間自体はほんの少しだけ短い。
それなのにぐっすり寝たような気になっているから人体というのは不思議だ。
もしかするとあの寝たりないという感覚は実際の睡眠時間に関係しているんじゃなくて、起きたときの感覚にのみ関連しているんじゃなかろうか。
そんなどうでもいいようなことを考えながら、俺は部屋のカーテンを開けた。
いつもよりも若干早かったからか、偶然のように窓の向こうで同じようにカーテンを開けていた咲と目があった。
ちなみに咲の方は、もうすでに制服に着替えていた。
俺の方は、パジャマのままだったが。
まあいい。とっとと着替えて下に降りよう。
でないといつものように、咲に早くしなさいとどやされてしまう。
なにしろ、きっと咲の方も今日は特別な学校行事ってことでテンションが上っているだろうからな。
トントントントン――
と思った途端に階段を上がってくる音。
予想通り、咲の方も今日は早め早めに行動しているようだ。
「起きてるのわかってるけど起きてるー?」
すでに目視で起きている俺のことを確認している咲は、ドアを開けずに呼びかけてきた。
「降りてくる前に荷物確認しといてねー。わかってると思うけど、今日はいつもと違うからー」
置き勉八割な俺は、荷物を間違えたとしてもそれほど問題はない。
ただ少し、かばんが重いだけだ。
というか、今日は特別に持っていかないといけないものとかあったっけ。
「……」
まあいいか。なにかあったら咲の世話になればいい。
俺はいつものように着替えると、いつものように部屋を出てトイレに行き、いつもより少し早い時間にリビングへと出た。
「おはよー、今日は早いね」
「おはよう。そういうそっちもな」
「まあねー。今日はお弁当いらないから、ホントは少しゆっくりでもいいんだけどね」
「そうか。そういえば今日はお昼出るんだったな」
「テーブルマナー的な講座もあるらしいから、恥かかないでよ~」
「うっせ。そっちこそ失敗しないようにな」
いつものように軽口を叩き合いながら、俺はテーブルに付く。
そこには咲の作ってくれた朝食が並ぶ。
それはそれをいつものように……。
「いただきます」
「はい。召し上がれ」
いつものようによく噛んで、いつものように一日の糧にした。
そして、いつもどおりではない一日がはじまる。
窓の外ではチチチと小鳥が鳴いて、枕元ではスマホが……。
「まだ鳴ってないな」
俺は今日、いつもより早く目覚めていた。
自分でも幼稚だとは思うが、テンションが上って目が覚めてしまったのだ。
別に芸術になんて大して興味はないのに、それでもそういうイベントごとがあるという事実に対して、少し興奮してしまう。
まあ、仕方のないことなのかもしれないな。
ホームルームでバスの席順を決めてから、早いものでもう一週間が経った。
つまり今日は――
「っと」
ピピピピと鳴り出したスマホのアラームを止める。
いつもの(二度寝しそうになる)時間を確認してから、俺はベッドから降りた。
「今日はすっかり目が覚めてるな」
睡眠時間自体はほんの少しだけ短い。
それなのにぐっすり寝たような気になっているから人体というのは不思議だ。
もしかするとあの寝たりないという感覚は実際の睡眠時間に関係しているんじゃなくて、起きたときの感覚にのみ関連しているんじゃなかろうか。
そんなどうでもいいようなことを考えながら、俺は部屋のカーテンを開けた。
いつもよりも若干早かったからか、偶然のように窓の向こうで同じようにカーテンを開けていた咲と目があった。
ちなみに咲の方は、もうすでに制服に着替えていた。
俺の方は、パジャマのままだったが。
まあいい。とっとと着替えて下に降りよう。
でないといつものように、咲に早くしなさいとどやされてしまう。
なにしろ、きっと咲の方も今日は特別な学校行事ってことでテンションが上っているだろうからな。
トントントントン――
と思った途端に階段を上がってくる音。
予想通り、咲の方も今日は早め早めに行動しているようだ。
「起きてるのわかってるけど起きてるー?」
すでに目視で起きている俺のことを確認している咲は、ドアを開けずに呼びかけてきた。
「降りてくる前に荷物確認しといてねー。わかってると思うけど、今日はいつもと違うからー」
置き勉八割な俺は、荷物を間違えたとしてもそれほど問題はない。
ただ少し、かばんが重いだけだ。
というか、今日は特別に持っていかないといけないものとかあったっけ。
「……」
まあいいか。なにかあったら咲の世話になればいい。
俺はいつものように着替えると、いつものように部屋を出てトイレに行き、いつもより少し早い時間にリビングへと出た。
「おはよー、今日は早いね」
「おはよう。そういうそっちもな」
「まあねー。今日はお弁当いらないから、ホントは少しゆっくりでもいいんだけどね」
「そうか。そういえば今日はお昼出るんだったな」
「テーブルマナー的な講座もあるらしいから、恥かかないでよ~」
「うっせ。そっちこそ失敗しないようにな」
いつものように軽口を叩き合いながら、俺はテーブルに付く。
そこには咲の作ってくれた朝食が並ぶ。
それはそれをいつものように……。
「いただきます」
「はい。召し上がれ」
いつものようによく噛んで、いつものように一日の糧にした。
そして、いつもどおりではない一日がはじまる。
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