50 / 171
6章 六日目 ろくしょう
6-5 いつもどおり風味な午後の授業
しおりを挟む「はーい、じゃあAチーム集まってー。Cチームは休憩。Bチームはそっちのコートねー。残りのチームは見学してなさーい」
午後は体育の授業だった。
体育館で、男女合同でのバレーボールの試合。
体育は1組との合同授業なため、男子の方はいつも一緒になるよく知った連中だったが、女子の方は見知らぬ子たちもチラホラと混じっていた。
しかしながら、そこにはヤツらの姿もある。
「ほらそこーっ! 私がレシーブしたんだからっ、ちゃんとアタックしなさいよーっ!」
「たまちゃんうるさい。バレー部でもないのに、そんなにポンポンアタックなんてできないってば」
「くーっ! アイツがいるチームには絶対に負けたくないのにっ!」
相変わらずうるさい香染と、それを諌めている七瀬。
そしてなぜかヤツに目の敵にされているアイツとは、俺のことだった。
「なあ緑青。俺、なんかアイツに恨みを買うようなことでもしたのか?」
「麗美のこと以外で?」
「ちょっと待て。あれは恨みを買うようなことなのか?」
「わからないけど、あの子にとってはそうなのかもしれない」
「うーむ……」
体育教師の春日部が戦力均衡のためとかいって作ったA~Eのチーム分け。
なんとなくだが、妙な偏りがあるような気がしていた。
男子の分け方は、まあ確かに戦力均衡目的だろう。
バレー部の連中はほぼ均等に分けられている。
それ以外のスポーツ自慢のヤツラも、バラバラになるように分けられていた。
しかしながら女子の方は……。
「レミ! 私たちの初の共同作業よっ! アイドルグループとしての結束力、見せつけてやりましょっ!」
「私、まだそのグループに入ると言った憶えはないのですが……」
「ごめんなさい麗美さん。この子、思い込みが激しいから」
「ふぅ……私、こういうの苦手なんだけどな……後ろの方で隠れててもいいかな。え? ドッジボールじゃない? そっか……そうだよね」
相手コートの中で目立っている、香染・麗美・七瀬・白藍。残りの女子たちも、なんとなくだけど顔面偏差値高めの子が集められているような気がする。
そしてそれを表すかのように……。
「すげえ。あのチーム……目が離せないよ」
「だよな。俺は香染さんとか好き。うるさいけど」
「僕は白藍さんかな。三国志の話しとかしたい」
「俺はやっぱ麗美……は黒柳のか。じゃあ七瀬でいいや」
「……」
と、モブ扱いされている他チームの男子たちの目を集めまくっていた。
そして、俺の入れられているBチーム。
緑青に藤黄。咲の友達の陽ちゃん。あとは名前の知らない女子が何人かだが、その傾向が恐ろしいほどに似通っている。
つまり、低身長でどことなく子供っぽい感じの見た目の子が多い。
「いやーん、Bチームちゃーん。がんばってー。ほらそこのクソ男子ー。もっとちゃんとアシストしなさいよー」
くねくねと身体をくねらせながら、俺たちのチームに声援を送ってくる体育教師の春日部。
口調の方はアレだが、身体にはみっしりと筋肉のついた筋肉おじさん。
頭はポマードでみっしりと固められている。
あまりのキャラの濃さに女子からはキモいと避けられているが、男子の方からもそれほどの人気はなかった。
なにしろ、えこひいきがかなり激しいのだ。
「ちーちゃーん。がんばってー」
そしてそんな春日部のお気に入りは、緑青。
緑青がどんな気持ちになっているのかは、その顔を見ればわかる。
普段黒い笑顔を浮かべたりしながら、割りと楽しく生きていそうな緑青だったが、やつの声援を受けているときだけはその表情が恐ろしいほど冷たいものになる。
まるで、ロボットにでもなったみたいに。
「お前、ホントに春日嫌いっぽいよな」
「嫌いとは違う。だからといって、好きじゃないけど」
「そうなのか?」
「教師として尊敬できないだけ。教師なら、どんなにポンコツでも生徒は平等に扱わないと」
「ああ。みどり先生みたいにな」
「ん」
そんな緑青の背後で、密かに燃えるヤツもいた。
それは藤黄。
緑青のことを勝手にライバル視している、うちのクラスのナンバー2の優等生だ。
「よっと」
こちらのコートにフラフラと飛んできた香染のアタックもどきのボールを、俺が低い位置でレシーブする。
「はい」
トンっとそのボールを陽ちゃんがきれいにトスで上げた。
「もらったぁぁぁぁぁっ!!!」
誰に向かって叫んでいるのかはわからなかったが、大きな声を上げながら藤黄が走り込んできてそしてジャンプ。
身体のバネを十分に効かせた見事なエビ反りから、渾身の力を込めたアタックが……。
「とうっ!」
スカッとその手が空を切る。
「え!?」
そしてそれを見越していたかのようにボールの落下地点で待っていた緑青が、軽くジャンプしてネットの向こうにそれを軽く押し込む。
ボールは吸い込まれるように相手コートに落下し、審判の短いホイッスルでこちらのポイントが決まった。
「ちいっ! やるわねっ! まさかフェイントかけてくるだなんてっ!」
藤黄に合わせてブロックしていた香染が、悔しそうに大声でそうつぶやく。
「いやいやたまちゃん。あれ、たぶん向こうのアタッカーのミスだから。それをあの小さい子がリカバリーしただけ」
「ふんっ。そうだと思ってたわっ」
「あのねえ……」
「ふふふ」
相変わらずうるさい向こうのコート。
そしてこちらのコート側にも……。
「次は負けないからね、緑青。あんたもよ、黒柳」
「えー、俺までターゲットにされるのー」
「私以外はみんな敵よ。私は、私だけが勝ちたいの」
相変わらずめんどくさいヤツが、全方位に向かって勝負を挑んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる