黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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10章 十日目 調理実習

10-4 いつもとはちょっと違うメニューのお昼の時間

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「うん、美味い」

いつものように机を合わせて島を作り、俺たちはお昼ごはんを食べていた。

「悦郎たち今日のお弁当それなに? バーガーっぽいサンドイッチ?」

スパムと玉子焼きを挟んだどこか沖縄っぽいサンドイッチを頬張りながら、砂川が尋ねてくる。
その質問に、咲が答えた。

「っぽいでしょ? 丸パンで挟んでみたんだ」
「ハンバーガーのあれとは違う感じ?」
「たぶん。丸パンも自家製だから、ハンバーガーとかに使うバンズとは微妙に違うと思う」
「中身は?」
「フィッシュフライよ。それと、いぶりがっこのピクルス」
「え?」
「お魚が淡白な味だったから、少し足してみたの」
「いやそこじゃなくて、いぶりがっこのピクルスって?」
「このあいだ物産展で見つけたの。面白いでしょ?」

食の話題になると盛り上がる砂川と咲。
そのやりとりを放置したまま、俺はフィッシュバーガーに舌鼓を打つ。

「一口いただいてもよろしいですか?」
「おう。麗美も食べてみな。美味いぞ」
「ありがとうございます」

いつもとちょっと違ったメニューに興味が湧いたのか、麗美が味見を希望してくる。
俺はバーガーっぽいフィッシュサンドを半分に割って、小さめの方を麗美に渡した。

「いただきます」

小さめの口で上品に、麗美がフィッシュサンドを頬張る。
一口味わった途端、その表情が驚きに染まった。

「これ、私の国の料理にちょっと似てます」

ちゃんと咀嚼して飲み込んでから、麗美は驚きの理由を語った。

「え? そうなの?」

自分の創作料理だと思っていた咲もまた、別の理由で驚きの表情を浮かべた。
まあ、似てても咲のアイデアで作った料理だってことには変わりないがな。

「このお魚……種類はわかりませんが、これに似た味のお魚がよく取れるんです。それで、こんな感じでピクルス和えにしてバゲットに挟んで食べたりします」
「へー。料理好きは国が違っても同じようなアイデアにたどり着くんだな」
「まあ、国は違っても人の味覚にはそんなに差がないだろうしね」
「いや、そうでもないんじゃないか? 地元の人は美味いと思ってても外国の人にはどうしても受け入れられないものとかあるだろ。納豆とか」
「あれは……個人の好みの範疇じゃない?」
「ぐふふ。納豆好きの外国人、いなくもない」
「そうなのか?」

食べながら、雑談が繰り広げられていく。
こんな感じで、ほぼいつもどおりのお昼の時間は過ぎていった。

    *   *   *

ちなみに麗美の国のその魚料理は、缶詰とかにして保存されるらしい。
まさか世界一臭かったりするか? と尋ねてみたが、どうやらシュール様ではなかったようだ。
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