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10章 十日目 調理実習
10-3 ほぼいつもどおりの午前中
しおりを挟む「なにやってんだ悦郎……反省文?」
休み時間、遅刻した罰として課せられた反省文の書き取りしていると、砂川が何かをもぐもぐしながら俺の手元を覗き込んできた。
「反省文の書き取りだ」
「書き取り?」
「お手本の反省文を、一言一句そのままに書き写すんだってよ。謎だよな」
「ぐふふ。適当な気持ちのこもってない反省文よりも、ずっと効果的。集中して書き写せば脳内に刷り込まれるから」
「そうなのか?」
俺と砂川のやりとりに割り込んできた緑青に尋ねる。
「今思いついた」
「あのなあ……」
今日も緑青の罠に引っかかる。
相変わらずこいつは、謎の説得力を備えている。
「っていうかお前だけなのか、遅刻したの。咲ちゃんと一緒に来なかったなんて珍しいな」
「あいつは俺を見捨てて先に行った」
「咲だけに先に。ぐふふふふ」
ポツリとダジャレを口にして満足している緑青を放置して、俺は反省文の書き取りをさらにすすめていった。
「まあでも確かに、緑青の言うことも一理あるかもな。こうやって書き写してると、なんとなく反省してる気分になってくる」
「催眠学習的な効果っぽいね、なんか」
甘い匂いのするドーナツっぽい丸い揚げ物を口に放り込みながら、砂川が怖いことを言う。
「っていうか何食べてるんだそれ。うまそうだな」
「サータアンダギーだよ」
「あ、聞いたことあるな。北海道だっけ」
「沖縄だよ。何と勘違いしてるの?」
「悦郎の言ってるのはたぶんザンギ」
「あー、それそれ」
「そっちか」
俺と砂川、そして緑青の3人で謎のトークを繰り広げているうちに、休み時間が過ぎていく。
* * *
2時間目がはじまった。
2時間目は、英語の授業。
ということは担当はみどり先生だ。
「There are delicious foods in Hokkaido, but the highlight is not only that. Disappointing sightseeing spot is one of them.」
綺麗な発音でみどり先生が英文を読み上げていく。
英語のときは声のトーンが一段下がるのは謎だが、そういえば麗美も外国語を使うときはちょっと低音になる気がする。
なんか理由があるのだろうか。
ともかく、みどり先生はスピーカーとしてはかなり優秀っぽい。
特待クラスで英語を教えているネイティブの先生とも、普通に英語でペラペラと会話をしていた。
っていうか日本語の方がたどたどしいってどういうことだろう。
ちゃんと聞いたことなかったけど、もしかしたら小さなころは海外で暮らしてたとかなのだろうか。
「はいじゃあ次のところ黒柳くん読んでね」
「え?」
「36ページ。How much does a million dollar night view cost at today's exchange rate?の次から」
「おう、サンキュ」
唐突な指名に慌ててしまったが、咲のこそこそサポートでなんとか乗り切る。
授業中に余計なことを考えるのは、やめておいたほうがよさそうだ。
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