黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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12章 十二日目 不審者情報

12-7 いつもを邪魔する謎の後輩

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「じゃあな緑青」
「また明日ねちーちゃん」

フリフリと無言で手を振りながら、緑青が帰っていく。

謎の後輩を連れていた真朱がオカルト研究部の部室から帰ったあと、俺たちは麗美がアイドル研究部の方から戻ってくるのを待ってみんなで下校した。

(まあ、大丈夫だとは思うが不審者の情報もあったしな)

そしていつもの駅前。
自宅方向が俺たちとは別な緑青が、一足先に集団から離脱する。
緑青に送っていった方がいいかと聞いてみたが、商店街の中を通るから大丈夫だと却下された。
確かにあの商店街の連中は、ほぼすべてが緑青の知り合い。
ある意味、全部身内みたいなもんだ。
不審者が出たりすれば、一発で捕まるだろう。

そして俺と咲と麗美は、いつものようにコンビニに寄るべくそちらへと足を向けた。
すると、そこに……。

「あーっ!!! 黒柳悦郎!!!」

ほんの一時間ほど前にはじめて聞いた声が、なぜか再び俺の耳へと届いてきた。
そして、すまなそうにする真朱の声も。

「こら、町中で意味もなく大きな声出さない」
「す、すみません。つい」

「ふふ、なにげに懐かれてるね」
「そうかー?」

なぜか楽しそうな咲。
そして部室で真朱たちと会っていない麗美は、やつの正体を俺に尋ねてきた。

「悦郎さん、あの方は」
「ああ、うん。あいつは……」

俺は麗美に真朱の謎の後輩のことを教えてやる。
まあ、俺だって大したことは知らないんだけどな。
そして麗美は、あいつが洋子先輩にビビリまくりだったというところでクスクスと笑い始めた。

「ああっ! あの人髪染めてます! 校則違反です!」

そんな麗美を、やつが指差して言う。
俺はムッとしてそいつに反論した。

「あのなあ、麗美のこれは地毛だ。染めてないんだから違反じゃないだろ」
「でも! 校則では金髪は禁止されてます!」
「それは金に染めるなってことだろうが。それともなにか? 染めること自体校則では禁止されてるのに、黒に染めろっていうのか?」
「な、なに理不尽なこと言ってるですか! 私はルールは守らないとダメって言ってるだけです!」
「あのなあ……」

どうもダメっぽいやつだなと思っていたが、どうやら思っていた以上にダメだったらしい。
まあでも、やつに呆れているのは俺だけではなかったのはせめてもの救いだろう。

「和泉ちゃん。それは違います」
「え? ま、真朱先輩?」
「四角四面にルールを守ればいいってものではありません」
「でも、それじゃあルールを決めた意味が……」
「ルールを決めるのは、余計なことを気にせずにみんなが潤滑に毎日を送れるようにするためでしょう? でもそれは、考えるのをやめるのとイコールではないです」

どうやら、あっちは真朱に任せておけば大丈夫っぽい。
俺は真朱に軽く手だけで挨拶をして、麗美たちを促してその場を離れようとした。
しかし……。

「ほら、麗美さんに謝りなさい」
「わ、私は悪くないです」
「人を指差して、違反だって大きな声で言ったじゃない。あれは侮辱よ」

残念ながら、火の粉がこちらにも飛んできてしまった。
というか、微妙にめんどくさい真朱の真面目モードが出てき始めている気がする。
こういうときは、香染がいてくれると助かるんだが……。

「ごめんなさい。私が間違ってました」

ペコリと謎の後輩は素直に麗美に頭を下げる。
ひっつくほど懐いている真朱に叱られるのは、かなり堪えるらしい。

「ふふふ。いいのよ、気にしてないから」

そんな謎の後輩に、麗美は笑顔で答えた。
そんな麗美を見て、謎の後輩は首をかしげた。

「どうかした?」

その反応を妙だなと思ったのは俺だけじゃないらしく、真朱は後輩に軽く耳打ちした。
その答えが気になり、俺は聞き耳を立てる。

「先輩。なんであんないい人が、黒柳悦郎と一緒にいるんですか? なにか弱みでも握られてるんですか?」
「あ、あのねえ……」

あまりにもあまりな答えに、真朱が苦笑する。
聞いているこちらも、笑うことしかできなかった。

というか、なんで俺はあんなにあいつに敵視されているんだ?
俺に自宅でも爆破されたりでもしたのか?

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