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12章 十二日目 不審者情報
12-6 いつもなわけがない謎の後輩
しおりを挟む「ということがあったんですよ」
「なーるほどなー」
ほぼいつもどおりの放課後の時間。
俺たちはいつものように、オカルト研究部の部室でまったりとした時間を過ごしていた。
今日は、洋子先輩も一緒だった。
「そう言えばこのあいだ、田中さん来ましたよ」
「ああ。生きてたかあの人」
「マジで謎ですよね」
「本名は普通だけどな」
「確かに」
部に入っていないのに部室に出入りしている謎の人、エイィリ・サビォナンドさん。(本名:田中絵理子)
いつも謎のローブを深くかぶっていて、何度か遭遇したことのある俺もちゃんと素顔を確認したことはまだない。
「洋子先輩は顔見たことありますか?」
「あー、チラッとな。意外と美人だったぞ」
「スタイルも良さそうですよね。ちょっと猫背ですけど」
「だよな。普通にしてればいいのに」
などという話をしているタイミングで、コンコンと部室の扉がノックされた。
その丁寧なノックの仕方から、おそらくちゃんとした来客であろうことが推測された。
たぶん、香染ではない。
「どうぞー」
呼び込みの声がかかるまで外でちゃんと待っていることからも、香染やエイィリさんではないことが明らかだった。
そして、扉を開けて入ってきたのは予想通りちゃんとした人だった。
「こんにちわ。ちょっといいですか?」
「あ、真朱さん」
「白鳥さんこんにちわ。しばらくぶりね」
「あははー。メールはたまにしてるけどね」
「ええ」
入ってきたのは七瀬真朱。生徒会の会長で、ある意味うちの学校の一番の良心だ。
相変わらずの綺麗な姿勢と、完璧な制服の着こなし。
ちょっとツリ目なところが、ごく一部の男子にはたまらないらしい。
が、いつもと違うところがひとつある。
「あれ? 今日は香染は一緒じゃないのか?」
「ふふっ。たまきとは別にいつも一緒にいるわけじゃないわ。あの子がなにかやらかしそうなときだけ」
「それってほぼいつもじゃないのか?」
「まあそうとも言うわ」
「ガルルルル」
「ん?」
いつもどおりの落ち着いた雰囲気の七瀬の影に、もう一人生徒がいることにいまさらながら気づいた。
「真朱さん、そちらは?」
咲が真朱にその生徒の紹介を促す。
自分の背中にひっつくようにしているその生徒を真朱はやや強引に前に押し出し、俺たちの前に晒した。
「うちの後輩の子。あ、生徒会の方ね」
真朱がいい直したのは、彼女は香染との付き合いでアイドル研究部の方にも入っているからだろう。
「ほら、見回りについてくるって言ったのはあなたでしょ。ちゃんと挨拶する」
なぜか俺を睨みつけてているその後輩に、真朱が挨拶を促す。
俺は当然のことながら、その子の口からは挨拶の言葉が出てくるのだと思っていた。
しかし……。
「出たわね黒柳悦郎! 真朱先輩には指一本触れさせないわ!」
「は?」
「あはは~」
額に手をあて、やれやれと頭を振っている真朱。
なぜこいつの周りには、この手のぶっとんだ奴が集まっているのだろうか。
「ごめんね。いつもは普通で真面目ないい子なんだけど、なぜか黒柳くんの話題が出るとこんな感じになっちゃうの」
「なんだクロ。この子になんかしたのか?」
「ひっ!」
再び真朱の背後に隠れる真朱の後輩。
確か名前は……っていうか、名乗ってすらいねえ。
「なんもしてませんよ。っていうか、洋子先輩の方がなんかしてそうじゃないですか。あんなに怯えて」
「ガクガクブルブル」
「してねーって。っていうか、初対面だ」
「俺だってそうです」
真朱の後輩……謎な奴だ。
* * *
そのあと、真朱は見回りの理由を教えてくれた。
なんでも例の不審者情報の関係で、放課後の校内を巡回しているらしい。
生徒会も大変だなあ。
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